(6)ユーゴスラヴィア連邦解体戦争年表

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2000年~2022年
2000年
01/03:
・クロアチア下院選挙の投票が行なわれ、中間発表で社会民主・社会両党の野党連合が40.5%を獲得し、与党クロアチア民主同盟・HDZは24.4%。野党連合の勝利が確実となる。
01/04:
・クロアチア下院選挙は野党の勝利が確実になり、定数140議席のうち野党連合が70議席を獲得し、民族主義政党のクロアチア民主同盟・HDZは41議席、農民党など4党連合が24議席を獲得する見込み。
・クロアチア共和国のラチャン社会民主党党首は、「援助がなければ、HDZが再び台頭するおそれがある」と述べ国際社会の支援を求める。
01/07:
・中国の日刊中国通信は、「99年は中露両国が21世紀に向けた戦略的パートナーシップを発展させた年になった」、と
報じる。
01/10:
・セルビア共和国に「セルビア野党民主連合・DOS」が結成される。
・セルビア共和国の野党連合は、ミロシェヴィチ政権に対して4月末までの早期選挙を要求することで合意し、反政府集会を3月初旬から開く計画などを盛り込んだ文書に民主党のジンジッチを除く17の政党代表などが署名。この背景には、G8の外相会議で1,2ヵ月以内に野党共闘を成立させるよう圧力がかけられたことがある。
・プーチン・ロシア連邦大統領代行は、連邦議会に新「国家安全保障概念」を採択させる
01/14:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYはボスニアのクロアチア人勢力の元兵士5人に対し、ボスニア紛争時にムスリム人100人以上を殺害したとして「人道に対する罪」で懲役6年から25年の判決を言い渡す。ICTYの7件目の判決。
01/15:
・セルビアのジェリコ・ラジュナトヴィチ民兵組織指導者が、ベオグラード市内のホテルで暗殺される。通称アルカンと言われているラジュナトヴィチは、住民虐殺の容疑で旧ユーゴ国際戦犯法廷から起訴されていた。
01/22:
・セルビア警察当局は、ラジュナトヴィチ暗殺の容疑で元警察官3人を逮捕する。
01/24:
・トゥジマン・クロアチア前大統領の死去に伴う、クロアチア大統領選挙の投票が行なわれる。クロアチア民主同盟・HDZのグラニッチ外相、社会自由党のブディシャ党首、人民党のメシッチ副党首の間で争われる。
・中間発表では、メシッチ人民党副党首が41.6%、ブディシャ社会自由党党首が28.0%、グラニッチ・クロアチア民主同盟副党首が21.6%となる。いずれも50%に達しないため、上位2人の決選投票が2月7日に行なわれる予定。
・クロアチア共和国の次期首相に就任予定のイビツァ・ラチャン社民党党首は、「経済再建に外国の協力が不可欠である」と強調し、「南東欧地域で日本の主要なパートナー国になりたい」と述べる。
02/02:
・コソヴォ自治州の北部コソヴスカ・ミトロヴィツァ近くで、国連難民高等弁務官事務所・UNHCRのバスが対戦車ロケット弾の砲撃を受け、少なくとも2人が死亡し、3人が負傷する。
02/03:
・コソヴォ自治州のコソヴスカ・ミトロヴィツァで、何者かがセルビア人経営のカフェに手榴弾を投げ込み、店にいたセルビア人ら15人が負傷。この事件でセルビア人住民500人が集まり、アルバニア系住民との間の衝突が起こり、7人が死亡。国際部隊・KFORも巻き込まれる。
02/07:
・ブラトヴィチ・ユーゴ連邦国防相が、ベオグラード市内のレストランで会食中に暗殺される。
・クロアチア大統領選の決選投票が実施され、スティペ・メシッチ人民党副党首が56.21%を獲得し、ブデャシャ社会自由党党首は43.79%にとどまり、メシッチ元首相が大統領に当選する。
02/13:
・コソヴォ自治州のコソヴスカ・ミトロヴィツァで、アルバニア系武装集団が、NATO軍を主体とする国際部隊・KFORの部隊に向けて発砲をはじめ、KFORも応戦。仏軍兵士2人が負傷、アルバニア系武装集団は1人が死亡し、5人が負傷する。
02/15:
・EUの欧州委員会は、先のスロヴェニア、ポーランド、チェコ、ハンガリー、エストニア、キプロスに加え、新たにブルガリア、ルーマニア、スロヴァキア、リトアニア、ラトビア、マルタ、など12ヵ国のEU加盟について交渉を開始する。
・米国防長官ウィリアム・コーエンと英国防相ジェフリー・フーンは、「スロヴァキアの軍需産業ならびに工業における協力の声明」に署名し、「この橋を渡ってアメリカ国防総省が、そのグローバル化戦略をヨーロッパに持ち込めるように」と語る。
02/17:
・セルビア社会党の党大会で、ミロシェヴィチ・ユーゴ連邦大統領が党首に再選される。ミロシェヴィチ党首は、「セルビア人住民が、国際社会が認知したアルバニア人のテロで脅かされている。我々ならば平和と治安、民族の平等を保障出来る」と演説。国際社会や野党勢力との対決の姿勢を鮮明にし、復興に全力をあげるよう指示。
02/18:
・クロアチア大統領選で、決選投票の末に選出されたスティペ・メシッチ元首相が大統領に正式就任する。
・国際社会との協調を公約するメシッチ・クロアチア大統領の就任は好意的に受け取られ、メシッチ大統領の就任式にはオルブライト米国務長官や欧州各国の元首や首脳が出席。
02/20:
・コソヴォ自治州のコソヴスカ・ミトロヴィツァは、川を挟んで北側がセルビア人、南側をアルバニア人がそれぞれ住み、衝突が繰り返される。
・NATO軍主導のコソヴォ平和維持部隊・KFORは2500人を動員し、セルビア人居住区を捜索してライフル銃や銃弾などの武器を押収。
02/21:
・コソヴォ自治州のコソヴスカ・ミトロヴィツァで、アルバニア系住民が国際社会の対応を批判して7万5000人のデモを行ない、イバル川の橋を渡って北側のセルビア人地区に入ろうとしたが、KFORのフランス部隊にに阻止される。
・ホルブルック米国連大使は国連本部でミトロヴィツァの事態について、「ユーゴスラヴィア連邦指導部が、混乱を誘発している」と記者団に語ったが、根拠は明らかにせず。
02/22:
・コソヴォ自治州のミトロヴィツァの事態についてフランス外務省報道官は、「混乱の責任を決めるには少し早すぎる。調査が必要だ」と述べ、「ユーゴ連邦指導部が混乱を誘発している」としたホルブルック米国連大使の発言を暗に批判する。
02/23:
・NATO軍は、コソヴォ自治州ミトロヴィツァでのアルバニア系住民とセルビア人住民との緊張が続いていることに対応し、コソヴォ駐留国際部隊の兵士2000人を派遣。
02/25:
・ユーゴ連邦当局は、コソヴォ自治州の独立武装闘争を続けているコソヴォ解放軍・KLAが、セルビア共和国南部のプレシェヴォやブヤノヴァツなどで境界線を越えて「過激な挑発を続けている」と述べる。この事態を受け、セルビア内務省は治安部隊の増強を図る。
02/26:
・セルビア共和国南部のブヤノヴァツ近郊で、パトロール中のセルビア警官隊が手投げ弾と自動小銃による攻撃を受け、1人が死亡、3人が負傷。アルバニア系住民1人も死亡。市中心部では、商店が閉鎖されるなど緊張が高まる。
02/27:
・北朝鮮の平壌放送によると、白南淳外相が訪朝中のユーゴ連邦のヨバノヴィチ外相に対し、「ユーゴスラヴィアとの友好関係は金正日総書記の特別な関心の中で強化発展している」と述べる。
02/29:
・セルビア共和国南部のブヤノヴァツで、ベオグラード駐在のアイルランド人職員1人がアルバニア系武装集団と見られる者たちに銃撃されて負傷。
・コソヴォ自治州北部の町スケンデライで、コソヴォに駐留する国際部隊・KFORのロシア兵がアルバニア系住民と見られる3人組に短銃で撃たれるが、負傷の程度は不明。
02/00:
・国連難民高等弁務官事務所・UNHCRおよび欧州安保協力機構・OSCEがまとめた報告書によると、コソヴォ自治州全体でセルビア人住民20万から25万人が州外に避難し、残っているのは十数万人のみという。
・コソヴォ自治州で、1月下旬からの1ヵ月で民族対立による事件が120件以上起き、少なくとも17人が死亡。
03/01:
・コソヴォ自治州の北部スケンデライで、アルバニア系住民と見られる3人組に銃撃されたKFORのロシア軍兵士が、出血多量のため死亡。
03/03:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYは、ボスニアのクロアチア人勢力軍のブラスキッチ元司令官に対し、「人道に反する罪」などで禁固45年の実刑判決を言い渡す。この時点で、判決が出されたのは8人。
03/04:
・セルビア南部のドブロシン村で、アルバニア系武装組織とセルビア警察の間で2時間以上にわたる銃撃戦が展開される。セルビア南部では、「プレシェヴォ・ブヤノヴァツ・メドベジャ解放軍・UCPBM」を名乗るアルバニア系武装組織が、セルビア警察官を襲撃する事件が相次ぐなど緊張が高まる。
・セルビア南部のプレシェヴォは人口3万5000人のうち9割がアルバニア系住民で、KLAの一部が州境の非武装地帯を越えて挑発攻撃をしている疑いが濃厚となる。一方、セルビア側も過激派対策に名を借り、アルバニア系住民の避難民の帰還を阻むなどの迫害行為を行なっている。
註;コソヴォ自治州とセルビア共和国との境界は、ユーゴ連邦軍とNATO軍との合意により、セルビア共和国側に5キロの幅で非武装地帯が定められている。この非武装地帯に「コソヴォ解放軍・KLA」が拠点を置き、勢力拡大を図っている。
03/07:
・コソヴォ自治州のミトロヴィツァで再び発砲事件があり、鎮圧に向かった国際部隊のフランス軍兵士16人を含む40人以上が負傷。
03/09:
・英ガーディアン紙は、昨年のNATO軍のユーゴ空爆で、ブリュッセルのNATO本部内の人物が空爆作戦の計画などをユーゴ当局に伝えていた、とのスパイ容疑を報じる。NATO軍は「ただの噂」と否定。
・「国連コソヴォ暫定行政支援機構・UNMIK」の難民帰還や食糧援助などの人道部門を担当するマクナマラ特別副代表は、このほど国連本部で記者会見をする。緊急の対応を必要とする救援活動は今年半ばまでに終え、その後は家庭の再建やインフラづくりなどの復興に重点を移す、との見通しを表明。
03/11:
・ユーゴスラヴィアのベオグラードのフリープレスの有力週刊誌「ヴレーメ」が、ミロシェヴィチ、カラジッチ、ムラディチの顔写真入りの手配書を掲載。
03/18:
・ユーゴスラヴィアの有力週刊誌「ヴレーメ」で、オルブライト米国務長官は、「セルビア人はなぜ街頭に出ないのか。なぜミロシェヴィチが彼らにやったことに不平を申し立てないのか。私たちはセルビア人民がそれに耐えていることが理解しがたい」と語る。
03/21:
・NATOのロバートソン事務総長は、ユーゴ空爆開始1周年にちなんだ報告書を発表し、混乱が続くコソヴォ自治州の情勢について、「このままでは国際社会の善意と支持を失う恐れがある」と警告。
・国連環境計画・UNEPは、NATO軍が昨年のコソヴォ紛争で劣化ウラン弾3万1000発を使用したことを確認したと発表し、地域住民の健康や環境への懸念を表明。米軍のA10攻撃機がユーゴ連邦軍の車輌攻撃に使用。NATOのアナン国連事務総長への書簡には、100波の出動で3万1000発およそ10トンが使われ、使用場所の地図が添えられている。
03/23:
・セルビア共和国公営テレビは、ユーゴ連邦軍がNATO軍の空爆を如何に効果的に防いだかを振り返る特別番組を放映。
・セルビア共和国政府は、独立系テレビ局の接収を進める。
03/24:
・EUはNATO空爆1周年のこの日、特別首脳会議の議長総括で「民主的なセルビア人勢力が欧州の一員に加わることが出来るよう、圧力をかけ続ける」との声明を出し、ミロシェヴィチ・ユーゴ大統領が権力の座にある限り制裁を続ける方針を確認。
・セルビア共和国のベオグラードで、空爆開始1周年を迎え政府系団体が集会やコンサートを開き、小中学校では空爆をテーマにした特別授業が行なわれる。政府系集会に参加した市民の顔には、疲労感が漂う。
・1年前のNATO軍によるユーゴ空爆前に、OSCEのコソヴォ停戦合意検証団の現地事務所長を務めていたカナダ陸軍の退役軍人ローランド・キースは、「私は平和主義者ではない。だが、当時のコソヴォは、『人道』理由で戦争を始めることが正当化できるほど酷い状況ではなかった。空爆は悲劇を止めるのではなく、逆に悪化させた」と語る。
04/04:
・セルビア共和国の野党各党は集会での演説者リストなどでもめていたが、今月14日にベオグラードで早期選挙の実施などを求める反政府集会を開くことで最終合意。
04/07:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYに逮捕されたボスニアのセルビア人共和国議会のモムチロ・クライシュニク元議長が初公判で、無罪を主張。
04/08:
・ボスニア・ヘルツェゴヴィナの地方選挙の投票が、OSCEの管理の下に実施される。
・スロヴェニア共和国の連立内閣は、議会がドルノウシェク首相が任命した8人の閣僚の承認案を否決したことで崩壊する。
04/13:
・オーストリアのスチュワート新駐ユーゴスラヴィア大使が、ベオグラードのミロシェヴィチ・ユーゴ連邦大統領を官邸に訪ね、信任状を提出。
04/14:
・セルビア共和国の野党勢力がベオグラードで反政府集会を開き、10万人が参加。野党各党の指導者は「ミロシェヴィチ大統領が国を私物化している」と非難。共和国議会選挙や地方選など、全選挙の早期実施や統一選挙名簿の作成などを確認。
・ユーゴ連邦政府側は、ベオグラードで対抗集会を開くなどの他、バスの貸し出しを禁止して地方の参加者を阻止。さらに、外国人記者の入国も拒否する。
04/18:
・セルビア共和国は、NATO軍の空爆中にユーゴ連邦軍兵士やセルビア警察官を襲撃したとして起訴したアルバニア系住民145人の裁判を、南部ニシュの地方裁判所で実施。
04/21:
・ロシア連邦議会は、新「軍事ドクトリン」を承認する。ロシアとその同盟国に対する侵略を撃退するために、ロシアの軍事力を行使することを正当化するもの。
04/00:
・ウエズレィ・クラークNATO欧州軍最高司令官は、ユーゴ・コソヴォ空爆で強硬姿勢をとり続けたことが忌避され、退任させられる。
05/03:
・セルビア共和国議会は、野党が欠席する中でユーゴ連邦上院のセルビア人代表の改選を行ない、ミロシェヴィチ大統領率いる与党連合から20人全員を選出。連邦議会は定数40人で、セルビア共和国とモンテネグロ共和国が20人ずつ選出する規定になっている。この時の選出で、ミロシェヴィチ派の議員はモンテネグロ選出の7人と合わせると27人となり多数派を形成する。与党連合は、連邦下院でも138議席中100議席を占め、憲法改正に必要な3分の2の議席を上下両院で獲得。
・スロヴェニア共和国の下院議会、経済学者のアンドレイ・バユクの新首相就任を賛成46,反対44で承認。
05/06:
・コソヴォ自治州の中部グラチャニツァで、アルバニア系住民の車からセルビア人住民に手榴弾が投げられ、6人が負傷。この事件に抗議するセルビア人住民が国際部隊・KFORの兵舎に殺到したため、KFORが発砲し、住民2人が負傷。
05/13:
・セルビア共和国ヴォイヴォディナ自治州の州都ノヴィ・サドで、農業展示会を視察中の与党セルビア社会党支部長のペロシェヴィチ知事が銃撃されて死亡。容疑者は即刻逮捕されたが、背後関係は不明。
05/17:
・セルビア共和国政府は、ベオグラード唯一の野党系テレビ局「スタジオB」を接収し、別の経営陣を任命して放送を開始する。政府当局側は、「合法的な政権の転覆を呼びかけた」と接収の理由の声明を放送。
05/22:
・セルビア共和国の地方裁判所はアルバニア系住民143人に対し、NATO軍の空爆中にセルビア共和国コソヴォ自治州で連邦軍兵士らを襲って死傷させたとして、7年から13年の実刑判決を言い渡す。
05/25:
・クロアチア共和国は、NATOの「平和のためのパートナーシップ・PFP」協定に調印し、PFP26番目の参加国となる。旧ユーゴスラヴィアでは、スロヴェニア、マケドニアに続き3ヵ国目。
05/31:
・ユーゴ連邦政府は、ジャーナリストのための国際会議を開催する。アメリカのジャーナリストは一人も参加せず。
・NATOの経済制裁を継続中、コソヴォ自治州ではマグドナルド・ハンバーガーの店が営業を開始する。
・コソヴォ自治州で、通りがかりの車からセルビア人住民に銃撃があり、3人が死亡。
06/02:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYデル・ポンテ首席検察官はNATO軍の空爆の犯罪性について、「調査したが、国際法上の責任を問う根拠はない」と国連安保理で報告。
・コソヴォ自治州の州都プリシュティナ郊外で、新に埋められた地雷にセルビア人住民の車が接触し、子ども2人を含む5人が死亡。
06/06:
・コソヴォ自治州のグラツァニツァで、車から投げられた手榴弾でセルビア人住民6人が負傷。セルビア人住民が、この事件に対する抗議のためにKFORに殺到したために、KFOR側が発砲して住民2人が負傷。
・ユーゴ国営のタンユグ通信は、中国の李鵬常務委員長が11日からユーゴスラヴィアを訪問すると、伝える。
・ボスニア・ヘルツェゴヴィナのムスリム人勢力最高指導者のイゼトベゴヴィチ大統領(幹部会議長)は、国営テレビで今週の幹部会代表選には出馬せずに引退すると表明。
06/07:
・英国議会の下院外交委員会は、NATO軍のユーゴ空爆について報告をまとめ、「国連決議を経ず、国際法に違反にした疑いがある」と指摘する一方、「ミロシェヴィチ政権によるアルバニア系住民への厳しい弾圧を考慮すれば、モラル上正当化される」と容認する見方を示す。
・セルビア共和国コソヴォ自治州に展開する英国部隊の装備について、3割が故障して使い物にならず、兵士は氷点下の厳冬にテントの中で過ごさなければならず、簡易トイレやシャワー施設が不足するなど、粗末なものであることを英国会計検査院が指摘。
・ユーゴ連邦のブラトヴィチ首相は記者会見で、「UNMIKなどはセルビア人に対するテロ行為を容認している。コソヴォ自治州で活動する国連コソヴォ暫定行政支援機構・UNMIKの決定の全面破棄とクシュネル特別代表の解任、およびNATO軍主体の国際部隊・KFORの撤退などを国連安保理に正式に要請する方針」を表明。この背景には国際管理下にあるコソヴォで、アルバニア系民兵によるセルビア人殺害が目立ち、抗議する住民にKFOR側が発砲する事件が起きていることがある。
06/10:
・朝日新聞によると、ユーゴスラヴィア空爆停止から1年を経て、コソヴォ自治州ではセルビア人やロマ人など少数民族が600から1000人が殺されたという。00年1月から5月末までにも、殺人26件、放火105件が発生している。
・国連安保理決議1244は、UNMIKがコソヴォ自治州の復興を担うこと、および「自治と住民統治の促進」を求めている。今年初めに行政の権限を住民側に移管するプロセスとして、住民代表と構成する「暫定行政評議会・IAC」を新設し、省庁にあたる局の責任者を双方が出す仕組みを作成する。この方針に対し、アルバニア系住民は「UNMIKが決めた方針を承認するだけ」と不満を募らせる。セルビア人住民は、少数民族に対する治安対策が講じられるまで「暫定行政評議会・IAC」への協力を拒絶する方針を決定する。そのため、行政移管のプロセスは宙に浮くことになる。
・ラムゼイ・クラーク米元司法長官の提唱による「米国・NATOのユーゴ市民に対する戦争犯罪を裁く国際法廷」の最終審理が、IAC・世界の市民などによりニューヨークで開催される。NATO諸国の首脳を国連憲章、ジュネーブ条約、国際慣習法違反など19の訴因で裁き、すべてについて有罪の判断を示した上で提言を示す。
註:ラムゼイ・クラークの市民法廷は、ドイツ、イタリア、オーストリア、ロシア、ウクライナ、ユーゴ連邦、ギリシアなど世界14ヵ国・24都市で公聴会が開催された。
06/11:
・モンテネグロ共和国は、首都ボドゴリツァ市議選などの地方選挙を実施。ボドゴリツァではジュカノヴィチ大統領派が首都の市議会で過半数を確保し、他の自治体ではプラトヴィチ前大統領派のユーゴ連邦維持派が勝利する。
06/12:
・中国の李鵬全人代常務委員長はユーゴ連邦のベオグラードを訪問し、ミロシェヴィチ・ユーゴ連邦大統領と会談。両者はNATO軍によるユーゴ空爆は、「一極集中の世界支配を押し付ける行為」と強く非難。「セルビア人住民は虐殺されており、国連安保理決議は守られていない」と述べ、NATO軍主導の国際部隊の撤退を求め、ユーゴ連邦セルビア治安部隊の再展開を求めることで一致する共同声明を発表。
06/15:
・セルビア共和国の野党第1党「セルビア再生運動」のドラシュコヴィチ党首が、モンテネグロ共和国の別荘に滞在中狙撃され、軽傷を負う。
06/23:
・米国防総省は、中国の軍事戦略についての報告書を公表。それによると、中国は昨年のNATO軍のユーゴスラヴィア空爆について、台湾海峡やシナ海での紛争に対する米国の軍事介入の「危険な先例」になるとの危機感を抱いており、軍の近代化やロシアとの「戦略的協力」に努めている、と分析。
07/01:
・セルビア共和国コソヴォ自治州の中部スケンデライ(スルヴィツァ)では、国連の井上健職員が暫定的に市長を務める。市長は煉瓦工場の再建計画を始動させることを表明し、日本政府も緊急支援を重点的に行なう方針。
07/06:
・ユーゴ連邦上下院は、ミロシェヴィチ政権が生き残りのための連邦大統領の再選を可能にする、直接選挙による選出とする9項目の憲法改定案をそれぞれ可決。改憲ではセルビア、モンテネグロ両共和国に20議席ずつ配分されていた連邦上院も直接選挙に改定する。この議決では、モンテネグロ共和国の新セルビア社会人民党の上院議員だけが極秘にベオグラード入りし、賛成投票を投じる。
07/07:
・モンテネグロ共和国政府は閣議で、ユーゴ連邦議会の改憲について、無効を求める宣言を発表。
07/08:
・モンテネグロ共和国議会は、「国民の大多数の意志に反し、違法な連邦議会で決められた改憲は承認出来ない」との「無効」決議を採択。
07/15:
・セルビア共和国コソヴォ自治州の地方選挙に向けた住民登録に対し、セルビア人住民が15日の締め切りまでにほとんど登録しないため、19日までに登録が延期される。コソヴォ自治州のセルビア人住民は、避難した15万人がほとんど帰還せず、またコソヴォに残っている10万人の中からは数百人しか住民登録に応じていない。選挙を管理するOSCEとUNMIKは10月に予定されている地方選挙を、アルバニア系住民100万人のみで選挙を実施せざるを得ないと考え始める。
07/18:
・プーチン・ロ大統領は北京を訪問し、江沢民中国国家主席と会談。「北京宣言」に調印。北京宣言は「対外政策や国防政策等で協力を強化していくこと」を確認する。
07/24:
・ユーゴ連邦の上下両院は、連邦大統領と連邦議会選挙に関する選挙法を承認。
07/27:
・ユーゴ国営のタンユグ通信は、ユーゴ連邦大統領選、ユーゴ連邦議会選、セルビア共和国の地方選が9月24日に実施される、と報じる。
・ボスニアのOHRのヴォルフガング・ペトリッチ上級代表は、「ボスニア連邦」のアフメド・スマイッチ連邦農業・推理・森林相およびラミズ・ジャフェロヴィチ連邦税務局長を解任する。
07/28:
・ミロシェヴィチ・ユーゴ連邦大統領は、9月の連邦大統領選挙に出馬すると表明。
07/29:
・ユーゴ連邦の主要野党15党は、9月に行なわれるユーゴ連邦大統領選や連邦議会選に参加し、統一候補を擁立することで合意。野党はモンテネグロ共和国指導部と協議した後に、ミロシェヴィチ大統領に対抗する候補者を決める方針。
07/30:
・ボスニアのムスリム人勢力の民主行動党は、スマイッチ・ボスニア連邦農業・水利・森林相およびラミズ・ジャフェロヴィチ・ボスニア連邦税務局長が解任されたことに対し、「有権者の意思を無視した行為である。選挙が近づくにつれて、国際社会は野党支持を鮮明にしつつある」との抗議声明を出す。
註;OHRは当初は各機関の調整役を主任務としていたが、「ボン・パワー」と言われる政治宣言を1997年12月に採択して以来、法的規定がないにもかかわらず、権限の解釈を「和平合意履行」に求めて拡大行使した。この時点で解任されたボスニア・ヘルツェゴビヴィナの公職者は46人に及ぶ。最高位者は「スルプスカ共和国」の大統領である。OHR上級事務所顧問の国際法学者クリストファー・ハーランは、「解任の正当性、手続きの透明性、公平性などの面で、人権および基本的自由の保護に関する欧州人権条約および市民的・政治的権利に関する国際規約14条に違反する」と指摘している。
08/03:
・ユーゴ連邦軍は、コソヴォ自治州に近いモンテネグロ共和国の町で、外国人4人をスパイ容疑で逮捕。軍当局は、「武装し、爆発物を持っていた」と発表。
・欧州安保協力機構・OSCEは、ユーゴ連邦軍が発表した名前からコソヴォの警察官養成学校で働くイギリス人2人と、援助機関のカナダ人2人と確認。イギリス人は休暇中で、武器は持っていなかった発表。
08/06:
・ユーゴ連邦の最大野党「セルビア再生運動」は、9月の大統領選挙の候補者としてミハイロヴィチ・ベオグラード市長の擁立を正式に決定。ミハイロヴィチ市長は、第2次大戦中に王党派の「チェトニク」を率いたドラジャ・ミハイロヴィチ将軍の孫。
08/07:
・ユーゴ連邦の15の野党は、セルビア民主党のコシュトニツァ党首を統一候補に擁立。
・セルビア急進党は、副首相を務める副党首を候補に決める。
・OHRのペトリッチ上級代表は、ボスニアの両院が「大統領評議会欠員補充に関する法」を可決した法を、強制修正させ
る。
・イゼトベゴヴィチ・ボスニア幹部会議長は、法の強制修正を指示したOHRを激しく批判する。
08/11:
・ロシア政府は安全保障会議を開き、2015年までのミサイルの装備のあり方について決める。
08/14:
・コソヴォに進駐したNATO軍は、ミトロヴィツァ近郊のズヴェツァンにある鉛精錬所を強制接収する。理由は大気汚染管理が杜撰であるというもの。さらに、ズヴェツァンのラジオS局を閉鎖し、設備を押収。鉛精錬所のあるトレプカ鉱山は、鉛、カドミウム、金、銀など豊かな鉱脈がある地区である。鉱山で働く労働者は全て職場を奪われることとなる。
・BBCラジオが、「NATO軍のユーゴ空爆で英軍が投下した爆弾のうち、攻撃目標に到達したのは40%だった」。さらに、対空砲火を避けるために高々度から爆撃したために、「誤爆や市民の犠牲は当初の予想より多くなった」と報じる。
08/17:
・ユーゴ連邦の大統領候補セルビア民主党のコシュトニツァ党首は朝日新聞との会見で、「国民は戦争や経済制裁にうんざりしている。暮らしは苦しくなる一方だが、選挙が変革の好機と見る人も増えており、政治参加の意欲が芽生えてきた。ユーゴスラヴィアには新しいタイプの指導者が必要だ。ミロシェヴィチ大統領は何か問題を引き起こすことで生き残りを図るのが特徴だ。彼が権力の座に留まることは、ユーゴスラヴィアの孤立化がさらに深まることを意味する」と批判。コシュトニツァ党首は対外関係について、NATO軍の空爆で悪化した欧州諸国との関係の正常化を主張。米国との関係については、「関係修復は簡単ではない」と不信感を表明。
08/18:
・コソヴォ自治州の州都プリシュティナの中心街で爆弾テロがあり、セルビア共和国政府事務所などが入っているOSCE管理のビルが大破し、数人が軽傷を負う。コソヴォ自治州では10月の選挙を前にして、穏健派アルバニア系政治家をも標的にしたテロ行為が相次ぐ。
08/19:
・朝日新聞によると、旧ソ連諸国、東欧、バルカン諸国から年間20万人の女性が人身売買の被害を受けている、という。コソヴォ自治州では国際部隊・KFORの外国兵が顧客になっている。
08/29:
・セルビア共和国の司法当局は、NATO軍によるユーゴスラヴィア空爆に関してクリントン米大統領やソラナNATO前事務総長ら欧米の指導者14人を、ミロシェヴィチ大統領の暗殺未遂や一般市民に対する戦争犯罪などで告発。
08/31:
・OHRのペトリッチ上級代表は、スルプスカ共和国議会が採択した「財産返還法」を廃案とするよう指示。
・ジョキッチ・スルプスカ共和国議長は、「OHRの上級代表が議会が採択した法を無効にするのは民主主義の機能を損なう行為」と批判。
08/00:
・コソヴォの国際部隊・KFORが昨年6月からこの4月までにコソヴォ自治州で押収した武器は、ライフル・自動小銃1万3000丁、短銃2500丁、機関銃や迫撃砲など1500基。この内スクラップとして破壊した兵器は、3800丁に過ぎず。
・コソヴォ解放軍・KLAには、アルバニア政変の際、数万丁の中国製カラシニコフ銃が流れ込んだと見られている。
・セルビアの難民支援組織「古いセルビア」が設立され、セルビアに流れ込んだ100万人の難民の支援を始める。
・米国務省は、ユーゴ連邦大統領選挙で反ミロシェヴィチのセルビア民主連合に資金を投入。
09/05:
・国連およびNATOは、ユーゴ連邦の大統領選と議会選について「選挙運営には一切タッチしない」との方針を表明。
09/07:
・クリントン米大統領とプーチン露大統領は、ミレニアム・サミットでモンテネグロ情勢について意見を交換し、両者はユーゴ連邦政府のモンテネグロへの軍事介入の可能性について「深い憂慮」を表明。
09/11:
・NATO軍はユーゴ連邦大統領選に備え、コソヴォ自治州の国際部隊を現在の4万人に加え2400人を増派すると発
表。
09/14:
・ユーゴ連邦大統領選の野党候補コシュトニツァが、遊説先のコソヴォ自治州のミトロヴィツァで、ミロシェヴィチ大統領派と見られるおよそ100人に車を襲撃され、コシュトニツァは顔に軽い怪我を負う。それでもコシュトニツァは演説を行ない、支持を広める。
09/15:
・ユーゴ連邦モンテネグロ共和国のドラギシャ・ブルザン副首相は、24日の連邦大統領・議会選でミロシェヴィチがユーゴ大統領に再選されれば、「今年末までに独立の是非を問う国民投票を行なう可能性もある」と語る。
・ユーゴ連邦の野党「市民同盟」のスビラノヴィチ党首が、警察に一時拘束される。
09/18:
・EUはユーゴスラヴィアの市民に対し、ユーゴ連邦の政権交替が実現すれば経済制裁を解除する、と呼びかける声
明を発表。
09/20:
・ミロシェヴィチ・ユーゴ連邦大統領はモンテネグロ共和国を訪れ、出迎えた約1万5000人の支持者らを前に、「あなた方の利益はセルビアとともに生きることだ」と訴える。世論調査によると、コシュトニツァ候補の支持率は40%で、ミロシェヴィチ現大統領の支持率は30%程度に低迷。
09/21:
・オルブライト米国務長官はユーゴ連邦大統領選挙について、「ミロシェヴィチは、選挙に勝つためには手段を選ばないだろう。票の不正操作による勝利宣言をしても認めない。注意深く監視していく」と警告。
・ベオグラード地裁は、ユーゴスラヴィア空爆の責任についてクリントン米大統領ら欧米の指導者14人に、懲役20年の有罪判決を言い渡す。
09/22:
・クロアチア共和国のメシッチ大統領は、ユーゴ連邦大統領選挙後に予想される混乱に備え、クロアチア共和国軍に対し警戒態勢に入るよう指示。
・ミロシェヴィチ・ユーゴ大統領は、「植民地への道を歩むか、それとも自由な国を選ぶかという国民投票の機会だ」と訴える。
・ユーゴ連邦軍のパブコヴィチ参謀長は、「選挙当日に、外国の武装勢力が混乱を引き起こそうと計画していることを知っている。もしユーゴスラヴィアに介入しようとしたら、黙ってはいない」と述べる。
・NATOのロバートソン事務総長(英)はユーゴ連邦の大統領選挙について、「重要なことは自由で公正な選挙を認めることだ」と述べ、ミロシェヴィチ政権による選挙操作の可能性に懸念を表明。
09/24:
・ユーゴ連邦大統領選と連邦議会選、およびセルビア地方選の投票が行なわれる。有権者数は約786万人。連邦大統領選には5人が立候補者しているが、事実上ミロシェヴィチとコシュトニツァの一騎打ちになると見られる。
・モンテネグロ共和国のジュカノヴィチ大統領は選挙ボイコットを呼びかけたが、親セルビアの野党側が投票所を設けて投票を挙行。ユーゴ連邦選管は、モンテネグロの投票所の秩序維持を連邦軍憲兵隊に依頼。
・ユーゴ連邦大統領選と投票締め切り後、若者を中心とした野党支持者がベオグラードの共和国広場に集まりはじめ、やがて数万人となる。与党は、同じ共和国広場で音楽集会を開くが、観客は1000人程度。両支持者の間に、警備の警官隊が割って入る。
09/25:
・野党のコシュトニッツァ側は、独自集計に基づき勝利を宣言。野党連合のジンジッチ選挙対策本部長は、「これまでの開票でコシュトニツァ候補は得票率57%、ミロシェヴィチ側は33%」との集計結果を発表。
・ユーゴ連邦の与党陣営であるシャイノヴィチ・セルビア共和国副大統領は、独自に集計した94万票の開票結果として、「ミロシェヴィチが44%で、コシュトニツァは41%」と発表。
・ユーゴスラヴィアの連邦選挙管理委員会は、「選挙は公正だった」との見解を発表したが、開票結果については発表せ
ず。
・ユーゴスラヴィア連邦大統領選挙で、ミロシェヴィチの敗北は確実となる。
・ベオグラードの共和国広場で野党の「勝利」を祝う集会が開かれ、反体制派歌手ジョルジェ・バラシェヴィチが登場して大合唱となる。セルビア各地で、野党の勝利集会が催される。
・ユーゴ連邦大統領選でのモンテネグロ共和国での投票率は、ジュカノヴィチ大統領がボイコットを呼びかける中、24~25%に留まる模様。コソヴォ自治州では、アルバニア系住民がボイコットを呼びかける中でセルビア人のみの投票が行なわれ、およそ4万5000人程度が投票。
・モンテネグロの独立志向の強い日刊紙「ビエスティ」は、「ミロシェヴィチはもう終わり」との見出しを掲げる。
・ロシアのイワノフ外相はユーゴ連邦大統領選挙について、「国際監視団からの情報によると、重大な違反はなかった」と語る。
・ドイツのフィッシャー外相は、「コシュトニツァ候補が、第1回投票で既に勝利を収めたようだ」と述べる。
・シュレーダー独首相はプーチン露大統領との会談後の共同記者会見で、「ユーゴスラヴィア国民は民主主義への変化を選択したようだ」と語る。プーチン露大統領は、概ね同意見だと述べるに留まる。
・EU議長国のフランスは、「ミロシェヴィチ大統領が勝利宣言を試みても、不正な宣言であることは明白だ。70%の投票率は、現政権による圧力や脅迫にもかかわらず、市民は自分たちの意見を表明した」とするEU声明を発表。
・OSCE議長国のオーストリアのフェレロワルトナー外相は、「入手出来るあらゆる情報は、コシュトニツァ候補の優勢を示している」と述べる。
・コーエン米国防長官は、「これまでの開票情報を見ると、明らかにユーゴスラヴィア国民はミロシェヴィチ大統領の退陣を望んでいる」と述べる。
・バウチャー米国務省報道官は、「現政権が敗北を受け入れて政権交代が実現すれば、経済制裁を解除する」との見通しを確認。
09/26:
・ミロシェヴィチ大統領の実兄に当たるミロシェヴィチ駐露ユーゴ大使は、ラジオ番組「モスクワのこだま」に出演し、「セルビアと連邦を組むモンテネグロの連邦脱退の問題は、モンテネグロの住民自身が国民投票で決めるべきだ」と語る。
・フランスのペドリヌ外相はユーゴ連邦大統領選挙について、「ミロシェヴィチ大統領が敗北し、コシュトニツァ候補が勝ったのは明らかだ。EU議長国として、ユーゴスラヴィアに対する制裁を早期解除することを各国に提案する」との声明を発表。
・ユーゴ連邦選挙管理委員会は、「選挙は公正だった」と述べ、1万500ヵ所の投票所のうち1万153ヵ所の開票結果に基づき、投票率が64.16%でコシュトニツァ側48.22%、ミロシェヴィチ側40.23%。と発表。選管は過半数に達した候補がいなかったため、2週間以内に決選投票を行なうと発表。
・コシュトニツァ・ユーゴ連邦大統領候補は、「与党は取引をしようとしているが、当然、このような申し出は断らねばならない」と譲歩するつもりがないことを明言。
・ユーゴ連邦の野党連合は、連邦選管の発表を拒否。野党票がブレリーナにある再生紙工場などに運び込まれ、廃棄処分にかけられていることが発見される。
・クリントン米大統領は、「勇敢な国民の投票の結果、ミロシェヴィチは政権の正統性を支えてきた最後の拠り所を失ったようだ。国民の意思が尊重されるようなら、ユーゴスラヴィアに対する経済制裁を解除する手続きに入る」と語る。
09/27:
・ユーゴ連邦セルビア共和国のベオグラードで大規模な野党陣営の集会が開かれ、20万人が参加。野党連合はこの集会でコシュトニツァ候補が過半数の52.54%を獲得し、ミロシェヴィチの35.01%に大差を付けて勝利したと発表。北部ノビサドや南部ピロトなど、10数都市でも野党陣営の「勝利」集会が開かれる。
・ユーゴ連邦の野党陣営は記者会見で、決選投票には参加しないことを確認。ジンジッチ選挙対策本部長は、「コシュトニツァ候補の大統領就任を、10月はじめにも実現する方向で検討している」と述べる。
・ユーゴ連邦の選管から、常任委員2人が追放される。
・ミロシェヴィチ政権の資金源となっていた、セルビアの基幹産業の国営企業集団ザスタバのペコ社長が辞任。
・ユーゴ連邦軍のパブコヴィチ参謀長は、「ユーゴスラヴィアの政治危機がどう展開しようと、軍は決して市民に銃を向けない」と言明。
・河野洋平日外相は、EUのソラナ共通外交上級代表とユーゴスラヴィア情勢について電話で会談し、「ユーゴスラヴィア国民は新しい指導者を求めていると考える」と述べ、コシュトニツァ候補を支持する考えを伝える。
・ロシアのイワノフ外相は、「ユーゴスラヴィア国民は、内外からあらゆる圧力なしに意思表示する完全な自由を持っている。政情の不安定化は、ユーゴ連邦の領土保全や国際社会での復権を望まない勢力を利するだけ」と述べる。
・欧州委員会のプロディ委員長は、「コシュトニツァの勝利を祝福する。認めていないのはミロシェヴィチだけだ。セルビア市民は再び欧州の家族となるために投票した」との声明を発表。
・クック英外相は、「決選投票は時間の無駄だ」と断言。
・OSCEは、ユーゴ選挙管理委員会発表の暫定開票結果について、「極めて疑わしい」との声明を発表。
09/28:
・ユーゴ連邦選挙管理委員会は最終開票結果について、「過半数を制した候補はいない」とし、10月8日の決選投票の実施を正式に発表。
・セルビア急進党シェシェリ党首は、大統領選についてコシュトニッツァ候補の勝利を確認すると共に、選挙期間中に警察を政治的に利用しようとした疑いのあるセルビア内相の解任を要求。
・セルビア正教会のパブレ総主教は、コシュトニツァに当選祝福の手紙を送り、野党支持の立場を鮮明にする。
・ユーゴ連邦大統領選挙をボイコットしたモンテネグロのブヤノヴィチ首相は記者会見で、野党連合のコシュトニツァ候補の勝利に歓迎の意を表明。
・ユーゴ連邦大統領選のコシュトニツァ候補の選挙対策本部長を務めるジンジッチは、ノヴィ・サドのラジオのインタビューで、「ゼネストを呼びかける」考えを述べ、「親は子どもを通学させず、劇場も映画館も閉じてほしい。みんな街頭へ出て、大統領が辞任するまで留まって貰いたい」と呼びかける。
・クリントン米大統領は、「ミロシェヴィチが国民の求めに応じて退陣し、平和で民主的に政権を移行させる時がきた」と声明を発表。
・ペドリヌ仏外相はロシアを訪れ、プーチン露大統領と会談。会談後の記者会見で、「ロシア側からはミロシェヴィチ政権への同情は全くなかった。仏露双方の立場は完全に同じではないが、基本的には一致している」と述べる。
・ロシアのモスクワ政治研究所のマルコフ所長は、「ミロシェヴィチが敗北を認め、身の安全が保証された上で退陣するのが、ロシア、ユーゴスラヴィア、西側にとって最善のシナリオだ」と語る。
09/29:
・セルビア共和国の国営放送は、連邦議会選挙の結果を放送。下院(定数138議席)はセルビア社会党・ユーゴ左翼連合が46議席を占め、モンテネグロの親セルビア派の28議席を加えれば74議席になり過半数を制したことになる。上院では、40議席のうち社会人民党を加え与党が26議席と多数を占める、と報じる。
・ユーゴスラヴィアの野党連合は首都ベオグラード中心部で街頭集会を開き、コシュトニツァ候補の声明を代読。さらに、同候補の勝利を確認するため、24日の大統領選挙の投票集計のやり直しを求めていく方針を示す。野党の街頭集会は主要都市ニシュでも開かれ、公共交通機関の運転手がストを打ったため、市内の交通が麻痺。抗議の動きは、全国に広がりを見せる。
・ユーゴスラヴィアの野党連合は10月2日からのゼネストを呼びかけ、また野党連合の支持者が「不服従運動」も呼びかけ、ラジオ局の放送中止、映画館の休業、タクシードライバーの道路封鎖など、全国に広がる。
・セルビアのコルバラ鉱山では、労働者7500人が坑道に立てこもり、警官隊と対峙する。
・ジュカノヴィチ・モンテネグロ共和国大統領は、「連邦政府が独裁的であれ、民主的であれ、反モンテネグロ政策を行なうなら、我々は独立に向けての国民投票を実施する」と述べる。
09/30:
・モンテネグロ共和国の社会人民党・SNPのジジッチ副党首は地元紙に対し、ユーゴ連邦選管が示している大統領選などの開票結果を、「受け入れるべきでない」と語る。
・セルビアのパンチェヴォの石油精製所およびセヴォイノ銅製錬所の労働者が、ゼネストに参加すると表明。
・ミロシェヴィチ・ユーゴ連邦大統領は連邦軍士官学校で、「我々はメディア情報や、政治的手段による外圧には屈しない」と演説。
・ユーゴスラヴィアの野党連合のベオグラード集会は、1万人規模しか集まらず、次第に減少傾向を見せる。
・クリントン米大統領とオルブライト米国務長官は、それぞれロシアのプーチン大統領とイワノフ外相にユーゴ連邦大統領選の混乱の政治的解決に向け、ロシアの積極的仲介への期待を表明。
10/01:
・セルビアのコシュトラ鉱山で、労働者4500人がミロシェヴィチ・ユーゴ大統領の退陣を求めてゼネストに参加し、坑道に立てこもる。マイダンペック銅山の3000人の労働者も、ゼネスト参加を決定。ベオグラードの交通労働者が、職場を放棄。
10/02:
・ユーゴ連邦大統領選挙で勝利を主張する野党連合、ミロシェヴィチ・ユーゴ連邦大統領の退陣を求めてゼネストに突入。
・ユーゴ連邦大統領選のコシュトニツァ候補は、「革命という言葉は使いたくないが、これは平和的、民主的、非暴力の革命だ」と語り、決選投票に臨むことは「それは不正を認めること」になると否定。米ロの対応については、「米国は、戦犯問題をことさらに選挙と結びつけることで、却ってミロシェヴィチを助けている。ロシアもちぐはぐな対応しか取っていない」と民族主義者としての素顔を見せる。
・ユーゴ連邦大統領選のコシュトニツァ候補は、この後コルバラ炭坑を訪問。
・モンテネグロ共和国の民主社会党の幹部ジュリシッチは、モンテネグロの社会人民党・SNPに対し、ユーゴ連邦大統領選の決戦投票への不参加を呼びかける。
・プーチン露大統領は、「ミロシェヴィチ・ユーゴ大統領と野党勢力のコシュトニツァ候補の双方と、近くモスクワで会う用意がある」との声明を発表。プーチン露大統領はシラク仏大統領とユーゴスラヴィア問題について電話で協議。
・ミロシェヴィチ駐露ユーゴ大使は、「決選投票の実施が決められている以上、今の段階でロシアの調停は必要ない」と述べる。
・セルビア共和国は、マルコヴィチ国家保安局長とセルビア特別警察隊のトライコヴィチ司令官の2人を解任する。
・EU議長国のシラク仏大統領はオルブライト米国務長官と会談し、ユーゴ連邦大統領選について、「フランスはコシュトニツァ候補の勝利を認める。ミロシェヴィチ・ユーゴ連邦大統領が退陣すれば直ちに制裁解除に踏み切る」と改めて強調。
・オルブライト米国務長官は、プーチン露大統領が調停に乗り出す構えを見せたことについて、「コシュトニツァ候補の勝利を完全に承認することが大切だ。ミロシェヴィチ・ユーゴ連邦大統領は戦争犯罪人だ」とロシアを牽制。
10/03:
・ミロシェヴィチ・ユーゴ連邦大統領はゼネストを実行した野党連合に対し、「NATOなど外国勢力の陰謀に加担」と批判。さらに、「誤った判断と危険な選択の結果がどうなるか、私の警告が遅くなりすぎない内に自覚してほしい。NATOが援助している破壊活動が何をもたらすか、良心に基づいて警告するのが私の義務」と強調。
・セルビアのジンジッチ民主党党首は、「あからさまな脅迫で、市民を侮辱するものだ。抗議の動きは野火のように広がっている」と反発。
・ユーゴスラヴィアの野党連合がゼネストを呼びかけた独立系労組の有力指導者や、スト参加者11人が逮捕される。
・セルビアの首都ベオグラード市内は自発的な数10万人のデモで埋め尽くされ、さらに市民数万人が国会議事堂に押し掛ける。
・セルビアのベオグラードでは、発電機の燃料が不足して地域によって一定時間停電している。また、近郊のパンチェヴォや中部の町でも一部が停電となる。
・セルビア共和国・ヴォイヴォディナ自治州の州都ノヴィ゛・サドでは、放送局を実力占拠しようとした野党連合支持者らが、警官隊に阻止される。
・プーチン露大統領は、アナン事務総長とユーゴ問題で電話協議。
10/04:
・ユーゴ連邦憲法裁判所は、野党連合から投票結果見直し請求が出ていた件に関し、「選挙の一部を無効とする」との判断を示す。
・セルビアのコルバラ炭鉱で、ゼネストの応援に駆けつけた市民2万人が機動隊の封鎖線を突破したが、衝突には至らず。
・ユーゴスラヴィアの独立系のBETA通信によると、この日ユーゴスラヴィア全土で20万人が抗議行動に参加。
・ユーゴ連邦大統領選のコシュトニツァ候補は、プーチン露大統領が調停のためにモスクワに招聘するとの提案に対し、ゼネストや抗議行動に取り組んでいる最中に母国を離れるのは無責任だ」と述べ、近い内にモスクワへ行くつもりのないことを表明。
10/05:
・セルビア共和国のベオグラードに、チャチャック市など全国から動員された市民数十万人が集結し、連邦議事堂前で大規模な集会を開き、学生数人が議事堂に突入する。この学生集団のデモの中には、「オトポール・抵抗」のプラカードを掲げた者が多数含まれる。チャチャック市は、第2次大戦中の王党派「チュトニク」が支配的な地域。
・国営セルビア・ラジオ・テレビ公社・RTSの本社が群衆に取り囲まれて放火され、セルビアのベオグラードは騒乱状態に陥る。警察隊が催涙弾などを発射して鎮圧に乗り出したが、ユーゴ連邦軍は不介入の方針。野党連合は国政を掌握したと宣言し、連邦議会を開くため、議員に招集をかける。
・コシュトニツァ・ユーゴ大統領候補が議事堂のテラスに姿を現し、「今日我々は歴史を作っている。新政権樹立にかかる」と宣言。その後、コシュトニツァはセルビア共和国国営テレビに、「新大統領」として出演し、「今日、選挙によって政権が交代するという新たな時代が始まった」と述べ、「1年半以内に、公正で自由な連邦議会選挙を実施する。我が国が真に民主的な国になったことを示せたため、欧州連合・EUの上層部から、早ければ9日にも制裁解除をするとの言質を取っている」と語り、旧ユーゴ国際戦犯法廷については、「国際法廷は極めて政治的な場で、米国の法廷だ」と改めて「協力しない」との考えを示す。
・コシュトニツァ・ユーゴ連邦次期大統領候補はペドリヌ仏外相と電話で会談し、「6日に連邦議会を招集する」と伝える。
・セルビアの警察隊は主要な道路などを封鎖。連邦議事堂正面で機動隊と市民が対峙する中、1歳11ヵ月の男の子レカ君が、機動隊の方に駆け寄り警察犬と戯れ、緊迫した空気を緩める。
・ユーゴ連邦軍のペリシッチ前参謀総長も野党連合側に立ち、軍との折衝に関わる。
・ユーゴ連邦の野党連合側は、軍と警察から「不介入」の言質を取った模様。
・ユーゴ連邦裁判所は、9月24日の大統領選を無効とし、「大統領選を改めて行なう」と決定。
・ユーゴ政権の体制側の広報誌の役割を果たしてきた「ポリティカ」がこの日号外を出し、編集方針を「真実に基づくジャーナリズムの原則に従い、これまでとは異なり客観的な報道に努力」するとの宣言を掲げ、「コシュトニツァ・ユーゴ連邦大統領が全国演説―セルビア民主主義の道へ」との記事を掲載。
・EUは、ユーゴ連邦裁判所の大統領選無効判断について、「またしても野党連合から勝利を盗もうとする試みにすぎない。EUはセルビアの人々が示した意思をこれまで以上に支持し、コシュトニツァら野党側指導者に敬意を表する」との声明を出す。
・クリントン米大統領は、ユーゴスラヴィアの民主化と自由を求めるユーゴ国民を支持すると語り、「野党候補と米政府の立場は明らかに違うが、野党候補が選挙に勝ったのは明らかだ」と述べ、「ユーゴスラヴィアを民主主義の世界に受け入れる日が来たら、一日もはやく経済制裁を解除する」と強調し、さらに軍事介入は考えていないと付け加える。
・クローリー米国家安全保障会議報道官は、「ミロシェヴィチは、退陣を求めるユーゴスラヴィア国民の声に耳を傾けなければならない」と強調。
・ブレア英首相は、「ユーゴスラヴィアの未来は、セルビアの人々の手中にある。彼らの判断は明らかだ。ミロシェヴィチ大統領の時代は終わった。今すぐ退陣すべきだ」と新政権への支持を表明。
・セルビア社会党は、「破壊行為にはあらゆる手段を用いて、平和的な生活を守る」との声明を出す。
・モンテネグロの独立系週刊誌「モニトール」のミルカ・タディッチ編集長は、「今のユーゴ連邦は『大セルビア』の別名に過ぎない。ミロシェヴィチが去っても、この10年間地域に災厄をもたらしたセルビア民族主義がなくならなければ問題は解決しない。コシュトニツァも民族主義者に変わりはない」と語る。
10/06:
・ミロシェヴィチ・ユーゴ連邦大統領は、コシュトニツァ・ユーゴ連邦次期大統領との会談後にテレビで演説し、「コシュトニツァの大統領選での勝利を祝福する。新大統領の下でのユーゴスラヴィア国民の成功を祈りたい」と語り、選挙の敗北を公式に認める。
・アナン国連事務総長は、「ミロシェヴィチ政権の崩壊によって、ユーゴスラヴィアは新時代を迎えようとしている。国民にとっては将来に希望が持てるようになる。国連はコシュトニツァと協調していきたい」と述べる。
・クリントン米大統領は、ミロシェヴィチ・ユーゴ前大統領が退陣後も政治活動を続けるのは、「大きな間違いだ」と警告。
・米政府高官は、「ユーゴスラヴィア問題が極めて微妙な段階にさしかかっていることは十分分かっている。コシュトニツァが政府の実権を握ろうとしている矢先に、その活動の妨げになるような動きを起こすことは考えていない」と語る。
・河野洋平日外相は、「ミロシェヴィチ・ユーゴ連邦大統領は現政権に終止符を打ち、民主的変化を望む国民の意思を真剣に受けとるべきだ。コシュトニツァの下での早期の民主的なユーゴスラヴィアの実現を期待している」と述べる。
・フィッシャー独外相は記者会見で、「新生ユーゴスラヴィアへの緊急支援を外相理事会で提案する」考えを示す。
・シラク仏大統領はコシュトニツァ・ユーゴ連邦次期大統領と電話で会談し、11月24日にザグレブで予定されているバルカン地域と欧州連合・EUの首脳会議に出席するよう求める。
・NATOのレイテ報道官は、「ユーゴスラヴィアでの新大統領選出と民主的変革を歓迎する」と述べる。
・中国外務省の孫玉璽報道副局長はユーゴ情勢について、「中国は深い関心を持ち、安定の回復を求めている」との談話を発表。
・ユーゴ連邦軍のパブコヴィチ参謀総長は、コシュトニツァの大統領選勝利を祝福する声明を発表。
・ユーゴ連邦憲法裁判所は、コシュトニツァの大統領選での当選を認定。
・ユーゴ連邦野党連合幹部は、「他会派がどう反応しようが、7日には連邦議会を招集する方向だ」と語る。
・セルビア労働組合連合評議会は、「ゼネストを同日夜に解除する」と発表。
・ミロシェヴィチ・ユーゴ連邦前大統領は、ベオグラードを訪れたイワノフ露外相と会談。
・イワノフ露外相はコシュトニツァ・ユーゴ連邦次期大統領と会談。ユーゴスラヴィアの新政権樹立を宣言したコシュトニツァに対し、大統領選勝利を祝福するプーチン露大統領のメッセージを伝える。
・オルブライト米国務長官は、ロシアがコシュトニツァをユーゴ連邦の「新大統領」と認めたことについて、「大ニュースだ」と歓迎の意向を表明し、「ユーゴ連邦の経済制裁の解除にあたっては、ミロシェヴィチの役割を完全に排除したかどうかという点も考慮する」と述べる。
・旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYのデル・ポンテ首席検察官はコソヴォ自治州で、「コシュトニツァに訴えたい。法廷はミロシェヴィチ前大統領を受け入れる準備ができている」と新政権樹立後にミロシェヴィチ前大統領の身柄引き渡しをするよう呼びかける。
10/07:
・中国の江沢民国家主席は、次期大統領となるコシュトニツァに祝電を打つ。
・ユーゴ連邦上下院合同本会議が招集され、コシュトニツァは大統領就任式で宣誓。宣誓式に先立ちコシュトニツァは、「民主的な移行は始まったばかりで、開かれた新しい社会の建設は困難を伴う」と記者会見で述べる。
・コシュトニツァ・ユーゴ連邦次期大統領は、連邦首相にモンテネグロ社会人民党の党首を予定と表明。
・セルビア共和国コソヴォ自治州のアルバニア系メディアは、コシュトニツァ新連邦大統領就任について、「顔が代わるだけで、政治は変わらない」と冷ややかな反応を示す。
・ギリシアのアテネ郊外で、ミロシェヴィチ・ユーゴ前大統領の友人でマネーロンダリングと武器やガソリンなどの密輸で取り調べを受けていた実業家のウラジミール・ボカンが銃撃されて死亡。
・ユーゴ連邦の現状は、対外債務160億ドル、失業率27%、平均月収は48ドル、300万人が少量配給を受けている。
10/09:
・EU外相理事会は、ユーゴスラヴィア連邦への経済制裁を解除し、同国をEUのバルカン半島復興計画の対象国とすることを決める。経済制裁解除の内容は、「石油製品の禁輸措置、旅客便の乗り入れ停止」を解除するが、「資産凍結、ビザ発給停止」はミロシェヴィチ前大統領側近のための措置なので当面は継続。
・EUの援助計画は、00~06年までにバルカン半島の援助額を18億ユーロから55億ユーロ(5200億円)に増額すると提案する。コソヴォ自治州を除くセルビア共和国内向けに、23億ユーロ(2200億円)の支援を予定。さらにNATO軍の空爆で破壊されたドナウ川の橋の復旧に協力するほか、通商上の優遇策も検討する。
・ペドリヌ仏外相は、「前大統領の処遇は重要な問題だが、援助と法的な関係はない」と述べる。
・ユーゴ連邦のブラトヴィチ連邦首相が辞任。
・セルビア共和国議会は、解散して12月に選挙を実施することで全会派が合意。
・セルビア共和国の治安維持にあたる警察を管轄する、ストイリコヴィチ内務相が辞任する。
10/10:
・NATOはバーミンガムで公式の国防相会議を開き、セルビア共和国のコソヴォ自治州とボスニア・ヘルツェゴヴィナに展開する平和維持部隊の規模を現状のまま維持することで合意。
・ロバートソンNATO事務総長は、「ユーゴ新政権が戦犯問題を含め、国際社会との協力関係を築くことを期待する」との声明を発表し、ミロシェヴィチ前大統領の逮捕への協力を呼びかける。
10/12:
・クリントン米大統領は、「米国はユーゴ新政権を支持する。これはユーゴスラヴィアの国際的な孤立に終止符を打つ第一歩だ」と述べ、ユーゴ連邦に対する経済制裁の内、「石油禁輸措置と旅客便の乗り入れ禁止」の解除を決める。
10/13:
・ボスニア紛争時に南部フォチャ地区で治安警察副長官をしていたヤンコ・ヤニッチは、旧ユーゴ国際戦犯法廷から多数のボスニア人を拷問し、強姦したとして「人道に反する罪」で起訴されていたが、身柄拘束のために踏み込んだSFORの兵士の前で手榴弾によって自爆死する。
・モンテネグロ共和国のジュカノヴィチ大統領は、「セルビア共和国との間で、対話の新たな可能性が出てきた」との声明を発表。
10/14:
・EUの首脳会議がフランスのビアリッツで開かれ、ユーゴ連邦のコシュトニツァ新大統領が出席。コシュトニツァ大統領は組閣できていないが、現在のパブコヴィチ参謀総長の留任を決める。
・ユーゴ連邦のコシュトニツァ新大統領はフィガロ紙とのインタビューで、国家形態については現在の「連邦」より、構成国家の独立性が一段と高い「国家連合」の方が適切だと述べる。
・ボスニア・ヘルツェゴヴィナのムスリム人勢力の最高指導者のイゼトベゴヴィチは輪番制の共和国幹部会議長職を、高齢を理由にセルビア人代表のラディシッチ幹部会員に譲り、自身は幹部会員からも引退する。
10/16:
・ユーゴ連邦セルビア共和国の主要3会派は、共和国議会を解散して12月23日に前倒しで選挙を実施することに合意。
10/17:
・コシュトニツァ・ユーゴ連邦新大統領はモンテネグロ共和国を訪れ、ジュカノヴィチ共和国大統領と会談。コシュトニツァ新大統領は、連邦首相の座にモンテネグロの社会人民党のジジッチ党首を提示し、組閣への協力を要請したが、ジュカノヴィチ・モンテネグロ共和国大統領はコシュトニツァを新大統領と認めたものの、組閣には協力せず。
・クロアチア共和国議会は、「祖国戦争に関する宣言」を採択。折しもクロアチアの内戦における戦争犯罪が訴追される動きがあることを牽制するため、クロアチアの戦争は「大セルビア的侵略から自国領土を護る、正義のための、正当で防衛的な戦争」だと位置づける内容。
10/19:
・欧州安保協力機構・OSCEは、ボスニア内戦の92年以降加盟資格を停止してきたユーゴ連邦を、来月27日のウィーンでの年次外相会議に正式加盟国として迎える意向を発表。
10/20:
・国連安保理は、セルビア南部でのアルバニア系武装勢力による武力行使を非難する声明を発表。
10/22:
・コシュトニツァ・ユーゴ連邦新大統領は、ボスニア・ヘルツェゴヴィナのトレビニェを訪問。
10/23:
・セルビア共和国議会は臨時議会を開き、12月に行なわれる議会選まで行政運営にあたる暫定政権について協議。暫定政府の閣僚メンバーをめぐって、旧ミロシェヴィチ派とコシュトニツァ派との間で厳しい調整が行なわれる。
10/24:
・セルビア共和国の暫定政権は、セルビア社会党と野党連合などの3派連立で、社会党のミニッチ元幹事長が暫定首相に就任。暫定首相は12月23日に行なわれる共和国議会選までの期間、2人の副首相との合議制で行政運営に当たることになる。
・スロヴェニア共和国中央選管は、15日に実施された総選挙の最終集計結果を発表。ドルノウシェク前首相の中道左派政党、自由民主党が得票率36.21%で勝利。下院90議席のうち、「自由民主党」は34議席、中道左派の「社会民主党」が14議席、旧共産党の「社会民主統一リスト」が11議席、バユク首相の「新スロヴェニア」が8議席となる。
・南東欧安定化条約機構が、ルーマニアのブカレストで開かれる。
・コシュトニツァ・ユーゴ連邦新大統領は、マケドニアで開かれたバルカン首脳会議に出席し、「バルカンには平和と安定が必要だ。政治的対話と経済などの協力が、その唯一の道だ」と述べる。
10/27:
・コシュトニツァ・ユーゴ連邦新大統領はロシアを訪問し、プーチン露大統領らと会談。プーチン露大統領は、「ユーゴスラヴィアはバルカンでの主要なパートナー」と強調。両大統領は共同声明で、「2国間の関係強化、およびNATO軍による空爆や政治的制裁を乗り越え、経済を再建するための有効な援助が当面の重要な課題」と位置づけして協力を強調。
・コシュトニツァ・ユーゴ新大統領は、国連安保理に対し国連への再加盟を申請する。ユーゴ連邦は、92年9月から総会での活動を停止させられている。
10/28:
・セルビア共和国コソヴォ自治州の地方選挙が、コソヴォ暫定行政支援機構・UNMIKの管理下に行なわれる。コソヴォに残るセルビア人住民は有権者登録をせず、事実上ボイコットする。
・コソヴォ自治州の州都プリシュティナ西部のスケンデライは、アルバニア系住民が6万5000人でセルビア人住民は290人。ここで選ばれる31人とは別に、セルビア人住民の中から2人が割り当てられる。強硬派のコソヴォ民主党の地区代表で議員候補のラマダン・ガシは、「彼らは先ずユーゴ政府の蛮行について謝罪すべきだ」と語る。
・コソヴォ自治州の30自治体議会の選挙は、開票速報によるとルゴヴァ党首率いる穏健派のコソヴォ民主連盟が各地方で60~80%の得票率を得る。
10/29:
・コシュトニツァ・ユーゴ連邦新大統領はコソヴォ自治州の地方議会選について、「1,セルビア人住民が参加出来ず、地方議会がセルビア人抜きで設置される見通しとなった。2,アルバニア系住民はコソヴォの単一民族社会を合法化している」など、「多くの理由から連邦政府は承認できない」とする声明を発表。
・欧州議会は、セルビア共和国コソヴォ自治州での投票率が高かったことについて、民主化に向けた良い知らせだと歓迎する声明を発表。
10/31:
・国連安保理は、国連総会にユーゴスラヴィア連邦の国連再加盟を勧告する決議を採択。
10/00:
・コソヴォ自治州の暫定行政機構のクシュネル国連事務総長特別代表は、コソヴォ自治州のアルバニア系指導者にコシュトニツァ政権との対話を提案。アルバニア系指導者はコシュトニツァ政権が、「コソヴォ自治州はセルビア共和国の一部」と明言していることに反発して対話を拒否する。
11/01:
・国連総会は、ユーゴスラヴィア連邦の再加盟を全会一致で承認する。ユーゴ連邦は92年9月に追放されて以来、8年ぶりに国連に復帰する。国連加盟国は189ヵ国。
・ユーゴ連邦のスビラノヴィチ特使は国連総会で、「私がここにいることは、より良い将来を築こうと戦ってきたユーゴスラヴィア人民の最後の勝利だ。10年間にわたる紛争で我が国は多くの困難に直面しているが、近隣諸国および国際社会とともにこの困難を乗り越えてゆきたい」と演説。
・セルビア共和国コソヴォ自治州の著名な活動家で、セルビア共和国当局に拘束されていた「アルバニア女性連盟」代表のフロラ・ブロビナが、1年半ぶりに釈放される。F・ブロビナは、KLAのテロに関わった疑いで禁固12年の刑が宣告されている。
・赤十字国際委員会によると、セルビア共和国で収監されているアルバニア系は800人以上いる。
11/02:
・ロシアのガスブロムは、ユーゴ連邦への天然ガスの供給を1日から再開したことを明らかにする。ただし供給するのは年内いっぱいの日量420万立方メートルで、来年1月からの供給については、3億5000万ドルに上る未払いガス代を処理する必要があり、10日から債務関係の実務者協議を行なう予定。
・米国務省はフロラ・ブロビナの釈放について、「セルビア、アルバニア両民族の傷跡をいやす重要なステップだ」と評価。
11/03:
・ユーゴ連邦のコシュトニツァ大統領選出のセルビア民主野党連合は、連邦議会では過半数に達しないために、モンテネグロ社会人民党とセルビア人民党の3派連立で政府を構成することで合意し、協定に調印。
11/04:
・ユーゴ連邦議会は、ゾラン・ジジッチ・モンテネグロ社会人民党党首を連邦首相とする新内閣を承認。副首相と外国貿易相を兼任するのは、経済学者のミロリュウブ・ラブス。
11/06:
・ユーゴスラヴィアの首都ベオグラード北西の刑務所で、アルバニア系を主とする1000人以上の収容者が暴動を起こし、刑期の短縮や待遇改善を求める。
・ミロシェヴィチ前ユーゴ連邦大統領は、セルビア社会党の党首を辞任する意向を党幹部に伝える。
11/07:
・UNMIKのクシュネル国連事務総長特別代表は、コソヴォ自治州の地方選挙の最終的な開票結果を発表。それによると、コソヴォ自治州の穏健派、「コソヴォ民主連盟」が58%の得票率を獲得。
11/10:
・欧州安全保障協力機構・OSCEは、ウィーンでの常設理事会でユーゴ連邦の参加復帰を決定する。
11/11:
・ボスニア・ヘルツェゴヴィナの「ボスニア連邦」では下院議会選挙が行なわれ、「スルプスカ共和国」では大統領と副大統領選および議会選挙が行なわれる。
11/12:
・ボスニア・ヘルツェゴヴィナの下院選挙の中間集計で、「ボスニア連邦」では穏健派の多民族政党社会民主党のラグムジャ党首は「われわれがリードしている」と発表。「スルプスカ共和国」では民族主義的色彩が濃いセルビア人民主党がリードしている模様。スルプスカ共和国の大統領選では、シャロヴィチ現副大統領の得票率が過半数を超える見込み。
11/13:
・コソヴォ自治州のプリシュティナでアルバニア系住民が、セルビアに収監されているアルバニア系住民の釈放を求めて抗議集会を開く。
11/16:
・ユーゴ連邦政府は、NATO軍の空爆以来国交断絶していた米・英・独・仏の主要4ヵ国との国交回復交渉を決める。
11/17:
・米政府は、ユーゴ連邦との国交を同日回復したと発表。さらに、セルビア共和国に対し、冬に備えた4500万ドルの食糧援助を実施することを決める。議会の承認が得られれば、セルビア共和国に1億ドル、モンテネグロ共和国に8900万ドルの援助も実施したい、と発表。
・クリントン米大統領は、「民主的な選挙とコシュトニツァ新政権の誕生という劇的な変化に応え、外交関係回復措置を取った。米国と同盟国は、この国の歴史的な移行を支持する」との声明を発表。
11/20:
・総選挙に向けたセルビア民衆連合(18政党の連合)の集会で、コシュトニツァ・ユーゴ新大統領は圧倒的な人気で迎えられる。セルビア民主党ジンジッチ党首の人気はない。
11/21:
・コソヴォ解放軍・KLAは、コソヴォ自治州領内からセルビア領内に侵攻し、ユーゴスラヴィア警察に攻撃を仕掛ける。チャチャク市近郊のユーゴ警察をコソヴォ解放軍・KLAが攻撃し、3人のセルビア人警官を射殺し、身体を引き裂く。
・ユーゴ連邦政府は、NATO軍主導のKFORがコソヴォ解放軍の領土侵犯を見過ごしている、との非難声明を発表。
11/22:
・コソヴォ解放軍・KLAは、米軍が支配するコソヴォ自治州領内から重武装した1500人で非軍事地帯に侵入し、セルビア南部の町を襲撃してセルビア人警官4人を殺害。コソヴォ解放軍側はこの襲撃を、「セルビア側に住むアルバニア系住民を、セルビア警察から守るため」と主張する。
・セルビア民主党のジンジッチ党首はセルビア南部を訪れ、「セルビア警察が侵入者を鎮圧するための承認を、NATOに求めたい」と発言。
・NATOは、コシュトニツァ・ユーゴ新大統領に対し、コソヴォ解放軍・KLAへの報復行為は断固としてしてはならないと通告。NATOはコシュトニツァ大統領の弱体化を図る。
11/24:
・EU15ヵ国は、ユーゴ連邦を含む南東欧地域の安定化を図るため、旧ユーゴスラヴィア諸国など6ヵ国の指導者らと初の首脳会議をクロアチアの首都ザグレブで開催。会議では、クロアチアの民主化やユーゴ連邦のミロシェヴィチ体制の崩壊などの変化を評価し、「ザグレブ宣言」を採択。宣言では、地域安定化のために今後も積極的な支援を続けること、安定化プロセスに参加することでEU入りの候補とすることなどを明記。
・ユーゴ連邦のモンテネグロ共和国のジュカノヴィチ大統領はEU会議参加後の記者会見で、ユーゴ連邦への所属に関し「来年前半に国民投票を実施する」と述べる。
11/25:
・ユーゴスラヴィアのセルビア社会党の臨時大会が開かれ、ミロシェヴィチ・ユーゴ前大統領を党首に再選。穏健派党員は、党名変更や改革を主張したが、取り入れられなかったために離党する。
11/00:
・ユーゴ連邦と米・英・独・仏との外交関係が、回復される。
・セルビアのアルバニア系武装組織「プレシェヴォ・ブヤノヴァツ・メドヴェジャ解放軍・UCPBM」が、セルビア共和国南部の非軍事地帯を越え、セルビアの警察やユーゴ連邦軍を襲撃する事件が相次いで起こる。
・プーチン露大統領と江沢民中国家主席が会談し、中露の結びつきの強化を確認する。
12/01:
・ユーゴ連邦国立銀行のディンキッチ総裁は、ミロシェヴィチ前政権が総額10億ドル(1100億円)の巨額の資金をキプロス経由で外国に移転していた形跡があり、近く専門家チームがキプロスを訪れて調査に当たる計画であることを明らかにする。この資金移転の情報は、米財務省海外資産調査局・OFACの調査結果として、ユーゴ連邦側にもたらされたもの。
12/02:
・中国の唐家璇外相は、ユーゴスラヴィアを訪れてコシュトニツァ新大統領と会談し、200万ドル相当の人道援助を申し
出る。
12/04:
・コシュトニツァ・ユーゴ新大統領は、国境線の変更は受け入れられないこと、それは新たな紛争、戦争を呼び起こすと宣
言。
・アルバニア人武装組織「UCPBM」が、セルビア南部のユーゴ連邦軍駐屯地向けに迫撃砲を発射。
12/11:
・セルビア共和国内に結成されたアルバニア系武装組織「プレシェヴォ・ブヤノヴァツ・メドヴェジャ解放軍・UCPBM」が、セルビア南部の町ブヤノヴァツへの攻撃を仕掛ける。
12/12:
・ハーグの旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYに、セルビア人のブラゴエ・シミッチ被告が出頭する。
・セルビア共和国のベオグラード地検は、9月の連邦大統領選挙でミロシェヴィチ前大統領に有利になるよう不正工作をしたとして、連邦選管のブキチェヴィチ前委員長ら6人を起訴。
12/15:
・ユーゴ連邦政府は、ボスニア・ヘルツェゴヴィナとの外交関係を樹立する。この外交関係樹立で、連邦政府は旧ユーゴスラヴィアから独立した全ての国との外交関係を回復。
・ユーゴ連邦は、新しいデザインの100,50,20ディナールの紙幣を発行。1ドルを実勢に合わせ66ディナールとする。
12/16:
・ユーゴ連邦モンテネグロ共和国のブヤノヴィチ首相は朝日新聞記者に対し、「来年半ばまでには独立国としてセルビアとの相互承認を実現したい」と述べる。モンテネグロ共和国政府案は「1,セルビア共和国とモンテネグロ共和国は各独立国として、国連には各1議席を持つ。2,『セルビア・モンテネグロ同盟』との機構を新設し調整する。3,同盟には大統領や閣僚を置くが権限は調停役に限定する。4,1院政の議会も設置し、各共和国から同数の議員を選出する」などの内容を持つ、と語る。
12/19:
・ユーゴ連邦政府は、安保理に決議1244号の細則にあるコソヴォ自治州境にある非武装地帯の幅5キロを1キロに縮小するよう修正を求めるが、米国の反対で実現せず。
12/20:
・国際通貨基金・IMFは、ユーゴスラスラヴィア連邦の復帰を承認。IMF加盟国は、183ヵ国となる。
12/23:
・セルビア共和国は、繰り上げ総選挙を実施。選挙管理委員会の中間発表で、セルビア民主連合(旧野党連合)が65%、社会党が13%を獲得。議席数は250議席中、民主野党連合が178議席を獲得する見通しで、社会党は36議席程度。民主連合は国営企業の民営化について、「02年から03年にかけて行なうのが現実的」との公約を掲げる。
・セルビア共和国の99年のGDPは、10年前から半減し、1人当たり年1700ドル。
12/27:
・セルビア共和国の議会選挙で、選挙管理委員会は最終的な開票結果を発表。250議席中、民主連合の得票率は60.08%で176議席を獲得し、セルビア社会党は13.76%の得票率で37議席となる。
12/28:
・モンテネグロ共和国のジュカノヴィチ政権は、モンテネグロ共和国が主権国家として独立することを前提条件とした上で、「同盟」締結によって欧州連合・EUのような関係を、セルビア共和国との間で目指す政策綱領を正式決定する。連立与党の人民党はこれに反対して政権を離脱し、ジュカノヴィチ大統領は独立支持の自由党と閣外協力。
12/30:
・セルビアのジンジッチ民主党党首はモンテネグロ共和国の分離独立の動きに対し、「モンテネグロ自体の内紛に繋がる危険性が極めて高い。連邦が解体すればコソヴォ自治州の独立問題にも波及しかねない」と警告。その上でジンジッチ次期首相は、「1,連邦憲法の改正により各共和国の独自権限を強め、連邦政府の権限を縮小する。2,連邦国家の国名も『セルビア・モンテネグロ』 などに変える」 などの妥協策をモンテネグロ側に提示する方針を示す。妥協策が受け入れられなかった場合は、「憲法上、正当な手段を通じて表明されたモンテネグロの民意が独立を選ぶのなら、その結果は受け入れる。我々は介入策を持たない」と連邦軍が独立阻止に動くことを否定。
・中国全人代常務委員会第19回会議は、「解放軍現役軍官服務条例」を、士官を知能化するための「現役軍官法」に改訂する。
00/00:
・年末にマケドニア紛争が起こる。コソヴォ自治州のアルバニア系武装組織・KLA=民族解放組織・NLAがマケドニアに越境し、マケドニア在住のアルバニア人の権利拡大を要求。この越境攻撃には、NATO軍が関与。
・ドイツ諜報機関・BNDは、ユーゴ連邦軍の「蹄鉄作戦」に関する文書は、自らの捏造であったと告白。
註;1999年にコソヴォ紛争が起こった際、BNDはユーゴ連邦がコソヴォのアルバニア人を民族浄化する「蹄鉄作戦」を立案し、実行していると宣伝した。しかし、そのような作戦は存在せず、捏造だったと判明する。後に、BNDもこの作戦名は情報操作のための捏造だったと認めている。
・英国の軍事請負会社「ディフェンス・システムズ・リミテッド・DSL」社は、セルビア共和国コソヴォ自治州で地雷除去を請負い、さらに現地の地雷除去団体に丸投げする。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

2001年
01/04:
・イタリア各紙は、旧ユーゴ紛争に派遣されたイタリア軍兵士に白血病が相次ぎ、6人が既に死亡したと報じる。
・イタリア国防省は、内部調査のために委員会を設置するとともに、NATOへの調査要求を決める。
・フランス国防省は、旧ユーゴ紛争に従軍した帰還兵4人が白血病で入院していることを明らかにする。
・フランス、ベルギー、ポルトガル政府も調査を求める。
・プロディ欧州委員長は、「健康被害がはっきりすれば、劣化ウランは廃棄されるべきだ」と表明。
・ベーコン米国防総省報道官は、「劣化ウラン弾と発病との因果関係は一切見つかっていない。科学的な基礎調査もされていない段階から、劣化ウラン弾と白血病の関係を云々するのは早すぎる」と述べる。
註;NATO軍は、劣化ウラン弾をボスニア紛争で1万発、ユーゴ空爆で3万発を使ったといわれる。一方、米英両国は国内での軍事訓練で劣化ウラン弾を使用しており、湾岸戦争症候群を抱えている米英両国は劣化ウラン弾の影響力を抑えるのに躍起となる。
・ユーゴ連邦のスビラノヴィチ外相は、訪米してオルブライト米国務長官と会談。会談後の記者会見でスビラノヴィチ外相は「対米関係が新段階に入る機会を迎えた」と述べ、オルブライト米国務長官は「ユーゴスラヴィアは、欧州への復帰と民主主義に向かって前向きに進んでいる」と評価。
01/05:
・リシャール仏国防相は白血病で入院しているユーゴスラヴィアからの帰還兵について、「現状では白血病と劣化ウラン弾との関係は薄いと見ているが、今後も調査を継続する」と述べ、NATO内での協議に参加する意向を示す。
01/08:
・ドイツのベルリナー・モルゲンポスト紙は、「NATOが99年7月16日付け文書で、劣化ウラン弾による健康被害の可能性を指摘し、予防手段をとるよう奨励していた、とするドイツ国防省の内部文書がある」と報じる。
・ドイツ国防省は、コソヴォ自治州に派遣されたドイツ連邦軍6万人の内、120人を抽出して調査した結果、劣化ウラン弾による健康被害はないと、結論づける。
・独シュレーダー首相は劣化ウラン弾について、「兵士に害を及ぼす可能性がある武器を使うことに疑念をもつ」と述べ、NATO軍に劣化ウラン弾の使用を止めることを求める姿勢を示す。さらに、バルカンで劣化ウラン弾を何処で使用し、どのような影響が出ているかについて、明確な説明を求めていくことを明らかにする。
・マタレラ伊国防相は、「危険がないと証明されるまで、劣化ウラン弾の使用を避けるよう同盟国に求める」と語る。
・オルブライト米国務長官は劣化ウラン弾による白血病の発症について、「関連を示す証拠は全くない」と述べる。
・WHOの専門家が記者会見し、「劣化ウランを含む粉塵を長期間吸引し続けると、肺ガンの発生率が高くなる可能性は理論的にはあるが、白血病との関係は確認できないし、あり得ないと思う」と述べ、否定的見解を示す。同専門家によると、劣化ウラン弾が目前で爆発した場合、最悪でも1回当たり10ミリシーベルト程度で、原発作業員らの年間の許容量である20ミリシーベルトより低いので影響は少ない、という。
・国連環境計画・UNEPは、劣化ウラン弾の影響についての調査を続けており、3月に結論を出す予定と表明。
01/09:
・英国のスペラー国防閣外担当相は、国民の不安を解消するため、バルカンから帰還し、健康状態に不安がある兵士と民間人を対象に健康診断を実施する方針を下院で表明。
・NATOは政治委員会を開き、バルカン半島での劣化ウラン弾による健康被害問題について協議。
・ボスニアのセルビア人共和国のプラブシッチ元大統領はハーグを訪れ、旧ユーゴ国際戦犯法廷に出頭する。プラブシッチ元大統領は、かつてボスニアのセルビア人勢力のカラジッチ大統領の側近で、非公開起訴されている。
01/10:
・NATO大使級理事会は、イタリア・マタレラ国防相が求めていた劣化ウラン弾の使用凍結を、米英の反対で見送る。
01/12:
・国際原子力機関・IAEAのエルバラダイ事務局長は、「劣化ウラン弾が使われた地域と、接触した人々についての詳細な調査が必要だ」との声明を出す。
01/13:
・コシュトニツァ・ユーゴ連邦大統領は、ミロシェヴィチ前大統領と会談。コシュトニツァ大統領は、「内政問題、コソヴォ問題や将来の連邦のあり方を話し合った」との声明を発表。
・ロシア軍は、米国との核戦争を想定した大規模な演習を、西方と極東で実施する。
01/15:
・セルビア民主党の幹部は、「コシュトニツァ・ユーゴ連邦大統領は、旧ユーゴ国際戦犯法廷の主任検察官との会談はしない」と述べる。
01/16:
・NATOは、劣化ウラン弾と白血病の間に因果関係は認められない、とする軍医総監会議の結論を発表。
01/17:
・欧州議会はストラスブールで開いた総会で、劣化ウラン弾の使用中止を求める緊急決議案を、賛成394,反対60で可決。
01/21:
・ユーゴ連邦セルビア共和国のミハイロヴィチ次期内相は、セルビア共和国の司法当局がミロシェヴィチ前大統領の職権乱用について捜査中であり、「私が内相に就任したら、できるだけ早く24時間の監視下に置く」と述べる。
01/22:
・EU外相理事会は劣化ウラン弾の問題を取り上げたものの、米国批判に繋がる安全論議には深入りせず、関係機関の現地調査を見守ることを決める。議長国スウェーデンのリンド外相は記者会見で、「この問題では情報の透明性が重要だ。1ヵ月以内に公表される各種調査を待って対応したい」と述べるに留まる。
01/26:
・セルビア共和国議会は、民主連合のジンジッチを首相とする新内閣を承認する。
・セルビア共和国とコソヴォ自治州の東部国境で、アルバニア系武装組織が越境してユーゴ連邦軍を攻撃し、セルビア兵が死亡する。コソヴォ自治州の独立を目指す強硬派が、世界の関心を引くための挑発行為に出たものと見られる。
01/29:
・コソヴォ自治州ミトロヴィツァで、アルバニア系とセルビア系住民が衝突して手榴弾の応酬に発展し、アルバニア系少年2人が死亡。制止に入った国際部隊・KFORの車輌に、火がつけられる騒動に広がる。
01/30:
・コソヴォ自治州の治安維持国際部隊・KFORは、ミトロヴィツァに夜間外出禁止令を出す。
・セルビア共和国政府は、「必要ならば対テロ作戦に踏み切る」と牽制する。
・国連安保理は、コソヴォ自治州の武装組織とユーゴ連邦軍の衝突事件を非難する声明を出す。
01/31:
・コソヴォ自治州のミトロヴィツァで投石や手榴弾の応酬となり、国際部隊の兵士一人が重傷を負い、22人が負傷。一般住民も数十人が負傷。
01/00:
・マケドニア共和国にコソヴォ解放軍・KLAおよび民族解放軍・NLAが侵入し、武力攻撃を始める。
02/01:
・セルビア共和国のミハイロヴィチ内相は、「ミロシェヴィチ前大統領を24時間の監視下に置いた」ことを明らかにする。
02/02:
・訪米中のジンジッチ・セルビア共和国首相は記者団の質問に、「ミロシェヴィチ前大統領は、12年の政権下で多くの罪を犯している」と語り、起訴へ向けた国内手続きを優先する方針を明言。
・バウチャー米国務省報道官は、「ユーゴスラヴィア国内と戦犯法廷の手続きが、互いに調整されるよう、協議を進めねばならない」と表明。
02/04:
・ブレア英首相とアマート伊首相はオブザーバー紙に共同論文を発表し、「急増するバルカン半島経由の不法移民に対処するため、密航斡旋組織に対する厳罰や自国の警察官のボスニア派遣」などの緊急対応策を示す。
02/05:
・セルビア共和国の南部の都市ブヤノヴァツのセルビア小学校に、銃弾が撃ち込まれる。
02/06:
・コソヴォ暫定行政支援団・UNMIKのクシュネル特別代表は任期を終え、仏内閣の保健担当相に復帰する。
02/07:
・セルビア共和国のコラチ副首相は、「ミロシェヴィチ前大統領は、遅くとも3ヵ月以内に国内で起訴されるはずだ」との見通しを明らかにし、「容疑は不正蓄財や脱税で、政治がらみの殺人や殺人未遂は立証が簡単ではない」と語る。
02/09:
・ロシア外務省筋は、セルビア共和国のジンジッチ首相が21日にロシアを訪問すると述べる。
02/13:
・ユーゴ連邦軍および警察の合同部隊は、コソヴォ解放軍・KLAのレシ司令官が統括する「プレシェヴォ・ブヤノヴァツ・メドヴェジャ解放軍・UCPBM」を自称する部隊が占拠するコソヴォ南部のブコヴァツとゴルニェ・ショシャエの2つの陣地を大砲、戦車、機関銃を投入して攻略。解放軍側は攻略された腹いせに、プリシュティナ郊外でKFORが護衛していたセルビア人住民を銃撃して射殺。
ミトロヴィツァ市ではセルビア人住民がアルバニア系住民地区を襲撃して焼き討ちにし、アルバニア系住民人8人が死亡。
・セルビア共和国司法当局は、セルビア国営テレビのミラノヴィチ前会長を99年4月のNATO軍の空爆時に職員を避難させずに16人を死亡させた容疑で逮捕する。
・ロシア軍は、米国との核戦争を想定した大規模な演習を西と極東で同時に実施。この演習で大陸間弾道ミサイル・SS27や戦略爆撃機・Tu-22M3やTu-160を動員する。
02/14:
・ブッシュ米大統領は、「米軍を海外に過剰展開してきたことが軍全体の士気に深刻な影響を与えている。これからは平和維持活動・PKOを進んで引き受けることはしないだろう」と語る。
02/16:
・コソヴォ自治州のグラチャニツァ市を結ぶ幹線道路で、セルビア人住民が乗ったバスが爆発し、7人が死亡し、40人が負傷。アルバニア系武装勢力の攻撃と見られる。
・国連環境計画・UNEPはユーゴ・コソヴォ空爆で使用された劣化ウラン弾の破片から、微量のプルトニウムを検出したと発表。テプファー事務局長は、「この発見でも、劣化ウラン弾の放射能の影響に大きな変化はなく、警戒の必要はない」と語る。
02/18:
・セルビア共和国東部で、セルビア警察の車輌が対戦車地雷に触れ、警察官3人が死亡。現場はコソヴォ自治州との境にある非軍事地帯だが、警察はパトロールを認められている。
・セルビア共和国の警察が、破壊された車輌の回収に赴いた際、周囲から銃撃されて応戦。
・コシュトニツァ・ユーゴ連邦大統領は、ジジッチ連邦首相とジンジッチ・セルビア共和国首相らを招集し、アルバニア系武装組織によるテロへの対策を協議。
02/19:
・ユーゴ連邦モンテネグロ共和国議会は、連邦からの分離・独立の是非を問う国民投票に関する法案を可決。
02/20:
・モンテネグロ共和国のジュカノヴィチ大統領は、同共和国の総選挙を4月22日に実施すると発表。
02/22:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYは、ボスニア紛争時、南部の町フォチャで12歳の少女を含む多数のムスリム人女性を「強姦所」に連行して組織的に強姦を行なったとして、人道の罪に問われた3人のセルビア人兵士に対する有罪判決を言い渡す。ドゴリャブ・クナラッチ被告は懲役28年、ラドミール・コバッチ被告は懲役20年、ゾラン・ブコヴィチ被告は懲役12年。
02/23:
・バルカン半島の8ヵ国首脳と欧州連合・EU代表がマケドニア共和国の首都スコピエで会合を開き、セルビア共和国のコソヴォ自治州とその周辺で続く民族対立問題を協議し、「この地域を不安定化しかねない、武装急進勢力によるテロ行為を強く非難する」との宣言を採択。昨秋以来、セルビア共和国南部の州境ではアルバニア系武装組織が連邦軍、セルビア警察を攻撃。コソヴォ自治州内でも、セルビア人住民のバスが爆破されている。
・ユーゴ連邦とマケドニア両国の外相がスコピエで会談し、国境を確定して両国の国境問題は解決したと発表。
02/24:
・セルビア共和国司法当局は、マルコヴィチ前国家保安局長を逮捕。容疑は野党党首ドラシュコヴィチの乗った車に、トラックを意図的に衝突させて暗殺を謀った容疑。この時、野党党首側近の4人が死亡。
02/27:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷は、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ紛争時の住民虐殺で、「人道に反する罪」などに問われていたクロアチア人共和国のダリオ・コルジッチ副大統領に懲役25年の判決を言い渡す。
・NATO外相理事会は、コソヴォ自治州の州境の「安全地帯」の段階的縮小で合意する。
・ロバートソンNATO事務総長は、「安全地帯が過激派にとっての無法地帯となることは認められない」と非難する。
・「コソヴォ民主連盟」のルゴヴァ党首は安全地区の段階的縮小について、「コソヴォ自治州の安全とNATO軍の兵士の命を危険にさらすことになる」と反発。
02/00:
・米議会は、2月31日までにミロシェヴィチ前大統領の旧ユーゴ国際戦犯法廷への引き渡しを条件とする、ユーゴ連邦への米国の経済援助決議を採択。
・セルビア共和国のコラチ副首相はNATOを訪れ、コソヴォ自治州との州境に設定された「安全地帯」の廃止を強く求め
る。
03/01:
・セルビア共和国のミハイロヴィチ内相は、ミロシェヴィチ前大統領が首都の高級住宅地での邸宅購入に際し、書類に虚偽の内容を記載した容疑についての報告書を検察当局に渡した、と述べる。
03/02:
・ルード・ルベルス国連難民高等弁務官は、コソヴォの「安全地帯」の段階的縮小について、「安全地帯の変更は、セルビア南部のアルバニア系住民のコソヴォへの流出に繋がりかねない」と警告する声明を発表。
03/04:
・コソヴォ自治州からマケドニア共和国に越境したアルバニア系武装組織「民族解放軍・NLA」が、国境警備隊のマケドニア治安部隊の車輌を爆破。マケドニア共和国政府は国境を封鎖する。
註;アルバニア系民族解放軍・NLAがマケドニアに攻撃を仕掛けた背景には、アルバニア系武装勢力の「大アルバニア主義」がある。「大アルバニア主義」が作成した大アルバニアの版図は、コソヴォ自治州を中心にセルビア南部、モンテネグロ南東部、マケドニアの北西半分、ギリシアの北西部までを含む。
03/07:
・コソヴォ自治州の南部で、国際部隊・KFORとアルバニア系武装組織の民族解放軍・NLAとが一時交戦し、武装勢力の2人が負傷、1人をKFORが拘束。
03/08:
・アルバニア系武装組織の民族解放軍・NLAがコソヴォ自治州からマケドニア共和国の国境を越え、マケドニア治安部隊と激しい戦闘を展開。
・NATOは大使級理事会を開き、国際部隊・KFORにはコソヴォ自治州の州境を越えて活動する権限がないために、KLAの活動を抑えられないことから、ユーゴ連邦軍がセルビアの安全地帯に展開することを許可する方針を決める。NATOは、アルバニア系武装勢力の行動が、国際社会の関心をコソヴォ独立に向けた交渉に引きずり出すための戦略と見ている。
・コシュトニツァ・ユーゴ連邦大統領は、NATOがコソヴォ南部の「安全地帯」にユーゴ連邦軍の再配備を認める決定をしたことについて、「他人の失敗を埋め合わせるのが目的」と説明し、NATO軍主体の国際部隊を「勇気がない」と批判。
03/09:
・コソヴォ自治州東側のセルビア共和国ルチャネでアルバニア系武装ゲリラが迫撃砲で攻撃し、セルビア人警察官1人が死亡。
・セルビア共和国のジンジッチ首相はNATO軍に対し、セルビア側に設定された5キロの「安全地帯」の縮小を要求。ジンジッチ首相はシュレーダー独首相らとの会談後の記者会見で、「コソヴォ自治州内でのアルバニア系の非武装化が進んでいない」と批判。
03/12:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷からボスニア内戦での戦争犯罪で起訴されている、セルビア人のブラゴエ・シミッチ被告がハーグの戦犯法廷に自発的に出頭する。
・コソヴォ自治州周辺でゲリラ活動をしているアルバニア系武装勢力の代表が、ユーゴ連邦側との交渉で19日までの一時的な停戦に合意する。
03/13:
・国連環境計画・UNEPは、コソヴォ自治州へのNATO軍の空爆における「劣化ウラン弾の健康と環境に対する影響調査」の最終報告を公表。報告概要;「ウラン・U238に加え、天然に存在しないU236やプルトニウムP239,P240を検出。いずれも微量で、直ちに健康や環境に影響はないとされるが、使用済み燃料の再処理で生じる廃棄物を使用していることが明らかになる」。
03/14:
・ユーゴ連邦軍が、NATO軍の認定に基づいてKLAの活動を抑制するために、マケドニア国境に近いコソヴォ自治州との州境の「安全地帯」への軍事展開を始める。
・マケドニア共和国内に越境したアルバニア系武装勢力が、安全地帯から60キロ離れたマケドニアの第2の都市テトヴォ近くで攻撃を始め、マケドニア治安部隊と交戦する。テトヴォの市民1人が死亡、多数が負傷。数千人のテトヴォ市民が脱出を始める。
03/15:
・マケドニア共和国のテトヴォ市で、アルバニア国旗を掲げたゲリラ支援の街頭デモが行なわれる。
03/16:
・アルバニア系民族解放軍・NLAは、マケドニア共和国のテトヴォにあるドイツ軍駐屯地を銃撃する。
・マケドニアに駐屯しているドイツ軍司令官は、1000人の内の半数を撤収する方針を示す。
・NATOのロバートソン事務総長は、国際部隊の国境監視を強化した、と発表。
03/17:
・トライコフスキ・マケドニア共和国大統領は、シラク仏大統領に電話会談を申し入れて状況を報告。
・シラク仏大統領は、コソヴォ自治州に展開する国際部隊がマケドニア共和国に武装勢力を流入させないよう「決然とした行動」をとることを望む、と語る。
・ドイツ連邦軍は、マケドニア共和国の駐屯地がアルバニア系武装勢力から攻撃された事態に対応し、コソヴォ自治州に駐屯していた戦車や装甲車をテトヴォに移駐させる。シャーピング独国防相は、「兵士を守るためには、重火器を使用する用意がある」と警告。
03/18:
・マケドニア共和国に侵入した200から500人のアルバニア系武装組織民族解放軍・NLAは、テトヴォ周辺部を武力攻撃する。マケドニア共和国の軍と治安部隊が、侵入したNLAに対し戦車などを投入して応戦。テトヴォ市や周辺の村からは女性や子どもを中心に住民の避難が続き、首都スコピエには数万単位で避難民が流入する。
・マケドニア共和国政府は予備役の動員を決める。マケドニア議会は、コソヴォの国際部隊・KFORの積極的な関与を求める決議を採択する。
・マケドニア共和国政府は外交交渉による事態の収拾を求めたが、アルバニア系武装組織・NLAは交渉に応じようとせず。
・マケドニアに侵入したNLA」は、マケドニアのアルバニア系兵士や警察官に自分たちNLAと合流するよう呼びかける。
・ゲオルギエフスキ・マケドニア共和国首相は、「北部のコソヴォとの国境付近に、重砲と戦車を展開させた」と国民向けに放
送。
・プーチン露大統領はイワノフ外相をベオグラードに派遣し、アルバニア系武装勢力「民族解放軍・NLA」の活動が激化する事態の収拾をめぐって協議させる、と発表。
03/19:
・欧州連合・EUとNATOはアルバニア系武装組織・NLAの攻撃で緊迫するマケドニア情勢の鎮静化を図るため、マケドニア共和国のケリム外相を交えての本格協議に入る。NATO軍は、KFORを増派して武装勢力の越境防止に努める考えを表明。
・マケドニア共和国のケリム外相は記者会見で、「NATO軍の武力強化は直ちに実施されると理解している。我が国の治安部隊と協議し、国境の両側から武装勢力の活動を抑えることになる」と語る。
・EU外相理事会は、「マケドニア共和国を混乱に陥れるための武力行使や、それへの支援は許さない。政治的な要求は平和的にせよ」との声明で武装勢力を非難。
・ディーニ伊外相は、コソヴォ自治州のアルバニア系武装組織・NLAがマケドニア共和国を攻撃していることについて、「マケドニアはアルバニア系への人種差別をなくすための適切な政策を取ってきた。マケドニア共和国を不安定化させようとする動きは容認できない」とNLAを非難。
・プーチン露大統領は閣議でセルビア共和国コソヴォ自治州の情勢について、「コントロール不能になった。残念ながら、状況は我々が予言したとおりに進んでいる」と語る。
・ロシアのイワショフ国際軍事協力局長は、「ロシア軍がコソヴォ駐留のKFORとともに、コソヴォのアルバニア系武装勢力の武装解除に参加する意思がある」ことを明らかにする。
03/20:
・マケドニア共和国政府の国防相と内務相が合同で、マケドニアに侵入しているアルバニア系武装組織・NLAに武装解除を迫る最後通告を出し、「24時間以内に武器を捨てるか、マケドニア領土から立ち去らなければ総攻撃をかける」と警告。
・欧州連合・EUのソラナ共通外交上級代表は、マケドニア共和国政府と与野党の代表と会談し、武装勢力に対して断固とした姿勢を取ることで合意。その後の記者会見で、「テロリストと交渉するのは誤りだ」と述べる。
・シラク仏大統領とシュレーダー独首相はマケドニア問題で意見を交換。「政治的解決を図るマケドニア共和国政府を支持する」として「マケドニアの領土保全に異議を唱えてはならない」との立場を強調し、「戦闘の即時停止」を求める。その上で、EU首脳会議にマケドニアのトライコフスキ大統領を招くと述べる。
・マケドニアのアルバニア系の2つの政党が、マケドニア政府の武装勢力への武装解除を求める声明に署名する。
03/21:
・マケドニア共和国に侵入したアルバニア系武装組織・NLAの幹部は、マケドニア政府が要求していた武装解除を拒否する。
・マケドニア共和国政府報道官は、「21日零時から24時間以内に撤退か降伏するよう呼びかけた『最後通告』に伴い、マケドニア軍は戦闘の中心都市テトヴォで一方的な停戦に入っている」と述べる。
・アルバニア系武装組織・NLAの幹部は、「現在の攻撃拠点を去るつもりはなく、むしろ戦線を広げる考えだ」と語る。
・NATOの大使級理事会は、マケドニアと接するコソヴォ境界周辺の兵力をさらに増強することを決め、マケドニア共和国政府との関係強化のために首都スコピエのNATO連絡事務所に高官を派遣。
・ロバートソンNATO事務総長は、「武力による国境変更は受け入れない。マケドニア共和国の主権と安定を完全に支持する」との声明を発表。
・マケドニア共和国攻撃をしてきたアルバニア系武装組織民族解放軍・NLAは、深夜に至り「無期限かつ一方的な停戦」を宣言し、マケドニア政府に和平交渉に応じるよう呼びかける。
・トライコフスキ・マケドニア大統領はアルバニア系武装組織・NLAとの直接対話を拒否し、「武装勢力を放逐しなければならない」と述べる。
・国際部隊のドイツ部隊がコソヴォとマケドニア国境付近での武器密輸現場を発見。狙撃用ライフルや自動小銃、地雷などを押収。
・国連安保理は、マケドニア共和国でテロ活動を続けるアルバニア系武装勢力「民族解放軍・NLA」を非難し、国境の変更は一切認めないとする決議を全会一致で採択。
註;一方、米国軍はアルバニア系民族解放軍・NLAに対し、武器や食料を空から投下するなどで支援をしている。
03/22:
・マケドニア共和国政府は、アルバニア系武装組織提案した一方的な停戦を拒否。共和国政府軍は、北西部テトヴォの丘陵地帯の武装勢力に対し、小規模の攻撃を再開。マケドニア共和国の治安当局はテトヴォ周辺で、武装勢力の拠点を急襲し武装勢力の十数人を逮捕したが、その他の武装勢力は逃亡する。また、テトヴォの政府の検問所で、止めた車から手榴弾を投げようとしたアルバニア系と見られる2人を射殺。
・マケドニア共和国の首都スコピエ周辺でも、アルバニア系武装組織・NLAとマケドニア治安部隊とが激しい銃撃戦を展開し、警察官1人が負傷。
・NATOは、セルビア共和国およびモンテネグロ共和国とコソヴォ自治州との境界に設けられた幅5キロの非武装「安全地帯」の大半に、ユーゴ連邦軍が再展開することを認める決定を下す。
03/23:
・マケドニア国防省は、コソヴォ自治州からのゲリラの越境攻撃を受けたとして、政府軍・治安部隊が初めて国境を越えて攻撃したと発表。国防省報道官は、「民族解放軍・NLA」と名乗る武装組織はマケドニア国内には基盤がなく、コソヴォ解放軍・KLAと同根だと強調。さらに、国際保護区から侵略を受けた史上初めての例だと非難。
・マケドニア共和国軍高官は、「コソヴォでアルバニア系を弾圧したセルビアと、我々を一緒にしてもらっては困る。アルバニア系は少数民族として最大限尊重している。アルバニア系の閣僚も大使もいる。新聞やテレビもアルバニア語で放送している」と語る。また、マケドニア軍高官は、コソヴォを事実上管理している欧米に対し、「武装組織を放置し、ときには秘密裏の援助すら与えてきたのは欧米の失策だ」と非難。
・ブッシュ米大統領は、「マケドニア共和国はバルカンにおける民主主義と多民族共存国家の良き模範であり、アメリカにとっては親密な友好国であり、NATOにとっては良きパートナーである」と発言。
・欧州連合・EUは首脳会議を開き、マケドニア情勢について集中協議。アルバニア系武装組織・NLAを非難する声明とともに、マケドニア政府にも自制を求める意見が出される。
・マケドニア共和国のトライコフスキ大統領は招かれたEU首脳会議の席で、「バルカン半島の国々は、欧州連合に入るか犯罪連合にとどまるかの岐路にいる。マケドニアの状況を甘く見てはいけないが、ことさら深刻視することはない。我が国はこの危機を十分乗り切れる」と述べる。
・セルゲーエフ露国防相は、「マケドニア軍を支援する用意がある。今日のマケドニア情勢を招いた直接の原因は西側にあり、分離独立主義を奨励した結果だ」と述べる。
・マケドニア政府は、NLA拠点地域の一般市民に対し、村を捨てて政府の保護下に入るよう呼びかける。しかし、これに応じたアルバニア系住民は余りいない。
03/24:
・EU首脳は、ストックホルムで会議を開き、マケドニアについて「偏狭な民族主義や暴力に訴える勢力には、どんな支援もできない」との声明を発表。ぺーション・スウェーデン首相は、「EUは危機に瀕しているマケドニア共和国側にいる」。とする一方で、シュレーダー独首相は、「危機を脱するには、アルバニア系の国民を正当に扱うことだ」とアルバニア系よりの発言も付け加える。
・トライコフスキ・マケドニア大統領は、「テロリストが狙っているのはテトヴォの街ではない。複数民族が共存するマケドニア社会そのものだ」と警戒を呼びかける。
03/25:
・マケドニア共和国政府軍は、テトヴォでアルバニア系武装組織・NLAが拠点としている丘陵地帯に向けて総攻撃を開始する。マケドニア政府軍はウクライナからリースしたばかりの攻撃ヘリコプターMi-24を使用し、NLAを攻撃。NLAは、シャル山脈の奥深くに撤退する。
・ゲオルギエフスキ・マケドニア首相は、「作戦は成功し、主要な拠点を制圧した」と述べる。
・BBC放送は、マケドニア政府軍の装甲車の車列がテトヴォ市内を通過している映像を放送する。
・日本のNGO6団体が、「NATO軍の空爆から1年、旧ユーゴの問題は終わっていない」とするシンポジウムを東京で開く。
03/26:
・パウエル米国務長官はマケドニア情勢に、「マケドニア軍の能力を高めるため、米国ができることを検討している」と述べる。
・NATOのロバートソン事務総長とEUのソラナ共通外交上級代表が、マケドニアのスコピエ入りしてマケドニア共和国政府と協議。NATOとEUの両代表は、マケドニア政府に対話を強く促す。
03/27:
・NATO外相理事会は、コソヴォ自治州とセルビア共和国間の非軍事地帯をKLAが活動拠点としていることを憂慮し、非軍事地帯の「条件付きの段階的縮小」で合意。
03/28:
・マケドニア共和国のアルバニア系民主党のジャフェリ党首は、多民族国家としての原則を盛り込んだ憲法を求めると発言。
03/29:
・コソヴォ自治州の南部の村クリベニク近くで、取材中のAP通信の英国人プロデューサーが、アルバニア系武装組織・NLAとマケドニア政府軍との戦闘に巻き込まれて死亡する。
03/30:
・マケドニアのタヌセフツィ地方で戦闘が発生した後、「アルバニア系民族解放軍・AKSh」が結成される。
・朝日新聞によると、コソヴォ自治州のセルビア人住民はアルバニア系ゲリラの襲撃が続く中、「国際部隊・KFORがいなければ生きていけない」と語る。
03/31:
・ミロシェヴィチ・ユーゴ前大統領を逮捕するためにベオグラードの大統領官邸に治安部隊50人が到着したものの、大統領官邸には支持者150人が詰めかけて突入を妨害して阻止する。直後に黒覆面をつけた数十人の特殊部隊員が到着し、自動小銃を構えて発砲しながら市民を押しのけて官邸に突入。支持者も発砲して応戦し、特殊部隊員とカメラマンの2人が負傷。ミロシェヴィチ前大統領の官邸は、特殊部隊などに包囲される。
・セルビア共和国のミハイロヴィチ内相は、「遅かれ、早かれ、前大統領は逮捕する」と決意を述べる。
註;セルビア政府当局が強行策に踏み切った背景には、復興支援に絡む欧米諸国の圧力がある。米議会は1億ドルの経済支援を承認する条件として、旧ユーゴ国際戦犯法廷への十分な協力を求め、その期限は31日としている。
・ブレア英首相は、ミロシェヴィチ・ユーゴ前大統領が逮捕されたとの報を受け「極めて重要で歓迎する」との声明を出す。
・米国務省高官は、「明らかに良い動きだ。国内外で侵した罪の責任を問うためのスタートになる」とミロシェヴィチ前大統領の逮捕を評価。
・ブッシュ米大統領はミロシェヴィチ前大統領の逮捕の動きについて、「我々はいつも、司法の裁きにかけるべきだと主張してきた」と述べる。
・パウエル米国務長官はユーゴスラヴィアへの経済支援について、「月末までにユーゴ連邦政府がとる行動を全て見極めて判断する」と述べる。
・フランス下院のロンクル外交委員長はミロシェヴィチ前大統領の逮捕問題に関し、米国政府のやり方を批判する声明を出し、ユーゴ当局に対する強い圧力を「拙速で、稚拙で、非生産的だ」と指摘。
・旧ユーゴ国際戦犯法廷のデル・ポンテ首席検察官は、ミロシェヴィチ・ユーゴ前大統領を速やかに法廷に引き渡すよう求め、引き渡しを拒否した場合、ユーゴスラヴィアにとって不利な結果を招くことになるだろうとの声明を出す。
・マケドニア共和国で、アギム・チェク・コソヴォ解放軍・KLA前司令官のコソヴォ防衛隊・KPCが活動を始める。
註;コソヴォ防衛隊は、安保理決議1244によって設置されたコソヴォ暫定行政支援機構・UNMIKの管理下にあったが、現実にはほとんど放任状態であった。
03/00:
・トライコフスキ・マケドニア共和国大統領は、アルバニア系武装勢力を「テロリスト」と非難。
・米元外交官ロバート・フロヴィックが、マケドニア駐在の欧州安保協力機構・OSCE派遣部隊の指揮官に任命される。フロヴィック指揮官はアメリカ大使に促されてNLAゲリラの首領と会談し、武器を供与する。マケドニア西部で、アルバニア系ゲリラ部隊とマケドニア共和国軍の間で武力衝突が起こる。
・マケドニア共和国政府は、NATO軍に武装勢力への武器供給を絶つよう要請する一方、緊急安全保障会議を招集して対応策を検討。武装勢力が和平に応じる気配がないため、正規軍を投入して応戦し始める。マケドニア政府は、隣国ブルガリアから武器援助を取り付ける。
04/01:
・ミロシェヴィチ・ユーゴ連邦前大統領は、説得に応じる形で投降する。セルビア当局の逮捕容疑は、「1,大統領として一定の人物の利益を図り、セルビア社会党の政権維持の目的で罪を犯した。2,権限を逸脱して違法な命令を下し、セルビア共和国に10億ルーブリ、ユーゴ連邦に2億マルク(112億円)の損失を与えた。3,公文書偽造を含むこれらの違法行為は禁固5年に値する。4,セルビア共和国大統領時代、連邦関税局長と図り、関税の一部をベオグラード銀行の別口座に振り込み、セルビア共和国国家機関などの予算に充当した」というもの。
・ブッシュ米大統領は、「旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYで、人道的犯罪を問う第1歩であるべきだ」との声明を発表。
・ロシア外務省のヤコベンコ情報局長は、「ユーゴ連邦指導部への外部からの圧力は内政干渉になるだけでなく、民主勢力の立場を弱め、バルカン情勢の安定化にはつながらない」との声明を出す。
・旧ユーゴ国際戦犯法廷のデル・ポンテ首席検察官は、ミロシェヴィチ前大統領の逮捕について、「前向きのサインだ」と評価し、年内にもハーグに移送されるべきだとの考えを示す。
04/02:
・国連アナン事務総長はユーゴ連邦前大統領の逮捕について、「現政権がいい方向に向かっていることを示している」と語る。
・米国務省は、ミロシェヴィチ前大統領を逮捕したユーゴ連邦政府に対し、総額1億ドルの経済支援を続行すると発表。ただし、旧ユーゴ国際戦犯法廷におけるミロシェヴィチ前大統領の訴追に完全に協力することを復興支援の条件とする。それがない場合にはユーゴスラヴィアが増額を期待している支援国会議の今年の開催に反対する、と付け加える。
・米政府はユーゴ連邦側に、「1,ミロシェヴィチ前大統領を旧ユーゴ戦犯法廷に引き渡すのに必要な国内法の改正。2,ミロシェヴィチ前大統領以外の戦犯の法廷への引き渡し。3,政治犯として拘束しているアルバニア系住民の釈放」などを要請。
・ジンジッチ・セルビア共和国首相は、「ミロシェヴィチ前大統領への追及の範囲を、経済犯罪に限るつもりはない」と述べ
る。
04/03:
・セルビア共和国野党連合のヨバノヴィチ元報道官は、ミロシェヴィチ・ユーゴ前大統領と司法当局との交渉役を務めた際に、「オランダ・ハーグの旧ユーゴ国際戦犯法廷には引き渡さない」との条件を提示して投降に応じさせた、と証言。
・コシュトニツァ・ユーゴ新大統領は、旧ユーゴ国際戦犯法廷に引き渡すことには否定的な考えを示す。
・パウエル米国務長官は、ミロシェヴィチ前大統領をハーグに移送するという条件で、ユーゴ連邦に5000万ドルの支援を約束。
・ユーゴ連邦側は、13億ドルの支援を求める。
04/04:
・クック英外相はユーゴ連邦を訪問し、コシュトニツァ・ユーゴ新大統領と会談。外相は、「ミロシェヴィチ前大統領の旧ユーゴ国際戦犯法廷への出廷の必要性」を強調。「大統領の統治期間中に、この国の債務は大きく増えた。ユーゴスラヴィアは助けを必要としている。積極的に援助に乗り出す」との考えを示す。
・セルビア共和国のベオグラードで、ミロシェヴィチ前大統領のハーグへの移送に反対するデモが行なわれる。
04/05:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYのカルラ・デル・ポンテ首席検察官は代表団をベオグラードに送り、ミロシェヴィチ前大統領の身柄引き渡しを求める令状を、ユーゴ連邦当局に手渡す。
04/09:
・EU外相理事会はマケドニア共和国首脳を招き、国内改革を後押ししてEU加盟のための安定連合協定・SAA「貿易自由化、政治的協力、経済ならびに制度改革、EUの立法過程への参画」のための基礎的協定について協議し、マケドニア政府が調印。
EUはこの後、ユーゴ連邦を含むバルカン半島の5ヵ国とSAAを結ぶ方針。
・セルビア共和国コソヴォ自治州のマケドニア国境付近で、英軍のヘリコプター1機が墜落。乗員7人の安否は不明。
04/10:
・ユーゴ連邦のミロリュウブ・ラブス副首相は、「IMFの第一次借款が6月1日に実現するだろう」と語る。
04/11:
・セルビア共和国当局は、ミロシェヴィチ前大統領が「心臓発作の前段階」になったとし、中央拘置所から市内の病院に移送する。
・セルビア共和国コソヴォ自治州に展開する国際部隊の報道官によると、コソヴォ北東部の州境を警備していたロシア兵が、アルバニア系武装勢力の銃撃を受け1人が死亡、数人が負傷。
04/12:
・パウエル米国務長官は、バルカン半島と周辺の計11ヵ国の外相会議に出席するためにマケドニア共和国を訪問。
04/13:
・ユーゴ連邦当局は、ミロシェヴィチ前大統領の「病状は深刻ではない」と診断し、拘置所に再収監する。
・セルビア共和国のコソヴォ自治州南東部で地雷が爆発し、NATO軍主体の国際部隊のイギリス人兵士が1人死亡、2人が負傷。
04/15:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷は、非公開起訴していたボスニアのセルビア人共和国軍のオブレノヴィチ司令官を、ボスニア内戦中に起きたスレブレニツァの虐殺に関わったとして、NATO軍主導のSFORに逮捕させ、ハーグに移送する。
註;ボスニア和平会議における「デイトン合意」の付随規定には国際警察タスクフォース・IPTFを設置することが決められており、派遣された1700名のIPTFの国際警察官が警察業務を実施することになっていた。そのことからすると、このNATO軍主体の和平安定化部隊・SFORが実行したオブレノヴィチ司令官の逮捕は任務を逸脱した越権行為に当たる。
04/17:
・セルビア共和国のオラドヴィチ副首相は、ミロシェヴィチ前大統領時代に特権で得た財産に税金をかける税制法案を近く議会にかけることを明らかにする。
04/18:
・セルビア共和国コソヴォ自治州の州都プリシュティナの中心部で、政党などが入っているビルの近くに駐車していた車が爆発し、少なくとも1人が死亡、4人が負傷。アルバニア系武装勢力によるテロの疑いが持たれる。
04/22:
・モンテネグロ共和国で、定数78の議会選挙の投票が実施される。
04/23:
・モンテネグロ議会選挙の中間発表では、与党連合の得票率は43%、連邦維持派の野党連合は39%、独立派の野党「自由同盟」は8%。
04/24:
・ジュカノヴィチ・モンテネグロ共和国大統領は、与党連合が過半数を割り込んだものの、今後も独立路線を堅持する立場を表明する。
04/26:
・セルビア共和国のベオグラード地裁は、ミロシェヴィチ前大統領の拘留期限が切れる30日を前に、さらに2ヵ月延長する決定を出す。
04/28:
・アルバニア系武装組織・NLAが、コソヴォ自治州国境に近いベイツェ村で、マケドニア共和国の軍と警察のパトロール部隊を襲撃する。マケドニア共和国軍の装甲車やパトロールの車輌が炎上し、8名が死亡、少なくとも6人が負傷。
・マケドニア共和国のテトヴォ郊外が、NLAに占拠される。
・マケドニアのアルバニア民主党の事務所には、「コソヴォの独立こそ、バルカン和平の唯一の道だ」とのポスターが貼られており、「アメリカ在住アルバニア人連盟の資金提供を受けています」と記述。
04/30:
・マケドニア共和国のビトラでマケドニア人による暴動が発生し、アルバニア系の商店や学校が襲撃され、放火される。マケドニア共和国政府は機動隊を導入し、内務大臣はビトラ市に封鎖令を出す。
05/01:
・マケドニア共和国のラタエ村をアルバニア人武装組織が銃撃し、警察予備隊と激しい銃撃戦となる。
・マケドニア共和国のスコピエ市では、暴徒と化したマケドニア人がアルバニア系住民の店舗や家屋を襲撃する。
05/02:
・マケドニア共和国政府軍は、北部コソヴォ自治州に近い村バキンツェ一帯の丘陵地を拠点としているアルバニア系武装組織・NLAを、攻撃ヘリなどで攻撃を始める。
05/03:
・コソヴォ自治州からマケドニア共和国領内に、KLA・NLAの大規模なゲリラ部隊が侵入する。マケドニアのクマノヴォ郊外で、マケドニア共和国軍の装甲車がアルバニア系武装組織・NLAの襲撃を受け、マケドニア兵2人が死亡。
・ボリス・トライコフスキ・マケドニア共和国大統領はマケドニア共和国軍兵士の捕虜の解放を求めるとともに、クマノヴォ周辺の9つのアルバニア系の村の住民に退去を命じる。アルバニア系武装組織は、捕虜の解放には応じず。マケドニア共和国政府は、1日の延期を発表。
05/04:
・マケドニア共和国政府は、武装組織に対する捕虜解放の期限を再度延長する。
05/05:
・マケドニア共和国のゲオルギエフスキ首相は、アルバニア系武装組織・NLAの攻撃が激化しつつあるのを受けて「戦争宣言」の可能性について言及し、政府としての検討に入る。「戦争宣言」の承認には議会の3分の2の賛成が必要だが、宣言がなされると、その後は軍の行動についての議会の承認が必要なくなる。
・欧州連合・EUは非公式外相理事会をスウェーデンのニーチェピングで開き、マケドニア共和国政府の「戦争宣言」の発令について自制を求めると共に、マケドニアへの支援策を協議。
05/06:
・EUのソラナ共通外交上級代表はマケドニアのスコピエを訪れ、ゲオルギエフスキ・マケドニア首相とEUの方針について協議。
05/07:
・マケドニア共和国政府は、アルバニア系武装勢力・NLAの掃討作戦を強化するための「戦争宣言」について協議し、見送る方針を固める。
05/08:
・マケドニア共和国政府は、アルバニア系武装勢力・NLAとの対決の危機を乗り切るための、「挙国一致内閣」の組閣を野党と協議していたが、アルバニア系野党の「民主繁栄党」が態度を保留したため、持ち越しとなる。
・世界銀行は、ユーゴスラビア連邦の再加盟を承認する。
05/09:
・ユーゴ連邦のコシュトニツァ大統領が訪米し、ブッシュ米大統領と会談。
・ブッシュ米大統領はユーゴ復興支援の条件として、ミロシェヴィチ・ユーゴ前大統領の旧ユーゴ国際戦争犯罪法廷への引き渡しを求める。
・マケドニア共和国のスルプチャネ村のアルバニア系住民は、首都スコピエの北東30キロのクマノヴォに戦闘を避けて避難する。
05/10:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷のデル・ポンテ首席検察官は、「こちらの方が、設備が整っています。ミロシェヴィチ・ユーゴ前大統領を早くお迎えしたいです」と語る。
05/11:
・マケドニア共和国政府の内閣に、アルバニア系野党「民主繁栄党」が参加を決定し、挙国一致内閣が発足する見通しとなる。
05/12:
・マケドニア共和国政府軍は、再びアルバニア系武装勢力の掃討作戦を開始する。2つの村を攻撃し、30人のゲリラ小隊を壊滅させる。
05/13:
・マケドニア共和国議会は、挙国一致内閣の発足を102対1の賛成で承認する。新内閣には多数派のマケドニア人と少数派アルバニア系双方の主要政党が参加。アルバニア系住民に対する差別をなくすための政策を進めるための措置として実施。しかし、コソヴォ解放軍・KLAおよび民族解放軍・NLAは分離独立闘争を継続。
05/14:
・NATOは大使級理事会を開き、ユーゴ連邦のセルビア、モンテネグロ両共和国南部のコソヴォ自治州沿いに設定されている幅5キロの非武装「安全地帯」を、ユーゴ連邦軍に完全返還することを決める。
・国連当局は、セルビア共和国コソヴォ自治州の暫定自治政府を作る「枠組み案」を発表。内容;「1,11月17日に議会選挙を実施し、120議席の内10議席はセルビア系、10議席はロマなど少数民族の枠とする。2,大統領は議員による間接選挙で選出する。3,司法や軍事分野は引き続き国際管理下に置く。4,コソヴォ自治州の独立は認めない。5,行政は、大統領が任命し議会が承認する首相が担う。6,ただし、国連の文民部門上級代表が拒否権を持つ」など。
05/15:
・ユーゴ連邦のコシュトニツァ大統領はドイツを訪問し、シュレーダー独首相と会談。バルカン安定のための経済支援について、認識が一致。
05/17:
・トライコフスキ・マケドニア共和国大統領は、スルプチャネ村を拠点としているアルバニア系武装勢力に「投降」を呼びかけ、期限が過ぎた後に大規模な攻撃を示唆。住民は村からは数百人単位で脱出し始める。
05/24:
・ユーゴ連邦治安部隊は、コソヴォ自治州を取り巻く5キロ幅の「安全地帯」東部のB地区に、アルバニア系ゲリラの活動を封じ込める目的で最終的な展開を行ない、治安部隊3500人が10日間かけて進駐する予定。この進駐で、コソヴォ自治州を取り巻く「安全地帯」は事実上消滅することになる。ユーゴ連邦政府は「武器を置けば、罪は問わない」とゲリラ部隊に投降を呼びかけ、それに応じた一部のゲリラが投降。コソヴォ自治州のアルバニア系の兵力は、5万人を超えている模様。
註;コソヴォのアルバニア系住民は、ディアスポラ・在外離散同胞としてヨーロッパ全土におよそ40万人が居住している。このディアスポラが戦闘員としてコソヴォ解放軍やマケドニア民族軍などの武装組織に多数は入り込み過激化している。
05/27:
・マケドニア共和国のスルプチャネ村で、マケドニア政府軍とアルバニア系武装組織・NLAとの激しい戦闘が展開される。
05/00:
・英国の科学者団体ロイヤル・ソサイエティーが、劣化ウランを吸引すると肺ガン発生率が通常より2倍になるとし、劣化ウラン弾が使われた作戦に参加した兵士への健康検査を徹底すべきだ、とする報告書を公表。
06/04:
・セルビア共和国コソヴォ自治州で墓地の発掘が進められ、紛争時に殺されたアルバニア系住民と見られる86遺体が発見される。遺体は解放軍の制服や女性のスカーフの特徴などからアルバニア系と見られるが、3遺体には頭部がないことから虐殺の疑いが濃厚。セルビア共和国のバティッチ法相は、「近く戦争犯罪で起訴状を出す用意がある」と述べる。
06/05:
・ラムズフェルド米国防長官は、コソヴォ自治州に建設したボンドスティール米軍基地を訪問。
・マケドニア共和国の南部の都市ビトラで、マケドニア住民がアルバニア系の家や商店など数十軒を焼き討ちにする。アルバニア系の政府幹部宅も襲われ、少なくとも3人が怪我。
06/12:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷の判事に、日本人の東京高検検事多谷千香子検事が任命され、国連総会の投票で承認される。
06/14:
・マケドニア駐留ドイツ軍が、民族解放軍・NLAおよびコソヴォ解放軍・KLAの激しい銃撃に曝される。
・NATOのロバートソン事務総長とEUのソラナ共通外交上級代表がマケドニアを訪問し、マケドニア共和国政府が提示しているアルバニア系武装組織・NLAとの和平案への支持を表明する。
06/16:
・米ロ首脳会談が、スロヴェニアのリュブリャナの元チトー大統領の別荘で行なわれる。
・プーチン露大統領はセルビア共和国のベオグラードを訪れ、コシュトニツァ・ユーゴ連邦大統領と会談。プーチン露大統領は、「この地域の安定が脅かされているが、過激主義の根源はコソヴォにある。テロリストの武装解除に向けて、あらゆることを行なわなければならない」と述べる。
06/18:
・台湾外交部は、マケドニア共和国との外交関係の断絶と経済援助の停止を発表。台湾とマケドニアの外交関係は99年1月に結ばれたが、国連安保理常任理事国としての中国との軋轢によって破棄されることになる。
06/20:
・NATOは大使級理事会を開き、マケドニア共和国政府の求めに応じ、アルバニア系武装組織・NLAの武装解除に向けた兵力派遣に合意。派遣の条件は、マケドニア政府とアルバニア系武装勢力との間に完全な停戦が成立することで、3000人規模の兵員派遣が見込まれている。
・トライコフスキ・マケドニア大統領は、アルバニア武装勢力との和平を目指すための協議について、「残念だが完全に暗礁に乗り上げた。アルバニア系の2党が態度をがらりと変え、2つの国からなる連邦制の採用を要求している」と述べる。
06/21:
・ユーゴ連邦の与党民主連合は、「戦争犯罪法廷協力法案」の議会提出を断念する、と発表。法案に反対したのは、連立内閣に加わるモンテネグロ共和国選出の「社会人民党」が、市民の外国への引き渡しは認めないと主張したことによる。
・ジブコヴィチ連邦内相は、「協力法がなくても戦犯法廷には協力できる」と述べる。
06/22:
・マケドニア共和国政府軍は、アルバニア系武装勢力との和平が暗礁に乗り上げたことで、アルバニア系武装組織・NLAの拠点である首都スコピエの北西10キロにあるアラチノヴォ村を、戦闘ヘリや戦車を動員して総攻撃する。
・NATOのロバートソン事務総長はマケドニア政府軍がアルバニア系武装勢力への砲撃を再開したことについて、「愚行も甚だしい」と強く批判する声明を発表。
・「ラムゼイ・クラーク朝鮮戦争国際戦犯法廷」を韓国で開廷。国連軍の戦争犯罪について審理。
06/23:
・ユーゴ連邦政府は、「旧ユーゴ国際戦犯法廷」への戦犯引き渡しを可能にする政令を閣議決定。連立内閣に加わる「社会人民党」の7閣僚は政令決定に反発して辞意を表明。
・ユーゴ連邦のラブス副首相は、旧ユーゴ国際戦犯法廷への戦犯被告引き渡し協力を定めた政令の閣議決定後、最初の引き渡しを「数日以内」に始めると、記者団に語る。
06/24:
・EUのソラナ共通外交・安全保障上級代表は、マケドニア政府軍とアルバニア系武装組織・NLAとの武力衝突回避を仲介するためにマケドニアを訪問。
・マケドニアの首都スコピエ近郊のアラチノヴォ村から車で撤退するアルバニア系武装ゲリラを、EUとNATO軍の車輌が護衛して北部のゲリラの拠点に移動させる。
06/25:
・マケドニアで、アルバニア系民族解放軍をバス10台で護送していた国際部隊・KFORの米軍部隊が、怒れるマケドニアの農民や労働者1000人に包囲される。
註;この護送に携わったのは主として米元職業軍人を抱える軍需請負会社MPRIで、傭兵の使用していた武器・装備は70%が米国製である。
・マケドニア西部の街テトヴォ近郊で、アルバニア系武装勢力が激しい攻撃を加え、警官1人が死亡、3人が負傷する。
・マケドニアのスコピエの市民数千人が、アルバニア系武装勢力と政府が取り引きしたとして、トライコフスキ・マケドニア共和国大統領の退陣を求めて騒ぎを起こす。
・EU外相理事会は、新設のマケドニア現地事務所代表にレオタール仏元国防相を当てる人事を発表。マケドニア共和国政府には、アルバニア系武装勢力への武力行使を控えるよう求めるなど、民族融和への関与と圧力を強める。
・ユーゴ連邦のグルバツ法相は、ミロシェヴィチ・ユーゴ前大統領を旧ユーゴ国際戦犯法廷に引き渡す手続きとして、ベオグラード地裁に請求書を提出。
・ミロシェヴィチ・ユーゴスラヴィア前大統領の弁護団は、旧ユーゴ国際戦犯法廷への戦犯引き渡しを可能にした政令を「違憲」として憲法裁判所に異議申し立てをする。
06/26:
・セルビアのベオグラードで、ミロシェヴィチ・ユーゴ前大統領の強行移送に抗議する市民1万人がデモ行進を行ない、西側に買収されたと議会を非難。コシュトニツァ大統領は、「ミロシェヴィチ前大統領が移送されることはない」と約束。
・朝日新聞によると、マケドニア北部でアルバニア系武装勢力がアルバニア系住民の村を次々と制圧しているが、制圧された村は周囲から孤立し、住民は飢えに苦しみ始めているという。
06/27:
・NATO大使級理事会で、ミロシェヴィチ・ユーゴ前大統領の旧ユーゴ国際戦犯法廷への移送は「時間の問題」との見方で一致。また、NATO軍はマケドニアへの派兵計画作成を完了。
・米軍輸送ヘリ・チヌークは、重火器と弾薬をコソヴォ解放軍に輸送する。
06/28:
・ユーゴスラヴィアの憲法裁判所は、旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYへの被告引き渡し手続きを一時的に凍結する命令を出す。ユーゴスラヴィア憲法は国民を外国に引き渡すことを禁じている。
・セルビア共和国政府のジンジッチ首相は、ミロシェヴィチ・ユーゴ前大統領をベオグラードの拘置所から密かにボスニア・ヘルツェゴヴィナの米軍基地に移し、その後英軍機とヘリコプターでハーグの旧ユーゴ国際戦犯法廷へ強行移送する。ICTYはミロシェヴィチ・ユーゴ前大統領を直ちに収監する。
・コシュトニツァ・ユーゴ連邦大統領はミロシェヴィチ前大統領のハーグへの移送について、「憲法にかなっていない。国家の秩序を重大な危機にさらすものだ」と反発。
・国連アナン事務総長は、ミロシェヴィチ・ユーゴ前大統領を旧ユーゴ国際戦犯法廷に引き渡したことについて、「引き渡しは免罪に対する勝利である。いかなる者でも、強力な裁きの前に引き出されることを示した」との歓迎する声明を発表。
・ブッシュ米大統領は、「ユーゴ政権が悲劇の過去から脱し、欧州の民主社会への完全なメンバーとしての未来へ舵を切る公約を示したものだ」との声明を発表。
・ブレア英首相は、「いい知らせだ。訴追された全ての人々が法廷に立つことが重要だ」と述べる。
・シラク仏大統領は、「ミロシェヴィチは遂に法廷で釈明をしなければならなくなった。10年間、彼はバルカンに憎しみと戦争の種を撒き散らし、自分の国民を不幸にしたのだ」と指摘。
・ロバートソンNATO事務総長は、「ユーゴスラヴィア当局の、勇気あふれる賢い決断を祝福する」との声明を発表。
・イワノフ露外相は、「ユーゴスラヴィアの国内問題であり、外部からの圧力なしに決めるべきだ。引き渡しは安定には繋がらない」と述べる。
06/29:
・セルビアのベオグラード市で、ミロシェヴィチ・ユーゴ前大統領の強行移送に抗議する市民数千人が暴徒と化す。
・ミロシェヴィチ前大統領の移送は民主的な手続きを無視して実行されたため、政府与党内に亀裂が生じている。
・セルビア民主党は、移送に抗議して両議会で独自の投票行動を取ると発表。
・ジジッチ・ユーゴ連邦首相は、ミロシェヴィチ前大統領の旧ユーゴ国際戦犯法廷への移送に抗議して辞任する。
・モンテネグロ共和国社会人民党のプラトヴィチ党首は、ジジッチ・ユーゴ連邦首相の辞任に伴い連立離脱を表明。
・コシュトニツァ大統領はジジッチ連邦首相の辞任を受け、「7月2日から後継首相の任命について本格的に検討する」と述べる。
・ユーゴスラヴィア支援国会議は、ブリュッセルで40ヵ国以上が参加して開催され、年内に12億5000万ドル(1550億円)を提供する見通し。EUは5億3000万ユーロ、米国は1億8200万ドル、日本は5000万ドルの無償協力と技術研修員20人の受け入れを表明。復興計画は、道路、発電所、工場の再建、経済改革などに今後3,4年間で39億ドル(4850億円)が必要になる。
・国連総会は、安保理の勧告を受けてアナン事務総長の再任を全会一致で採択する。
06/30:
・セルビア共和国のベオグラードで、ミロシェヴィチ・ユーゴ前大統領の支持者が国会議事堂前で前大統領のハーグへの移送に抗議するデモを行なう。
・コソヴォ解放軍・KLAがマケドニア共和国に侵入し、スコピエ近郊の戦略的な重要拠点であるマケドニア人のアラチノヴォ村を攻撃して占領。コソヴォ解放軍には米軍の地対空砲が支給されていることもあり、スコピエの空港では全ての航空機の発着が中止される。
・EUは、マケドニア共和国政府に武装ヘリによる反撃を思いとどまるよう、圧力をかける。
・NATO軍が仲介し、コソヴォ解放軍をアラチノヴォから撤退させることを、マケドニア共和国政府に受け入れさせる。米軍の502歩兵師団がこの任務を担当。米軍はマケドニア政府との合意事項を無視してコソヴォ解放軍をバスに乗せて移送し、マケドニア領のアルバニア系住民のラドゥシャ村でコソヴォ解放軍を武装したままで解放する。移送のバスに、米軍需請負会社・MPRIの元将校の軍事顧問16人が同乗する。このニュースが報じられると、スコピエのマケドニア人市民が憤激し、アメリカ大使館やマグドナルド店などを襲撃する。
・NATO軍主体のコソヴォ駐留の国際部隊・KFORは、マケドニアからコソヴォに移動したと見られるアルバニア系武装組織「民族解放軍・NLA」のメンバー90人を拘束したと発表。拘束したのは、コソヴォの米軍管轄区域内。
06/00:
・ドイツ政府は、マケドニア国防軍に原野走行車と赤外線探知機を提供する。
07/01:
・英サンデー・タイムズ紙は、ユーゴ連邦軍のパブコヴィチ参謀長の話として、NATO軍のユーゴ空爆中にマケドニア内の難民キャンプを訪れたブレア英首相に対し、ユーゴ連邦軍がミロシェヴィチ・ユーゴ前大統領に命じられて暗殺計画を立てていた、と報じる。
07/02:
・ミロシェヴィチ・ユーゴ前大統領はハーグの拘置所で弁護士と面会し、お金と着替えと本の差し入れを依頼。法廷については、「戦犯法廷そのものの存在意義を認めない」として初出廷には弁護士をつけず、本人1人で望む方針を伝える。
・コシュトニツァ・ユーゴ連邦大統領は、連邦政府の総辞職問題で連邦議会の各会派と組閣について協議を始める。セルビア共和国のジンジッチ首相は、根本的な解決のために改憲を提案。
・ロシアのプーチン大統領はシラク仏大統領との会談後の記者会見で、「ミロシェヴィチ前大統領の引き渡しは、ユーゴ情勢を不安定にした」と批判。
・シラク仏大統領は、「不正に対する正義の支配、圧制に対する民主主義の優位を意味する」と語る。
・ボリスラブ・ミロシェヴィチ前駐露ユーゴ大使は旧ユーゴ国際戦犯法廷について、「NATOに操作されている」と批判。コソ
ヴォ紛争について、「確かにセルビアによるテロ対策はあった。しかし、テロリストも同じような行為を沢山していたではない
か。アルバニア系テロリストを全く批判しない。ダブルスタンダードだ」と非難。
07/03:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷がミロシェヴィチ・ユーゴ前大統領の初公判を開く。
裁判長;同法廷で97年から務めるメイ判事(英)。
被告人:「ミロシェヴィチ・ユーゴ前大統領、 ミルティノヴィチ・セルビア共和国前大統領、シャイノヴィチ・ユーゴ連邦前
副首相、 オイダニッチ・ユーゴ軍前参謀長、ストイリコヴィチ・セルビア共和国前内相」の5人。
起訴状:「1,対象期間;1999年1月から6月20日(NATO空爆終了時)。2,罪状;人道に対する罪・①コソヴォのアルバ
ニア系住民の追放・殺害・政治・人種・宗教を理由にした迫害3件。②戦争に関する慣習法・殺害1件」。3,犯罪事実;「①99年1月から同年6月20日の間、被告人らはコソヴォ在住のアルバニア系市民に対するテロ・暴力の軍事行動を計画、煽動、命令した。②コソヴォのアルバニア系住民74万人の強制的な追放。③アルバニア系非戦闘員の殺害。4,大量殺人の例;99年1月のラチャク村の虐殺や、99年3月のイズビチャ村で住民130人が銃殺された事件など12件。④アルバニア系住民を政治的、人権的、宗教的な見地から弾圧した」。
・ミロシェヴィチ・ユーゴ前大統領は、「この法廷は、ユーゴスラヴィアでのNATO軍の戦争犯罪の正当化を目的としている。国連総会の委任もない。弁護団を任命する必要もない」と弁護人の選任も拒否すると主張。裁判長の無罪申し立ての問いに対し、セルビア語で話したため、裁判長は「無罪申し立てをしたものと見なす」と宣言して12分で閉廷する。
・ボスニアのスルプスカ共和国政府は、旧ユーゴ国際戦犯法廷などの協力を謳った法案を承認し、議会へ送付。
07/04:
・ボスニアのスルプスカ共和国のイバニッチ首相は旧ユーゴ国際戦犯法廷を訪れ、デル・ポンテ首席検察官と会談。同共和国が戦犯法廷に協力するためにまとめた法案について説明し、セルビア人勢力のカラジッチ・スルプスカ共和国前大統領の逮捕への見通しを語る。法案は国会の承認を必要とするが、国会が否決した場合、セルビア共和国がミロシェヴィチ・ユーゴ前大統領を強制移送したような強行策を採る可能性を示唆。
07/05:
・マケドニア共和国政府とアルバニア系武装組織・NLAは、NATOの仲介で停戦合意文書に署名。停戦は5日から発効する。この停戦合意により、アルバニア系武装勢力の武器回収・管理のため、NATO軍の3000人の兵力派遣計画が、現実性を帯びる。
07/06:
・モンテネグロ共和国の社会人民党は、ミロシェヴィチ前大統領の強制移送に抗議して連邦の連立内閣離脱を宣言していたが、コシュトニツァ連邦大統領およびモンテネグロの連邦維持派の政党の説得により、復帰することを決める。
・旧ユーゴ国際戦犯法廷デル・ポンテ首席検察官はクロアチアのザグレブ入りし、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ紛争に関する戦犯容疑者の逮捕について、クロアチア共和国政府と協議する。
・ミロシェヴィチ・ユーゴ前大統領の妻のミリャナ・マルコヴィチが、ハーグに行くためにオランダのビザを申請。
07/07:
・クロアチア共和国の中道左派ラチャン連立内閣は緊急閣議を開いて10時間にわたる協議を行なった末、「嵐作戦」を指揮して旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYから非公開起訴された、クロアチア人将軍2人アンテ・ゴドヴィナとラヒム・アデムの逮捕と法廷側への身柄引き渡しを決める。これを不服としたグラニッチ副首相ら4閣僚が、抗議して辞任する。
・ラチャン・クロアチア共和国首相は、「他に選択肢はない。協力しないことは世界での孤立化を意味する」と語る。
・セルビアの週刊誌「ニン」は、ベオグラードで緊急アンケートを実施(7月/12日号に掲載)。「1,セルビア政府はハーグ国際法廷へのミロシェヴィチ引き渡しに関して正しく行動しましたか、『いいえ・56.5%』。2,ミロシェヴィチ大統領は国内で裁くべきですか、或いはハーグで裁くべきですか、『国内・72%』、『ハーグ・16.5%』。3.ハ-グ国際法廷の正当性を承認しますか、『承認しない・62%』」。
07/09:
・英タイムズ紙は、旧ユーゴスラヴィア王家の後継者で英国に亡命中のアレクサンドル・カラジョルジェヴィチ皇太子の帰国を、ジンジッチ・セルビア共和国首相が承認した、と報じる。
07/11:
・ボスニア・ヘルツェゴヴィナ東部のスレブレニツァで、95年に起きたイスラム教徒虐殺事件の6周年の追悼式典が行なわれ、5000人が集まる。
07/12:
・ミロシェヴィチ・ユーゴ前大統領の弁護人は、ユーゴ連邦セルビア共和国当局による前大統領の旧ユーゴ戦犯法廷移送と拘置の違法性を正す訴訟を、オランダの裁判所に起こすと発表。ミロシェヴィチ前大統領は、旧ユーゴ国際戦犯法廷そのものの違法性についても訴訟を起こす方針。
・ユーゴ連邦セルビア共和国ペリシッチ副首相は地元TVに、「96年、ミロシェヴィチ前大統領は欧米諸国を喜ばせるために、経済制裁解除の条件だったカラジッチ・スルプスカ前大統領の逮捕を命じたが、私は断った」と語る。
07/13:
・クロアチア共和国政府は、旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYから非公開起訴されている2人の軍関係者の内、1人はラヒム・アデム将軍であると公表。同将軍は10日以内に出頭することで同意する。もう一人の軍関係者アンテ・ゴドヴィナはICTYの正当性を認めず、出頭を拒否する。アンテ・ゴドヴィナの起訴事由は、95年8月の「嵐作戦」の際、ゴドヴィナの部隊が発砲、放火、刺殺、家屋の徹底的破壊、などによってクロアチア在住のセルビア人住民20万人から25万人を追放したとの容疑による。
07/15:
・マケドニア共和国の村に侵入したアルバニア系武装勢力・NLAの司令官は、マケドニア人に村から出ていかなければ皆殺しにすると通告する。
07/16:
・クロアチア共和国議会は、ラチャン内閣が旧ユーゴ国際戦犯法廷にクロアチア人戦犯の引き渡しを決定したことの是非を問う信任投票を行ない、賛成多数で信任する。
07/17:
・コシュトニツァ・ユーゴ連邦大統領は次期連邦首相に、ドラギシャ・ペシッチ財務相を指名。ペシッチ財務相は辞任したジジッチ連邦首相と同じモンテネグロ共和国の社会人民党の党員。
07/19:
・ミリャナ・マルコヴィチ夫人がミロシェヴィチ・ユーゴ前大統領とハーグの拘置所で面会し、衣類や本を差し入れる。
07/21:
・G8がイタリアのジェノバで開かれ、マケドニア情勢について討議。マケドニア共和国政府に対する支持を鮮明にし、「大アルバニア主義」を排して同国領土の保全を最優先することを確認する。
07/23:
・マケドニア共和国のテトヴォで、アルバニア民族解放軍・NLAとマケドニア政府軍との戦闘に巻き込まれ、アルバニア系の少女1人が死亡し、市民19人と政府軍兵士5人の24人が負傷する。
07/24:
・マケドニア共和国の首都スコピエでマケドニア人住民数千人のデモ隊が、「EUやNATO軍はアルバニア系ゲリラを支援している」として米・独大使館に投石や放火をするなどしたが、間もなく機動隊に鎮圧される。
07/25:
・クロアチア共和国のラヒム・アデム将軍が、旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYに出頭。ICTYが起訴した理由は、アデム将軍がクロアチア内戦中にセルビア人を弾圧したことによる。
07/26:
・マケドニア共和国のマケドニア人の政党とアルバニア系政党の代表が、NATOのロバートソン事務総長とEUのソラナ共通外交上級代表の仲介で、アルバニア系住民の処遇をめぐる包括的な和平交渉を再開することで合意。
07/28:
・マケドニア共和国のオフリドで、トライコフスキ・マケドニア大統領とアルバニア系政党の代表らが参加して、NATOとEUの仲介による包括的和平協議が始められる。協議ではアルバニア語の公用語化や権利擁護などについて話し合われる。
07/30:
・マケドニア共和国の検察は、マケドニア政府軍との戦闘を続けるアルバニア民族解放軍・NLAの指導者11人に対し、テロと国家反逆容疑で逮捕状を裁判所に請求。
・マケドニア共和国全土の3割が、民族解放軍・NLAの支配下に入る。
07/00:
・マケドニア共和国のリュプチョ・ゲオルギエフスキ首相は、ジェームズ・バーデュー米特使が「アルバニア系ゲリラたちの要求に屈服するように、マケドニア政府に対して脅しをかけている」と非難する声明を発表。
・セルビア治安部隊はプレシェヴォ渓谷に侵攻し、「非武装地帯Bゾーン」をコソヴォ解放軍・KLAから奪還。さらに、ユーゴ連邦軍と警察は5キロの非武装地帯に進駐し、アルバニア系武装組織は撤退する。この時レシ司令官が、狙撃されて死亡。
08/01:
・マケドニア共和国でのマケドニア人とアルバニア系住民双方の4政党の政治協議は、アルバニア語の公用語化に合意。次の協議事項は、警察機構の改革となる。
・旧ユーゴ国際戦犯法廷は、ミロシェヴィチ・ユーゴ前大統領の第2回の公判を8月30日に行なうと発表。
08/02:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYは、ボスニアのセルビア人勢力のラディスラブ・クルスティチ元司令官に対し、スレブレニツァの虐殺に関わったとして「集団殺害」や「人道に対する罪」、「ジェノサイド罪」などで禁固46年の判決を言い渡す。
・ボスニア・ヘルツェゴヴィナのボスニア連邦政府は、旧ユーゴ国際戦犯法廷が非公開起訴しているボスニア紛争時のムスリム人勢力軍幹部3人が内務省に出頭したと発表。
08/06:
・マケドニア紛争の解決に向けた、マケドニア人とアルバニア系住民双方の主要政党による協議は、最終調印を前にマケドニア人側が 「和平協定発効前のアルバニア民族解放軍の武装解除の保証」を要求して暗礁に乗り上げる。
08/07:
・イタリアのイル・ピッコロ紙が、旧ユーゴ国際戦犯法廷のデル・ポンテ首席検察官との会見記事で、「コソヴォ紛争中のアルバニア系住民集団虐殺についてのミロシェヴィチ・ユーゴ前大統領の有罪立証は困難」との発言を掲載。
・マケドニア政府の警察は、首都スコピエにあるアルバニア民族解放軍・NLAの活動拠点のビルを急襲し、5人を射殺。
08/08:
・マケドニア共和国のテトヴォとスコピエ間のグルプチン村付近で、民族解放軍・NLAが政府軍と警察部隊に待ち伏せ攻撃をかけ、マケドニア警察の死者10名、負傷16名、民間人の被害は不明。マケドニア共和国軍は、攻撃用ヘリコプターなどで北部丘陵地帯にあるゲリラの活動拠点などに反撃。
・NATO軍の米軍ヘリコプターがマケドニア上空で、情報収集活動を行なう。
・マケドニアの南部プリレプで、アルバニア系ゲリラによるマケドニア軍兵士殺害に怒ったマケドニア人市民100人が、アルバニア系の商店や家など数軒を破壊し、モスクに放火。首都スコピエでも、マケドニア人市民数百人がアルバニア系の店を壊し、トライコフスキ大統領の退陣を叫ぶなどの騒ぎとなり、警察が催涙ガスを使用して鎮圧する。
・NATOは大使級理事会を開き、でマケドニア情勢を協議。NATO幹部は記者会見で、アルバニア系民族解放軍・NLAがマケドニア政府軍兵士を襲撃したことを非難しながらも、「早ければ、和平合意が10日にも成立する可能性がある」との見通しを示す。
・マケドニアの和平協議はオフリドで行なわれ、マケドニア人とアルバニア系を代表する主要4政党がアルバニア系住民の地位向上を認める暫定合意文書に調印。この協定は「オフリド合意」と称される。アルバニア語を公用語とする以外の合意内容は明らかではないが、和平合意後にNATO軍がアルバニア系武装勢力の武装解除のための兵力を、マケドニア領内に入れることで合意している。
08/09:
・マケドニア共和国のテトヴォで、KLA・NLAとマケドニア政府軍・警察の間で激しい戦闘があり、死者8名、負傷35名。この日、マケドニア共和国政府軍は初めてスホイ25戦闘機を投入する。
・NATOのロバートソン事務総長とEUのソラナ共通外交上級代表がウクライナを訪問し、マケドニア共和国への軍事援助を止めるように圧力をかける。
08/10:
・マケドニアのスコピエ北郊の村で、政府軍の兵士を乗せたトラックがアルバニア系ゲリラの仕掛けた地雷に触れ、兵士9人が死亡し、5人が負傷。マケドニアでの民族解放軍・NLAには米軍の暗視装置が提供され、NATO軍の作戦地図が使われる。
・「民族解放軍・NLA」とは別の組織の「アルバニア民族軍」が、8日のマケドニア政府軍への襲撃について犯行声明を出す。
・NATOは、ボスニアに展開するSFORがイスラム教徒虐殺の罪に問われているセルビア人勢力のブラゴエビッチ大佐を逮捕し、同日旧ユーゴ国際戦犯法廷に移送したと発表。
08/11:
・マケドニア政府軍はコソヴォ国境の戦闘に、ヘリを使って物資を輸送する。
・NATOとEUは、マケドニア政府軍が攻撃用ヘリを戦闘に使うことに、直接圧力をかけて牽制する。
・マケドニアの第2の都市テトヴォの戦闘では、アルバニア系がNLA、マケドニア共和国側は軍と警察の他に極右民兵組織「ライオン」が関わる。
08/12:
・マケドニア政府軍とアルバニア系民族解放軍・NLAは、NATO軍の仲介で停戦に入る。
08/13:
・マケドニアの包括和平協定「オフリド合意」に、マケドニア人主要政党とアルバニア系主要政党の4政党が正式に文書に調印する。合意内容;「1,戦闘を停止する。2,民族解放軍・NLAは武装解除をする。3,少数派であるアルバニア系が2割を超す地域ではアルバニア語も事実上公用語として認める。4,アルバニア系の警官の数を人口比相当に増やす。5,NATO軍の平和維持軍を配備する」など。この合意により、NATO軍はNLAの武装解除を行なうことになる。
・アルバニア民族解放軍・NLAは撤退に際し、レソック村の東方正教会の教会堂を破壊。
・アルバニア民族解放軍・NLA幹部は、「オフリド合意を歓迎する。次はNLAの武装解除に関する新たな合意がなされることを期待する」と述べ、「今回の合意を実行に移す手続きが始まらなければNLAは解散しない」と語る。
・フランス外務省は、マケドニア包括和平調印を「重要な一歩だ」と歓迎する声明を発表。
・マケドニア共和国大統領府は、「オフリド合意」に伴う憲法前文の変更を、「マケドニア人の国~」 から「マケドニアの市民は~」 として民族名に触れないことを明らかにする。
08/14:
・マケドニアのアルバニア民族解放軍・NLAのアハメティ政治代表は、「オフリド合意」に伴うNATO軍への武器引き渡し合意文書に署名。民族解放軍・NLAが提示した「ゲリラ兵士は訴追されない」との、トライコフスキ・マケドニア大統領の免責条件を、政府が確約したことで成立。
・「アルバニア民族軍・AKSh」を名乗る組織が、武装闘争を継続する、との声明を発表。
08/15:
・NATOは大使級理事会を開き、マケドニアのアルバニア民族解放軍・NLAの武装解除に向けて、英国軍400人を先遣隊として派遣することを決める。NATOでは部隊派遣の条件として、「1,継続的な停戦。2,武装勢力の自主的な武装解除。3,武装勢力兵士への恩赦」を挙げている。派遣国は英国、フランス、ドイツ、オランダ、ギリシアなど。
08/16:
・マケドニアのテトヴォで、アルバニア系武装組織が検問所に詰めていたマケドニア警察官を狙撃し、1人死亡する。
08/17:
・NATO軍のチェコの先遣隊が、アルバニア系武装組織の武装解除を担うためにスコピエに到着。次いで、英国とフランスの先遣隊がスコピエに到着。
・NATO大使級理事会は、マケドニアのアルバニア民族解放軍・NLAの武装解除にあたる本隊派遣を前に、ジョセフ・ラルストン米NATO欧州連合軍司令官を現地調査のために特派することで合意。NATO軍は、12ヵ国3500人の兵士を派遣する計画。
・ラムズフェルド米国防長官は、マケドニアに展開するNATO軍部隊への米軍の参加について、「現在のコソヴォ自治州を中心とする情報収集やヘリコプターによる輸送などの後方支援に限定し、民族解放軍・NLAの武装解除には直接参加しない」と述べる。
・ユーゴ連邦のコシュトニツァ大統領が率いるセルビア民主党は、ジンジッチ・セルビア首相を長とするセルビア共和国内閣が、「腐敗している」と批判し、自党の閣僚を引き揚げると表明。
08/19:
・NATO報道官は、マケドニア派遣の先遣隊兵士として英国が280人、チェコが120人、フランスが15人の400人がスコピエに到着した、と発表。
08/20:
・NATO軍のラルストン欧州連合軍最高司令官がマケドニアのスコピエを訪れ、NATOの本隊派遣の条件としている「継続的な停戦」の状況を視察。
・マケドニア共和国で、アルバニア民族解放軍・NLA兵士700人が、ラドゥシャ村にあるマケドニア政府軍の監視塔を占拠し、戦車5輌と装甲車2輌を奪う。
08/21:
NATOは大使級理事会を開き、ラルストン欧州連合軍最高司令官のマケドニア視察報告をもとに協議。本隊派遣の結論は22日に持ち越す。
08/22:
・NATOは大使級理事会で、マケドニアのアルバニア系民族解放軍・NLAの武装解除に当たる本隊の派遣を正式に決定し、1ヵ月間でアルバニア系武装組織の武装解除を行なう予定。
・ロバートソンNATO事務総長は、「現地情勢は流動的でリスクがあるが、出動しないリスクはずっと大きい。マケドニア内戦は血の海を招く」と述べる。
・NATO軍のマケドニア派遣の本隊として、フランス部隊がスコピエ入りする。
・マケドニア内務省は、アルバニア系武装ゲリラが保有する武器の総数を、「8万5000」とする推計を発表。
・マケドニアの市民100人がコソヴォ自治州へ通じる幹線道路で、NATO軍の派遣に抗議し、NATOを批判したプラカードなどを掲げて道路を封鎖する。スラヴ系マケドニア人の中では、「NATOはアルバニア系寄り」との見方が定着しつつある。
・NATO軍のランジ司令官は、コソヴォ自治州から大量の武器が流入していると指摘。NATO軍は2ヵ月で小銃672丁、対戦車地雷1060個、ロケット砲50丁を摘発する。
08/24:
・NATO軍は、マケドニアに派遣する部隊を当初の予定の3500人より増員し、4000人規模になることを明らかにする。
08/26:
・マケドニアのアルバニア民族解放軍・NLAは、NATO軍への武器引き渡しのリストを提示。
・NATO軍のマケドニア派遣現地司令官は、アルバニア民族解放軍・NLAの武装解除による武器回収目標数を、「3300」とすると発表。内訳は「ライフル銃2950,機関銃210,迫撃砲130,対空砲6」など。
・マケドニア共和国のゲオルギエフスキ首相は武器回収について、「3000程度とは馬鹿げている。NATO軍が去った後、ゲリラは戦闘を再開するはずだ」と語る。
・アルバニア民族解放軍・NLAは、人質としていたマケドニア人6人を釈放し、赤十字国際委員会に引き渡す。
・マケドニア北西部テトヴォ近郊で武装組織が政府軍を攻撃し、銃撃戦となる。同じテトヴォでマケドニア人所有のモーテルが爆破され、警備員2人が死亡。スコピエ北部ではゴミ箱に仕掛けられていた爆弾が爆発し、建物の窓ガラスが割れ、車が損傷。
08/27:
・NATO軍はアルバニア民族解放軍・NLAの武器の回収作戦を開始し、初日はライフルや迫撃砲など400点を回収。NATO報道官は「満足」の意を表明。
・NATO軍の英軍部隊は、スコピエ近郊を移動中にアルバニア系地元民の投石を受け、英軍兵士1人が死亡。
・NATOのロバートソン事務総長は、「悲劇的な死に深い悲しみを覚える。NATO部隊はマケドニアの和平支援のために展開しており、こうした理屈に合わない暴力はとても遺憾だ」とのコメントを発表。
・マケドニアのアルバニア民族解放軍・NLAの最高指導者アリ・アフメティ政治代表は、「武装解除は国会審議を睨みつつ行なうが、和平プロセスは前進させなければならない。もう戦闘は行なわない。NATO軍は1ヵ月ではなく、もっと長くとどまるべきだ。武器を渡した後は組織も解散する」と語る。
・アルバニア民族解放軍・NLAはマケドニア人人質7人を解放。
08/28:
・マケドニアのスコピエ郊外にあるアルバニア系の小学校の庭で、深夜に爆発騒ぎがあったが怪我人はなし。
08/29:
・NATOのロバートソン事務総長は、マケドニアのアルバニア民族解放軍・NLAの武器回収状況を視察するためにマケドニアに入る。
・ドイツ連邦議会は臨時本会議を開き、マケドニアでのNATO軍の武装解除作戦にドイツ連邦軍から500人派遣することを賛成多数で承認。社会民主党・SPDの一部が反対したが、キリスト教民主・CDUと社会同盟・CSUが賛成する。
08/30:
・NATO軍のマケドニア派遣現地司令官は、アルバニア系ゲリラから回収した武器が1400点を超えたことを明らかにする。
・マケドニアのトライコフスキ大統領は、NATO軍が進めるアルバニア系ゲリラ・民族解放軍・NLAの武器回収は、「3分の1が回収された」と国会に通知。
・旧ユーゴ国際戦犯法廷のミロシェヴィチ・ユーゴ前大統領の第2回公判が開かれ、大統領は前回同様、同法廷の違法性を主張し、「家族や支持者、報道陣と会う権利さえ奪われている」と述べる。ミロシェヴィチ前大統領は弁護団の選任を拒否する考えを改めて主張したが、メイ裁判長は裁判の公正を期すために「特別補佐人」を選任することを決める。
08/31:
・マケドニア共和国議会のアルバニア人の地位向上のための憲法改正審議は、反対するマケドニア人住民数百人による国会の入り口封鎖のために開会できず。
・旧ユーゴ国際1戦犯法廷・ICTYは、ミロシェヴィチ・ユーゴ前大統領が訴えた同法廷の違法性と身柄釈放を棄却する。
08/00:
・英国ではマケドニア派遣の英軍兵士が投石で死亡したことをきっかけに、マケドニア派遣に疑問を呈する議論が湧き上がる。派遣軍4500人のうち、英国軍は約2000人を派遣。仏・独・伊は各500人。スペインは200人。なぜ英国軍が主体となるような派遣をしなければならないのか、との疑問が英国民から出される。
09/03:
・米国のパーデュー特使は、マケドニアで武器回収に当たっているNATO軍の作戦終了後の治安確保は、大きな焦点になる、と述べる。
09/05:
・ドイツとフランスの定期首脳会談でシュレーダー独首相とシラク仏大統領は、マケドニアのアルバニア系武装組織の武器回収は成功しているとの認識で一致。
・マケドニア和平のEU特使レオタール仏元国防相はモスクワ入りし、記者団に個人的な見解としながら、「EUが1500人規模の国際部隊を派遣し、文民監視団を警護する」との案を述べる。
09/06:
・マケドニア共和国国会は、アルバニア系住民の地位向上のための憲法改正の審議を開始する。
09/08:
・EUは非公式外相協議をブリュッセルのジェンバルで開き、マケドニアに展開しているNATO部隊撤退後の安定化策、および中東和平への貢献策について話し合う。
09/10:
・国連安保理は、98年3月から実施しているユーゴスラヴィアへの武器禁輸の解除決議を、全会一致で採択。この決議により、ユーゴスラヴィアへの制裁は全て解除されることになる。
09/11:
・米国で、9・11事件が起こる。ワールド・トレード・センターの南北2棟にそれぞれ旅客機が1機ずつ衝突し、ペンタゴンに1機が追突。その他、平地に1機が墜落する。ワールド・トレード・センターは2棟ともその直後に崩落する。
09/15:
・マケドニア共和国第2の都市テトヴォ近郊で、マケドニア人民兵組織「ライオン」がアルバニア人の支配するセムソヴォ村にグレネード・ランチャーを打ち込む。テトヴォの監視任務についていたNATO軍の英軍特殊部隊SASがラタエ村に潜入して捜索し、大量のグレネード・ランチャーを発見して押収。
・米CIAは、9・11事件に係わる極秘文書「世界的規模での攻撃マトリクス」を作成する。
09/19:
・NATOは大使級理事会を開き、マケドニア派遣部隊の任務終了期限の26日以後の、第2次派遣について検討を始める。
09/21:
・マケドニア共和国議会は、マケドニア紛争に関連する憲法改正15項のうち3項を可決。修正憲法要項;「1,アルバニア語を公用語とする。2,人口比に見合った、アルバニア系の地方政府職員を登用する。3,マケドニアは『マケドニア人と他の少数派』との前文を削除し、オフリド合意に基づきアルバニア系の権利を拡大する。4,マケドニアの国名を『マケドニア民族国家』」と変更。
09/25:
・ジョージ・ロバートソンNATO事務総長は、マケドニアのコソヴォ解放軍・KLAおよび民族解放軍・NLAの武装解除について、「NATO軍の任務は完了した」と発表。回収された武器は古びたがらくただけであり、回収されたという地雷や弾薬は何処にも見あたらず。NATO軍は、3875点の武器が回収され、目標の3300点を上回る数を達成したと発表している。
・旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYは、ボスニア紛争時にボスニア政府軍参謀長だったハリロヴィチ・ボスニア連邦難民担当大臣が、戦争法規違反などの罪で出頭したと発表。
09/26:
・マケドニア派遣のNATO第1次派遣部隊の任務が終了。マケドニア政府の要請を受けた第2次派遣部隊は、ドイツを主体とし、フランスやイタリア部隊などが参加した、1000人規模となる予定。
09/27:
・マケドニアのアルバニア系民族解放軍・NLAの最高指導者アリ・アフメティ政治代表は、「昨夜をもって、組織は正式に解散した」と発表。
09/28:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷は、ミロシェヴィチ・ユーゴ前大統領の起訴理由に、クロアチア内戦における戦争犯罪を追起訴すると発表。
・ボスニア・ヘルツェゴヴィナの「ボスニア連邦」のペシッチ内相は、「ビン・ラディンの組織に関係のある70人がアフガニスタンからボスニアに向かう準備をしている、との情報を得た」と発表。
10/03:
・マケドニアのアルバニア系武装組織NLAは、アルバニア国民軍・ANAと改称したと発表。
・マケドニア共和国のボシュコフスキ内務大臣は、「アルバニア系住民の村々に支配権を再確立する」との命令を発表。
10/04:
・マケドニア共和国政府軍は、KLA・NLAの支配下にある村々の掃討のために大部隊を出発させる。
・英軍特殊部隊・SASは、マケドニアのアルバニア系武装勢力支配地域に駐屯するコソヴォ解放軍・KLAに、マケドニア軍の出動情報を伝える。
・「オフリド合意」に基づくNATO軍によるマケドニア警察の訓練は、アルバニア系500人の警察官の訓練を米軍が請け負う。この米軍の訓練教官は、コソヴォでコソヴォ防衛隊を訓練した者たち。
10/05:
・ユーゴ連邦のコシュトニツァ大統領は朝日新聞との会見で、米国が準備しているアフガニスタンでの軍事行動がアフガニスタンの一般国民に被害を及ぼす可能性への懸念を示し、「一般人まで犠牲になる国は、ユーゴスラヴィアが最後でいい」と述べる。また、コソヴォ・ユーゴ空爆で軍事施設だけでなく交通基盤なども破壊されたため、「痛手を受けたのは政権ではなく市民の方だ。連邦軍のかなりの兵器は温存され、軍事的な観点からも作戦は成功ではなかった」と語る。
10/08:
・ボスニア・ヘルツェゴヴィナの「ボスニア連邦」のペシッチ内相は、ビン・ラディンの側近の一人と電話連絡を取り合った疑いのある男性を逮捕したと発表。
10/09:
・マケドニア共和国政府は、先月解散したアルバニア系民族解放軍・NLAの免責を閣議決定。
10/12:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷のデル・ポンテ首席検察官は、「アルカイダ」が92年から95年のボスニア・ヘルツェゴヴィナ内戦で戦争犯罪を行なった事実があり、捜査を進めていることを明らかにする。
10/21:
・ハーグの旧ユーゴ国際戦犯法廷に、クロアチア内戦時にドブロヴニク市包囲戦で市民43人を殺害し、市の破壊などに関与したとして起訴されていた、元ユーゴ連邦人民軍のパブル・シュトルガル将軍が出頭。
10/23:
・インターポール・国際刑事警察機構は、アルバニア人マフィアとアルカイダとの結びつきに関する予備的報告書を提出。報告書によると、99年のコソヴォ解放軍・KLAが攻撃した際、コソヴォ解放軍の精鋭部隊の司令官をアルカイダ幹部が務めたという。
・旧ユーゴ国際戦犯法廷の控訴審は、ボスニア紛争時にムスリム人を迫害したとして、初審で懲役刑の判決を受けたクロアチア人被告3人に対し、「証拠不十分」として釈放を命令。
10/24:
・NATOは、ボスニア・ヘルツェゴヴィナに駐留するNATO軍の米軍部隊のトゥズラとスレブレニツァにある基地に、小型機とヘリコプターによる攻撃を計画した疑いで、ボスニア在住のイスラム過激派十数人を拘束し、4人を国外追放処分にしたと発表。
・欧州人権裁判所は、NATO軍のユーゴスラヴィア空爆で被害を受けたベオグラード住民が、空爆を人権違反として訴えた上訴審を開く。原告は、セルビア国営放送テレビ局の被害者・遺族の6人。カナダを除く17ヵ国を相手に、欧州人権条約の侵害に当たるとして損害賠償を求めて起こしたが、第1審は原告の訴えを棄却している。
・ユーゴスラヴィア連邦のスヴィラノヴィチ外相は、「1、ミロシェヴィチ政権期の外交を否定する。2,国際的孤立から脱却する。3,政治的、経済的問題を解決する。4,一小国として現実主義的な政策を追求する。5、ヨーロッパ的価値観を共有してEUへの加盟を目指す。6、ICTYとの協力を実施する」などと演説。
10/26:
・NATOのロバートソン事務総長は、ボスニアの安定化部隊・SFORが、同地で活動していた「アルカイダ」の拠点を破壊し、関係者を域外追放したことを明らかにする。
10/29:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYは、ミロシェヴィチ前大統領を追起訴。予備審理では、クロアチアでの戦争犯罪、集団殺害、ジュネーブ条約49年追加議定書の重大な違反、非戦闘員の殺害や拷問、強制移送、財産の侵犯・破壊、集団殺害を指示したというもの。
・ミロシェヴィチ前大統領は、「コソヴォ自治州の状態は、空爆をするような違法行為はなかったこと。9・11事件後、オサマ・ビン・ラディンがアルバニアに潜伏し、コソヴォ解放軍などの武装組織と深く関わっていたこと。およびクロアチアに関する起訴状の全ての訴因について」無罪を主張する。
10/30:
・ミロシェヴィチ・ユーゴ前大統領は、旧ユーゴ国際戦犯法廷の公判の2日目に「これ以上7歳児が書いたレベルの文章で退屈な時間を費やさないでくれ」と述べ、「ビン・ラディンが98年ケニアとタンザニアの米国大使館爆破事件後、アルバニアに隠れ住んでいた。コソヴォ自治州のアルバニア・ゲリラの活動こそがテロリズム」と指摘する。
10/00~11/00:
・国連環境計画・UNEPと国際原子力機構・IAEAは、コソヴォ・ユーゴ空爆でNATO軍が投下した劣化ウラン弾による汚染調査を始める。
11/02:
・ユーゴ連邦のコシュトニツァ大統領は、17日に投票されるコソヴォ自治州の初の自治州議会選挙に、セルビア人の投票参加を正式に決定する。
・日本政府は、コソヴォ自治州議会選挙に選挙監視要員を6人派遣すると決定。
11/03:
・ユーゴスラヴィア王国の最後の皇太子だったカラジョルジェヴィチは毎日新聞のインタビューに応え、「ユーゴ空爆では、武器に巨額の資金が費やされたが、ユーゴスラヴィア再建のための国際社会の資金援助は微々たるものだ。ミロシェヴィチが国際戦犯法廷に引き渡されて数ヵ月が過ぎたが、復興援助は届いていない」と語る。
11/15:
・マケドニア共和国議会は、アルバニア系住民の地位向上を目指す15項の憲法改正案を3分の2の賛成で包括採択し、新憲法を発効させる。
11/17:
・セルビア共和国コソヴォ自治州で、UNMIKの統治下での議会選を実施。「コソヴォ民主同盟」が47議席、「コソヴォ民主党(コソヴォ解放軍)」が26議席、セルビア人政党連合「帰還」が22議席など。
11/18:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷のデル・ポンテ首席検察官は、ミロシェヴィチ前大統領をボスニア紛争時の「集団虐殺」などで追起訴。
11/20:
・パキスタン警察は、アフガニスタン国境でマケドニア共和国のパスポートをもつムスリム人兵士を逮捕する。
11/21:
・マケドニア共和国政府は、アルバニア系民族解放軍・NLAが虐殺して埋葬したとみられるテトヴォ近郊のトレボスの集団埋葬墓地の発掘を企図したが、民族解放軍とともにNATOが妨害する。
・旧ユーゴ国際戦犯法廷のカルラ・デル・ポンテ首席検察官がスコピエを訪れ、ジャーナリストが集団埋葬現場を取材するのを禁止すると発表し、埋葬墓地の発掘を強行しようとするマケドニア共和国のボシュコフスキ内務大臣を、戦犯として告発する可能性を示唆する。
・ボシュコフスキ・マケドニア内務相は、「カルラ・デル・ポンテのマケドニア訪問は何の根拠もなく、彼女の発言は権限を逸脱している。ハーグの国際戦犯法廷は信頼を失っている。この機関はもはや法廷とはいえない。彼らは誠意の追及には全く無関心で、政治問題だけを追いかけている」と批判。
11/27:
・マケドニア共和国議会は、来年1月27日に予定されている総選挙を、国土の10%で法秩序が回復されていないことを理由に延期すると決める。
12/10:
・セルビア共和国コソヴォ自治州議会が、初会議を開く。冒頭で、国連コソヴォ暫定行政支援機構・UNMIKのヘカロップ代表が演説する予定。
12/11:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷で検察側はミロシェヴィチ前大統領の罪状として、新たにボスニア内戦に関する29件について追起訴。
・ミロシェヴィチ・ユーゴ前大統領は、「ボスニアでやったことは戦争ではなく、平和のためにやったのだ」と否定。ボスニア内戦に関する訴因について無罪の申し立てを行なう。
・ユーゴスラヴィアの独立系通信社「ベタ通信」のリューヴィツァ・マルコヴィチ社主は朝日新聞社との会見で、コソヴォ自治州の独立について、「コソヴォでは非常に不安定な状況が未だ続いている。現段階では国境を変えるべきではない」と語る。
12/15:
・コソヴォ派遣国際部隊・KFORは、アメリカに本部を置くイスラム教慈善団体のコソヴォ支部が、国際テロリスト組織と結びついているとして強制捜査し、数名を逮捕する。
12/00:
・セルビア共和国コソヴォ自治州で選挙が行なわれ、ルゴヴァが率いる「コソヴォ民主連盟」が勝利する。初代大統領に就任が予定されているルゴヴァは朝日新聞との会見で、「独立は多くの市民の悲願であり、バルカン半島の安定にもつながる。特に米国と欧州連合諸国から、正式な独立についての承認を得られるよう努める」と主張。
01/00/00:
・20世紀フォックスが、デイトン合意後のボスニアを舞台にした「エネミー・ライン」を制作。全編がボスニア・セルビア人軍の非文明的な虐殺非道性を描く。
・ヒューマン・ライツ・ウォッチは、コソヴォ解放軍は複数の虐待行為に責任がある。その中には、セルビア人やセルビアの国家に協力しているとみられたアルバニア人に対する殺害も含まれる。コソヴォ解放軍はまた紛争終結後のセルビア人、ロマ人、その他の非アルバニア人の少数民族、そしてアルバニア人の政敵に対する攻撃の責任がある、と報告。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
2002年
01/09:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷は、ミロシェヴィチ・ユーゴ前大統領の公判日程について協議し、2月12日から始めることを決める。
01/11:
・マケドニアのアルバニア系民族解放軍・NLAは、「再結成して活動を再開する」と発表。NLAは、マケドニア政府が「オフリド合意」に従っていないと非難。
01/17:
・NATO軍のユーゴ空爆後の和平以降、この日までにコソヴォ自治州では1000人以上のセルビア人住民が虐殺され、1200人以上が行方不明になっており、110の教会堂、修道院を含む文化遺産が破壊される。
01/18:
・ボスニア・ヘルツェゴヴィナの司法当局は、昨年10月に拘束したアルカイダとの関連が疑われるアルジェリア人の6人を、在サラエヴォ米大使館に引き渡す。
01/19:
・米軍当局は、ボスニアの司法当局から引き渡された6名のアルジェリア人を拘束。容疑は、スレブレニツァにある米軍基地の襲撃計画を立てたというもの。
02/12:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷でミロシェヴィチ・ユーゴ前大統領の公判が開かれる。デル・ポンテ首席検察官は、「前大統領は自分自身の野望を追い求め、反対する者たちに筆舌に尽くしがたい苦しみを与えた」と冒頭陳述。ミロシェヴィチ前大統領の私設弁護士は、「前大統領は自分の弁護はせず、真実を伝える場として利用する考えだ」と話す。
02/13:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷の公判2日目でミロシェヴィチ前大統領は、「この法廷は正当性がなく、メディアのキャンペーンと並行したリンチだ」と批判。
02/14:
・ミロシェヴィチ・ユーゴ前大統領は、旧ユーゴ国際戦犯法廷の本格審理3日目で、「NATO軍の攻撃によって、セルビア国民は悲惨な状況に陥った。コソヴォ紛争は、欧米の偽装工作と宣伝によってつくられたものだ」と、NATO軍の戦争犯罪を告発。ミロシェヴィチ前大統領側は、「コソヴォ解放軍の98年から99年にかけての攻撃の目的は、1,コソヴォ解放軍・KLAの命令による組織的侵攻準備であり、コソヴォ・メトヒャ危機の最中にNATO軍による直接軍事介入の口実作りを目的とした『コソヴォ・アルバニア人』に対する『抑圧』の証拠づくりである。2,スロヴェニア離脱以来の分離主義者運動の実践であり、客観的に優勢な政府軍に対抗して民間人を先ず『人間の盾』とした。3,ユーゴ連邦軍およびセルビア部隊は、KLAテロリストにより要塞化された住宅地区からの民間人の撤退を呼びかけたのち、ユーゴ連邦政府側はテロリストの要塞に対する攻撃を行なった。4,アルバニア系民間人の自宅や周辺地域への差し迫った戦闘の危険から、自発的な民間人の逃避があり、それにはKLAテロリストの発砲があった。5,コソヴォ・メトヒャのほぼ全域を標的にしたNATO軍による大規模な空爆およびミサイル攻撃に直面し、それにより全てのアルバニア系および非アルバニア系民間人のエクソダスが行なわれた」と弁論。
・デル・ポンテ首席検察官は、「国際政治・国際法史上の重大犯罪として取り組む」と述べる。証人として出廷した、ルゴヴァ・コソヴォ自治州大統領は、ドイツとの交信記録も証拠書類として提出。
・セルビア共和国高官は、ボスニア紛争時のセルビア人勢力軍ムラディッチ司令官がセルビア共和国内に身を隠しており、ユーゴ連邦軍が3週間前に身辺保護の打ち切りを通告したことを明らかにする。
02/15:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷のミロシェヴィチ前大統領の公判4日目で、前大統領は証人としてクリントン米前大統領、オルブライト米前国務長官、ブレア英首相、ソラナNATO前事務総長ら欧米の指導者や外交団のメンバーを、証人として喚問することを要求する。
02/18:
・ユーゴスラヴィア王国最後の皇太子だったアレクサンダル・カラジョルジェヴィチは朝日新聞との会見で、米国の一極支配に懸念を表明する。米軍などによる99年のユーゴスラヴィア空爆、今のアフガニスタン爆撃で民間人にも犠牲を出したことを「犯罪」と指弾し、米国人の責任も追及出来る形でのICC・国際刑事裁判所の早期設置を支持する。またアレクサンダル皇太子は、旧ユーゴ国際戦犯法廷でミロシェヴィチ前大統領の公判が始まったことについて、「人道に対する罪に関与した者は裁きを受けるべきだ」と述べると同時に、この法廷は「一方的だ」と指摘。
・EU外相理事会は、ボスニア・ヘルツェゴヴィナで活動している国連国際警察部隊の業務をEUが03年1月から引き継ぎ、500人規模の警察官を派遣し、民族対立が再燃しないよう地元警察の監視や司法活動の支援に当たることを決める。
02/24:
・ロシアのプリマコフ元首相は、旧ユーゴ国際戦犯法廷で開かれているミロシェヴィチ前大統領の公判に、被告の弁護側証人として出廷する用意があると表明する。プリマコフ露元首相は、「審理は政治的性格が強く、一方的に裁かれている」と語る。
02/28:
・ボスニア・ヘルツェゴヴィナに展開しているNATO軍主体の安定化部隊・SFORは、ボスニアのセルビア人勢力の元指導者ラドヴァン・カラジッチを逮捕する軍事作戦を実施したが、見つけることができず。
03/04:
・セルビア共和国コソヴォ自治州の議会は、コソヴォ民主連盟のルゴヴァ党首を自治政府議長(大統領)に選出し、首相にアルバニア系急進派のコソヴォ民主党のレジェピ幹部を任命する。自治州政府閣僚は、コソヴォ民主連盟が4,コソヴォ民主党が2,コソヴォ未来のための同盟が2,少数派のセルビア系などからも2人が選出される。
03/05:
・来日中のギリシアのシュミティス首相は朝日新聞とのインタビューで、ボスニアやコソヴォ紛争が続いたバルカン半島の復興に日本の積極的な関与が必要だとの見方を示す。さらに、コソヴォ自治州やモンテネグロ共和国などについて「国境線の変更は認められない」と述べる。
03/14:
・EUのソラナ共通外交・安全保障上級代表の仲介でユーゴ連邦の枠組みについて協議し、「ベオグラード協定」を締結する。この協定に伴って、セルビア、モンテネグロ両共和国の政府代表とコシュトニツァ・ユーゴ連邦大統領は、新しい国名を「セルビア・モンテネグロ」とし、モンテネグロの独立については少なくとも3年間の棚上げなどを柱とする憲法改正案に合意し、署名する。
・ソラナEU共通外交・安保上級代表は、「セルビア・モンテネグロ」の協定について「欧州の安定に向けて重要な一歩を踏み出した」と述べる。
・ユーゴ連邦軍は、セルビア共和国のペリシッチ副首相をスパイ容疑で逮捕し、同席していた米国外交官も一時拘束。逮捕の理由について軍当局者は、「秘密文書を米国側に渡した疑い」とし、地元メディアは「軍幹部の会議の録音」を渡したと報じる。米外交官は15時間後に釈放。
・旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYのミロシェヴィチ裁判で、検察側証人としてパディ・アシュダウン英自由民主党党首が証言。アルバニア領からコソヴォ方面を見ていたとき、「セルビア人部隊がアルバニア人の村々を砲撃しているのを見た」と述べる。
03/16:
・コシュトニツァ・ユーゴ大統領は、ユーゴ連邦軍がペリシッチ・セルビア共和国副首相をスパイ容疑で逮捕した事件について、「逮捕は合法的に行なわれた」と述べて連邦軍を擁護。連邦軍は、まもなくペリシッチ副首相を釈放する。
・「セルビア民主運動」は、ペリシッチ副首相の逮捕を主導した連邦軍の治安担当最高幹部のトミッチ将軍とブラトヴィチ大統領国家治安担当顧問の解任を要求。
03/18:
・EU外相理事会は、NATO軍主導のボスニア安定化部隊・SFORの任務を、EUが新設する共通警察部隊が来年1月から引き継ぐことを正式に決定する。
・旧ユーゴ国際戦犯法廷デル・ポンテ首席検察官はパウエル米国務長官と会談し、ミルティノヴィチ・セルビア共和国大統領の身柄引き渡しに関し、ユーゴ連邦側に圧力をかけるよう要請。
03/20:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷デル・ポンテ首席検察官は国連を訪れ、ボスニアのセルビア人勢力のカラジッチ・スルプスカ共和国元大統領とムラディッチ元総司令官の拘束について、本格的な作戦開始をNATOに指示するよう要請。
03/26:
・セルビア共和国の司法当局は、政治犯として逮捕したアルバニア系住民146人をコソヴォ自治州へ移送し、国連コソヴォ暫定行政支援機構・UNMIKに引き渡す。
03/27:
・国連環境計画・UNEPは、NATO軍による99年のユーゴ空爆で使用された劣化ウラン弾の環境への影響に関する第2回報告書を発表。調査対象地区はセルビア、モンテネグロでの計6ヵ所のうち5ヵ所で広範な放射能汚染がみられ、大気中に劣化ウランの粒子が残留していることが確認されたものの「現時点では汚染度は低レベルで環境や健康への影響はないが、地下に残留する劣化ウラン弾の腐蝕などから地下水汚染の危険があり、今後の継続的な監視が必要」と結論。
・セルビア共和国政府は、旧ユーゴ国際戦犯法廷に協力することを規定する新たな政令を発令。
・国連暫定行政支援機構・UNMIKは、セルビア共和国から引き渡されたアルバニア系住民146人のうち、80人を犯罪の事実が認められないとして釈放。
03/29:
・セルビア共和国のジンジッチ首相は、「3、4日中に誰かがハーグに引き渡されるだろう」と述べる。引き渡しの可能性があるのはシャイノヴィチ連邦前副首相、ストイリュコヴィチ・セルビア共和国前内相、ボスニアのセルビア人勢力の軍指導者だったムラディッチ将軍の名を挙げる。コシュトニツァ・ユーゴ連邦大統領は、「立法化なしで、布告だけでの引き渡しは違法」と強く反対する。
04/01:
・ユーゴ連邦のスビラノヴィチ外相は、連邦政府が旧ユーゴ国際戦犯法廷から起訴されている被告の逮捕、引き渡しへの全面協力を決めた、と発表。コシュトニツァ連邦大統領はなお、「協力についての法制化の必要がある」と主張。
・NATO軍主体のボスニア安定化部隊・SFORは、旧ユーゴ国際戦犯法廷からスレブレニツァの虐殺に関わったとして、集団殺害などの罪で起訴されているモミル・ニコリッチ元軍指揮官を逮捕し、ハーグに移送。
04/08:
・コソヴォ自治州の北部コソヴスカ・ミトロヴィツァで、国連暫定行政支援機構・UNMIKの警官隊とセルビア人住民が衝突し、少なくとも警官16人が重軽傷を負う。
04/10:
・オランダ政府は、ボスニア紛争時にスレブレニツァでセルビア人勢力によるムスリム人の虐殺についての調査報告書を公表。報告書をまとめた戦争公文書館のブロム館長は、「セルビア人勢力が町を制圧すれば虐殺の危険があったにもかかわらず、国連とオランダ政府は不十分な装備の部隊を送った。政策立案者に重大な責任がある」と述べる。
・ユーゴ連邦議会上院は、旧ユーゴ国際戦犯法廷への戦犯引き渡しを定めた協力法案を、賛成25、反対7で可決。
04/11:
・ユーゴ連邦議会下院は、旧ユーゴ国際戦犯法廷への戦犯引き渡しに道を開く戦犯法廷協力法案を、賛成80,反対39で可決する。法律に基づき、今月末にもシャイノヴィチ連邦前副首相らを逮捕し、ハーグに移送する見通し。
・旧ユーゴ国際戦犯法廷から起訴されているセルビア共和国のストイリュコヴィチ元内相が、ベオグラードの連邦議会前で短銃自殺を図り重体となる。
04/13:
・短銃自殺を図ったストイリュコヴィチ・セルビア共和国元内相が死亡。同元内相は遺書の中で、「戦犯法廷協力法に賛成した議員は欧米の操り人形」と罵り、「死の責任を追うべきはジンジッチ、コシュトニツァらにあり、自殺は国家の尊厳を守る闘いの象徴」などと記述。
04/16:
・オランダのウィム・コック内閣は、95年7月にボスニアのスレブレニツァで起きた虐殺をオランダ軍が防止できなかった責任を取り、総辞職を決める。コック首相は国会で、「国際社会は犠牲者に十分な保護を与えられなかった。オランダ政府もこの結果を引き受けねばならない。我々の決定は容易くはないが、必要なことだった」と演説。当時のオランダ国防省は事実を隠蔽。
04/17:
ユーゴ連邦政府は、旧ユーゴ国際戦犯法廷に起訴されている被告23名の名簿を公表し、「3日以内に自首しなければ逮捕・引き渡しに踏み切る」と発表。
・オランダ政府は、5月15日に予定されている総選挙までは選挙管理内閣に移行する。
04/19:
・モンテネグロ共和国のブヤノヴィチ首相は、新国家連合を形成する合意が連立政権を支える独立急進派・自由同盟に受け入れられなかったために、総辞職をジュカノヴィチ・モンテネグロ大統領に提出。
04/23:
・ユーゴ連邦政府は、旧ユーゴ国際戦犯法廷で起訴されている被告6人がハーグに出頭すると発表。旧ユーゴ国際戦犯法廷は、別の被告15人について逮捕手続きを開始する。
04/25:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷から起訴されているオイダニッチ・ユーゴ連邦軍元参謀長が、ハーグの同法廷に出頭。
04/27:
・ユーゴ連邦のコーラッチ・セルビア副首相は新国家連合について、「6月末という新憲法採択期限は無理だ」との見通しを語る。
04/00:
・ボスニア・ヘルツェゴヴィナが憲法を修正。「ボスニア連邦」と「セルビア人共和国」の両構成体の3民族の権力分有制が導入され、ボシュニャク人(ムスリム人)・クロアチア人およびセルビア人を構成民族として明記し、公用語がボスニア語・クロアチア語・セルビア語となる。大統領・1,副大統領・2で、閣僚はセルビア人8人・ムスリム人人5人、クロアチア人3人とする。
05/02:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷からコソヴォ紛争に絡むアルバニア系住民の殺害に関与したとして起訴されている、ユーゴ連邦シャイノヴィチ前副首相とグルバン元司令官2人が、同法廷に出頭して収監される。
05/03:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷に証人として出廷したルゴヴァ・コソヴォ自治州大統領は、「ミロシェヴィチ大統領は90年代、コソヴォのアルバニア系住民の独立運動を弾圧するために、明らかに一連の暴力行為を組織的に指示した」と証言。ミロシェヴィチ前大統領はルゴヴァ大統領に対し、「あなたは自分やアルバニア人が大国に利用されたと思うか。はいか、いいえか」と迫り、ルゴヴァ大統領は「国際社会はあなたが犯した虐殺から、アルバニア系住民を守るために介入した」と反論。
05/10:
・NATO軍は、ボスニアやコソヴォに展開している兵員を、5万8000人から1年間で20%削減すると発表。
・国連コソヴォ暫定行政支援機構のシュタイナー特別代表(独)は、コソヴォ自治州政府議会において、マケドニア共和国国境付近でアルバニア系住民とセルビア人住民の間で対立が続くミトロヴィツァの治安問題の審議に関し、「その治安問題は私の専権事項である」と発言。
05/14:
・NATOの外相理事会は、クロアチア共和国を加盟国候補として新に加えることを決定。加盟候補国は10ヵ国に上る。
05/21:
・NATOは、マケドニア共和国に派遣している治安維持部隊の駐留を、10月下旬まで延長すると決定する。現在は、ドイツ軍主体だが、延長後はオランダ軍部隊と交代することになる。
05/31:
・ユーゴ連邦議会は、連合国家を「セルビア・モンテネグロ」とする政治的合意案を承認。改憲案は6月に提出される予定。
06/05:
・マケドニア共和国のアルバニア系民族解放軍・NLAは、「統合民主連盟」という政党を結成し、9月の総選挙に参加すると発表。
06/06:
・NATO軍主体のボスニア安定化部隊の報道官は、ボスニアのセルビア人勢力のカラジッチ・スルプスカ共和国元大統領からの書簡を、妻を通じて受け取ったと発表。
・旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYのミロシェヴィチ裁判が開かれ、KLA元司令官だったブヨの証人尋問を行なう。
06/11:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷は、米ワシントン・ポスト紙の元記者に対し、集団殺害の罪で起訴されているボスニアのセルビア人勢力の元政治指導者ブルジャニン被告の公判に証人として出廷するよう命じる。
・ワシントン・ポストのジョナサン・ランダル元記者はボスニア紛争を取材中にブルジャニン被告が、「民族的にきれいな場所が必要だ」などと民族浄化を示唆する発言をしたと報じたことをめぐり、公判での証言を求められていたが、ワシントン・ポスト紙側は拒否して控訴。
06/18:
・ユーゴ連邦の憲法制定委員会は、新しい国名を「セルビア・モンテネグロ」と改め、緩やかな連合国家に改編するための憲法草案作成を始める。
06/19:
・米国政府は、国連安保理に国際刑事裁判所・ICCの訴追対象から平和維持活動の米国軍兵士を外すことを求める決議案を提出。米国連代表部のウィリアムソン代表は、「自国の兵が、政治的で馬鹿げた訴追を受けるのを放置できない」と記者団に語る。
06/21:
・セルビア共和国ベオグラード地裁は、99年4月にNATO軍による「標的になることを知っていたのに安全確保義務を怠り、職員16人を死なせた」として、ミラノヴィチ元放送会長に対し「危険を招いた罪」で9年半の判決を言い渡す。
06/24:
・コシュトニツァ・ユーゴ大統領は、旧ユーゴ国際戦犯法廷への引き渡し調査をしているユーゴ連邦軍のパブコヴィチ参謀長を解任する。
06/26:
・コシュトニッツァ・ユーゴ大統領は、解任したパブコヴィチ連邦参謀長の後任にクルガ将軍を任命。コシュトニツァ大統領はセルビア共和国の大統領選について、「しかるべき時が来たら、セルビア大統領選への立候補を考える」と語る。
06/28:
・国連安保理は、米政府提出の米国の平和維持軍参加兵をICCへの訴追対象外とする決議案について、協議を開始する。
・国際的な市民団体で構成する「国際刑事裁判所連盟」は記者会見で、「画期的な裁判所が、米政府によって生まれる前から手足をもがれようとしている」と非難する。
06/30:
・国連安保理は、同日で期限の切れる国連ボスニア・ヘルツェゴヴィナ派遣団・UNMIBHの期限を半年延長する決議案を採決にかけたが、米要員をICCの訴追対象外とすることを求める米国が拒否権を発動して否決。とりあえず、72時間の延長を求める決議案を提出して採択。
06/00:
・コソヴォ自治州中部のリピヤンで再開された「多民族市場」には、セルビア人商店が1軒しか参加せず。
07/01:
・米国はICCの訴追対象を外す要求が受け入れられなかったことから、国連に派遣している警察部隊1500人の任務を拒否。
・ストロー英外相は、米政府が国連ボスニア・ヘルツェゴヴィナ派遣団の半年延長を、平和維持活動要員のICCの訴追免除が認められないことを理由に拒否権を発動したことについて、「米国の懸念は理解するが、我々の見解は米国とは違う」と述べる。
・NATOは緊急の大使級理事会を開き、米国が拒否しているものの、NATO軍主体のボスニア安定化部隊・SFORの任務継続を確認。
・国連は、EUにボスニア安定化部隊の引継の前倒しを打診する。
07/02:
・国連安保理は非公式協議を開き、米国が、「ICC設立条約を締結していない国の兵士の、訴追免責期間を1年とする」などの妥協案を提出。
・ラムズフェルド米国防長官は、米兵への訴追免除がなければ今後は部隊を平和維持活動・PKOに派遣しない意向を明らかにし、「ICCの問題では欧州の外相と連絡し合っている」と述べる。
・国連安保理のグリーンストック英国連大使は、今回米国がボスニア・ヘルツェゴヴィナでのPKOの延長に拒否権を行使したように、「世界中の平和維持活動が、期間更新の度に米国に脅かされることになる」と懸念を表明。
・ストロー英外相は米国との交渉が決裂したときに備え、「欧州連合・EUが国連の任務を引き継ぐよう、暫定的な準備を進めている」と語る。
07/03:
・国連安保理は、ボスニア国連平和維持活動・PKOの期間を米国の提案により15日までの延長を決める。この延長期間中に、米国が要求している米軍兵士のICCからの訴追免責問題について協議することになる。
07/07:
・ボスニアに展開しているNATO軍主体の安定化部隊は、旧ユーゴ国際戦犯法廷から非公開で起訴されているセルビア人勢力高官デロニッチ被告を逮捕する。
07/08:
・プロディEU委員長は国連のボスニア平和維持活動・PKOの期間延長問題について、「EUはその責任を引き継ぐ準備が出来ている」と述べ、延長を拒否する米国との妥協が15日に成立しない場合の対応が整備済みであることを強調。
・デンマークのラスムセン首相は、国際刑事裁判所・ICCをめぐり、ボスニア国連平和維持活動・PKOの大幅な期間延長を米国が拒否している問題で、「10月のボスニア総選挙が終わるまでは、米国が撤退することにはならないと思う」と述べ、妥協が成立する可能性を示唆。
07/09:
・国連安保理は、米国が国連の平和維持活動参加要員をICCの訴追対象から外すよう求めている問題で、国連に加盟している189の全ての国が参加する形で発言出来るよう、公開討論会を開くことを決める。
・EUのバッテン欧州委員は米国がICCに反対している問題について、9日付のワシントン・ポストに投稿し、「米国は自国を法の上に置こうとしているとの批判を受けるだろう」と強く非難。
・モンテネグロ共和国のブヤノヴィチ前首相は、3月に独立派政党がモンテネグロ独立を3年間棚上げすることに反対して連立を離脱し、さらに4月に内閣が総辞職して以来混乱が続いていることに関し、「総選挙を行なう以外に、政治危機からの出口はない」との声明を発表。
・旧ユーゴ国際戦犯法廷から、ムスリム人女性9人を閉じこめて組織的なレイプをしたとして起訴されていた、ラドヴァン・スタンコヴィチ元兵士がボスニアの南東部の町フォチャで逮捕される。
07/10:
・国連安保理は、米国の平和維持要員をICCの訴追対象から外すことを求めていることについての公開討論会を開き、安保理事国15を含む39ヵ国が発言。発言したほとんどの国が「国際刑事裁判所の基礎を揺るがす」として、米国の態度を厳しく批判。キューバは「普段は、誰も聞かないのに世界平和の保証人と言いふらしている。だが今回は違うようだ」と揶揄すると、議場からは笑いがわき起こる。ICCに反対しているインドのみ、米国に賛意を表す。
07/11:
・ボスニアのスレブレニツァにおける虐殺事件から7年を迎えての追悼式が行なわれ、遺族ら2000人が参加。7000人が虐殺されたとされているが、遺体は未だほとんど発見されず。
07/12:
・国連安保理は、米国が要求している平和維持活動の米国要員に対する国際刑事裁判所・ICCの訴追を猶予する決議案を採択。決議の内容;ICC設立条約の「国連安保理は、世界平和や安定に重要な影響が及ぶと判断した場合は、ICCの捜査や訴追の停止を命じることが出来る」との条項を拡大解釈し、米国の平和維持要員の訴追猶予を、1年ごとに国連安保理に図ることで合意する。
・ネグロポンテ米国連大使は、「将来、米国兵士が訴追されることがあれば、米国は違法と見なす」と述べる。
・英・仏両国は、「独立は保たれた」と述べる。
・ヘインベッカー・カナダ国連大使は、「国連安保理に国際条約の解釈を変更する権利はない。国連にとって悲しむべき日だ」と語る。
07/15:
・コシュトニツァ・ユーゴ連邦大統領とメシッチ・クロアチア大統領およびボスニアの3民族を代表するベルキッチ幹部会員などがサラエヴォで会談。悪化したままの関係改善の必要性で、意見の一致を見る。
07/16:
・セルビア共和国のジンジッチ首相は、議会で欠席戦術をとるなど欠席が多い50人の議員を職務怠慢として議員資格を剥奪し、別の議員と入れ替える。この結果コシュトニツァ連邦大統領派のセルビア民主党は8議席を減らし、ジンジッチ首相派が単独で議会の過半数を獲得する。セルビア民主党のシャミ副党首は、「これは、ミニクーデターだ」と非難。
07/21:
・セルビア共和国議会のミチッチ議長は、現職のミルティノヴィチ大統領の任期満了に伴う大統領選を9月29日に実施すると発表。
07/22:
・セルビア共和国の大統領選に、ジンジッチ・セルビア首相派のラブス・ユーゴ連邦副首相が立候補すると表明。
07/25:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYのメイ裁判長は、ミロシェヴィチ・ユーゴ前大統領に心臓病の懸念があるため、審理を暫く閉廷するとの決定を出す。
07/26:
・セルビア共和国憲法裁判所は、ジンジッチ首相がセルビア議会の議員50人を入れ替えたことに対する、「セルビア民主党・DSS」の無効確認の訴えを認める判決を下す。
07/27:
・ユーゴ連邦の連立与党民主連合幹部会は、コシュトニツァ・ユーゴ大統領が党首を務める「セルビア民主党・DSS」を民主連合から追放すると決定。セルビア民主党幹部は、これを違法としてあらゆる法的手段をとると発表。
07/29:
・セルビア共和国議会運営委員会は、連立与党の幹部会がコシュトニツァ・ユーゴ連邦大統領派の「セルビア民主党・DSS」を民主連合から追放したのを受けてセルビア民主党所属議員45人の議員資格剥奪を決定。
・モンテネグロ議会が解散し、10月に繰り上げ総選挙実施を決める。
08/02:
・セルビア共和国大統領選に、民族主義政党のセルビア急進党シェシェリ党首が立候補を表明する。
08/14:
・ユーゴスラヴィア連邦政府は、米国が求めている国際刑事裁判所・ICCに米兵を引き渡さないようにする2国間協定を拒否する方針を示す。
・オランダ政府も、ICC訴追免責を求める米国との2国間協定を拒否する方針を示す。
08/23:
・セルビア共和国の大統領選に、コシュトニツァ・ユーゴ連邦大統領が出馬すると表明。
08/26:
・セルビア・モンテネグロ両共和国の首脳は、新連合国家に向けた憲法草案に基本合意したと発表。
08/00:
・米人権団体「国際精神障害者の権利」が、コソヴォ自治州にある3つの精神病院でアルバニア系職員がセルビア人患者に2年間にわたり暴力や性的虐待を与えていた、とする報告書を公表。この報告書の中で、国連暫定行政支援機構がこの事実を知りながら対策を取ってこなかった、と指摘。
・旧ユーゴ国際戦犯法廷に証言を求められ、召喚された米紙記者が出廷を拒否している問題で、ニューヨーク・タイムズやCNN、BBCなど34の欧米メディアが連盟で、「記者に証言を強制すべきではない。記者の独立性や信頼性が損なわれる」との意見書を戦犯法廷に提出。米紙の記者は、ワシントン・ポスト紙のジョナサン・ランダル元記者で、召喚の取り消しを求めて控訴中。
09/15:
・マケドニア共和国議会(定数120)の総選挙が、実施される。
09/16:
・マケドニア共和国の総選挙の中間集計によると、「社会民主同盟」の野党連合が41%を獲得し、民族主義強硬派の「国家統一民主党・VMRO」の与党連合が24%となり、野党の勝利が確実となる。アルバニア系民族解放軍・NLAが移行した新政党の「統合民主連盟」は11%の得票にとどまる。
09/18:
・マケドニア共和国議会(定員120)の総選挙は、左派「社会民主同盟」の野党連合が60議席を獲得し、与党連合の民族主義「国家統一民主党・VMRO」は33議席にとどまり、与野党が逆転する。アルバニア系武装組織NLAの新政党「統合民主連盟は16議席を獲得し、アルバニア系の既成政党「アルバニア民主党」は7議席となる。
09/29:
・セルビア共和国の大統領選が実施され、投票率が55.5%にとどまる。暫定集計での得票率はコシュトニツァが31.2%、ラブス副首相が27.7%と上位を占めたがともに過半数に達せず、選挙が無効となり決戦投票が行なわれることとなる。シェシェリ急進党党首は22.5%。
09/00:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYで行なわれた、ミロシェヴィチ・ユーゴ前大統領に対するコソヴォ紛争に関する検察官側の120人におよぶ証人尋問が終了する。2002年6月14日付のニューヨーク・タイムズ紙は、NATO軍のクラウス・ナウマン司令官(独)は、「ミロシェヴィチが大統領官邸でブランデーを飲みながら、『コソヴォの民族バランスを取ることが重要。1945年から46年にかけてドレニツァでやったように、まとめて撃ってやる』と話すのを聞いて耳を疑った」と証言。セルビア人警官のボスコ・ラドイコヴィチは「死体を冷凍庫から別のトラックに積み替えた。最初の晩は30体,次の晩は56体.私服の男女で子どももいた」と証言した、と伝える。
・ボスニア・ヘルツェゴヴィナの行政最高権力OHRのパディ・アシュダウン和平文民部門上級代表はボスニアの課題について、「1,政治的清廉度の確保。2,警察や司法制度の整備。3,ビジネスのパートナー探し」と3段階を提案。
・ボスニア・ヘルツェゴヴィナ政府は、国際社会から「テロリストの拠点になっている」との批判が出ていることに応じて、出入国管理の強化や情報機関の統合を含めた大幅な治安制度改革を進めると表明。
註;ボスニア紛争時に、イスラム世界からムスリム人勢力を後押しする形で、同国の内戦に参加した国際義勇兵は数千人に上るといわれ、終戦後も残留した一部のメンバーとテロ組織、犯罪組織とのつながりが取り沙汰された。9・11直後には、アルカイダとの関係を疑われたアルジェリア人らが拘束され、米国に引き渡されている。
・黒海--アドリア海パイプライン協定が、ルーマニア・ユーゴスラヴィア・クロアチア3国で成立する。
10/02:
・ボスニアのプラブシッチ・セルビア人共和国元大統領は、旧ユーゴ国際戦犯法廷から起訴されている「ムスリム人やクロアチア人に対する迫害や殺害」などの「人道に対する罪」の一部を認める。裁判長は残りの罪について、取り下げる見通しを告げる。
・ミロシェヴィチ・ユーゴ前大統領は、「旧ユーゴ国際戦犯法廷」に対し、クロアチア現大統領スティパン・メシッチを告発する。
10/05:
・ボスニア・ヘルツェゴヴィナで、国会の下院議員選挙とボスニア連邦下院議員選挙が実施される。
10/07:
・ボスニア・ヘルツェゴヴィナの総選挙は、選管の暫定集計によると民族主義政党が前回失った議席を盛り返し、民族共存を掲げる社会民主党が大きく後退する見通しとなる。国会の下院選挙は、「民主行動党」が議席を伸ばし、「社会民主党」は半減する情勢となり、「ボスニア連邦」の下院はムスリム人勢力の民族主義政党「民主行動党」が30%を超す得票で第一党、社会民主党は第4党になる見込み。幹部会委員3人の選挙も、民族主義政党がポストを独占する勢いを示す。
10/13:
・セルビア共和国大統領選の決選投票が、民族主義穏健派のコシュトニツァ・ユーゴ連邦大統領と経済学者で改革派のラブス連邦副首相の間で行なわれる。シェシェリ急進党党首が投票ボイコットを呼びかける。
10/15:
・セルビア共和国の大統領選は、投票率が45.46%で50%に達せずに無効となり、選挙は一からやり直すと中央選管が
発表。
・世界貿易機関・WTOは一般理事会を開き、94年から申請していたマケドニア共和国の加盟を承認する。これで加盟国
は144ヵ国・地域になる。現在、ロシアとベトナム、サウジアラビアなど26ヵ国が申請している。
10/18:
・マケドニア共和国の組閣は、左派「社会民主同盟」のツルベンコフスキ党首が、少数派アルバニア系民族解放軍・NL
Aの新政党「統合民主連盟」との連立で行なうことで合意。
10/20:
・モンテネグロ共和国議会(定数75)は、総選挙を実施。暫定集計によると、ジュカノヴィチ大統領の与党が39議席を獲
得して単独過半数を獲得。連邦維持派の社会人民党など野党連合は30議席にとどまる見通し。
・ユーゴ連邦軍幹部は、イラク軍の詳細な軍事情報を米国防総省に提出する。
10/22:
・セルビア共和国ジンジッチ首相はセルビア共和国大統領選挙について、「再選挙で再度無効となれば、議会が大統領を選出するよう憲法を改正する」と語る。
11/11:
・米UPIのビジネス通信は、「バルカン諸国のインフラストラクチュアの構築は、一致した国際的援助という政治的性格によって特徴づけられてきた。1999年のNATO軍の戦争は、ノヴィ・サドの精油所、セルビアのラジオ・テレビ局、道路、橋などのインフラストラクチュアを破壊した。さらに、西側の政策が改造計画を押し付けてきたことは、驚きでも短期的な現象でもなかった」と報じる。
・UNEP・国連環境計画はEUの閣僚委員会に依頼され、ボスニア・ヘルツェゴヴィナで癌が多発していることから、劣化ウラン弾による放射能測定を14サイトについて実施したが、8ヵ所は地雷の危険のためにできず。調査の結果は、特にハディジッチのタンク修理施設、弾薬貯蔵エリア、ハン・ピイェサクの数個の劣化ウラン・DU兵器の破片の存在が明らかになり、また住民がDUの危険性について知らないことに気づかされる。UNEPは、ほぼ200のサンプルを収集して分析を行なった結果を、03年3月には発表する予定。ボスニアでの子どもの白血病の発症は、通常年間13件だが、01年には26件発症する。
11/14:
・セルビア共和国のやり直し大統領選に、コシュトニツァ連邦大統領が立候補を表明。
11/25:
・モンテネグロ共和国のジュカノヴィチ大統領が辞任する。
11/29:
・NATO軍は、マケドニア共和国に派遣している治安部隊の駐留延長を決める。NATO軍部隊は、マケドニア政府の要請に応じ、治安維持のために文民和平監視員700人を派遣する。
11/00:
・セルビア共和国議会は、大統領選挙の成立要件についての法改正を行ない、第1回の投票のみ投票率50%を超えることを成立の条件とし、決選投票では50%以下でも成立するようにすると決める。
12/01:
・スロヴェニア共和国の大統領選挙はクチャン大統領の任期満了に伴って行なわれ、決選投票で中道左派のドルノウシェク首相が56%の票を獲得して当選する。
12/06:
・ユーゴ連邦のセルビア・モンテネグロ両共和国は、3月に合意した新国家連合「セルビア・モンテネグロ」への移行についての憲法案に最終合意する。
12/08:
・セルビア共和国のやり直し大統領選が、コシュトニツァ連邦大統領とシェシェリ急進党党首ら3人が立候補して行なわれる。
12/09:
・セルビア共和国のやり直し大統領選は投票率が45.2%で、第1回投票に必要な50%に達せず、規定により不成立となる。
12/11:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷は、ワシントン・ポストのジョナサン・ランダル元記者に対する証人としての召喚状を、取り消す判断を示す。
12/17:
・ラムゼイ・クラーク米元司法長官が共同代表を務める国際行動センター・IACは、旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYに対してミロシェヴィチ・ユーゴ前大統領を釈放するように要求する。
12/22:
・モンテネグロ共和国で大統領選の投票が実施されたが、投票率が46%にとどまり、50%に達しないために無効となる。
12/00:
・「セルビア・モンテネグロ」連合国家設立に関する憲法委員会が新憲法案を起草する。
02/00/:
・欧州連合・EUは「ドナウ委員会」の斡旋に応じ、NATO軍のユーゴ空爆で破壊し尽くしたドナウ川の橋の修復の費用負担を受け入れる。米政府は、NATO軍の一員として破壊を実行したが費用負担を拒否する。
註;「ドナウ委員会」は、1856年に創設されたドナウ川の周辺諸国が参加する流域国間の問題解決を図る国際機関。現在はドナウ川沿岸10ヵ国とロシアが参加。
・アフガニスタンの国際治安支援部隊・ISAFにスロヴェニアが60名、クロアチアが130名、マケドニアが120名を派遣する。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
2003年
01/04:
・コソヴォ西部のペチでアルバニア系武装組織が、ルゴヴァ大統領派の「コソヴォ民主同盟・LDK」の活動家タヒル・ゼマイと親族3人を襲撃して射殺する。
01/15:
・ボスニア・ヘルツェゴヴィナの治安監視を国連から引き継ぐために派遣された、欧州連合・EUの警察部隊500人が活動を開始する。部隊は現地警察官の指導などを行なう。EU議長国のパパンドレウ・ギリシャ外相は、「EUとボスニアにとって歴史的な瞬間だ」と述べる。
01/20:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYから、コソヴォのアルバニア系住民の殺害や人道に対する罪と戦争法規違反などで起訴されていたセルビア共和国のミルティノヴィチ前大統領が、同法廷に出廷するためにベオグラードからハーグに到着し、収監される。
01/27:
・セルビア共和国議会は、ユーゴ連邦を解消して新たにセルビアとモンテネグロ両共和国の連合国家「セルビア・モンテネグロ」へ移行する憲法案を承認する。
01/29:
・セルビア共和国議会は、新たな連合国家「セルビア・モンテネグロ」を樹立するための新憲法を賛成多数で採択。
01/00:
・EUの警察部隊が、マケドニア共和国のNATO軍と交代するために派遣される。
02/04:
・ユーゴ連邦議会の上下両院は、連合国家「セルビア・モンテネグロ」への移行に関する憲法案を承認し、国名を「セルビア・モンテネグロ」とする新国家の成立を宣言する。「ユーゴスラヴィア」の国名は73年の歴史を閉じる。新憲法では、3年後にモンテネグロの連合離脱権を認める。議会は1院制で、議員定数は126名。それぞれが大統領を選出し、首相職は廃止する。国連への加盟は「セルビア・モンテネグロ」として1議席を有す。
02/09:
・モンテネグロ共和国でやり直し大統領選を実施したが、投票率が50%に達しないために再び無効となる。
02/20:
・第13回非同盟諸国会議の高級事務レベル会合が、マレーシアのクアラルンプールで開かれる。サイドハミド・マレーシア外相は、米国の対テロ戦争を「人種差別的」と批判する。
02/21:
・クロアチア共和国のラチャン首相はEU議長国ギリシアのシミティス首相とアテネで会談し、EU加盟に申請書を手渡す。
02/22:
・第13回非同盟諸国会議の外相会議がクアラルンプールで開かれる。外相会合ではイラク情勢に関する声明案の内容がイラク寄りだとの指摘が相次いだため、イラクによる国連への協力の必要性を訴える内容に変更する。
02/24:
・セルビア共和国のシェシェリ・セルビア急進党党首は、旧ユーゴ国際戦犯法廷からボスニア紛争時の人道に対する罪に問われたことを受け、ハーグの同法廷に出頭して収監される。
・第13回非同盟諸国首脳会議・NAMがマレーシアのクアラルンプールで2日間にわたって開かれる。116ヵ国・組織が参加。
マハティール・マレーシア首相はイラクをめぐる問題に対し、「戦争は何も解決しない。国連での多国間による合意なしに、世界の治安を維持して良い国はない。いかなる国も世界の警察官にしてはならない」と、米国のイラク攻撃に強く反対する演説を行なう。クアラルンプールでは政府が呼びかけた反戦集会に20万人が集まる。
イランのハタミ大統領は、「武力によるいかなる体制変革にも反対する。イラクの将来決定に外国の介入は不要だ」と演
説。
イラクのラマダン副大統領は、「イラクは大量破壊兵器の査察に協力を続け、生物、化学兵器や核兵器の輸入、製造を禁止する法律も制定した。証拠もなしに、イラクが大量破壊兵器を所持していると主張している」と米国を激しく非難する。
02/25:
・第13回非同盟諸国首脳会議は、「クアラルンプール宣言」、「イラクに関する特別声明」、「パレスチナ問題に関する特別声明」、「総括声明」を採択して閉幕。
「クアラルンプール宣言」;「1,非同盟運動を包括的に見直す。2,一極化が進む中で多国主義を創出し、発展途上国の利益を擁護する。3,グローバル化が進む中で、強力な国々は発展途上国を犠牲にしている。グローバル化を発展途上国の繁栄と成長に繋げなければならない。4,外交を通じて世界平和を創出し、紛争解決には武力を避け、国際決定プロセスの先頭に立ち、南南協力を進める。5,非同盟主義運動の協調と関係の強化を進め、途上国77ヵ国グループとの連携強化と先進国との対話を強化する。6,平和、人権、社会経済発展のために国連を強化し、多極的な世界をつくり出す。7,悪の枢軸の呼称を拒否する」。
「イラクに関する声明」;「1,国連安保理の要求に従うことが広範で平和的な解決への重要なステップである。2,単独行動には反対であり、多国間の忍耐強い努力によって戦争を回避する。3,多くの国民が戦争に反対しており、イラク攻撃は地域を不安定化させる。4,戦争を避けるためのあらゆる努力を歓迎し、支援する」。
02/00:
・コソヴォ自治州のセルビア人住民組織は、「コソヴォ・メトヒヤのセルビア人地域連合」に統合。セルビア人住民による中央政府機関を設立し、「コソヴォ・メトヒヤ・セルビア人国家議会」を設置する。大統領にドラガン・ヴェリッチを選出し、行政委員会の首班にはラダ・トライコヴィチを任命。首都は、コソヴスカ・ミトロヴィツァとすることなどを決める。
03/07:
・セルビア・モンテネグロ連合国家の議会は、初代大統領にモンテネグロ出身の法律家スベトザル・マロヴィチを選出。マロヴィチは社会民主党出身でジュカノヴィチ・モンテネグロ前大統領に近い分離独立派。
03/12:
・セルビア共和国のジンジッチ首相がベオグラード中心部の首相府前で腹と背中を撃たれ、病院に運ばれたが死亡。犯人と見られる2人の男が拘束される。
・セルビア共和国のミチッチ暫定大統領は非常事態を宣言。政府は「首相暗殺は組織犯罪撲滅の動きを止めることを狙ったもの」との声明を発表し、ジンジッチ首相が進めるマフィア対策に反発した犯罪組織が関与しているとして、元特殊部隊司令官を含む20人の逮捕状を取り捜索を開始する。チョヴィチ副首相を首相代行に任命する方針。
03/13:
・セルビア共和国の警察当局は、ジンジッチ首相暗殺に関係する容疑者56人を逮捕したと発表。
03/14:
・スロヴェニア共和国のロップ首相は、イラク攻撃を認める国連安保理の決議がない限り、攻撃準備のための米軍の領内通過を認めない、と表明。
03/23:
・スロヴェニア共和国は、EUとNATO加盟の是非を問う国民投票を実施。投票率は60%で、EU加盟賛成が90%、NATO加盟賛成が66%で、ともに承認される。
03/24:
・NATO軍のユーゴ・コソヴォ空爆から4年目に当たるこの日、ベオグラードでユーゴ空爆とNATO軍に抗議するデモが1万人規模で行なわれる。
03/00:
・虐殺があったとされるスレブレニツァの現地に、「財団」によってムスリム人墓地が600柱の墓標とともに完成し、記念式典でアシュダウンOHR上級代表が、「悪魔が栄えるときになにが起きるかを世界は知っている」と挨拶。
・セルビア政府は、ジンジッチ首相の暗殺後に旧体制派一掃に乗り出し、1万人を尋問し、千人近くを起訴する。
・ブゼク南東欧安定化協定の特別調整官は、「皮肉なことだが、ジンジッチ首相は自らの死で、最大の成果を上げた」と述べる。
04/02:
・パウエル米国務長官は、セルビア共和国のベオグラードを訪問。ジブコヴィチ首相らと会談し、暗殺されたジンジッチ首相が取り組んできた改革路線の継続を首相が表明したことを支持する。
04/03:
・ユーゴスラヴィア連邦は、「ヨーロッパ評議会・CE」に加盟。EUへの加盟申請の手続きを開始する。
04/12:
・マケドニアのアルバニア人民軍・ANAは、ズヴェチャン鉄橋を爆破する。
・国連暫定行政支援機構・UNMIKは、鉄橋を爆破したアルバニア人民軍・ANAをテロリスト・グループと宣言する。
04/22:
・セルビア共和国のミチッチ暫定大統領は、ジンジッチ首相暗殺後に宣言した非常事態の解除を発表。
04/00:
・セルビア警察はジンジッチ首相暗殺事件で犯罪組織のメンバーなど4500人を拘束し、殺人や誘拐の疑いで3700人を送検。
05/11:
・モンテネグロ共和国の再々度の大統領選が実施され、独立系機関の集計によると、与党連合のブヤノヴィチ前首相が65%の票を獲得して当選を決める。
05/15:
・朝日新聞によると、91年からの旧ユーゴスラヴィア内戦で生じた300万人あまりの難民・避難民のうち、ボスニアに帰還が実現したのは94万人。セルビア・モンテネグロ連合国家が抱えるセルビア系55万人の難民・避難民は、コソヴォやクロアチアへの帰還がほとんど実現していない。
・国連難民高等弁務官事務所・UNHCRは、セルビアの難民収容センター1300ヵ所を閉鎖するなど縮小している。帰還が進まない原因は紛争による家屋破壊に加え、「異民族排除」の構造が根深く残るため。UNHCRは、活動を縮小しつつある。
・日本のNGO・JENのラジブ・カナル・ボスニア現地代表は、「帰還者は統計上増えているが、難民向けアパートを別人に又貸ししたり、転売したりする例が多く、定住はそれほど進んでいない」と語る。
05/16:
・ボスニアのNATO派遣軍を、04年にEU軍と交替させるとのEUの提案を米政府が拒否する。
06/30:
・マケドニア共和国政府は、米国の求める国際刑事裁判所・ICC訴追免除2国間協定に対し、大統領権限により03年7月1日~04年1月1日まで免除を決める。
07/01:
・国際刑事裁判所・ICC設置条約は、批准した国家が規定に達したために発効する。
08/01:
・コソヴォ自治州駐留のロシア軍が撤退する。
08/02:
・日本の旅行会社プレステージ・インタナショナルが企画したボスニア旅行でモスタルを訪れた市民団体「モスタル石橋復元基金」のメンバーが現地を訪れ、モスタル市の破壊された石橋を復元するための基金として130万円を贈呈。
08/12:
・セルビア共和国政府はコソヴォ自治州について、「コソヴォはセルビア政府の主権下にある。国連は民主主義確立に失敗した」とする決議声明を採択。声明は「コソヴォの治安状況はテロ行為、殺人、組織犯罪の拡大により極めて悪く、国連による多民族社会設立の努力はとうてい満足できるものではない。法秩序と民族間の寛容性が確立された後に初めて、セルビア・モンテネグロの国家の枠内で、コソヴォ自治州の大幅な自治権交渉が開始される」と述べる。
08/28:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYで、BBC放送の女性記者がミロシェヴィチ前大統領の裁判に検察側証人として出廷。99年のコソヴォ紛争時に、刑務所に収監されていたアルバニア系をセルビア人看守が虐殺した疑惑について証言。ジャーナリストとしての証言の是非が問われている。
09/18:
・集団安全保障条約機構・CSTOの憲章および法的地位に関する協定に加盟6ヵ国が批准する。加盟国は、アルメニア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ベラルーシ、ロシアの6ヵ国。
10/14:
・国連コソヴォ暫定行政支援機構・UNMIKの仲介で、セルビア共和国のジブコヴィチ首相とコソヴォ自治州のルゴヴァ大統領による直接対話がウィーンで開かれたが、セルビア側は「コソヴォ自治州とセルビア共和国は不可分」と主張し、コソヴォ側は独立を主張するにとどまる。
10/19:
・ボスニア・ヘルツェゴヴィナ大統領(幹部会議長)として、ボスニア内戦をムスリム人勢力側として指導したアリヤ・イゼトベゴヴィチが死去する。享年78歳。
10/00:
・スロヴェニア共和国は、徴兵制を廃止する。
・旧ユーゴスラヴィア諸国の内、イラク戦争にはクロアチア共和国は60名、マケドニア共和国は37名を派遣。
11/06:
・クロアチア共和国の議会選挙に向けた民族主義政党のクロアチア民主同盟・HDZの集会がシサクで開かれ、3000人が参加して気勢を上げる。
註;トゥジマン党首が率いた民族主義政党のHDZはトゥジマン大統領が死去して以来、議席を150議席中33議席と劇的に減少させた。クロアチアでは平均月収700ドル、失業率18%以上となり独立以前より生活が苦しくなったことへの不満が高じ、民族主義政党への期待が増えつつある。
11/16:
・セルビア共和国の再々度の大統領選挙が実施される。立候補者は、中道左派連合の「セルビア民主野党連合・DOS」のミチュノヴィチ、民族主義者の「セルビア急進党」のニコリッチ、右派の「新セルビア党」のイリッチ、など6人。コシュトニツァ・ユーゴ連邦前大統領は立候補を見送る。有権者数650万人。地元の選挙監視団体の非公式集計によると、今回の投票率も50%に満たず、選挙は不成立になる見込み。
11/18:
・セルビア共和国の中央選管は、大統領選挙の最終結果を発表。それによると投票率は38.79%で成立に必要な50%に届かずに大統領選挙は不成立となる。
11/23:
・クロアチア共和国議会選挙(152議席)の投票が行なわれる。
11/24:
・クロアチア共和国の中央選管の中間集計によると、投票率は66%で少数民族に対する議席割当を除く140議席中、サナデル党首率いるクロアチア民主同盟・HDZが61議席を獲得して第1党になり、ラチャン首相率いる社会民主党・SDP中心の左派連合は64議席にとどまる。「K-1」格闘家のミルコ・クロコップも当選する。
・クロアチア共和国は07年にEU加盟を目指しているが、旧ユーゴ国際戦犯法廷にセルビア人を多数殺したとされる元司令官を引き渡すことが条件とされている。
11/27:
・セルビア共和国議会は、ユーゴ連邦を解消し、新たな連合国家「セルビア・モンテネグロ」を樹立するための新憲法を賛成多数で採択。
12/01:
・28日に行なわれるセルビア共和国議会選挙に、旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYで公判中のミロシェヴィチ・ユーゴ前大統領が立候補届を提出した、とセルビア社会党が公表。
12/09:
・クロアチア共和国のメシッチ大統領は、11月23日に行なわれた議会選挙で152全議席中66議席を獲得したクロアチア民主同盟・HDZのサナデル党首に組閣を要請。
12/23:
・クロアチア共和国議会はクロアチア民主同盟・HDZのサナデル党首を首班とする中道右派内閣を賛成多数で承認。サナデル首相は「国家の未来にとって最も大切な戦略目標について、幅広く政治的合意を得ることを保証する」と述べ、EUとNATOへの加盟を最優先させることを強調する。
12/28:
・セルビア共和国議会選挙が実施され、1院制250議席を19の政党が比例代表制の得票で争われる。選挙監視団体の非公式集計によると、セルビア社会党・SPSが21議席を獲得し、ミロシェヴィチ前大統領も名簿第1位で当選の見込み。
12/29:
・セルビア共和国議会選挙は、「自由選挙と民主主義のためのセンター」の非公式集計によると投票率は59.3%で、250議席のうちセルビア急進党が3割近い得票率で82議席を獲得。次いでコシュトニツァ・ユーゴ前大統領率いる穏健派民族主義のセルビア民主党・DSSが53議席、中道左派の民主党・DSが37議席、改革派のG17が34議席、セルビア社会党・SPSは22議席にとどまる。
・マケドニア共和国当局は、レバノン系ドイツ人カレード・エル・マスリを拘束し、CIAに引き渡す。CIAはマスリをアフガニスタンに移送し、アルカイダとの関係を尋問する。
12/30:
・セルビア共和国議会選は、中央選管の最終結果発表によるとセルビア急進党の82議席が確定し、第1党となる。
12/00:
・UNMIKとコソヴォ自治政府は、安保理決議1244の沿った形で「コソヴォのための基準」に合意する。「要旨;1、民主的な諸制度の機能を保持する。2,法の支配を確立する。3,移動の自由をっく補する。4,共同体とその住民の持続的な帰還の権利を尊重する。5,経済復興に尽力する。6,財産権を保障する。7,セルビア側とコソヴォ側との対話を正常化させる。8,コソヴォ防衛隊・KPCを設置する」など。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
                    
2004年
01/11:
・セルビア共和国のセルビア社会党・SPSは、先の議会選で比例代表名簿第1位で当選したミロシェヴィチ・ユーゴ前大統領を、「議員名簿に含めない」と公表。
01/18:
・フィンランドの法医学専門家のヘレナ・ランタは、ドイツのツァイトング紙のインタビューで、コソヴォ自治州のラチャク村で99年1月15日に起こったとされた、セルビア人勢力による虐殺事件について欧州安保協力機構・OSCEが充分に調査しなかった、と虐殺説に疑問を呈した。ツァイトング紙は、ラチャク村事件は、NATOが空爆を実行するための世論操作に利用したものであったと分析。
02/26:
・マケドニア共和国のボリス・トライコフスキ大統領の乗った政府専用機がボスニアの山岳地帯に墜落し、搭乗員9人全員が死亡。
03/03:
・セルビア共和国議会は、穏健派民族主義のセルビア民主党・DSS党首コシュトニツァ・ユーゴ連邦前大統領を首班とし、経済政策に重点を置く「G17プラス」と、王政復古を訴える「セルビア再生運動」が加わる3党連立とする中道右派内閣を、賛成多数で承認する。セルビア社会党・SPSは、閣外協力にとどまる。
03/17:
・セルビア共和国のコソヴォ自治州ミトロヴィツァやコソヴォ・メトヒヤなど複数の都市で、アルバニア系住民がNATO軍主体の国際部隊・KFORの制止を振り切ってセルビア人地域に侵入し、住民と衝突する。衝突は自治州内の6都市にも飛び火し、銃や手榴弾などにより22人が死亡し、500人が負傷する。アルバニア系住民の暴徒は、重機関銃、AK47、手榴弾、ピストル、狩猟用ライフル、その他武器となるあらゆるものを携帯。
コソヴォ・メトヒヤには中世セルビア王国のビザンツ様式の正教会や修道院があったが、アルバニア系武装勢力によってほとんどが破壊される。衝突の原因は、16日にアルバニア系の子ども3人をセルビア人が急流の川に追い立てて水死させたという風聞によるが、真相は確認出来ず。
・セルビア共和国内では、事件に抗議するセルビア人のデモが各地で行なわれ、首都ベオグラードでは警察の警備網を破ってイスラム教寺院に火をつけるなどの報復行動となる。
03/18:
・コソヴォ自治州では、セルビア正教の教会が焼き討ちにされる。
・NATO軍はコソヴォ自治州での治安強化のため、ボスニアに派遣中のNATO軍兵士100人から150人を急派する。
03/19:
・コソヴォ自治州での17日のアルバニア系住民暴動事件による死者は、国連当局の集計によると31人に達する。
03/26:
・コシュトニツァ・セルビア首相はセルビア共和国議会で3月17日の暴力事件に関し、「政治的軍事的に組織されたテロリスト組織、すなわちコソヴォ人民運動、コソヴォ解放人民運動、旧コソヴォ解放軍のメンバーを集めたさまざまな軍人組織、プレシェヴォ・ブヤノヴァッツ・メトヴェジャ解放軍・UCPBM、アルバニア人民軍・ANAが関わっているのは明らかだ」と述べる。
03/29:
・NATOは、スロヴェニア共和国をスロヴァキア、ルーマニア、ブルガリア、バルト3国とともに正式加盟国として承認す
る。
03/00:
・KFORおよびUNMIKは、コソヴォで暴力を組織し遂行した容疑でアルバニア系196人を逮捕する。この中には、コソヴォ・ポリスサービス、コソヴォ防衛隊のメンバーも含まれる。
04/05:
・日本政府とEU議長国のアイルランドとの共催により、東京で「西バルカン平和定着・経済発展閣僚会議」が開催される。参加国は「クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、セルビア・モンテネグロ、マケドニア、アルバニア」の西バルカン5ヵ国の外交・経済担当相、およびUNMIK、コソヴォ暫定自治政府、EU加盟国、欧州委員会、南東欧安定協定、国連難民高等弁務官事務所・UNHCR、欧州復興開発銀行・EBRD、世界銀行など39ヵ国と12国際機関が参加。この閣僚会議は「共同結論文書を作成。
04/13:
・国連安保理において国連平和維持活動ディレクターのジェーン・マリー・Gはコソヴォの3月暴動について、、「アルバニア系過激派が主導したコソヴォのセルビア人、ロマ人およびアシュカリのコミュニティに対する猛襲は、組織された広範かつ標的を定めた軍事作戦だった」と証言。この安保理で、セルビア・モンテネグロ代表団はアルバニア系住民の3月暴動作戦によって、19人が死亡し、954人が負傷。700家屋と30の教会が焼き討ちにされた、と報告。
04/19:
・国際司法裁判所・ICJは、旧ユーゴスラヴィア連邦(現セルビア・モンテネグロ連合国家)が提訴したNATO軍のコソヴォ空爆の国際違法性についての審理を5年ぶりに再開し、大法廷でNATO軍から事情聴取を始める。この審理は23日まで行なわれ、米・スペインを除く英、仏、独、伊、カナダ、ベルギー、オランダ、ポルトガル、セルビアなど9ヵ国が意見陳述をする予定。ベルギーは口頭弁論において、NATOの空爆は安保理決議が武力による干渉の根拠を示しており、進行中の人道的惨劇に対する強行規範である本質的な価値を守るために実施した国連憲章第2条4項に基づく人道的干渉であると主張。セルビアは、NATOの空爆は純粋な人道目的ではなく、政治目的であったと主張。
・旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYの上訴審裁判部は、ボスニアのセルビア人勢力のクルスティッチ司令官に対し、スレブレニツァにおけるジェノサイドを援助もしくは教唆をした罪を認定しつつ、第1審の46年の刑を35年に短縮する判決を言い渡す。
04/28:
・マケドニア共和国の大統領選挙の決選投票が実施される。
04/29:
・マケドニア大統領選挙の決選投票で、中央選管が暫定集計結果を発表。有権者は170万人、投票率53.4%で、中道左派与党「社会民主同盟」を率いるブランコ・ツルベンコフスキ首相が得票率の62.7%を獲得し、中道右派野党「国家統一民主党」のサスコ・ケデフ候補を抑えて当選。
04/00:
・国際司法裁判所・ICJは、ユーゴ連邦が1999年4月にNATOの空爆は国際法違反であり、空爆を直ちに停止するよう仮処分措置を求めた事案について、「ユーゴ連邦が提訴した際、既に国連加盟国ではなく、ICJの当事国ではなかったことから本件訴訟において管轄権がない」との暫定判断を示す。
05/01:
・EUは、スロヴェニア共和国の加盟をエストニア、ラトビア、リトアニアとともに承認する。加盟を果たしたスロヴェニア共和国は、人口202万人。
05/02:
・セルビア共和国のヨチッチ内相は、ジンジッチ首相の暗殺事件で、計画の主犯格とされる特殊警察部隊のミロラド・ルコヴィチ元司令官が投降したと発表。ルコヴィチ元司令官はミロシェヴィチ前大統領の直属の部下。
05/25:
・UNMIKの第3代国連事務総長特別代表ハーリ・ホルケリ・フィンランド前首相は、健康を理由に就任して10ヵ月で辞職する。UNMIKそのものの腐敗と、アルバニア武装組織の3月暴動が原因とみられている。
06/13:
・セルビア共和国の4回目のやり直し大統領選が行なわれ、過半数の票を獲得した候補者がいなかったため、ニコリッチとタディッチの上位2者による決選投票が27日に行なわれることになる。
06/18:
・EUは首脳会議を開き、クロアチア共和国をEU加盟候補国と認め、05年から加盟交渉を始めることで合意する。加盟の前提として、旧ユーゴスラヴィア内戦で生じた難民・避難民の帰還に積極的に取り組むこと、および旧ユーゴ国際戦犯法廷に協力することが求められる。
06/19:
・クロアチアのザグレブで開かれた第16回国際アニメーション・フェスティバルで、山村浩二監督の「頭山」がグランプリを獲得。
06/27:
・セルビア共和国大統領選の決選投票で、新欧米派のタディッチ民主党党首が54%を獲得して当選する。セルビア急進党のニコリッチは45%にとどまる。
07/23:
・ボスニア・ヘルツェゴヴィナのモスタル市の石橋「スタリ・モスト(古い橋)」が復元され完成式が行なわれる。修復にかかった費用は1500万ドル。式典には50ヵ国の外相や代表者などが参加。OHRのアシュダウン上級代表は、「希望は残虐行為に優るのだと、この橋によって証明出来る」と述べる。モスタル市は、ムスリム人勢力とクロアチア人勢力が激しい戦闘を繰り広げたところであり、その戦闘時にクロアチア人勢力の砲撃で橋が破壊された。
08/31:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷のミロシェヴィチ・ユーゴ元大統領の裁判は、当人の健康問題で中断されていたが再開される。この法廷は、ミロシェヴィチ元大統領を「民族浄化」を進めたとして大量殺人や人道に対する罪などで審理しているが、ミロシェヴィチ・ユーゴ元大統領はクリントン米大統領を「旧ユーゴスラヴィアからの分離独立を図るイスラム教のテロリストを支持した」と批判。さらに「ユーゴスラヴィアを破壊する戦争を正当化するための裁判に過ぎず、この法廷はNATOの宣伝機関だ」と戦犯法廷そのものが違法だと主張。
09/02:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷は、ミロシェヴィチ元大統領に対し弁護人をつけるよう命じる。ミロシェヴィチ元大統領は「自身を弁護する権利は否定出来ないはずだ。これはスキャンダルだ」と激しく反発。
09/00:
・ミロシェヴィチ・元ユーゴ連邦大統領の退陣に大きな役割を果たした組織「オトポール」は、「民主党」に吸収される。
10/03:
・スロヴェニアのドルノウシェク大統領は、10月の総選挙で第1党となったスロヴェニア民主党のヤンシャ国防相を首相に指名。
10/15:
・日本政府は、セルビア共和国のコソヴォ自治州で23日に予定されている議会選挙の監視員として、朝日新聞社の大野正美論説委員と国際基督教大の井上裕公研究員を派遣すると発表。
10/23:
・コソヴォ自治州議会選挙の投票が実施される。アルバニア系の政党は全て独立を唱え、セルビア系の政党は「セルビア・モンテネグロ」にとどまることを唱えているものと、「ボイコット」を呼びかけている党派がある。定数120議席のうち20議席が少数派への割当となり、残りは比例代表制で決まる。中央選管の中間発表によると、有権者140万人の推定投票率は53%で、民間の選挙監視団の非公式集計では与党アルバニア系穏健派の「コソヴォ民主連盟」が47%を占め、旧コソヴォ解放軍・KLA(UCK)の「コソヴォ民主党が27%、「コソヴォ未来のための同盟」が8%を獲得した模様。尚、セルビア人の大半は投票には参加せず。
10/26:
・コソヴォ自治州で23日に行なわれた議会選挙(定数120)は、非公式集計でアルバニア系穏健派のコソヴォ民主同盟・LDKが45%の得票率を獲得して引き続き第1党を維持。国連コソヴォ暫定行政支援機構のペーターソン代表は、コソヴォ民主同盟に組閣を要請する。コソヴォ民主同盟の議席は過半数に達しないため、コソヴォ民主党との連立工作をすることになる。
11/07:
・マケドニア共和国は、「アルバニア系住民に広範な自治権を認める『新地方自治法』の中止を求める国民投票」を実施したものの、投票率が26%に留まったものの、同法の施行が確実となる。この法律は、8月に国会で可決されている。
11/09:
・スロヴェニア共和国下院(定数90)は、10月の下院選挙で45議席を獲得し、第1党となった中道右派のスロヴェニア民主党のヤネズ・ヤンシャ元国防相の新首相就任を賛成多数で承認。
11/15:
・毎日新聞によると、ボスニアにはなお67万個を超える地雷が残されている。赤十字国際委員会のミッシェル・ブラッティ協力調整官によると、コソヴォではクラスター爆弾などの不発弾による犠牲者が絶えないといわれる。
12/03:
・セルビア共和国のコソヴォ自治州議会は、アルバニア系穏健派のイブラヒム・ルゴヴァ大統領の再選と、急進派のコソヴォ未来連合党首のラムシュ・ハラディナイの首相就任を承認。ハラディナイ党首はコソヴォ解放軍・KLAを率いていた当時の行為について、旧ユーゴ国際戦犯法廷から戦争犯罪人としての容疑がかけられている。ハラディナイ新首相は、「民主主義など、国際社会が求めている基準達成をめざす」と語る。
・セルビア共和国のコシュトニツァ首相は、ハラディナイ首相の就任について「コソヴォ問題の平和解決を目指す人々への、政治的挑戦だ」と強く反発。
・ソラナEU共通外交・安全保障上級代表は、「ハーグに行かなければならない人が、首相になることは好ましくない」とハラディナイ首相就任に難色を示す。
12/24:
・国際司法裁判所・ICJは、セルビアとモンテネグロが1999年4月26日に提訴した、NATO加盟8ヵ国(英・仏・加・独・伊・ベルギー、オランダ、ポルトガル)が実行したーゴ・コソヴォ空爆は国際法違反であるとの裁判に対し、当事者性がないとして却下する。
04/00/00:
・セルビア・モンテネグロ、クロアチア、ルーマニア3ヵ国は、ルーマニアの黒海沿岸コンスタンツァからセルビア、クロアチアを経由してイタリアのトリエステに至る全長1230キロに達する「CPOTパイプライン」構想を発表。
・スロヴェニア共和国は米政府に対し、イラク戦争同盟者に指名されていたことに抗議する。
・EUは、NATO軍のユーゴ・コソヴォ空爆で破壊したドナウ川の橋の修復を完成する。米政府は費用を負担せず。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
2005年
01/16:
・クロアチア共和国の大統領選の決選投票が行なわれる。現職の中道左派スティエパン・メシッチ大統領が右派のクロアチア民主同盟・HDZが推すヤドランカ・コソル副首相を大差で破り再選。投票率は51.13%で、メシッチが66%を獲得し、コソルは34%にとどまる。メシッチは「われわれは欧州へ向かって行進しており、国民が私の業績を評価してくれた。加盟に大切なのは団結だ」と語る。
01/31:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYは91年10月、クロアチア南部のドブロヴニクを攻撃した当時のユーゴ連邦人民軍司令官パブル・シュトルガ将軍に、禁固8年の判決を言い渡す。シュトルガ将軍の罪責は、民間人への攻撃を回避する措置を十分取らず、民間人を死傷させた部下の責任を問わなかった、というもの。
02/14:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYのミロシェヴィチ裁判で、ヨヴァノヴィチ・ユーゴ連邦元外相が証言。ミロシェヴィチ元大統領およびセルビアは、スロヴェニア、クロアチアおよびボスニア紛争の加担者ではなく、クロアチアでヴァンス調停案を支持し、ボスニアでクトゥリエロ案、ヴァンス・オーエン案、オーエン・シュトルテンベルク案、EU行動計画、およびデイトン案を支持したと述べる。
02/16:
・ICTYのミロシェヴィチ裁判の検察官尋問でヨヴァノヴィチ・ユーゴ連邦元外相は、セルビアは民族浄化も大セルビア主義を主張したこともなく、唯一多民族国家を維持している国だと証言。
02/22:
・ICTYのミロシェヴィチ裁判でヨヴァノヴィチ・ユーゴ連邦元外相は、ユーゴ連邦軍がクロアチアのドブロヴニクへの砲撃をしたことは知らないと証言。この日、次の証人としてコソヴォ自治州のアンドリッチ医学博士が証言。「NATO軍によるコソヴォ・ユーゴ空爆の際、コソヴォ自治州の全ての民族が空爆の難を逃れて移動した。彼が引き留めたアルバニア系住民たちが、NATO軍の空爆の犠牲になった。セルビアの警察や治安部隊がアルバニア系住民を虐待するのを決して見たことはない」と述べる。
02/23:
・ICTYのミロシェヴィチ裁判でヨヴァノヴィチ証人は、コソヴォ解放軍・KLAはNATO軍の歩兵部隊だと主張。
03/02:
・ICTYのミロシェヴィチ裁判で、マケドニアの医療技術者のミルコ・バビッチが証言。バビッチは、NATO軍によるユーゴ・コソヴォ空爆の際にはマケドニアの難民キャンプで難民の診療に当たっていたが、「難民は一般的な疾患を訴えたのみで、1人のアルバニア系住民も物理的に虐待された跡はなかった。アルバニア系住民たちは、始めはNATO軍の空爆を回避するためにコソヴォを逃れたと発言していたが、後になってセルビア人たちが彼らを追い立てて猛烈に虐待したと言い始めた。そしてニュース社の演出に応じ、エクソダスの様子を撮影させていた。マケドニア共和国は小国だが難民を受け入れた」と証言。
・ICTYのミロシェヴィチ裁判でEUコソヴォ監視団・EUMMのディエトマル・ハルトウィグ団長が証言。ドイツ軍の将校であるハルトウィグ団長は、「NATO軍によるコソヴォ空爆直前まで、EUの責任者としてコソヴォ自治州で監視に当たっており、あらゆる階層のアルバニア系住民と接触し、全ての状況報告を受け取っていたが、セルビア軍あるいは警察によるアルバニア系住民への虐待に関するいかなる情報も受けたことはなかった。KLAが常に衝突を煽り、ユーゴスラヴィア軍とセルビア警察はそれに応答したにすぎない。セルビアの治安部隊がアルバニア人を家から追放するのを見たこがなく、そうした報告も受け取っていない。報道は、アルバニア系がセルビア人について言ったあらゆる汚いことを問い質しもせずに流した。UNHCRは避難民の数を誇張して公表していた。1999年にNATO軍がコソヴォに介入するべき理由は絶対になかった」と証言。
註;コソヴォへ派遣された欧州連合監視団・EUMMは、国連安保理決議1203において設置を促された欧州安保協力機構停戦合意検証団OSCE・KVMより以前にコソヴォに派遣された、EU独自の組織である。
03/08:
・コソヴォ自治州のラムシュ・ハラディナイ首相は、ハーグの旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYが同首相を起訴したことを受けて辞表を提出。ハラディナイはコソヴォ紛争時に、コソヴォ解放軍・KLAの司令官として、セルビア治安部隊への襲撃を指揮した容疑がかけられている。ハラディナイ首相は辞表を提出する際、「起訴はセルビア人住民によるデマに基づくものであり、法廷で無実を証明する」と述べる。
03/09:
・辞任したコソヴォ自治州のハラディナイ前首相は、旧ユーゴ国際戦犯法廷に出廷するためにハーグに向けて出発する。
03/10:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYは、コソヴォ自治州のラムシュ・ハラディナイ前首相が、コソヴォ紛争時にコソヴォ解放軍・KLAの司令官としてセルビア人住民を強姦し、殺戮したなど、17件の人道に反する罪と20件の戦争犯罪で起訴したことを公表。
03/14:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷は、コソヴォ自治州のハラディナイ前首相の公判を開く。検察側は、91年から95年のコソヴォ紛争時に被告がセルビア系住民に残虐行為を働いたとの罪状の指摘に対し、ハラディナイ前首相は「罪は犯していない」と無実を主張。
03/15:
・ICTYのミロシェヴィチ裁判で、ユーゴ連邦国防省の法律指導職をしていたゴヨヴィチ将軍が証言。ボスニア内戦で、「イスラム教徒は虐殺行為を自作自演した」と述べる。
03/16:
・EUはクロアチア共和国のEU加盟交渉について、延期すると発表。理由は、「旧ユーゴ国際戦犯法廷が起訴しているクロアチア内戦時の戦犯容疑者アンテ・ゴドヴィナ司令官を、17日の交渉開始期日までの引き渡しに応じなかった」ことによる。ゴドヴィナはクロアチア共和国軍の司令官として、91年から95年にセルビア人150人を殺害したことおよび95年8月に発動した「嵐作戦」でセルビア人住民15万人を追放した容疑をかけられている。
・クロアチアのサナデル首相は、「失望している。我々は戦犯法廷に十分協力している」と述べ、EU加盟交渉の早期再開を求める。
03/23:
・EU首脳会議は、旧ユーゴスラヴィア内戦の戦犯のクロアチアでの摘発状況を調査する委員会の設置を決める。
04/04:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYは、セルビアのルキッチ公安担当元長官を逮捕。同被告は、99年コソヴォ自治州でアルバニア系住民数百人を殺害し、NATO軍の空爆時に80万人を強制退去させた容疑で起訴されている。今年に入り、17人が旧ユーゴ国際戦犯法廷に出頭し、拘束される。
05/28:
・米CIAは、マケドニアで拘束したカレード・エル・マスリをアフガニスタンからアルバニアに移送し、釈放する。この拘束期間中に、米CIAはドイツのイスラム教礼拝所や関連テロ容疑者について尋問。背後でドイツの連邦情報局・BNDが協力していた模様。
07/02:
・セルビア共和国のコソヴォ自治州のプリシュティナ市中心部で相次いで3回の爆発があり、州政府庁舎などを損壊。死傷者は出なかったが、国連派遣団の車2台が破壊される。爆発の原因や実行者は不明だが、現場近くにはコソヴォ議会やUNMIK本部やOSCEの建物があり、この機関を狙った可能性がある。
07/07:
・NATO軍は、カラジッチの息子を逮捕するも、10日後には釈放する。
07/11:
・ボスニアのスレブレニツァで、95年7月に8000人が虐殺されたとしている式典が行なわれ、各国の関係者をはじめ5万人が出席。
07/28:
・カラジッチの妻リリヤナ・ゼレン・カラジッチは、家族に対して大変な圧力がかかっていることから、夫のカラジッチに対して投稿するように呼びかける。
07/30:
・中国の第2陣派遣コソヴォ駐留平和維持の警察官7人が、1年間の任務を終了してプリシュティナから離任する。
08/19:
・旧ユー小国際戦犯法廷・ICTYのミロシェヴィチ裁判において、コソヴォのウロシェヴァツ地域のムスリム人の森林監視員が証言。森林監視員は、「KLAおよびNATO軍は、コソヴォにおける戦争に責任がある。ユーゴスラヴィア軍およびセルビア警察は適切に振る舞っていた」と証言。
・ICTYのミロシェヴィチ裁判で、シェシェリ・セルビア急進党党首の証人尋問が行なわれる。シェリシェリ証人は、「NATO軍が彼らの代理軍としてKLAを使った。彼らはテロリストに武器を供与し、セルビアに対するテロを鼓舞した。米国はヨーロッパで軍事的プレゼンスを維持する一方、バルカン半島に軍隊を駐留させるために必要としている口実を得た」と述べる。
08/23:
・ICTYのミロシェヴィチ裁判で、シェシェリ・セルビア急進党党首が証言。シェシェリ証人は、「セルビアはアルバニア系に交渉の手を差し延べたが、ワシントンがアルバニア系に独立の約束と武器を供与して以来、アルバニア系は交渉に応じなくなった」と述べる。
08/24:
・ICTYのミロシェヴィチ裁判において、引き続きシェシェリ急進党党首の証人尋問が行なわれる。シェシェリ証人は、「スレブレニッツアで起こされた事件は、フランス情報機関の命令に基づき、傭兵グループ「ポーク」が実行したものだ」と述べる。
08/25:
・ICTYのミロシェヴィチ裁判において、シェシェリ急進党党首の証人尋問が行なわれる。シェシェリ証人は、「大セルビア主義は、セルビア急進党のみが主張したものであり、ミロシェヴィチ・ユーゴ元大統領や政府与党のセルビア社会党は決して支持しなかった」と証言。
08/27:
・コソヴォ自治州で、セルビア人青年4人の乗った車が何者かに銃撃され、2人が死亡し、2人が負傷する。コソヴォ暫定自治政府は、コソヴォ警察とKFORに犯人の逮捕と処罰を要求する声明を発表。
08/30:
・ICTYのミロシェヴィチ裁判でシェシェリ・セルビア急進党党首が証言。シェシェリは、「ミロシェヴィチ元大統領もセルビア政府も、クロアチアのセルビア人勢力やボスニアのセルビア人勢力と共謀はしていない」と証言。
08/31:
・ICTYのミロシェヴィチ裁判でシェシェリ・セルビア急進党党首が証言。証人は、「この裁判で宣誓した証言は真実だが、ユーゴスラヴィア内戦中に私がした発言は、政治的発言であり、おもしろがらせたもので真実ではない」と述べる。
09/01:
・ICTYのミロシェヴィチ裁判でシェシェリ・セルビア急進党党首は、「ボスニア内戦で、ボスニアのムスリム人難民が7万人もセルビアに来た。これがなにより、セルビアがジェノサイド計画など持っていなかったことを人々が実感として知っていたことを示している例だ」と証言。
09/05:
・ICTYのミロシェヴィチ裁判でシェシェリ・セルビア急進党党首が証言。シェシェリは、「セルビア政府がボスニアの内戦で役割を果たしたことはない。アルカンやモーゼルのような人々に率いられた準軍事グループとは、セルビア政府は関係がない。セルビア政府は、むしろ準軍事グループを潰す措置を取り、可能な場合には常にそれらを起訴した」と証言。
09/06:
・ICTYのミロシェヴィチ裁判でシェシェリ・セルビア急進党党首が証言。シェシェリは、「スレブレニツァの虐殺事件の8000人というのはイスラム教徒によって誇張された数で実際は1200人近くだった。セルビア政府は、この殺害に関与した民兵組織『ポーク』のメンバーを逮捕して告発した。『ポーク』のメンバーであるドラゼン・エルデモヴィチを逮捕してICTYに引き渡したが、ICTYはイスラム教徒100人以上を殺害したとして彼に有罪判決を下したものの、4年未満で釈放され、現在は自由の身となっている」と証言。
09/07:
・ICTYミにおけるロシェヴィチ裁判のシェシェリ・セルビア急進党党首の証人尋問で、証拠として提出されたBBC制作の「ユーゴスラヴィアの消滅」は、意図的にセルビア語を誤訳して、英国の視聴者を欺いたことが明らかとなる。またこの中で、シェシェリ・セルビア急進党党首は、95年に自らが行なった発言について、「『ミロシェヴィチがクロアチアのセルビア人勢力に武器を供与し、彼らを支援するために軍隊を派遣した』と言ったのは、ミロシェヴィチを貶めてデイトン合意を破綻させるための虚偽の政治的なものだった」と証言。
09/14:
・ICTYミロシェヴィチ裁判でシェシェリ・セルビア急進党党首が証言。シェシェリは、「ユーゴスラヴィア内戦中に、ミロシェヴィチが武器の密売や窃盗までしていると、私があらゆることで非難する発言をしたのは、西側メディアがミロシェヴィチの政治生命を損なうためにやった非難の焼き直しにすぎない」と重ねて証言。
09/15:
・ICTYミロシェヴィチ裁判でシェシェリ・セルビア急進党党首が証言。シェシェリは、「コソヴォ自治州に不法に在留している36万人のアルバニア人を追放するよう要求したが、ミロシェヴィチ大統領はそうすべきだったにもかかわらず、いかなる措置も講じなかった」と証言。
09/16:
・ICTYミロシェヴィチ裁判でシェシェリ・セルビア急進党党首が証言。シェシェリは、「『ベオグラード・イニシャティブ』は大セルビア主義を目指すものではなく、ユーゴ連邦にボスニアをとどめることを構想したものであり、もしそうなったらイゼトベゴヴィチ・ボスニア幹部会議長がユーゴ連邦の大統領に選ばれていただろう。クロアチアのセルビア人勢力がセルビアの一部となることを宣言したが、ミロシェヴィチ・セルビア大統領は常に拒絶した」と、大セルビア主義は政府レベルではなかったと証言。
09/21:
・ICTYのミロシェヴィチ裁判で、ユーゴ連邦軍の機動旅団の元司令官デリチ将軍の証人尋問が行なわれる。デリチ将軍は、「3月にアシュダウン英自由民主党元党首が、この法廷でアルバニアからコソヴォの村々が見えたと証言したことについて、あの地点からコソヴォはほとんど見えるはずがない」と否定する。
09/22:
・ICTYのミロシェヴィチ裁判において、コソヴォ自治州ウロシェヴァツ内務省警察の元チーフのヤニチェヴィチ大佐が証言。大佐は、「警察が押収した文書の中には、KLAの身分で戦う米国の傭兵のことが記述されていた。さらに、98年にコソヴォに入ったOSCEのコソヴォ停戦合意検証団・KVMが、爆撃の標的となる建造物を調査していた」と述べる。
09/29:
・ICTYのミロシェヴィチ裁判で、元ユーゴ連邦軍司令官のデリチ将軍の再尋問を行なう。将軍は、「アシュダウンがアルバニアではなく、コソヴォ自治州の中に入ってコソヴォの村々を見たというが、もしそうであるなら国境警備隊に逮捕されていたはずだ」。また、ボスニアのセルビア人勢力軍に入った元連邦軍兵士に、引き続き給料と年金が支払われていたことについて、「それは軍の人事センターが兵士と家族を支援することを目指したもので、何らの命令も出していない」と証言。
09/30:
・ICTYのミロシェヴィチ裁判で、ヤニチェヴィチ内務省ウロシェヴァツ元警察大佐を再尋問。ヤニチェヴィチ大佐は、「ラチャク村の虐殺事件について、OSCEの検証団・KVMは、後に虐殺遺体が投げ込まれたとされた溝がよく見える位置で監視していたので、戦闘の結果も見えていたはずだ」と指摘。さらに、「KLAはコソヴォ検証団がいる間に武装が強化された」とも述べる。
10/03:
・ICTYのミロシェヴィチ裁判の証人尋問でヤニチェヴィチ大佐が証言。ヤニチェヴィチは、NATO軍のコソヴォ・ユーゴ空爆時のNATO軍とKLAの結び付きについて、「KLAの第161旅団からの押収文書に、NATO軍が武器やその他の様々な物資を空輸すること、およびその物資を受け取るためのKLAの部隊配置命令が記載されていた」と証言。
10/18:
・ICTYのミロシェヴィチ裁判で、ユーゴ連邦軍防空砲兵旅団のミロス・ジョサン元司令官の証人尋問を行なう。ジョサン将軍は、「守備範囲はコソヴォ自治州の全領域の防空であり、旅団の将校団は、スロヴェニア人、マケドニア人、クロアチア人、アルバニア人、ハンガリー人、ムスリム人、セルビア人で構成されていた。民族浄化などは起こりえない」と述べる。また、「OSCEのコソヴォ検証団が彼の旅団を訪問したとき、彼らは対空ミサイルにしか興味を示さなかった」。「コソヴォの難民の多数が流出した地域は、NATO軍がもっとも激しく爆撃した地域だった。NATO軍が爆撃しなかった地区では、1件の強制追放申し立てもされていない」とも証言する。
10/20:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYの判事団は「ステータス会議」を開き、ミロシェヴィチ元大統領が要求した199人の証人喚問と422時間の所要時間の要求を却下する。ミロシェヴィチ裁判に残された時間は106時間だけだと通告する。
・ICTYは、「ステータス会議」後に検察官が行なったジョサン将軍への反対尋問で「コソヴォ空爆中にアルバニア系800人の殺害遺体をユーゴ連邦軍が証拠隠滅のために500キロ先のバタイニツァに移送した」と指摘。これに対し、ジョサン将軍は「NATO軍の空爆を回避し、監視をかいくぐりながら、800体の遺体を冷蔵庫付きのトラックで500キロ先に移送することなど不可能だ」と述べる。
10/24:
・国連安保理は、99年以来国連の暫定統治機構下に置かれている「セルビア・モンテネグロ」のコソヴォ自治州の最終的な地位について協議。当事者協議を速やかに開始するよう求めた、アナン国連事務総長の勧告を全面的に支援するとの議長声明を採択。マルッティ・アハティサーリ元フィンランド大統領をコソヴォ問題を担当する国連事務総長特使に任命する。
・ニコラス・バーンズ米国務次官は、国連安保理の議長声明に伴うコソヴォ自治州の最終地位確定について、「もしセルビアが不安定なコソヴォの領土紛争を解決いなければ、米国はセルビアのNATO加盟を妨げるだろう。交渉は11月にも始められるべきだ」との考えを示す。
10/31:
・セルビア共和国のディンキッチ財務相が訪日し、日本企業に対して投資を呼びかける。セルビアへの05年の直接投資はおよそ20億ドル(2335億円)だが、日本企業の進出は1社のみ。進出のメリットは「1,経済・構造改革を進めていて、高度成長している。2,EUに加盟した中欧に較べて労働力が安い。3,EU市場に近い立地にある」とディンキッチ財務相は説明。
10/00:
・アナン国連事務総長は、コソヴォの地位問題に関する事務総長特使に前フィンランド大統領のマルッティ・アハティサーリを任命する
11/01:
・ICTYのミロシェヴィチ裁判において、検察官はユーゴ連邦軍の機動大隊の司令官ヴコヴィチ大佐の尋問を行なう。検察官がヴコヴィチ大佐の部隊の交信記録で使われた、セルビア語の「浄化」は「民族浄化」を意味すると主張したのに対し、ヴコヴィチ大佐はセルビア語での「民族浄化」と「浄化」は異なると反論。
11/02:
・ICTYのミロシェヴィチ裁判での証人尋問で、検察官は前日に引き続きヴコヴィチ大佐がコソヴォのヴェリカ・ツルクヴァ村の民族浄化を行なった際に「浄化」という言葉が戦争日誌に記載されたのだと指摘して尋問。ヴコヴィチ大佐は、「部隊がヴェリカ・ツルクヴァ村に到着した時にはKLAは撤退しており、攻撃を行なう必要がなく、ただ村を通り抜けただけだ。そこで、交信記録と戦争日誌に『浄化された』と交信し、記録したのだ」と反論。軍隊での用語としての「浄化」とは、敵の抵抗を排除したという意味で使われており、「浄化」と「民族浄化」とは全く別の意味だと説明。
11/17:
・コソヴォ自治州議会は、コソヴォ自治州の独立を支持する決議を採択。「独立宣言」は、国連コソヴォ暫定行政支援機構・UNMIKの圧力で実現せず。
・コソヴォ自治州のセルビア人住民の居住地の村で爆発があり、セルビア人住民4人が負傷。
11/21:
・EU外相理事会は、ボスニア・ヘルツェゴヴィナのEU加盟の前提となる安定連合協定締結の交渉開始を承認する。
・マルッティ・アハティサーリ国連事務総長特使(フィンランド元大統領)は、コソヴォ自治州の最終地位の確定を実現するために、セルビア共和国のベオグラードを訪問し、タディッチ・セルビア大統領と会談。その後、コソヴォ自治州の州都プリシュティナを訪問し、ルゴヴァ・コソヴォ自治州大統領と協議。
註;国連コソヴォ事務総長特別大使事務所・UNOSEKはウィーンに事務所を設置。代表はマルッティ・アハティサーリ、副代表はアルベルト・ローハン。
11/22:
・ボスニア和平の「デイトン合意」10周年記念式典が、ワシントンの国務省で行なわれる。米国側はライス国務長官やホルブルック元特使などが出席し、ボスニア側はイボ・ミロ・ヨヴィチ幹部会議長ら3民族の指導者が参加。米国側の呼びかけで、現在の連合体に近い国家体制の機能を、統一国家としての権能を有するよう憲法改正に取り組むことで合意。ライス米国務長官は、「国益の確保にはより強い国家体制が必要だ。ボスニア・ヘルツェゴヴィナは今日、国際社会に加わった」と述べる。一方で、セルビア人勢力の元指導者カラジッチらが今も逮捕されていないことに、不満を表明する。
11/25:
・フランスのル・モンド紙は、欧州会議のロブル人権委員の話として、米国がコソヴォ自治州に秘密収容所を設置している疑いがある、と報じる。同委員は、02年にコソヴォ自治州のプリシュティナ近くのボンドスティール米軍キャンプを訪問した際に秘密収容所のような施設を見たと同僚に明かし、「グアンタナモ米軍基地を小規模にしたような印象で、囚人たちの多くは座ったままで、何人かは独房におり、何人かはコーランを読んでいた」と語ったという。
11/26:
・アハティサーリ国連コソヴォ問題特使は、ティラナでアルバニアの指導者と会談した後、「コソヴォの将来の地位問題の解決は、コソヴォおよびバルカン地区の安全や、経済発展、多民族社会の安定にもプラスになる」と強調。またモンテネグロ共和国のポドゴリツァを訪問し、「コソヴォの最終地位に関する交渉が最後にどんな結果になろうと、国際社会の代表は長期的にコソヴォに駐留していくだろう」と表明。
・ボスニアのモスタル市に、民族和解の象徴として「ブルース・リー」の彫像が設置されて、除幕式が行なわれる。
11/27:
・ボスニア・モスタルに設置された「ブルース・リー」の彫像の一部が破壊され、ヌンチャクがなくなる事件が起こる。
11/00:
・EUの欧州委員会は、旧ユーゴスラヴィアのマケドニア共和国をEU加盟候補国として認めるよう各国に勧告する。
12/07:
・スペイン警察は、ICTYから起訴されていたクロアチアの将軍アンテ・ゴドヴィナをスペイン・カナリア諸島のテネリフェのプラヤ・デ・ラス・アメリカスで逮捕する。
12/08:
・旧ユーゴスラヴィア国際戦犯法廷・ICTYのカルラ・デル・ポンテ首席検察官は、クロアチア共和国軍元司令官のアンテ・ゴドヴィナ将軍を逃亡先のスペイン領カナリア諸島でスペイン警察が逮捕したことを明らかにする。
12/10:
・ICTYは、クロアチア共和国軍のアンテ・ゴドヴィナ将軍をハーグに収監する。ゴドヴィナはICTYの起訴状にある7つの起訴事由について全て無罪を主張。
12/11:
クロアチア共和国のザグレブでは、アンテ・ゴドヴィナの収監に抗議する集会が開かれ、4万人が集まる。
12/12:
・EU外相会議で、フランスはマケドニア共和国をEU加盟候補国とすることに反対し、オランダ、デンマークもこれを支持。セルビア・モンテネグロ連合国家などバルカン諸国の加盟促進にも批判的な意見が出る。
12/17:
・EUの首脳会議は、マケドニア共和国をEU加盟候補国として全会一致で認定する。
12/30:
・カナリア諸島で逮捕されたクロアチアのアンテ・ゴトヴィナ元将軍は、旧ユーゴ国際戦犯法廷I・CTYから起訴されていた。起訴事由は、95年8月にクロアチア南部のセルビア系住民居住地域「クライナ地方」のセルビア人に対する掃討作戦「オペレーション・ストーム・嵐作戦」を実行した際、150人のセルビア系住民を殺した罪や人道の罪に問われていた。逃亡していたゴドヴィナ元将軍は、旅券2通を保有し、ブラジル、マレーシア、チリ、アルゼンチン、中国に入国したことが確認されており、またロシア、タヒチ、チェコに立ち寄った形跡があり、日本にも滞在していた可能性も明らかとなる。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
                    
2006年
01/21:
・セルビア共和国コソヴォ自治州のイブラヒム・ルゴヴァ(自治州大統領)が、肺ガンで死去する。享年61歳。
01/23:
・モンテネグロのポドゴリツァ近郊で列車が脱線し、少なくとも39人が負傷。
01/28:
・スロヴェニア共和国マリボールにある世界最古のブドウの木の挿し木が、パリ市のワイン博物館に贈られる。
01/00:
・「連絡調整グループ・CG」の米・英・独・仏・伊・露は、ノルウエーのオスロで会合を開いて声明を発表。声明の要旨;「1,コソヴォは1999年以前の状態に戻さない。2,コソヴォを分割してはならない。3,コソヴォはいかなる他国との統合あるいはその一部になってはならない」というもの。
02/11:
・セルビア共和国・コソヴォ自治州議会は、ルゴヴァ前大統領の後任として、コソヴォ民主連盟のファトミル・セイディウ事務局長を新大統領に選出する。
02/17:
・EU欧州委員会のバローゾ委員長はコソヴォ自治州のプリシュティナを訪れ、「EUはコソヴォの地位問題の早い解決を支持し、またコソヴォの発展を支援することに尽力する。国連が提案した『コソヴォ民主化プロセス8項目標準』を誠実に履行することは、コソヴォの今後にとって非常に重要だ。コソヴォ当局が8項目の標準を実現することを希望している」と述べ、セルビア人住民がコソヴォ建設のプロセスに積極的に参加するよう呼びかける。
02/20:
・コソヴォ自治州の最終地位交渉の第1回直接協議が、ウィーンで行なわれる。国連のコソヴォ最終地位交渉担当のロハン副特使の仲介のもとにセルビア政府とコソヴォ自治州の代表、および米政府、EU、NATOがオブザーバーとして参加。「コソヴォ政府の管理権譲渡問題」について協議が行なわれる。この政府の管理権には、警察や司法権、経済や教育、民族意思の表現の権利や文化事業を行なう権利を有するというもの。
02/21:
・コソヴォ自治州の最終地位に関する第1回の直接協議が終了。ロハン国連コソヴォ問題担当副特使は、「今回の交渉では何一つ協議を結ぶことはできなかった。しかし、内容は建設的なものであり、関係者は『コソヴォ政府の管理権の移譲』について意見交換を行なった」と述べ、一部の問題では合意したことに満足の意を示す。次の交渉は3月17日に行なわれる。
02/27:
・ユーゴ国営タンユグ通信は、ボスニア紛争中にイスラム系住民を8000人殺害した「スレブレニツァ虐殺」を指揮した容疑で旧ユーゴ国際戦犯法廷に起訴された、セルビア人勢力軍のムラディッチ元最高司令官がベオグラードで逮捕された、と伝える。セルビア政府およびICTY報道官は否定。
03/01:
・モンテネグロ共和国議会は、セルビア・モンテネグロ連合国家からの独立の是非を問う国民投票を実施するための法案を、賛成多数で可決。国民投票の提案内容は投票率が50%以上で、有効投票の55%以上の賛成が必要となっている。国民投票は5月21日に行なわれる見通し。最新の世論調査によると、独立に賛成41.4%、反対32.3%、分からない・無回答26.3%。
03/10:
・コソヴォ自治州議会は、辞任したバイラム・コスミ首相の後任に、コソヴォ解放軍・KLAの元司令官だったアギム・チェクを賛成多数で承認する。チェク新首相は承認後に、「各民族の人民は団結し、平等で経済繁栄の社会を建設しべきだ。コソヴォという国家をつくることが住民の意思だ」と述べる。
03/11:
・ミロシェヴィチ・ユーゴ連邦元大統領は、旧ユーゴ国際戦犯法廷の収容所内で持病の心臓の治療を受けることなく、心不全で死去する。享年64歳。
・セルビアのベオグラードの新聞は、「殺された」、「ハーグがミロシェヴィチを殺した」、などの大見出しを掲げる。
・セルビア社会党のダチッチ党首は、「彼は組織的に殺された。セルビアにとって大きな損失だ」と強調。
・ミロシェヴィチ元大統領の兄のボリスラフ・ミロシェヴィチは、「すべての責任は国際戦犯法廷にある」と語る
・ロシア外務省は、「保証したにもかかわらず、戦犯法廷は心臓の治療の機会を与えなかった」と、ロシアでの治療を戦犯法廷に求めたが却下した戦犯法廷の対応を、批判する声明を発表。
・セルビア・モンテネグロ連合国家は、EUと加盟に関する協議をオーストリアで行ない、「EU加盟を最終目標とする」との声明を発表。
03/12:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYはミロシェヴィチ元大統領の司法解剖を行ない、心筋梗塞とする司法解剖の暫定報告を発表。死因をめぐってセルビア・モンテネグロ国内から非難の声があがっている。ミロシェヴィチ元大統領の死因について、ミロシェヴィチ元大統領の実兄で元駐ロシア大使のボリスラフ・ミロシェヴィチは、死因究明について「近親者はハーグの検視を信用していない。ロシアの医師も参加できるよう頼んでいる」と語る。ミロシェヴィチ元大統領は10日に妻のマルコヴィチにかけた電話で、「ぐっすり寝てくれ。朝起きたら直ぐまた電話する」との言葉が最後のものとなった、とマルコヴィチ夫人が語る。マルコヴィチ夫人は、「国際手配の身だ」と述べ、訪問に悲観的な見通しを語る。
・タディッチ・セルビア共和国大統領は、「セルビアの近年の歴史の中でミロシェヴィチがした行為からすれば、国葬は全く不適切であると信じる」との声明を発表。
03/13:
・ミロシェヴィチ元大統領の顧問弁護士は、元大統領の遺体はベオグラードに運ばれて葬儀が行なわれるとの見通しを語る。
03/14:
・ミロシェヴィチ・ユーゴ元大統領の顧問弁護士は大統領の死について、「口封じの毒殺だ」と指摘。元大統領の遺体は、アムステルダムのスキポール空港からベオグラードに向かう。
・オランダ人医師によると、ミロシェヴィチ元大統領が死去する2週間前に元大統領の血液サンプルを分析した際、通常はハンセン病や結核の治療に用いられる薬の成分が検出されたと述べ、これらの薬は血圧を下げる薬の効果を妨げる効能があるという。
・セルビア共和国のベオグラード裁判所は、ミロシェヴィチ元大統領の葬儀に参加するミリヤナ・マルコヴィチ夫人に対する逮捕状の執行を一時停止する措置を決定する。元大統領の息子のマルコは遺体を引き取るためにモスクワからハーグに到着。
・旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYのカルラ・デル・ポンテ首席検察官はミロシェヴィチ・ユーゴスラヴィア連邦元大統領の死について、「彼は密かに薬を飲み、自分で体を壊すことでモスクワに行くか自殺をしたかったのだろう」と述べる。
03/15:
・ミロシェヴィチ・ユーゴ連邦元大統領の遺体が、アムステルダムからベオグラードの空港に到着。
03/16:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷に収監されて死亡したミロシェヴィチ元大統領の棺は、セルビア社会党の幹部らによりベオグラード市内の革命博物館に安置され、一般の弔問客が1000人以上が訪れる。18日にポジャレヴァツに移され埋葬される予定。
03/17:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYのフカール所長は、ミロシェヴィチ・ユーゴ元大統領の死因について「毒物は検出されなかった」と述べ、毒物や自殺の可能性を否定。一方同席した書記官は、「1月12日の血液検査ではリファンピシンの成分が見つかった」と述べる。リファンピシンは高血圧の治療薬の効果を弱めるとされる抗生物質。
・セルビアの主要紙「ポリティカ」紙に、「われわれの名前で、あなたが勝手に起こした戦争に感謝します」との市民6名による死亡広告が掲載される。また、この死亡広告の横には、「あなたはセルビアを守り、真実のために戦った英雄です。安らかにお眠り下さい」との別の広告を掲載。
・セルビア共和国コソヴォ自治州の最終地位確定の第2回直接協議が、ウィーンで開かれる。セルビア共和国政府との関係、新しい行政区間の相互関係、および財政権問題などについて協議する。セルビア側は、国内法で戦犯として訴追しているタチが、コソヴォ自治州交渉団の代表となっていることに態度を硬化させる。
03/18:
・ミロシェヴィチ・ユーゴ連邦元大統領の追悼式典に10万人の市民が参加。葬儀は、ポジャレヴァツにある元大統領の邸宅で80人が参加して行なわれ、遺体は中庭に埋葬される。フランスの劇作家ピーター・ハントケが追悼に訪れ、一般弔問客にも公開されて支持者らが長い列を作る。
註;後に、フランス・コメディ・フランセーズは、劇作家のピーター・ハントケがミロシェヴィチ・ユーゴ大統領の追悼式に出席して讃辞を述べたことなどを理由に、作品の上演中止を決める。
04/05:
・オランダの検察当局はハーグの旧ユーゴ国際戦犯法廷で死亡したミロシェヴィチ元大統領の死因について、「ミロシェヴィチの死因は自然死との結論に達した。犯罪に基因することを示すものは一切ない」と断定したと表明。
04/06:
旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYのデル・ポンテ首席検察官は、コシュトニッツァ・セルビア共和国首相がムラディッチ・ボスニア・セルビア人勢力元最高司令官を今月末までに引き渡す、と述べたことを明らかにする。
05/03:
・EUは、セルビア・モンテネグロ連合国家のEU加盟の準備交渉を中断すると発表。中断の理由は、EU加盟の条件としていたボスニアのセルビア人勢力のムラディッチ元司令官の逮捕が実現しなかったことによる。セルビアのラブス副首相は、責任をとって辞任。
05/18:
・モンテネグロ共和国の独立賛成派は、首都ポドゴリツァで数万人規模の集会を開催。ジュカノヴィチ共和国首相は、「セルビアは自分の利害のために我々を従えていただけだ」と強調。
05/21:
・セルビア・モンテネグロ連合国家のモンテネグロ共和国において、セルビア人住民などが反対する中、ジュカノヴィチ首相は独立の是非を問う住民投票を強行する。有権者総数48万5000人。
・EUは、「投票率50%以上、賛成票が55%以上」に至らなければ独立を承認しないとの条件を付ける。
05/22:
・モンテネグロの住民投票管理委員会は、共和国の独立の是非を問う住民投票で、暫定投票率が86.1%に達したと発表。独立監視団体は、独立が認められる賛成票が55%を僅かに上回り、56.3%に達するとの独自調査結果を発表。首都ポドゴリツァでは市民が歓呼の声を上げる。
・モンテネグロの反独立派は、全ての投票所の投票用紙の再集計を求める声明を発表。
・モンテネグロ共和国のジュカノヴィチ首相はEU加盟について、「我が国は、ルーマニアなどに続いてEUの加盟国になることを確信している」と強調。
・セルビア共和国のドラシュコヴィチ外相は、「むしろセルビアの原点に戻る歴史的瞬間となる」と述べる。
05/23:
・モンテネグロ共和国の住民投票に関するEU派遣のリプスカ投票管理委員長は、投票率が86.3%、独立賛成が55.5%を占めたと発表。EUの条件を0.5%上回り、辛うじて独立承認条件を満たす。
・セルビア共和国のタディッチ大統領は、モンテネグロ共和国で行なわれた独立を承認する住民投票の結果を受け入れる、との考えを表明。
・EUのレーン欧州委員会委員は、モンテネグロ共和国の住民投票の結果に伴うEU加盟に関し、「住民投票の正式な結果が届き次第、協定をめぐる交渉をセルビア、モンテネグロ両国と個別に行なう」との声明を発表。
06/03:
・モンテネグロ共和国議会は住民投票の結果に基づき、1918年以来88年ぶりに独立を宣言する。モンテネグロ共和国が独立を宣言したことにより、旧ユーゴスラヴィア連邦は完全に解体されたことになる。モンテネグロは、面積1万4000平方キロ、人口62万人で、セルビア人住民が30%を占める。
06/04:
・セルビア・モンテネグロ連合国家のスベトザル・マロヴィチ大統領が辞任。
06/05:
・セルビア共和国議会もモンテネグロの独立を承認する決議を可決。
06/12:
・欧州連合・EUは、モンテネグロ共和国の独立を承認する。
06/13:
・米国は、モンテネグロ共和国の独立を承認。
・FIFA・W杯でクロアチア代表がブラジルに惜敗した直後、ボスニアのモスタル市でクロアチア人が暴徒化し、対立するイスラム教徒住民や警察と衝突。1人が銃撃で重傷を負ったほか、警官6人も負傷し、26人が逮捕される。
06/14:
・アブハジア、南オセチア、沿ドニエストル3か国の大統領が会談し、民主主義と民族の権利のための共同体の設立を宣
言する。
06/15:
・日本政府は、モンテネグロ共和国の独立を承認する。
06/28:
・国連総会は、独立したモンテネグロの加盟を全会一致で承認。加盟国は192ヵ国となる。
07/05:
・マケドニア共和国議会の総選挙の非公式中間発表で、野党連合側が与党連合をリードし、民族主義強硬派の国家統一民主党のグルエフスキ党首は勝利を宣言。
07/24:
・アハティサーリ国連事務総長コソヴォ問題特使は、コソヴォ自治州の最終な地位について、セルビア共和国首脳とコソヴォ自治州首脳をオーストリアのウィーンに招いて交渉の仲介をする。セルビア側からは、タディッチ大統領とコシュトニツァ首相が出席し、コソヴォ自治州側からはセイディウ自治州大統領とチェク首相が出席。交渉は、独立を目指すコソヴォ自治州側と、セルビア共和国への残留を譲らぬセルビア側が対立し、物別れに終わる。
08/04:
・セルビア急進党のニコリッチ党首は地元のメディアに対し、「われわれは今までも武器を取ってコソヴォを死守してきた。これからも永久に闘う」と武力行使の可能性に言及。
・「コソヴォ問題連絡調整グループ」のドイツ・フランス・イタリア・ロシア・米・英6ヵ国は、「セルビア、コソヴォのアルバニア系の両者は直ちに緊張を緩和させ、住民間の信頼構築を図るべきだ」と警告。
08/13:
・セルビア政府は、今月から国民が私的な目的で警察官や、警察犬および警察のヘリコプターなどをレンタルできるサービスをはじめると発表。それによると、企業や個人が現金輸送やイベントなどの警護として警察官を借りる場合、1時間300ディナール(530円)、馬は1日2400ディナール、警察犬は1日1800ディナールで貸し出すと発表。
08/26:
・マケドニア共和国議会は、新首相に7月5日の議会選挙で第1党となった国家統一民主党党首のグルエフスキ元財務
相を選出。
09/10:
・モンテネグロ共和国は、6月にセルビアとの国家連合から独立して初めての議会選挙を実施する。議会は1院制で議席は定数81。独立を進めたジュカノヴィチ首相率いる民主社会党を軸とした連立与党が、信任を受けるかどうかが焦点となる。
09/11:
・第14回非同盟諸国外相会議がキューバのハバナで開かれる。
・ジュカノヴィチ・モンテネグロ首相は、議会選挙で未明に与党連合の「絶対的勝利」を宣言する。
・コソヴォ問題連絡調整グループと東南ヨーロッパ地域の国の代表がブルガリアのソフィアに集まり、コソヴォ自治州の将来の地位問題について討議する。
・ブルガリアのカルフン外相は「連絡調整グループ」の開幕式で、この数ヵ月間でコソヴォ問題が協定に達するように期待すると前置きし、「この協定には、コソヴォ地区の安定を保証すること、安定した政府を確立すること、少数民族の権利と歴史的文化財を保護することなどの内容がある」と述べる。
09/12:
・コソヴォ問題連絡調整グループと東南ヨーロッパ諸国によるコソヴォ問題の討議は、この日も継続して行なわれる。
09/15:
・第14回非同盟諸国首脳会議・NAMがキューバのハバナで開かれ、117ヵ国と1機構が参加。アフマディネジャド・イラン大統領、チャベス・ベネズエラ大統領、ルカシェンコ・ベラルーシ大統領なども出席。
・非同盟諸国会議の開催国議長のラウル・カストロ・キューバ副議長は、「非同盟諸国会議は、単独行動主義、二重基準と戦う」と米国主導の世界秩序に対抗する演説を行なう。
・チャベス・ベネズエラ大統領は、キューバ革命を讃え、南南協力を具体化する発展途上国銀行設立を提案し、非同盟諸国会議の再活性化を呼びかける。
09/17:
・第14回非同盟諸国首脳会議は未明までかかって、「現在の世界情勢における非同盟運動の目的と原則に関する宣言」、「イランの核問題に関する声明」、「非同盟諸国会議の方法論に関する文書」、「最終文書」などを採択して閉幕。
「現在の世界情勢における非同盟運動の目的と原則に関する宣言」;「1,単独行動主義、覇権主義、専制ドクトリンを批判する。2,多極的な世界秩序の推進と多国間主義の強化が必要。3,貧困増大や格差拡大に懸念を表明する」。
「最終文書」;「1,イランの核開発は、平和目的の核開発は全ての国に与えられた基本的で奪うことのできない権利である。2,国連改革は、5常任理事国の拒否権行使を制限しつつ国連総会の役割を拡大させることで国連の民主的な運営を目指す。3,イスラエルのレバノン侵攻を厳しく非難する。レバノン政府と国民への連帯と支持を表明する」。
・ラウル・カストロ・キューバ議長は閉会演説で、「大国に押し付けられた政治・経済秩序に立ち向かい、団結することが優先事項として決定された」と述べる。
09/20:
・コソヴォ問題連絡調整グループは、コンドリーサ・ライス米国務長官を議長とし、コソヴォ自治州の最終地位について協議。しかし、セルビア共和国とコソヴォ自治州の住民代表との対立が解けないために合意はならず。
09/28:
・NATOはスロヴェニアのポルトロジュで非公式国防相理事会を開き、アフガニスタン南部で国際治安支援部隊・ISAFを指揮するNATO軍傘下へ、米軍1万2000人が加わることで合意。アフガニスタンに派遣されている米軍は現在2万1000人で、NATO軍傘下に入らない部隊は現在のままの作戦を続行する。
09/29:
・スロヴェニアで開かれていたNATOの非公式国防相理事会で、イワノフ・ロシア国防相は記者会見で、同国との関係が悪化しているグルジアにNATOの加盟国が武器を供与している、と非難。
10/03:
・ジュカノヴィチ・モンテネグロ首相は「自分のポストに、情熱を持ち続けられない」ことを理由に引退を表明したと、ブヤノヴィチ大統領が国営ラジオで説明。ジュカノヴィチ首相は、91年に29才の若さでモンテネグロ共和国の首相に就任し、さらにモンテネグロの大統領に就任した実績を持つ。
10/28:
・セルビア共和国は、コソヴォ自治州を自国の領土と明記する新憲法案についての国民投票を行なう。コソヴォ自治州のアルバニア系住民の大半は国民投票への参加を拒否。
10/29:
・セルビア共和国選挙管理委員会は、新憲法案についての国民投票の結果を発表。有権者660万人の内、51.6%がコソヴォ自治州をセルビア領土とする憲法に賛成する。コソヴォ自治州のアルバニア系住民の大半は、この国民投票への参加を拒否。
10/31:
・ドイツ連邦国防省は、ボスニア・ヘルツェゴヴィナへの派遣部隊850人を来春以降撤退させる方針を表明。ユング国防相は「海外への派遣は、ある分野で確実に限界に達している」と述べる。
11/17:
・コソヴォ自治州の州議会選挙が行なわれ、コソヴォ解放軍・KLAを前身とするタチ率いるコソヴォ民主党が34%を獲得し第1党となる。現在の与党のセイディウ大統領率いるコソヴォ民主同盟は22%、新コソヴォ連盟は12%。
11/26:
・コソヴォ自治州の最終地位を確定するための当事者交渉が、米国、EU、ロシアの仲介により、ウィーン郊外のバーデンで始まる。交渉の日程は3日間。コソヴォ民主党のタチ党首は、コソヴォの最終地位が12月10日に国連で報告され次第独立を宣言すると表明。セルビア側は、「コソヴォ自治州は不可分の領土」として独立を拒否している。
11/28:
・コソヴォ自治州の最終地位を確定する当事者交渉は、セルビア、コソヴォ双方が主張を譲らずに決裂する。
・セイディウ・コソヴォ自治州大統領は、「残念ながら合意には至らなかった」と述べ、「西欧諸国と協力しつつ、できるだけ速やかに議会で独立を宣言することになるだろう」と述べる。
・コシュトニツァ・セルビア首相は、「セルビアが受け入れられるのは安保理での結論のみだ」と一方的な独立を牽制。
12/07:
・コソヴォ自治州の最終地位を確定する当事者交渉が決裂したことを受けて、仲介をした米国、EU、ロシアの3者は、「コソヴォの主権に関するそれぞれの立場を譲る意思がなく、合意には至らなかった」とする報告書を国連事務総長に提出。
・ロシアのチェルキン国連大使は、「協議は問題解決が可能であることを示した」と述べ、交渉継続を求める議長声明の原
案を提示。
・コシュトニツァ・セルビア首相は、「コソヴォ自治州が独立を宣言すれば、NATO軍がセルビアを空爆したのは、傀儡国家をつくるためだと明白になるだろう」と牽制する。
・NATOは、コソヴォ自治州の最終地位確定交渉が不調に終わったことを受けて、NATO軍のKFOR1万6500人の駐留体制を当面維持していくことで合意する。
12/08:
・セルビア共和国のコシュトニツァ首相は、「交渉こそ民主的な解決への道だ」として交渉再開を呼びかける。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

2007年
01/01:
・国連事務総長に潘基文(韓)が就任する。
・EUは、ルーマニアとブルガリアが加盟することを正式に承認し、構成国は27ヵ国となる。
註;51年のEC創設時の原加盟国は、仏、西独、伊、オランダ、ベルギー、ルクセンブルグの6ヵ国。73年第1次拡大で、英、アイルランド、デンマークの3ヵ国が加わり9ヵ国となる。81年第2次拡大で、ギリシア1ヵ国が加盟して10ヵ国。86年第3次拡大で、スペイン、ポルトガルの2ヵ国が加盟して12ヵ国。95年第4次拡大で、オーストリア、フィンランド、スウェーデンの3ヵ国が加盟して15ヵ国。04年第5次拡大で、スロヴェニア、ポーランド、チェコ、スロヴァキア、ハンガリー、エストニア、リトアニア、ラトビア、マルタ、南キプロスの10ヵ国が加盟して25ヵ国。07年第6次拡大で、ルーマニア、ブルガリア2ヵ国が加盟し27ヵ国。加盟交渉国は、「トルコ、アイスランド、モンテネグロ、セルビア、マケドニア」。加盟候補国は、「アルバニア、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、ウクライナ、モルドヴァ」。
・スロヴェニア共和国は、EUの通貨「ユーロ」を導入する。
01/07:
・日本のNGO「国際ボランティア連絡会議」がセルビア人の子ども達にプレゼントを贈るための寄付を呼びかける。この団体は、昨年には30万円ほどを集めて、文房具や玩具を寄贈。
01/21:
・セルビア共和国議会(1院制・250)選挙の投票が実施される。セルビア共和国議会選の即日開票によると、セルビア急進党が得票率28.5%で第1党になる見通し。タディッチ大統領率いる民主党は22%、コシュトニツァ首相のセルビア民主党は17%を占める。
・ブレア英首相はセルビアの議会選について、「今回の選挙はセルビアが前進するか立ち後れるかの決断だ」と述べる。
・セルビア急進党は、ブレア英首相などの発言について、「EUからの脅迫だ」と反発。
・メルケル・ドイツ首相はプーチン露大統領とエネルギー供給問題で協議し、バルト海経由のパイプライン建設や海上輸送の強化も必要となることなどで合意する。
01/22:
・セルビア議会選が確定し、セルビア急進党が81議席を獲得して第1党となり、タディッチ大統領率いる民主党は65議席、コシュトニツァ首相のセルビア民主党は47議席。G17プラスが19議席、社会党・SPS16議席、自由民主党・LDP連合15議席、少数民族政党8議席、ドラシュコヴィチの再生運動は5%に達せず0議席となる。
・EU議長国のシュタインマイヤー独外相は、EU外相の会合でセルビア議会選について、「民主派勢力は得票で3分の2を獲得した。欧州路線を推進する政権構築に好条件をもたらした」と民主派の勝利を讃える発言をする。
01/26:
・セルビア共和国コソヴォ自治州の独立問題をめぐる仲介役のアハティサーリ国連事務総長特使は、ウィーンで米国、欧州、ロシアの連絡調整グループ6ヵ国にコソヴォの最終地位を示す仲介案を提示。2月2日にセルビアとコソヴォ双方に仲介案についての細部を提示する予定であることを明らかにする。ロシアが仲介案に懐疑的な姿勢を示し、提示時期を遅らせるよう求める。
02/02:
・アハティサーリ国連事務総長特使はベオグラードを訪問し、セルビア共和国コソヴォ自治州の処遇をめぐり、「コソヴォ自治州は、NATO軍の駐留を継続するなどの一定の制約下で、国連などの国際機関に加盟できるとの事実上の独立を認める」とする仲介案をセルビア、コソヴォ双方に提示。仲介案の骨子;「1,EUと国連が任命した監督官を置く。監督官はコソヴォ議会の法案に対する拒否権と官僚の罷免権を持つ。2,独立宣言は行なわない。3,国家、国旗を制定する。4,軽武装の治安部隊を保持する。5,国境警備隊を保持する。6,国際機関への加盟を認める」など、事実上の独立国家としての権限を認める仲介案を示す。
・セルビア共和国のコシュトニツァ首相はアハティサーリ特使との会談を拒否し、コソヴォを独立国家として承認する国との国交断絶を宣言する。応対したタディッチ大統領も、「独立には反対する」と強調。コソヴォのアルバニア系住民は早期の完全独立を求めているが、これが受け入れられない場合、不満が爆発することも懸念されている。ロシアは、セルビアが同意しない決着には反対する意向を表明。
02/04:
・タディッチ・セルビア共和国大統領はテレビ演説で、「コソヴォの強制的な独立は国際法のあらゆる基本原則に反するものであり、政治・法律上危険な前例となる」と述べる。
02/10:
・セルビア共和国コソヴォ自治州の首都プリシュティナ中心部で、コソヴォの即時完全独立を求めるアルバニア系青年グループを中心とした数千人のデモ隊が投石を繰り返し、警官隊と衝突する。警官隊は催涙弾などで応酬し、デモ参加者2人が死亡し、双方合わせて数十人が負傷。
02/14:
・セルビア共和国議会は、アハティサーリ国連事務総長特使が2日に提示した仲介案に反対する決議案を、賛成225,反対15、で可決。コソヴォ自治州の事実上の独立を認める仲介案は、「バルカンを不安定にし、少数民族や領土問題を解決する上で極めて危険な先例となり、予測出来ない重大な結果を招く」と批判。
02/15:
・NATOのヤープ・デ・ホープ・スヘッフェル事務総長(オランダ)は、「セルビア議会が反対を決議しても、仲介案に基づいて建設的な対応をとるよう、さらに強く求めるのみだ」と発言。
02/21:
・セルビア共和国コソヴォ自治州の独立を実質的に認める国連仲介案提示を受け、セルビア共和国とコソヴォ自治州による最終交渉がウィーンで始まる。国連の仲介案は、コソヴォ自治州の地位;「独立の表現は避ける。欧州連合・EUなどによる監督下に置く」。自治州の権限は;「国連の国際機関に加盟することが出来る」などの実質的な独立を認めるというもの。
・セルビア共和国代表は、「提案全体を否定するわけではないが、領土を侵すことは拒否する」と発言。
02/26:
・国際司法裁判所・ICJは、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ政府が93年3月20日に提訴したセルビア・モンテネグロ連合国家を被告とした「集団的殺害犯罪の防止および処罰に関する条約の適用に関する事件(ジェノサイド条約適用事件)」の主文判決を言い渡す。
92年から95年の内戦時のイスラム教徒の殺害に関するセルビア政府の関与について、「1,セルビア共和国が国家として直接ジェノサイドに責任があるとはいえない。2,セルビア共和国は、95年7月のスレブレニツァの集団殺害犯罪の防止および処罰に関する条約の下でのジェノサイドを防止する義務に違反したと認定する。3,金銭的支払いの命令再発防止保証および確約を提供することの指示が適切である事例ではないと認定する」との判決を出す。
註;国際司法裁判所は、審理に当たって独自の証拠調べを行なわず、国連の「スレブレニツァ報告書」や、旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYが収集した証拠を採用して判決を出した。しかも、管轄権やアクセス権について矛盾に満ちた認定をしている。それでも、ICTYがミロシェヴィチ裁判で執着していた、ボスニア内戦におけるジェノサイドに関する「セルビア共和国」の直接的な関与は否定した。この判決によって、ミロシェヴィチ元大統領のジェノサイドに係わる罪は死後に否定されたことになるが、既にミロシェヴィチ・セルビア元大統領はハーグの勾留施設で獄死させられている。
02/00:
・コソヴォ自治州内のセルビア人住民は、03年に創設した「コソヴォ・メトヒヤ・セルビア人地域連合」を「コソヴォ・メトヒヤ・セルビア人議会」へと改組する
03/02:
・ウィーンで開かれていたコソヴォの最終地位を求める国連の仲介案に基づく、セルビア共和国とコソヴォ自治州の首脳レベルの交渉は合意しないまま終了。アハティサーリ国連事務総長特使は、「基本問題をめぐる両者の立場は真正面から対立している」と述べ、交渉が不調に終わったことを明らかにする。特使は10日にも最終案を主要関係国と両当事者に示す予定。
03/03:
・セルビア共和国コソヴォ自治州プリシュティナで、アルバニア系住民数千人が、国連仲介案に反対するデモを行なう。
03/10:
・国連の仲介案に基づく、セルビア共和国コソヴォ自治州の最終的地位をめぐるセルビア、コソヴォ双方の首脳レベルの交渉が、アハティサーリ国連事務総長特使の仲介の下に行なわれる。仲介案の骨子;「コソヴォ自治州は、EUなどの監督機関が官僚の任免権などの監督権を持つ。独自の国旗を制定し、国家の権限は、国際関係において独立国と同様のものとする。独立という文言は使用しない」というもの。
・セルビア共和国の穏健派のタディッチ大統領は、「セルビアの主権と領土の一体性は譲れない。仲介案は地域情勢の不安定化につながる」と主張。
・コソヴォ自治州のセイディウ大統領は、仲介案を受け入れるが、完全独立を目指す姿勢は崩さず。双方の溝は埋まらないため、交渉は決裂する。
・アハティサーリ特使は、「今回の協議の目的は、セルビアとコソヴォ双方がこの問題で歩み寄ることだったが、その目的を達成できなかった。この問題についてこれ以上協議する必要はない」と述べ、3月末までにコソヴォの最終地位に関する調停案の草案を国連安保理に提出することを表明。
・EU欧州委員会のオッリ・レーン拡大担当委員は、「コソヴォの地位に関してセルビア側とコソヴォ側双方の当事者が対立的な立場を採り続けていることを考慮すると、アハティサーリ特使の仲介案は現実的な妥協案である。同案は、将来において安定し、民主的で、多民族からなるコソヴォを確立するための枠組みを提供する。仲介案において、それぞれの社会集団の権利の保護、流民や強制追放者が帰還する権利、文化的・宗教的拠点の保護および分権化の規定に重点が置かれていることを歓迎する」との声明を発表。
03/23:
・アハティサーリ国連事務総長特使の報道官は、セルビア共和国コソヴォ自治州の最終地位をめぐる安保理への提案を26日に報告する予定、と発表。
03/26:
・アハティサーリ国連コソヴォ問題事務総長特使は、コソヴォの地位確定案に関する報告書を安保理に提出。報告の骨子;「コソヴォ自治州の最終地位として独立は認めるものの、独立の初期には国際社会が派遣した、国際文民代表・ICRとNATO主導の国際駐留軍・IMPの関係者によって監督と援助を受けること」というもの。付属文書では、NATO軍主導の国際駐留軍・IMPは国際文民代表ICRと協力し武力行使を含むあらゆる行動の自由を有し、コソヴォ治安部隊・KSFの創設・訓練を監督・支援することなどを付記。
・潘基文国連事務総長は地位確定案に支持を表明する。
・EU議長国のドイツは、安保理提出の地位確定案に支持を示す。
・セルビア共和国は、コソヴォのいかなる形の独立をも受け入れられない、と表明。
04/03:
・国連安保理は非公開会合を開き、コソヴォ自治州の最終地位をめぐる本格的な協議に入る。セルビアのコシュトニツァ首相は、アハティサーリ国連特使の仲介案に対し、「コソヴォ側に立った一方的な提案だ」と批判。
・非常任理事国のベルビク・ベルギー国連大使は、安保理の多数決によって国家の分離独立を決めることに疑問を呈し、さらに調査が必要だと提言する。
04/26:
・国連安保理は、15理事国によるコソヴォ自治州の最終地位確定に関する視察団を、セルビアに派遣する。
・コシュトニツァ・セルビア共和国首相は安保理使節団と会談した際、「セルビアは、コソヴォの問題に関する交渉に積極的に参加しており、コソヴォの自治を承認するなど、今後の位置づけに関する法案を提出した。コソヴォ問題を担当しているアハティサーリ国連事務総長特使が提出した解決案は、コソヴォの独立を可能にするものである。セルビアは、この法案に反対する」と強調。
・国連安保理視察団のジョアン・ベルビク・ベルギー国連大使は記者会見で、「視察団が今回欧州入りした目的は、地元で情報を収集するためである。コソヴォの今後の位置づけについては、まだ決まっていない」と述べる。
04/27:
・NATO外相理事会はコソヴォ自治州の最終地位について、アハティサーリ国連特使が提示した「コソヴォ独立」勧告を、基本的に承認する。ただし、州内少数派のセルビア人の人権に関して配慮するようにと、注文も付ける。
04/28:
・コソヴォ自治州の最終地位をめぐる国連安保理の視察団団長のベルビク・ベルギー国連大使は、視察を終えて州都プリシュティナで記者会見し、「重要な問題の決定を、予め期限を切ることで縛ってはならない」と述べ、安保理で合意を得るには、一定の期間が必要との見通しを示す。
05/08:
・国連安保理の欧米5ヵ国はコソヴォの最終地位をめぐり、アハティサーリ国連事務総長特使の報告によるコソヴォ独立の勧告を「支持する」などとした、コソヴォ独立決議案の骨子を安保理加盟国に配布。ロシアは、「将来の地位を決定するには政治的結論が出ておらず、セルビアとコソヴォ間の交渉継続が必要」だなどとした独自の決議案骨子を配布。
05/10:
・国連安保理は会議を開き、コソヴォ視察団が提出した報告書について討議。視察団の報告書は、「コソヴォの情勢は依然として緊張しているが、全体から見ると比較的安定している。しかし、コソヴォに住むアルバニア系とセルビア人の間の対立は緩和されていない。全面的な和解の実現には各関係者の努力が必要だ」と記述。
・ロシアのチェルキン国連大使は、「安保理代表団の訪問は、交渉でコソヴォ問題を解決するというロシアの立場を強化するものだ」と述べる。
・中国の劉振民国連次席大使は、「国際社会は、対立している双方が対話を行なうことを促していく努力を放棄せず、セルビアとコソヴォが交渉によって、双方が満足できる結果に至るまで食い違いを縮めていくよう働きかけていくべきだ」と述べる。
05/11:
・米・英・仏3ヵ国は、コソヴォ自治州の地位問題についての決議案を安保理のメンバーに配布し、コソヴォ独立に関する法案を採択するよう呼びかける。ハリルザド米国連大使は、「この法案は、コソヴォを国際的な監督の下に独立させるという、アハティサーリ国連特使の提言を支持している。この法案では、EUがコソヴォに法的代表機構を設置し、コソヴォの独立と司法・警察機構の設置を支援することを求めている」と述べる。ドラサブリエール仏国連大使は、「数週間で決着させたい」と採決に意欲を示す。
05/15:
・セルビア共和国議会は、コシュトニツァ首相を首班とする民主改革派政党や親欧米派などとの新連立内閣を賛成133,反対106で承認する。1月の選挙で第1党となったセルビア急進党の入閣は見送られる。
05/23:
・セルビアのベオグラード特別法廷はジンジッチ首相暗殺事件で、ミロシェヴィチ政権下の特殊警察部隊元司令官ら被告12名に禁固40年から8年の判決を言い渡す。
・国連総会は、第62回国連総会議長にマケドニア元外相のスルジャン・ケリムを選出。ケリムは、総会で議論が進められている安保理改革について「62回、63回総会で解決できるとは約束できない」と述べる。
05/31:
・国連安保理に、コソヴォ自治州の最終地位として独立を支持する一部修正した決議案を、欧米各国と米国が提示。修正案はロシアの主張にも一部配慮しているが、コソヴォに実質的独立を認めるアハティサーリ国連事務総長特使の提案を支持する基本線は変わっていない。ハリルザド米国連大使は、「来週の採決が望ましい」と主張。ロシアのチェルキン国連大使はこれに対し、「我々の提案が盛り込まれていない。残念ながら結果は明らかだ」と拒否権行使の可能性をほのめかす。
05/00:
・EUおよび米国は安保理決議1244に代わる草案を作成。要旨;「1,アハティサーリの草案を支持する。2,120日の移行期間を経てコソヴォ自治州における国連の統治を終了する」。この草案はロシアとの調整に失敗し、安保理に提出されず。
06/04:
・95年7月にボスニアのスレブレニツァで殺害されたムスリム人の遺族は、国連とオランダ政府を相手に、虐殺を防げなかった責任を問う訴訟をオランダ地裁に提訴する。
06/10:
・ブッシュ米大統領はアルバニアのティラナを訪れ、ベリシャ・アルバニア首相と会談。ブッシュ米大統領は、アルバニアのNATO加盟を支持する考えを述べるとともに、コソヴォ自治州の独立実現に取り組む意向を示す。
06/20:
・国連安保理の欧米6ヵ国は、セルビア共和国コソヴォ自治州の独立を当面延期し、セルビアとの交渉期間を120日間設けるなどの決議案を安保理に提出。決議案骨子;「1,国連事務総長にコソヴォの最終的地位をめぐる当事者間の交渉を速やかに招集するよう求める。2,交渉を継続する120日間はコソヴォ側に独立を宣言しないよう要請する。3,交渉期限後は特使の勧告に従い、120日間で国連からコソヴォに統治権限を移譲し、EUが行政運営を監督し、NATO軍が治安維持に当たる」というもの。
06/21:
・EU首脳会議で、地中海のマルタとキプロスが来年1月から「ユーロ」を導入することを承認する。07年1月にスロヴェニアが導入したことで、ユーロ通貨圏は15ヵ国になる。
07/16:
・国連安保理は、コソヴォ自治州地位に関する第5の修正案を協議したものの、ロシアがこの案を拒否する。
07/17:
・EUと米国は、コソヴォ自治州の地位に関する最終案を国連安保理に提出すると示唆。
07/20:
・国連安保理は、国連の暫定統治下にあるセルビア共和国コソヴォ自治州の最終地位をめぐる決議案の採択を断念する。欧米の安保理での強制的独立の道筋は頓挫する。以後、再び「連絡調整グループ」に舞台を移して協議を続けることになる。
・コソヴォ自治州のアギム・チェク首相は、「国連は失敗した」とし、アルバニア系の記念日である11月28日を独立日とする議案を週明けにも可決するよう自治州議会に要請する。
07/21:
・コシュトニツァ・セルビア首相は、安保理でのコソヴォ自治州の最終地位に関する決議案の採択断念について、「我が国固有の領土を奪う試みに対するセルビア、ロシアの勝利だ」と述べる。
07/23:
・セルビア共和国コソヴォ自治州のセイディウ大統領とチェク首相はワシントンを訪問し、ライス米国務長官と会談。コソヴォ自治州大統領らは、「国際社会の主要なパートナーと相談なく、一方的に独立を宣言することはない」と述べ、独立を支持する欧米諸国の調整に協力する考えを示す。
08/10:
・コソヴォ自治州の最終地位をめぐり、米、ロシア、EUの各代表が、セルビアの首都ベオグラードでタディッチ大統領、コシュトニツァ首相と会談。会談後、EU代表のドイツのイシンガー駐英大使は、「最初の協議として、我々の責務について詳細を説明した」と述べる。協議団は、11日にはコソヴォ自治州に向かう。
08/31:
・国連コソヴォ暫定行政支援機構のリュッカー事務総長特別代表は、コソヴォの議会と市町村の選挙を11月17日に行なうと発表。
09/30:
・ボスニア・ヘルツェゴヴィナのセルビア人共和国大統領のミラン・イェリッチが心臓発作で、ボスニア北部のドボイの病院で死去する。享年51歳。イェリッチはセルビア人共和国の経済・エネルギー相などを経て、06年にセルビア人共和国大統領に就任。
10/00:
・モンテネグロ共和国は、新憲法を制定する。
11/11:
・スロヴェニア大統領選挙の決選投票で、中道左派の野党候補トゥルク国連元事務次長補が68.3%を獲得して当選。
11/17:
・コソヴォ自治州の議会選挙が行なわれる。
11/18:
・コソヴォ自治州議会選挙が行なわれ、即日開票の結果、コソヴォ解放軍・KLAの流れを汲むコソヴォ民主党が34%を獲得して第1党となる。コソヴォ連盟は12%を獲得するが、穏健派のファトミル・セイディウ・コソヴォ大統領の与党コソヴォ民主同盟は22%にとどまり、敗れる。
11/20:
・コソヴォ自治州の最終地位を確定するための当事者交渉が、米、EU、ロシアの仲介の下にブリュッセルで再開される。セルビア側は、「香港型」の高度な自治権を認める妥協案を提示したが、コソヴォ側は完全独立以外に道はない、として拒否。
11/26:
・コソヴォ自治州の最終地位を確定する当事者交渉が、EU、米、ロシアの仲介でウィーン郊外のバーデンで再開される。
11/28:
・ウィーン郊外のバーデンで行なわれていた、コソヴォ自治州の最終地位確定当事者交渉は、両者の溝が埋まらないまま決裂する。セイディウ・コソヴォ自治州大統領は、「西欧諸国と協力しつつ、できるだけ速やかに議会で独立を宣言することになるだろう」と述べる。コシュトニツァ・セルビア首相は、「セルビアが受け入れられるのは、安保理での結論のみだ」と一方的な独立を牽制。
11/29:
・カルミ・レイ・スイス外相は、コソヴォ自治州の独立を支援すると表明。
11/00:
・ベルナール・クシュネル元コソヴォ担当国連事務総長特別代表・SRSGは、「コソヴォの独立承認をめぐる一方的な動きは、EUにおいて意見が二分される」と警告。
12/07:
・コシュトニツァ・セルビア首相は、「コソヴォが独立宣言をすれば、NATO軍がセルビアを空爆したのは傀儡国家をつくるためだったということが明白になるだろう」と述べる。
・コソヴォ自治州の独立問題をめぐる当事者交渉について、仲介した米、EU、ロシアが潘基文国連事務総長へ、「コソヴォの主権に関するそれぞれの立場を譲る意思がなく、合意に至らなかった」との報告書を提出。ロシアのチェルキン国連大使は、「協議は問題解決が可能であることを示した」と記者団に語る。
・NATOはブリュッセルで外相理事会を開き、コソヴォ自治州の最終地位をめぐる交渉が不調に終わったことを受け、NATO軍のKFORの1万6500人体制を当面維持し、緊急対応時の判断はKFOR司令官に全権を付与することで合意する。
12/08:
・コシュトニツァ・セルビア首相は、コソヴォ自治州の独立問題で「交渉こそ民主的な解決への本質だ」と交渉再開をコソヴォ側へ呼びかける。さらに、コシュトニツァ首相はコソヴォ自治州が独立宣言しても、「武力行使には反対する」と軍事介入の可能性を否定したが、経済制裁を検討している模様。
12/14:
・アハティサーリ提案に代わる米・EU・ロシアのトロイカ・プロセスは、コソヴォ自治州の最終地位をめぐる合意案を提示。これに対し、セルビア共和国側は高度の自治案を提示。一方のアルバニア系住民側は、独立を前提とした友好善隣条約を提示したため、最終地位案は成立せず。
・EUはブリュッセルで首脳会議を開き、セルビア共和国コソヴォ自治州の独立問題について協議。コソヴォ自治州の独立については、波及効果を恐れたスペイン、ギリシア、スロヴァキア、ルーマニアなどから疑義が出され、合意にいたらず。EUは当面、欧州安全保障・防衛政策・ESDPの一環として、「コソヴォ法の支配ミッション・EULEXKosovo」の派遣とコソヴォ国際文民事務所・ICOの設置を決める。それによって治安維持にあたる警察官および裁判官など、1800人を派遣することなどで原則合意。
・コソヴォ自治州の独立問題について、国連安保理では19日に協議する予定。
12/26:
・セルビア共和国議会は、コソヴォ自治州の独立問題について、「セルビアが結ぶいかなる協定も、主権・領土の完全な保全が伴わなければならない」との決議を採択。内容は、EUがコソヴォ自治州の独立を認めた場合、EU加盟に向けた交渉を停止するとの方針を示したもの。
12/00:
・EUは、EULEXに国連の計画の履行を監督する権限を付与する方針を策定してEUの要員72人を派遣。コソヴォ自治政府の決定を拒否する権限を行使し、安保理決議の履行を阻むコソヴォ自治州の政府職員を解雇する。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

2008年
01/08:
・EUの議長国に就任したスロヴェニア政府は、リュブリャナでEU委員会の事務方とコソヴォ問題に関し協議。協議後、ルペル外相は「今月中に、EUはセルビアと安定連合協定を締結すべきだ」と述べ、早期にセルビアがEUに加盟申請する条件を整えるために、「コソヴォ独立問題におけるセルビアの反発を抑制する融和策を提起したことを示す」と述べる。
01/09:
・セルビア共和国コソヴォ自治州の州議会は、第1党コソヴォ民主党党首のコソヴォ解放軍出身のハシム・タチを首相に選出。タチ首相は、「コソヴォ独立はすでに定まったことであり、あとは宣言を待つばかりだ。数週間以内に独立を宣言するつもりだ」と述べる。第2党のコソヴォ民主同盟のセイディウ大統領の続投も決まる。
01/11:
・ヘラルド・トリビューン紙は、ブッシュ米大統領とメルケル・ドイツ首相が、EUは2月3日のセルビア大統領選挙後に直ちにコソヴォを独立させることで合意した、と報じる。
・EU議長国のディミトリィ・ルペル・スロヴェニア外相は、「EU加盟国は、コソヴォが独立する前に、国連の文民ミッションと交代してEUの治安ミッションを派遣すべきだ」と述べる。
01/20:
・セルビア共和国の大統領選に9人が立候補して投票が行なわれる。親欧米派のタディッチ現大統領は、「欧州連合への接近こそセルビアを強くする道だ。強くなければセルビアはコソヴォを守れない」とEUとの協調でコソヴォの独立を阻止したい考えを示す。ニコリッチ・セルビア急進党党首代行は、「私の勝利こそ、セルビアの勝利。モスクワ、ワシントン、ブリュッセルのための勝利ではない」と外国勢の干渉排除を語る。第1次投票はニコリッチ候補が優勢の模様。
・セルビア共和国大統領選は、セルビア急進党のニコリッチ党首代行と現職のタディッチ大統領が上位を占めるが、過半数には達せず、再投票となる見込み。
01/21:
・セルビア共和国大統領選の結果は、セルビア急進党のニコリッチが39.6%を獲得して首位、タディッチ大統領は35.5%で2位。いずれも過半数に達せず、2月3日に再投票することになる。
・コシュトニツァ・セルビア共和国首相は、タディッチ大統領支持の条件として、「コソヴォ・EU法の支配ミッション・EULEXKosovo」の設置拒否を上げたが、タディチ大統領は拒否する。
01/24:
・コソヴォ自治州暫定政府のタチ首相は、EUのソラナ共通外交・安全保障上級代表と会談し、独立問題を協議する。
01/28:
・EUの外相理事会は、セルビア共和国の早期加盟へ向けて域内渡航時のビザ免除を含む暫定協定について協議し、2月7日に結ぶことで合意。EUの働きかけは、激しいセルビア共和国大統領選への側面支援をすることが狙い。
01/30:
・ロイター通信は、セルビア共和国コソヴォ自治州政府は、早ければ来月9日にもセルビアからの独立宣言をする可能性を示した、と報じる。コソヴォ自治州の暫定政府筋は、2月3日に行なわれるセルビア共和国大統領選で、ニコリッチ・セルビア急進党の候補が当選した場合は直ちに独立宣言をすると述べる。
02/02:
・EUは、セルビア共和国大統領選で民族派のニコリッチ・セルビア急進党党首代行が当選すれば、対立が激化しかねないとの思惑から、親欧米派のタディッチ現大統領を支援している、と東京新聞が報じる。
02/03:
・セルビア共和国大統領選挙の決選投票が行なわれ、タディッチ現大統領が51%の得票率を獲得して当選。セルビア急進党のニコリッチ党首代行は48%を獲得したがおよばず。タディッチ大統領は、「これはすべての人の勝利だ。セルビア国民の民意がどこにあるかを示した」と勝利宣言。ニコリッチ急進党党首は、「タディッチ大統領の勝利を祝福する」と敗北を認める。
・EU議長国のスロヴェニアは、「セルビア国民は民主主義と欧州路線への支持を確認した」と結果を歓迎するコメントを発
表。
02/04:
・EUのソラナ共通外交・安全保障上級代表はセルビア大統領選挙結果について、「欧州にとって幸運な結果」と述べ
る。
・EUは、コソヴォに「EULEXKosovo」を派遣すると発表。
・コシュトニツァ・セルビア首相は、「EUは国連安保理を通さず、一方的に『コソヴォ・EU法の支配ミッション・EULEXKosovo』を派遣するのはセルビアの主権と領土の侵害である。政治協定と『EULEXKosovo』は議会で承認されぬ限り違法だ」と述べる。タディチ派の議会議長は、議会開催に合意せず。
02/05:
・セルビア共和国コシュトニッツァ首相は、EUとセルビア政府が結ぶ予定の暫定協定について、「調印はコソヴォ自治州の独立への同意に等しい。セルビアが間接的な独立承認の第1号になってしまう」と反対の声明を発表。協定内容は、EU域内のビザ免除を柱とする内容。コシュトニツァ首相は、EUがコソヴォに派遣する予定の警察官などの支援隊にも反対の意向を示す。
02/06:
・来日中のベリシャ・アルバニア首相は日本記者クラブで会見し、セルビア共和国コソヴォ自治州の独立問題について、「地域の安定にとって良い結果をもたらす」と述べ、コソヴォ自治州の独立宣言を承認する考えを示す。ただ、アルバニアとコソヴォ自治州の「統合」については、努力してきたがうまくいかずに、「独立」に向かったことについて、「我々は国境を認め、尊重する」と語る。
02/08:
・セルビアのサマルジッチ・コソヴォ担当相は、「セルビア政府はタチ・コソヴォ自治州首相が不法にコソヴォの一方的独立を宣言するとの重要情報を得ている」と述べ、コソヴォ自治州が17日に一方的に独立を宣言する見通しであることを明らかにする。
・タデイッチ・セルビア共和国大統領は、ドイツ南部ミュンヘンで開催される安全保障国際会議を前に夕食会で挨拶。コソヴォ自治州の独立について「独立すれば混乱をエスカレートさせるだろう」と述べ、コソヴォ側の動きを牽制する。
02/12:
・セルビア共和国政府は、コソヴォ自治州が独立宣言をする動きに対する行動方針を策定。内容;「1、コソヴォの独立を承認した国から駐在大使を召還する。2、セルビア政府高官はコソヴォの独立を承認した国の駐箚大使との会合を行なわない」など。
02/14:
・国連安全保障理事会は、セルビア共和国の要請でコソヴォ自治州の独立をめぐる緊急理事会を開く。セルビアのイェレミッチ外相は、「独立は明らかな国際法違反。一部の分離主義者の動きを絶対に許さない。セルビアはコソヴォの独立を永遠に承認しない」と述べる。コシュトニツァ・セルビア首相は、「独立はセルビアの主権侵害だ。コソヴォはセルビアの一部として残る」と語る。
02/15:
・イタリアのANSA通信は、セルビア共和国コソヴォ自治州のタチ首相の報道担当の話として、17日に独立宣言の式典が開催されると伝える。
・セルビア共和国大統領に就任するタディッチの宣誓式が行なわれる。
02/16:
・コソヴォ自治州の独立宣言を翌日に控え、EU議長国のスロヴェニア大使館前を抗議のセルビア人が取り囲む。
・コソヴォ・EU法の支配ミッション・EULEXは、国連安保理決議・1244に基づくUNMIKの後継組織としてコソヴォへの展開の準備を始める
02/17:
・セルビア共和国コソヴォ自治州暫定政府のハシム・タチ首相は、「本日より、コソヴォは独立した主権国家となる」と宣言。コソヴォ自治州議会は15時50分に独立宣言を採択する。宣言の骨子・「1,宣言はアハティサーリ案に基づく。2,コソヴォは民主的、世俗的で多民族の社会である。3,議会はアハティサーリ案に基づく社会を建設するための権限を担う。4,憲法はアハティサーリ案に基づき、早期に採択される。5,コソヴォ内への軍事、非軍事の国際的なプレゼンスを歓迎する。6,文化的、宗教的伝統は保証する。7,国連と国際社会の支援に感謝する。8,コソヴォは国際的な責任を引き継ぎ、隣国との国境を保証し、紛争解決の手段としての暴力の行使を慎む。9,旧ユーゴスラヴィアの一部として、コソヴォに属する国際的な責務を引き継ぐ。10,地域の平和と安定に務める。11,隣国との良好な関係を求める意思を宣言する。12,議会は、すべての国がコソヴォの独立を承認するよう求める」。首都となったコソヴォのプリシュティナ市の沿道には、アルバニア旗と星条旗をはためかせた車が詰めかけている。大統領職にはコソヴォ民主連盟のファトミル・セイディウが就任。
・セルビア政府は、「国際秩序への侵害だ」と非難。ベオグラードでは米国大使館前でデモ行進をし、一部が暴徒化して投石、放火したため、65人が負傷。コソヴスカ・ミトロヴィツァでも国連施設の敷地に手投げ弾3個が投げ入れられ、1個が駐車場で爆発したが、怪我人はなし。セルビア共和国政府はコソヴォの独立宣言は無効と宣言したが、連立与党はコソヴォ独立への対応をめぐり分裂状態となる。
・ロシア外務省は、コソヴォ自治州の一方的な独立宣言を非難するとともに、緊急安保理会議の招集を要請。
・国連安保理は緊急非公開協議を開き、潘基文国連事務総長が現地情勢を報告して協議。米欧は「独立しか有効な選択肢はない」とする声明を発表。ロシアのチェルキン国連大使は、安保理決議1244で「国連とセルビアの間に、コソヴォの地位は一方的に変えられないという合意がある」と述べ、独立宣言を国際法違反と指摘。
・EUのイタリアを含む主要4ヵ国は、ブリュッセルで18日に開く外相理事会で「早期の国家承認」を加盟国に呼びかける方針で一致。スペイン、ギリシア、ルーマニアなど一部の国は、承認しない見通し。ソラナEU共通外交・安全保障上級代表は、「コソヴォ指導者は責任を全うすると確信している」との声明を発表。
・EUは、「EULEXKosovo」の2000人の部隊派遣を決定する。
・NATOのヤープ・デ・ホープ・スヘッフェル事務総長は、「コソヴォで暴力に訴える者に対しては迅速かつ厳格に対処する」との声明を発表して警告する。
・クシュネル仏外相は、「国際社会と欧州にとって成功だ。コソヴォの幸運を祈る」と歓迎。
・英外務省報道官は「重要な進展だ」と評価。
・シュタインマイヤー・ドイツ外相は、「セルビア、コソヴォ双方に自制と節度を求める」との声明を発表。
・ブッシュ大米統領はコソヴォ自治州の独立宣言について、「米国は暴力が起きないように最善を尽くすため、同盟国と協力を続ける」と述べる。マコーマック報道官は、「米国は現在、この問題について欧州各国と協議している。近く声明を発表する」と述べる。
02/18:
・EU外相理事会が開かれ、コソヴォ自治州の独立宣言への対応について協議。英国とフランス・イタリアは独立を承認する考えを明らかにする。
・スペイン、キプロス、ルーマニア、ギリシア、ブルガリア、スロヴァキアの6ヵ国は、早期の承認を見送る意向を示す。
・ブッシュ米大統領は、コソヴォ自治州のセイディウ大統領に書簡を送り、「独立した主権国家」として正式に承認する。
・中国の外務省の劉建超報道局長はコソヴォの独立宣言に対し、「コソヴォの一方的な行動は、バルカン半島の平和と安定、およびコソヴォの多民族社会建設という目標に悪影響を与えるだろう」と批判。国際法の枠内で協議すべきだ、と呼びかける。
・セルビア共和国内務省は、コソヴォ自治州政府の要人ハシム・タチ、ファトミル・セイディウ、ヤクプ・クラスニチに対し、大逆罪の容疑での逮捕状を発行する。
・セルビア共和国内ではコソヴォの独立宣言に反発したセルビア人のデモが各地に拡大する。コソヴォ自治州の北部のセルビア系住民の多い地域を中心として分離させる動きが強まる。
・セルビア共和国のコシュトニツァ首相は、コソヴォの独立宣言に関する演説を議会で行なう。要旨;「1,米国がコソヴォの独立を直ちに承認すると宣言したのは、全世界に米国の力の政策の真の暴力的な顔を示したものだ。2,昨日の違法な行為は、国連憲章、安保理決議1244,ヘルシンキ最終議定書、国際秩序が基礎をおいている国際法の全ての規範を侵害した。3,力が法と正義を踏みつけるとしても、セルビアは決して領土内に架空の国家コソヴォ国家を認めることはない。4,全ての市民に呼びかける。彼らに冷静であるように、平和的に抗議するように、街や国を壊さないように要請する」など。
・コソヴォのセルビア人住民による「コソヴォ・メトヒヤ・セルビア人議会」は、コソヴォの独立宣言を「無効であり、無価値」と宣言。
・国連はロシアの要請で安保理事会を開き、ロシアのチュルキン国連大使は「コソヴォの独立は、国際法の規範と原理に違反している」と主張。中国の王光亜国連大使も「深い憂慮」を表明。セルビアのタディッチ大統領は「一方的な独立宣言を認めれば、国際秩序に取り返しのつかないダメージを与える」と訴え、国連はコソヴォ自治州の独立宣言を無効とするよう要求。
02/19:
・EUのソラナ共通外交・安全保障上級代表はコソヴォを訪問し、タチ首相と会談。EUとしてコソヴォの安定に務める姿勢を強調。ソラナ代表は会談後、「EUが派遣する警察官などの支援部隊は、国際治安部隊・KFORの警護を受けながらコソヴォ全土に展開する」と述べる。
・EU議長国のルペル・スロヴェニア外相は、「EU加盟国がコソヴォの独立を承認するかしないかは自由だ」と表明。
・タチ・コソヴォ首相は、コソヴォ内のセルビア人地域の分離の動きについて、「我々の国境は国際的に承認されており、分割出来ないものだ」と拒否する姿勢を示す。
・NATO軍は、コソヴォ北部の独立に反発するセルビア系住民が検問所を襲撃したことを理由として、コソヴォ国際治安部隊・KFORのNATO軍がセルビアとの境界を24時間封鎖することを明らかにする。
・台湾がコソヴォの独立を承認する。
02/20:
・ドイツは、コソヴォの独立を公式に承認する。
02/21:
・セルビア共和国のベオグラードで、議会前広場にコソヴォの独立に反対する20万人のセルビア人市民が集まる。集会に参加した市民の一部が米国大使館に乱入し、星条旗を引きずり降ろし、放火する。この騒動で警察官30人、およびオランダ人記者などを含め150人が負傷。大使館内では1人が焼死体で発見される。焼死体は、コソヴォから脱出したセルビア人青年と見られる。争乱は拡大し、英国およびドイツ大使館も襲撃される。
・セルビア共和国政府は、バチカン市国にコソヴォの独立を承認しないよう要請する。
・コシュトニツァ・セルビア首相は、争乱を正当化する発言をする。親西欧派の民主党を率いるタディッチ・セルビア大統領は、「かえってコソヴォをセルビアから遠ざけるだけ」と市民へ鎮静化を呼びかける。イェレミッチ・セルビア外相は、「彼らは国民全体の意思を表してはいない」と市民の争乱を非難。
・マコーマック米国務省報道官は、ベオグラードの米国大使館が放火されたことについて、「セルビアの治安体制が十分ではなかった」と批判。
・セルビア民主党のリスティボエヴィチ首相顧問は、国際法を侵しているのはセルビアではなく米国だ」と米政府の非難声明に反発する。
・国連安保理は、ベオグラードの米国大使館への放火について、暴動を非難する議長声明を採択。
・スロヴェニア共和国は、コソヴォの独立を承認する。EU27ヵ国中で10番目となる。
02/23:
・セルビア共和国のサマルジッチ・コソヴォ問題担当相は、セルビア住民が大使館などを放火したことについて、「こうした暴力事件が起こるのは国際法を侵害したからだ」と述べる。
02/24:
・コソヴォが独立を宣言して1週間が過ぎ、独立を承認した国は20ヵ国近くになる。一方、コソヴォ北部のミトロヴィツァのセルビア人居住域では連日数千人規模の抗議デモが行なわれている。
02/25:
・ロシアのメドベージェフ第1副首相がセルビアのベオグラードを訪れ、タディッチ大統領、コシュトニツァ・セルビア首相と会談し、コソヴォの独立宣言は無効とする立場を確認。同行したラブロフ・ロシア外相は、「セルビアがその領域すべてに支配権の及ぶ国家であることを確認した」と発言。
・コソヴォ北部メルダレにあるセルビアとの境にある検問所で、コソヴォの独立宣言に反対するセルビア人のデモ150人がコソヴォ側の警察官詰め所を襲撃し、警察官19人が負傷。警官との応酬後、デモはセルビア側に去る。
・国際司法裁判所・ICJは、ボスニア・ヘルツェゴヴィナが提訴した「スレブレニツァ」に対するセルビア共和国のジェノサイド罪を適用する裁判について、勧告的意見を出す。内容は、スレブレニツァの虐殺はジェノサイド罪に該当するとしたが、「セルビア共和国は、ジェノサイドに関与しているとはいえない」とセルビア政府の責任を否定。一方で、セルビアがこれらの犯罪を、「防ぐためにその力の及ぶ限りの措置を講じるのを怠った」と指摘。
02/26:
・ボスニアのスルプスカ共和国のバニャ・ルカで、コソヴォの独立宣言に抗議する集会が開かれ、セルビア系住民1万人が参加。その後、若者ら数百人が米領事館に投石を始め、警官隊と衝突する。
02/28:
・米国およびEUなど「コソヴォ国際運営グループ」15ヵ国がコソヴォを監督するための会合をウィーンで開き、代表にEUのフェイツ(オランダ)・コソヴォ問題特別代表を選出。「コソヴォ国際運営グループ」は、アハティサーリ国連事務総長特使が提示した仲介案に基づいて設置されたもの。
02/29:
・来日中のドイツのグローザー外務政務次官は記者会見で、EUがコソヴォ独立問題で足並みが乱れていることについて、「コソヴォ問題はEU外相理事会で常に議題となっている。加盟27ヵ国の合意を得ることは可能だと思う」と意思統一に自信を示す。
03/01:
・NATOはコソヴォ独立に関し、現在の1万6000人のKFORに加え、治安部隊をコソヴォに増派する方針を固める。ドイツは400人、オーストリアは200人を増派する予定。
・コソヴォでは、セルビア系住民が抗議行動を続ける。コソヴォ警察に勤務するセルビア系警察官は、任務を拒否し、国連の指揮下に入ることを求める。
・セルビアのイリッチ社会資本相は、「コソヴォのセルビア人居住地域に独自の警察を配置することになる」と発言。
03/05:
・訪日したメシッチ・クロアチア大統領は記者会見で、NATOへの加盟問題に触れ、「NATOはわが国の安全を保障してくれる。この春の加盟を期待している」と意欲を示す。EUへの加盟については「交渉が遅れているが、2010年までに実現出来ると思う」と述べる。
・セルビア急進党は議会で、EU加盟交渉はEUがコソヴォはセルビアの領土だと明確に宣言しない限り進めない、との議会宣言の採択を迫り、コシュトニツァ・セルビア首相のセルビア民主党などが支持。
03/07:
・グルジアのアブハジア自治共和国議会は、独立承認をロシアや国連、EUに求める決議を採択する。「多数の国がコソヴォ独立を承認したことで、地政学的事態が変化し、独立承認の前提ができた」と強調する。
・ロシアに属する北オセチア共和国議会とグルジアに属する南オセチア自治州議会が合同会議を開き、独立承認を要請する決議を採択。
・ロシア政府は、アブハジアに対して96年から科していた通商や交通上の制裁措置の解除を発表。
03/08:
・コシュトニツァ・セルビア首相は記者会見で、コソヴォ独立を承認するEUへの対応をめぐる対立から「連合政権は終わった」と述べて首相職を辞任する意向を表明するとともに、議会を解散して選挙を5月11日に実施する方針を示す。セルビア議会は定数250議席中、セルビア急進党が81議席で第1党、タディッチ大統領率いる民主党が64議席、コシュトニツァ首相が率いるセルビア民主党が47議席、その他が58議席を占めている。
03/10:
・セルビア政府は閣議で、連立政権の解消を決める。タディッチ・セルビア大統領は、近く議会を解散して5月11日に総選挙を行なう見通しと語る。
03/11:
・イェレミッチ・セルビア外相は国連安保理に出席し、独立宣言したコソヴォ問題に関して「一方的で、国家の領土保全に対する重大な挑戦」と述べ、「コソヴォが平和と和解の中で繁栄することは、私たちの重大な利益となる。経済制裁や武力行使はしない」と明言。
・イスラム諸国機構・OIC外相会議に先立つ専門家会議で、トルコが第11回OICサミットの最終文書にコソヴォの独立承認を盛り込むよう提案したが、アゼルバイジャン、エジプト、スーダン、インドネシア等の反対で盛り込まれず。
03/13:
・タディッチ・セルビア大統領は議会を解散し、5月11日に総選挙を実施すると正式に発表。
・コソヴォのタチ首相は、パスポートのデザインを発表。
・コソヴォの独立を承認した国は、米国を始めとしてEUの16ヵ国を含む27ヵ国となる。
・EUのバローゾ欧州委員長は、クロアチアのサナデル首相と会談した後の記者会見で、「クロアチアはEU加盟に必要なすべての条件を満たせるだろう。来年は交渉を終えられると思う」と述べる。
03/14:
・EUはクロアチア共和国の加盟について、2010年に加盟を実現させる方針を示す。
・マケドニア共和国で、政府がコソヴォの承認を遅らせていることに反発し、アルバニア系政党が連立政権を離脱。
・コソヴォのミトロヴィツァのセルビア人住民は連日のように抗議行動を展開し、この日は国連の裁判所に侵入して建物を占
拠。
03/17:
・コソヴォのミトロヴィツァで、国連施設を占拠したセルビア系住民を、NATO軍を主とする国際治安部隊および国連警察官が排除しようとして衝突し、投石や手投げ弾、催涙弾などが飛び交い警官、兵士30人が負傷し、ウクライナの国連文民警察官1人が死亡。セルビア系住民は70人が負傷し、3人が重傷を負う。
・国連安保理はロシアの要請で非公開協議を開く。ロシアは、国連が独立宣言を無効とするよう主張したが、米欧は「独立しか有効な選択肢はない」とする声明を発表し、協議は物別れに終わる。
03/18:
・日本政府は閣議で、コソヴォの国家承認を決める。高村正彦日外相は、「コソヴォの独立が長期的にこの地域の安定に貢献することを期待する」と述べる。
・セルビア外務省は、日本政府がコソヴォの独立を承認したことに抗議するために、イワン・ムルキッチ駐日大使を召還することを決める。
03/19:
・クロアチア、ブルガリア、ハンガリーの3ヵ国が協議し、コソヴォの独立を公式に承認するとの共同声明を発表。
03/20:
・欧米のメディアは、カルラ・デル・ポンテICTY元首席検察官の回想録「追跡;私と軍の犯罪者」の一部をリークする。それによると、99年にコソヴォ解放軍・KLAがコソヴォのセルビア人など少数民族およそ300人をアルバニアに拉致して殺害し、遺体の臓器を売買していたと記述している、と報じる。メディアは、この臓器売買に関して「コソヴォ共和国」のタチ、チェク、ハラディナイだけでなく、クシュネル国連コソヴォ暫定行政機構元代表も関与しているとも付け加えている。
03/21:
・フリード米国務次官補は、「マケドニア」の国名をめぐって異議を唱えるギリシアとマケドニアの外相の会談を仲介。しかし、両国の会談は物別れに終わる。現在、マケドニアは国連加盟国名としては「マケドニア旧ユーゴスラヴィア共和国」との名称を使用している。ギリシア側は、アレクサンドロス大王時代の「マケドニア」の国名は他国に使わせられないとの考え。
03/25:
・セルビア共和国の首相職を辞任したコシュトニツァは、「EUがセルビア共和国の現行境界を認めるまでの間、セルビア共和国のEUへの加盟交渉を停止すべき」と述べる。
03/28:
・スイスがコソヴォのプリシュティナに大使館を開設する。
・韓国は、コソヴォの独立を正式に承認する。
03/30:
・東京新聞によると、ギリシアの外務省高官は、「マケドニア」がNATOへの新規加盟を申請していることについて、「近隣諸国と良い関係を持ち、同じ価値観を持つことが前提だ。国名問題が解決しない限り、加盟にノーと言い続ける」と述べる。
04/02:
・ロシア・ラブロフ外相はコソヴォの独立宣言を、「国際法などに違反するもの」と批判。
・EUのピーター・フェイツ・コソヴォ問題特別代表は、「コソヴォ共和国憲法草案」を承認する。
04/02:
・NATO首脳会議がルーマニアのブカレストで開かれる。
04/03:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYは、コソヴォ解放軍元司令官のハラディナイ・コソヴォ元首相に「証拠がない」と認定し、無罪を言い渡す。
註;ハラディナイは98年~99年のコソヴォ紛争でセルビア系住民の虐殺を指示した罪など37件の容疑で起訴され、禁固25年を求刑されていた。
・NATO首脳会議において、クロアチア共和国およびアルバニアのNATO加盟を承認。28ヵ国体制となる。マケドニア共和国はギリシアの反対で見送る。ブッシュ米大統領がウクライナおよびグルジア(ジョージア)のNATO加盟を提案する。
・NATOは、ボスニア・ヘルツェゴヴィナおよびモンテネグロに対し、加盟に向けた政治・軍事・財政・治安問題での対話を強力に進めるよう要請。グルジアおよびウクライナの加盟についても、課題として取り上げられる。
・カルラ・デル・ポンテICTY元首席検察官の回顧録「追跡;私と軍と犯罪者」がイタリアで出版される。
04/04:
・ブッシュ米大統領はクロアチアのザグレブを訪問し、NATO加盟祝賀会に出席。祝賀会には、サナデル・クロアチア首相の他、トビ・アルバニア大統領、ツルヴェンコフスキー・マケドニア大統領らも参加。
04/06:
・モンテネグロ共和国は、独立後初の大統領選挙を行なう。民間団体によると、現職の民主社会党など与党推薦のブヤノヴィチ大統領が51.2%の得票率で再選される見通し。「セルビア人の名簿」のマンディッチ候補の得票率は21.3%、「変革のための運動」のメドジェヴィチ党首は14.7%。
04/07:
・米国は、コソヴォのプリシュティナに大使館を開設する。
04/09:
・コソヴォ議会は、多数派アルバニア人議員の全会一致で「憲法草案」を採択。憲法の前文には「コソヴォはあらゆる市民の権利を認め、自由と法の下の平等を保障する国」であると宣言。施行時期については国連の委嘱を受けたEUの国際文民代表の権限移譲が完了する日を6月15日とし、発効日をその日に定める。コソヴォのセルビア人代表は草案作成にも調印式にも参加せず。
・フェイツEUコソヴォ問題特別代表が調印式に参加。
04/14:
・セルビアに対して99年にNATO軍の空爆で使用されたクラスター爆弾の処理で両手両足を失った、ブラニスラン・カペタノヴィチが来日し、クラスター爆弾の全面禁止に日本政府も賛同するように訴える。
04/24:
・EU加盟28ヵ国の内、18ヵ国がコソヴォの独立を承認する。現在までに39ヵ国が独立を承認。
04/29:
・EUはタディッチ・セルビア大統領を招き、EU加盟の前提となる「安定化連合協定・SAA」に調印させる。
・ベルギーおよびオランダの高官は、「この『安定化連合協定』は『コソヴォ抜きのセルビア』と調印したのであり、セルビアがICTYのすべての要求に完全に応じた後でなければ批准しない」と述べる。
05/02:
・フランスのAFP通信は、クロアチア共和国でNATO軍の演習が行なわれたと伝える。この演習に参加したバルカンおよび東欧と旧ソ連圏諸国は、セルビア、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、マケドニア、モンテネグロ、アルバニア、アルメニア、アゼルバイジャン、ウクライナ、キルギスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、モルドヴァの12ヵ国、と伝える。
05/11:
・セルビア共和国議会選と地方選の投票が行なわれる。選挙の争点はEUへの加盟とコソヴォの独立問題。民間選挙監視団の推計によると、タディッチ大統領派の親EU派の民主党連合「欧州のセルビアのために」が、得票率39%で103議席を確保して第1党になる見通し。
・コソヴォのセルビア系住民居住地域でも280ヵ所でセルビア議会選と地方選の投票が行なわれ、アルバニア人住民が反発する。
・国連暫定行政支援機構・UNMIKのリュッカー事務総長特別代表も「コソヴォ内での投票は国連決議に違反するもので受け入れられない」と無効を宣言する。
・EU議長国のスロヴェニアは、セルビア共和国議会選挙でタディッチ大統領の民主党を中心とする新EU勢力が第1党となる見通しとなったことを受け、「明らかな勝利を歓迎する」との声明を発表。
05/12:
・セルビア共和国の選管の中間発表では、250議席の内、民主党連合・DSは得票率39%で102議席を確保、セルビア急進党・SRSは78議席、セルビア民主党・SDSは30議席、セルビア社会党・SPSは20議席、親EU派の自由民主党・LDPは13議席を獲得。しかし、EU加盟賛成派は122議席で過半数に及ばず、反対派が128議席を占める。
05/19:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYは、カルラ・デル・ポンテ元首席検察官の回顧録「追跡;私と軍の犯罪者」に記述された、コソヴォ解放軍・KLAのコソヴォにおけるセルビア人など少数民族の殺害、臓器売買については調査しないと表明。
・国連安保理は、コソヴォ暫定行政支援機構・UNMIKの6月15日までの期限を、08年末まで延長すると決める。
05/21:
・ロシア政府は、「コソヴォ・EU法の支配ミッション・EULEXKosovo」の派遣には国連安保理決議が必要であり、決議なしの派遣は違法だと表明。
・サビエール・マルナックKFOR司令官は、国連決議1244の下で6月15日以降もKFORは駐留を継続すると表明。
06/01:
・マケドニア共和国議会選挙(定数120)が行なわれ、グルエフスキ首相が率いる国家統一民主党の政党連合が過半数
に迫る。
06/15:
・セルビア共和国からの独立を宣言したコソヴォで新憲法が発効し、「コソヴォ共和国」となる。国連のコソヴォ暫定行政機構からの権限移譲はロシアの反対で難航。
・潘基文国連事務総長は、国連の権限をコソヴォに移譲すべきだとの報告書を安保理に提出したが、セルビア共和国がこれを拒否する。
06/21:
・セルビア共和国は、欧州連合・EU加盟を推進する民主党連合とセルビア社会党との連立協議が始まり、セルビア急進党との連立は排除される形となる。
06/23:
・セルビア社会党のダチッチ党首は、タディッチ大統領の民主党連合に協力する意向を表明。
06/27:
・タディッチ・セルビア大統領は、欧米派のミルコ・ツベトコヴィチ財務相を新首相に指名する。
06/28:
・コソヴォのセルビア系住民が、独自の地方議会の設立を宣言する。地方議会は、コソヴォはセルビア共和国の不可分の領土とする宣言を採択。
・コソヴォ政府は、セルビア系住民の地方議会設立を無効と表明。
07/03:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYの控訴審裁判は、ボスニアのムスリム人勢力のスレブレニツァ司令官ナセル・オリッチに「責任ある部隊を支配していたことを確証できなかった」として無罪判決を言い渡す。
註;ICTYは、ナセル・オリッチが93年から95年の間、スレブレニツァ28師団司令官の地位に就いていた際、スレブレニツァ周辺のセルビア人の村々を破壊し、殺害し、囚人に対して虐待や拷問をした罪状で03年3月23日に起訴。1審は有罪として2年の刑を言い渡した。控訴審では、国連保護軍・UNPROFORのモリヨン司令官(仏)が「オリッチの部隊はスレブレニツァ周辺のセルビア人の192の村々を破壊した。この住民を恐怖に陥れた行動はサラエヴォから直接命令を受けていた」との証言をしたが、ICTYは確証がないとして無罪判決を出した。
07/07:
・セルビア議会は、ミルコ・ツベトコヴィチ前財務相を首相とする、セルビア社会党・SPSと民主連合・DSと自由民主党・LDPの3政党による親欧州の連立政権を承認する。副首相兼内相にセルビア社会党のダチッチ議長が就任。新政権はコソヴォ独立を容認しないが、経済発展に必要な欧州連合への加盟を優先する方針を採る。
07/09:
・タチ・コソヴォ共和国首相は、「われわれは、コソヴォが欧州、大西洋ファミリーの一員であり、NATOとEUの一員であるという目標とビジョンをできるだけ速やかに示すだろう」と語る。
07/10:
・ロシア外務省は、旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYがナセル・オリッチを無罪としたことに対し、裁判の偏向を批判。オリッチ司令官が92年から95年のボスニア紛争で3000人余りのセルビア人住民の殺害を実行したにもかかわらず、無罪にしたICTYを閉鎖する必要を確認する、との声明を発表。
07/11:
・コソヴォ復興支援国際会議が欧州委員会の主催で開かれ、EU加盟国や米国など37ヵ国と国連、世界銀行が参加。欧米諸国は12億ユーロ(2000億円)の財政支援を決める。内訳は、EUは5億ユーロ、米国は4億ドル、日本は08年分として300万ドルの拠出を表明。タチ・コソヴォ首相は「素晴らしい成果だ」と歓迎の意を述べる。
07/18:
・ラドヴァン・カラジッチ・ボスニア・スルプスカ共和国元大統領が、セルビア当局によりベオグラードで逮捕される。カラジッチは逮捕されるまでベオグラード市内で医療行為を行なっていた。
・コソヴォ共和国のタチ首相は、コソヴォを訪れたコンドリーザ・ライス米国務長官と会談し、「コソヴォ政府とコソヴォの人々は、アメリカ人と政府の支援に頭を垂れる」と述べる。
07/21:
・セルビア共和国のタディッチ大統領は、カラジッチ・ボスニア・スルプスカ共和国元大統領をベオグラードのアパートで逮捕したとの声明を発表。
・EUの欧州委員会のバローゾ委員長は、「EU加盟を望むセルビアにとって重要な進展だ」とカラジッチ・スルプスカ共和国元大統領の逮捕を評価。
・潘基文国連事務総長は、カラジッチの逮捕は国際人道法違反の免責の根絶に向けた決定打である、との声明を発表。
07/22:
・セルビアの司法当局は、記者会見でボスニアのセルビア人勢力の政治指導者カラジッチ元大統領がベオグラード市内の病院に勤務していたことを明らかにする。カラジッチは、伝統医学や民間療法を組み合わせた代替医療の医者として私立病院に勤務しており、変装してベオグラード市を自由に動き回っていたという。
・セルビアのベオグラードでカラジッチ元スルプスカ大統領の拘束に抗議する市民ら数百人がデモを行なっていたが、その内の50人が暴徒化し、若者3人が逮捕される。
・ブチッチ・セルビア急進党書記長は抗議集会で、同党が数日中に大規模な抗議活動を組織すると演説。
・EUはブリュッセルで開いた外相理事会で、カラジッチの逮捕に関する声明を採択。内容は、「バルカン安定に貢献する姿勢を示すもので、EU加盟に向けた重要な一歩」とセルビア政府を讃える。EU加盟については、スタブ・フィンランド外相が、ムラディッチ司令官が逮捕されていないことを理由に、「さらなる協力の証が必要だ」などとの意見を表明。
07/23:
・ダチッチ・セルビア共和国内相は地元紙に、「彼を支援した秘密警察が、今や彼を引き渡したということだ」と語る。
・ニコリッチ・セルビア急進党党首代行は「セルビア史で暗黒の日だ。彼は戦犯ではなく伝説だ」とカラジッチ逮捕を批判。
07/24:
・イェレミッチ・セルビア外相は、コソヴォを国家承認した40ヵ国から召喚した大使の内、ドイツ、フランスなどEU加盟国については、大使を任地に戻すよう決定したことを明らかにする。
・カラジッチ・スルプスカ共和国元大統領の弁護士は、「カラジッチが誘拐された」との被害届をセルビア当局に提出。弁護士によると、カラジッチは18日にベオグラード近郊の路線バス内で何者かに誘拐され「不当に拘束された」と述べる。
07/25:
・オーストリアのクローネ・ツァイトゥング紙は、別の事件を捜査していた警察官がカラジッチを誰何したときにクロアチアのパスポートを提示したため、警察官はカラジッチと気付かなかったと報じる。
・カラジッチ・スルプスカ共和国元大統領は、弁護士を通じICTYへの移送に異議申し立てをしたが、即座に却下される。
07/26:
・マケドニア共和国議会は、野党側が議決をボイコットする中、与党はグルエフスキ首相の新政権を承認。新政権は、EUとNATOへの加盟などを推進する意向。
07/29:
・セルビアで、カラジッチ・スルプスカ元大統領のハーグへの身柄引き渡しに抗議する大規模な市民集会が行なわれ、一部が暴徒化して50人が負傷。
07/30:
・セルビア共和国政府は、カラジッチ・スルプスカ共和国元大統領をオランダのハーグの旧ユーゴ国際戦犯法廷に引き
渡す。
07/31:
・カラジッチ・スルプスカ共和国元大統領は、ハーグの旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYに初出廷する。弁護人を立てずに自ら弁護すると述べた上で罪状認否を留保。ICTYの法廷でカラジッチは、96年にホルブルック米国務次官補とミロシェヴィチ・セルビア大統領との間にカラジッチが公職から引退すれば戦犯法廷に引き渡さない、との約束があったとする米政府が発行した訴追免除の密約の文書を提出して説明を始めたところ、裁判長から中止を命じられる。
08/01:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYは、カラジッチ・スルプスカ元大統領が提出した陳述書を公表。それによると、ボスニアの紛争調停に当たったホルブルック米特使が、政界引退やメディアの取材を受けないことなどを条件に、法廷への引き渡しを免じるとの密約を提案した。さらに、オルブライト米国務長官からは、ロシア、ギリシア、セルビア国内の移動の自由を保障された、というもの。
・ホルブルック米元国務次官補は「ばかげた話だ」と、カラジッチ被告のハーグでの陳述書の内容を否定。
08/04:
・コソヴォ共和国は元KLAの司令官フェフミ・ムヨタを国防相に任命。
註・フェフミ・ムヨタは麻薬密輸、コソヴォ内だけでなく広く東欧諸国の女性の人身売買などにも関わっていた人物。
08/15:
・セルビア共和国は、コソヴォ自治州の一方的な独立が国際法に合致しているかどうかについて、国際司法裁判所・ICJに判断を要請する決議案を国連総会に提出。セルビア共和国のヴク・イェレミッチ外相は、セルビアにとって「外交と国際法を通じて主権と領土的一体性を守る」ための取り組みだと説明。  
08/19:
・カラジッチ・スルプスカ共和国元大統領は、旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYの担当のアルフォンス・オリー裁判長(オランダ)が、推定無罪ではなく有罪だと決めつけているとの理由で裁判官を忌避。ICTYは担当を第Ⅰ裁判部から第Ⅲ裁判部に変更し、裁判長パトリック・ロビンソン(ジャマイカ)、陪席裁判官はイアン・ボノミィ(英)とミシェール・ピカール(仏)の2人となる。
08/29:
・セルビアのコシュトニツァ元首相は、米国が軍を使ってグルジアを支援した以上、ロシアの反応は適切だと述べる。
・旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYにおいて、カラジッチ・スルプスカ共和国元大統領の第2回目の公判廷が開かれる。カラジッチは、ICTYはNATOの法廷であり自分を裁く権利はないと罪状認否を再び拒否し、「この法廷は間違っている。私を消し去ろうと目論むNATOの法廷だ」と法廷の正当性に疑義を唱える。
09/21:
・スロヴェニア下院選挙で、非公式集計によると、野党社会民主党が得票率30.5%で、与党スロヴェニア民主党の29.3%を小差でリードする。
10/01:
・EUはフランス北部のドービルで非公式国防相会合を開き、ボスニア・ヘルツェゴヴィナに派遣している治安維持部隊の撤退に合意。正式決定は11月10日の国防相会合で決定する予定。04年には7000人規模だったが、現在は2500人に縮小している。
10/08:
・国連総会は、セルビア共和国が提出した08年2月17日にコソヴォが一方的に独立宣言したことに関し、国際法に合致するか否かについて、国際司法裁判所・ICJに勧告的意見を求める決議案を、賛成77,反対6票で採択。反対票を投じた国は、アメリカ、アルバニア、ナウル、パラオ、マーシャル諸島、ミクロネシア連邦。
・セルビアのヴク・ジェレミク外相は、「1,セルビアはコソヴォの一方的独立に対し、自制で対応し、武力あるいは経済制裁の行使を考慮から外してきた。2,セルビアはICJに勧告的意見を求めることが、コソヴォ危機が地球上の分離独立論者の野望の巣くうところの非常に問題のある先例となるのを防止するのに役立つだろうと確信している。3,ICJの勧告的意見は、そうした一方的独立宣言に対してどのように対応するのか熟慮している多くの国々に政治的に中立かつ法的に権威のある手引きとなろう」と述べる。
・ロバート・ゲイツ米国防長官は、モンテネグロ共和国およびマケドニア共和国を訪問し、コソヴォ共和国を承認するよう要請。
10/09:
・米AP通信は、ゲイツ米国防長官がマケドニア共和国で開催された南東欧国防相会議・SEDMで、「東欧の指導者は軍事的努力をイラクからアフガニスタンに移すことだ。そこで彼らの部隊がもっと緊急に必要とされている」と主張した、と伝える。
註;南東欧国防相会議・SEDMの正式参加国は、米、アルバニア、イタリア、ウクライナ、ギリシア、クロアチア、スロヴェニア、トルコ、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、ブルガリア、マケドニア、ルーマニアの12ヵ国。オブザーバーにセルビア、モルドヴァ、モンテネグロが含まれる。
・旧ユーゴスラヴィア連邦のモンテネグロ共和国およびマケドニア共和国は、コソヴォ共和国を独立国として承認する。
・セルビア共和国政府は、コソヴォの独立を承認したモンテネグロとマケドニアの大使のセルビアからの退去を求める。
10/15:
・セルビア共和国ヴォイヴォディナ自治州は、自治憲法を採択し、自治権の拡大を制定する。
10/24:
・フランスのAFP通信は、ブッシュ米大統領がアルバニアとクロアチアのNATO加盟を、ワシントンが正式に支援する書類に署名した、と伝える。
10/26:
・ICTYにおけるカラジッチ裁判の第3回法廷が開かれる予定だったが、カラジッチは弁護の時間が必要だとの理由で出廷を拒否する。ICTYは準備のために、4ヵ月間の延期を決める。
11/02:
・マケドニア共和国は、NATO軍の指導の下に軍事演習を実施。
11/05:
・モンテネグロ共和国はNATOに対し、NATO加盟行動プランへの公式の申込書を提出。
11/23:
・コソヴォ共和国捜査当局は、プリシュティナの国際文民代表部への爆弾攻撃容疑で、ドイツ人3人を拘束。
・独シュピーゲル紙によると、3人は独情報機関「連邦情報局・BND」の職員。
11/26:
・国連安保理は、国連コソヴォ暫定行政支援機構の権限をEUの文民支援隊に移すことを承認。北部のセルビア人住民居住地域は引き続き国連が管轄する。分割を固定化するとの反発がある。
11/28:
・コソヴォのUNMIK傘下の国際判事団は、プリシュティナの国際文民代表部に対する爆破事件の容疑者として逮捕したドイツの情報機関員3人を、証拠不十分として釈放する。
12/05:
・日本政府は、駐セルビア大使に角崎利夫国際開発高等教育機構専務理事を任命。
12/09:
・EUコソヴォ法の支配行政支援機構・EULEXKosovoは、国連コソヴォ暫定行政支援機構・UNMIKの後継組織として正式に活動を始める。
12/15:
・ジュカノヴィチ・モンテネグロ首相は、パリでEU議長国フランスのサルコジ大統領と会談し、EUへの加盟を申請する。
12/17:
・モンテネグロのミオドゥラグ・ブラホヴィチ駐米大使は、「平和のためのパートナーシップ・PFP」地位協定に調印。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
2009年
01/14:
・英ロイター通信は、「NATOは、1月21日に新コソヴォ軍が設立される」と述べ、「セイディウ・コソヴォ大統領がコソヴォ防衛隊・KPCの司令官のスレイマン・セリミをコソヴォ治安部隊・FSKの司令官に任命した」と伝える。
01/21:
・コソヴォ共和国は、コソヴォ防衛隊を「コソヴォ治安部隊・FSK」として正式に発足させる。
註;治安部隊の徴募は08年12月から行なわれ、訓練はイギリス軍が行ない、軍用車はドイツが提供し、軍服は米国から支給された。
01/24:
・NATOは、「コソヴォ安定化部隊・KFORが、新しいコソヴォ治安軍・FSKのための新兵募集キャンペーンの構想をプリシュティナ大学で公示するだろう」と表明。
・コシュトニツァ・セルビア元首相は、「NATO軍はコソヴォ軍をつくり装備させつつあり、NATO軍はもはやセルビアに対するいかなる配慮もなく、公然とアハティサーリ・プランを遂行している」と非難。
01/27:
・ロシアのアレクサンダル・コヌズイン駐セルビア大使はコソヴォ治安部隊の設立の動きについて、「これらの軍の形成は、コソヴォの再軍事化であり、安保理決議1244に反するものだ」と非難。
02/02:
・AP通信は、コソヴォ政府当局が、「コソヴォ防衛隊・KPCがコソヴォ治安軍・KSFに転換され、NATO軍とコソヴォ軍あるいはNATO軍が率いるコソヴォ安定化部隊・KFORから9ヵ月間の訓練を受けることになるだろう」と発表した、と伝える。
02/17:
・コソヴォ自治州がセルビア共和国の反対を押し切って独立を宣言して1周年を迎え、記念祝典が開かれる。この時点で、コソヴォ独立国を承認しているのは54ヵ国で、18ヵ国が大使館を開設。経済再建は進まず、失業率は45~50%に達し、1人当たりのGDPは1770ユーロ(21万円)。
註;コソヴォ独立国の収入は、国際復興資金援助および40万人の国外居住者の送金と麻薬取引、そして駐留ミッションの落とす費用などで得ている。
02/20:
・朝日新聞によると、コソヴォが独立を宣言して1年を経過したが、アルバニア系住民とセルビア系住民の和解は進まない。セルビア共和国は、コソヴォ当局との直接の交渉には応じようとしない。北部のミトロヴィツァでは分離の動きが活発化している。UNMIKからEUが統治を引き継ぎ、2000人の支援部隊が派遣されることになるが、権限は「国連参加の中立的な立場で」との条件付きである。1年間の独立承認国は54ヵ国、未承認国は138ヵ国。国勢は、「面積10887㎢、人口210万人、アルバニア系住民は90%、通貨はユーロ、失業率43%、GDPは1人当たり1770ユーロ。1日2ドル以下の貧困ラインが半数を占めている。人口の20%がドイツやスイスで働く。
02/26:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYは、コソヴォ紛争時にアルバニア系住民らを強制退去させたことによって数百人を死亡させた戦争犯罪の容疑で起訴されたミラン・ミルティノヴィチ・セルビア共和国元大統領に対し、無罪判決を言い渡す。判決は98年~99年当時の軍事作戦に実際の指揮権を持っていたのはミロシェヴィチ・ユーゴ連邦元大統領だとしてミルティノヴィチについては「共謀関係を確証するには至らなかった」と判示。同時に起訴されたルキッチら警察当局関係者ら5人には、禁固15年から22年の有罪判決を出す。
03/13:
・ツベトコヴィチ・セルビア首相は、4月にロンドンで開かれる金融サミット・G20で旧ユーゴスラヴィアを含む東欧諸国への支援を求める考えを明らかにする。セルビアは1月にIMFから5億3000万ドルの融資承認を得ているが、ツベトコヴィチ首相は「1月に予想したよりも経済金融環境は悪化している」ため、融資額を20億ドルに引き上げるようIMFと協議に入る方針を述べる。金融危機後、西側はセルビアから10億ユーロを引き揚げている。
03/20:
・朝日新聞によると、99年のコソヴォ・ユーゴ空爆の際にNATO軍がベオグラード中国大使館を爆撃したが、その大使館の爆撃跡は現在もそのまま残されている。
03/22:
・マケドニア共和国の大統領選挙が行なわれ、グルエフスキ首相率いるスラヴ系右派の与党「国家統一民主党」のゲオルギ・イワノフが得票率35%しか得られなかったために決選投票となる。2位のボミル・フルチコフスキは得票率20%。
・NATO軍が「ユーゴ・コソヴォ空爆」を行なった際、中国大使館の空爆を指定した米CIAのウィリアム・ベネット中佐が暗殺される。
03/29:
・AP通信は、ケニア警察がケニア在住のクロアチア人男性を、ICTYから起訴されているラトコ・ムラディッチと誤認して逮捕し、翌日釈放した、と伝える。
04/01:
・NATOは首脳会議を開き、クロアチア共和国およびアルバニアの加盟を承認する。クロアチアは27番目の加盟国となる。
04/06:
・マケドニア共和国の選挙管理委員会は大統領選の決選投票の暫定開票結果を発表。グルエフスキ首相の国家統一民主党が推薦するゲオルギ・イワノフが63.43%を獲得して勝利する。野党社会民主同盟のルボミル・フルチコスキの得票率は、36.57%にとどまる。
04/17:
・日本政府は、国際司法裁判所・ICJが求めた「コソヴォ暫定政府による一方的な独立宣言の国際法上の合法性」に関する諮問内容の勧告的意見に対する意見書を提出。要旨;「1、コソヴォの独立宣言を規律する国際法はない。2,国連を中心とする国際社会の関与に特徴づけられた特殊性に鑑み正当化される」というもの。
06/24:
・ブルガリア内務省は、コソヴォのチェク首相の身柄を拘束したことを明らかにする。コソヴォ紛争の際、コソヴォ解放軍の司令官としてセルビア系住民を虐殺したことでセルビア政府から国際手配されていたことによる。
07/01:
・クロアチア共和国のサナデル首相は、「私の政治的な役割は達成された」として突然、辞意を表明する。
07/11:
・第15回非同盟諸国高官級会議がエジプトのシャルム・エル・シェイクで開かれる。参加国は正式加盟国の118ヵ国とオブザーバー国27、45のゲスト国が参加。
07/13:
・非同盟諸国外相会議がエジプトのシャルム・エル・シェイクで開かれる。
・セルビア共和国のイェレミッチ外相は、「セルビアはEU加盟を果たしたいと考えているが、我々が持ち続けていかなければならない価値は非同盟運動にある」と述べる。
07/15:
・第15回非同盟諸国首脳会議・NAMが開かれ「シャルム・エル・シェイク宣言」発表する。宣言の内容;「1,軍縮と国際安全保障。2,民族自決。3,パレスチナ問題。4,国連改革。5,世界経済・金融危機。6,食糧安全保障。7,地球温暖化。8,テロ問題。9,異なる文明・宗教間の対話」などの諸課題で活動を継続する。
「軍縮と国際安全保障」問題では、核兵器廃絶を目指すこと、核保有国の核廃絶への具体的実践が非核の世界実現の唯一の道であると公約。
07/16:
・第15回非同盟諸国首脳会議が「最終文書」を出して閉幕する。
「最終文書」;「各国首脳は核兵器の使用の可能性、核兵器の存続は、人類に対する脅威であるとの懸念を表明」。
07/20:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYは、ボスニア紛争時にイスラム教徒の虐殺に関与したとして殺人罪などで起訴したセルビア人勢力のミラン・ルキッチ被告に終身刑を言い渡す。従兄弟のスルドイェ・ルキッチ被告は懲役30年の実刑判決が確定している。
09/18:
・コソヴォ治安部隊は、NATOからの援助と訓練を受け、正式な任務に就く。
10/15:
・国連総会は国連安保理の非常任理事国のうち、5ヵ国の改選投票を行ない、東欧枠として「ボスニア・ヘルツゴヴィナ」
を選出。
・ICTYは、ボスニアのセルビア人勢力のカラジッチ・スルプスカ共和国元大統領の初公判を10月26日に開くと発表。
10/26:
・ICTYは、カラジッチ・スルプスカ共和国元大統領の公判を開いたが、被告が準備不足を理由に出廷しなかったために、15分で閉廷する。
11/01:
・コソヴォのプリシュティナで、ユーゴ・コソヴォ空爆を主導したクリントン米元大統領の全身像の除幕式が行なわれる。彫像の大きさは3mの立像。
11/05:
・ICTYは、カラジッチ・スルプスカ共和国元大統領の公判を、翌10年3月まで中断することを決める
・朝日新聞によると、コソヴォの中部のロボフツェ村の小学校では、アルバニア系が198人、セルビア人18人の子どもが通い、隔離壁で仕切られて別々に授業を受けているという。
11/09:
・セルビア共和国のイェレミッチ外相は、ヨーロッパ議会において「EU加盟とコソヴォの将来的地位の問題は厳密に区別してとらえている」と述べる。
11/17:
・朝日新聞によると、山崎洋が「古事記」をセルビア語に翻訳し、日本翻訳協会特別賞を受賞。
12/01:
・EUは、リスボン条約(欧州憲法条約)を発効させる。これにより欧州理事会(首脳会議)常任議長制を導入し、EU大統領とすることが定められる。
12/19:
・EUは、セルビア、モンテネグロ、マケドニア3ヵ国のビザ取得義務を撤廃する。旧ユーゴスラヴィア連邦でビザ取得義務があるのはボスニアとコソヴォのみとなる。
12/22:
・セルビアのタディッチ大統領は、EU議長国のラインフェルト・スウェーデン首相と会談し、EU加盟を正式に申請する。
12/27:
・クロアチア共和国で大統領選挙が行なわれ、投票率は44%。首位の社会民主党のヨシポヴィチが得票率32.4%、2位のバンディッチが14.8%で過半数に達しないために決選投票が行なわれることになる。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

2010年
01/04:
・セルビア共和国検察当局は、ボスニア紛争時にムスリム人の虐殺に関与した容疑でダルコ・ヤンコヴィチを逮捕する。
01/06:
・沖縄タイムスによると、日本のNGO「国際市民ネットワーク」がコソヴォ紛争後の民族間の融和を求めた合宿を現地で続けている。合宿はコソヴォの隣国のマケドニアで行ない、コソヴォに住む学生や社会人が参加。09年の6月から9月までに9回開いている。
01/10:
・クロアチア共和国大統領選で決選投票が行なわれ、選挙管理委員会の暫定開票結果によると、中道左派の社会民主党のイボ・ヨシポヴィチ国会議員が60.29%を獲得し、バンディッチ・ザグレブ市長を抑えて当選する。大統領は主に外交儀礼的な任務を担う。任期は5年。行政の実権は首相にある。
02/17:
・コソヴォが独立宣言を発して2年目を迎え、独立を承認した国は65ヵ国となる。コソヴォは、独立はしたものの自立できず、経済は外からの支援が頼り。08年から11年の3年間でEUから5億ユーロ(620億円)、米国から4億ユーロなど計12億ユーロの援助が予定されているが、これに依存している。
03/01:
・英国警察は、ボスニアのムスリム人のガニッチ・ボスニア幹部会元副議長をヒースロー空港で逮捕。ガニッチ・ボスニア幹部会元副議長は、ボスニア内戦中にセルビア人住民を虐殺したとして、セルビア共和国が逮捕状を出して国際手配をしていたもの。英外務省報道官は、ガニッチを「引き渡すことが妥当か判断するための証拠書類をセルビア当局が提出する必要があり、裁判所が引き渡しを判断する」と述べる。
・旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYは、カラジッチ・ボスニア・スルプスカ元大統領の第4回の公判が行なわれる。カラジッチ・スルプスカ元大統領は罪状認否について、戦闘はあくまでセルビア人勢力としての正当防衛である、と主張。
03/02:
・ICTYにおけるカラジッチ・スルプスカ元大統領の公判廷が開かれ、カラジッチは「1,スレブレニツァの虐殺はムスリム人側のでっち上げだ。2,サラエヴォ包囲は包囲ではない」と否定。
03/31:
・セルビア共和国議会は、タディッチ大統領の要請に基づき、ボスニア紛争時のスレブレニツァの虐殺に関する謝罪決議を採択。
05/29:
・ICTYから起訴されているボスニア・セルビア人勢力のラトコ・ムラディッチ元総司令官について、被告の家族が死亡認定するよう政府に求める。
07/11:
・ボスニアのスレブレニツァで、95年のボスニア紛争時の虐殺を悼むムスリム系住民ら4万人が追悼式を行なう。
07/22:
・国際司法裁判所・ICJは、コソヴォが08年2月に一方的に独立宣言したことの国際法上の適法性について、セルビア共和国が判断を求めたことに対し「1,国際法を侵害していない。2,国際法は、一般的に独立宣言を禁じる規定はない」として、独立は合法との勧告的意見を小和田恒裁判所長が読み上げる。セルビア共和国がコソヴォの独立は領土保全の侵害にあたるのではないかとの判断を求めたことに関しては触れずじまい。
註;国際司法裁判所・ICJが出す判定には、判決と2,勧告的意見の2種がある。判決は拘束力を有するが、勧告的意見には拘束力
はない。
・セルビア共和国のタディッチ大統領は、「コソヴォの一方的な独立宣言は決して認めない」と述べる。
・コソヴォのセイディウ大統領は、「コソヴォが独立国家であることへの疑念がすべて取り払われた。コソヴォにとって祝福すべき日だ」と歓迎。現在69ヵ国がコソヴォの独立を承認している。
・米国のクローリー国務次官補は、「米国のこれまでの立場を確認したことになる」と述べる。
・ロシア外務省は、「ロシアの立場に変化はない。コソヴォは国家であるという結論を示したものではない」との声明を出す。
・アブハジアのバガプシ大統領は「アブハジアと南オセチアの独立の権利も事実上認められた」と強調。
・南オセチアのツホブレボフ外務次官は、「コソヴォの独立を認めて南オセチアの独立を認めない西側諸国は二重基準を放棄し、現実を認めるべきだ」と述べる。
・アルメニアのコチャリン外務次官は「ICJは初めて、民族自決が領土保全より優先するとの原則を示した」と主張。
・EUのアシュトン外交安全保障上級代表は、「焦点は、今後どうするかに移った」と述べる。
・日本の最上敏樹国際基督教大学教授は、「ICJの判断は、コソヴォの独立手順が違法ではないと指摘しただけなので、他地域の分離独立のモデルケースにはならない」と指摘。
07/23:
・コソヴォ司法当局は、レシェピ中央銀行総裁をマネーロンダリングや汚職および脱税の疑いで逮捕する。
07/24:
・アゼルバイジャンからの独立を宣言したナゴルノ・カラバフの外務当局は、「今回の決定は極めて重要な意義がある。その適用はコソヴォに限らない」との声明を出す。
07/28:
・セルビア政府は国連総会に、コソヴォが交渉による解決を受け入れるよう求める決議案を提出。
09/08:
・EUのアシュトン外交安全保障上級代表は、セルビア政府がコソヴォとの対話再開に同意したことを明らかにする。
09/27:
・コソヴォ共和国のセイディウ大統領が辞任し、コソヴォ民主党のヤクプ・クラスニチが大統領代行に就任。
10/18:
・ボスニア政府当局は。米女優アンジェリーナ・ジョリーの映画の撮影を許可する。内容はセルビア人男性とボスニア人女性のラブストーリー。
10/28:
・セルビア共和国政府は、ICTYに起訴されて逃亡中のボスニア・セルビア人勢力のラトコ・ムラディッチ元総司令官の逮捕情報を提供した際の報奨金を100万ユーロから1000万ユーロ(11億2000万円)に引き上げる。米国も500万ドルの報奨金をかけている。セルビア共和国政府が報奨金を引き上げた理由は、EU加盟の条件としてムラディッチ被告の逮捕への協力が求められていることによる。 
11/04:
・コソヴォ議会は、タチ首相に対する不信任案を可決。タチ首相は議会を解散し、12月12日に総選挙が行なわれることになる。
11/06:
・タディッチ・セルビア大統領は、クロアチアのヴコヴァルを訪れ、クロアチア紛争中にセルビア人勢力がクロアチア人を虐殺したことを謝罪。
12/09:
・セルビア政府は、中国の劉暁波のノーベル平和賞授賞式に出席しないと表明していたが、一転して首相特使の派遣を決定。
12/10:
・オーストリアの司法当局は、ザルツブルク近郊でクロアチアのイボ・サナデル前首相を逮捕する。サナデル前首相は、汚職の容疑で国際手配されていた。
12/12:
・コソヴォは08年2月に独立宣言をして以来、初の議会選挙を行なう。タチ首相率いるコソヴォ民主党が第1党となる見通し。
12/13:
・コソヴォの選挙管理委員会は、議会選挙の開票結果を発表。タチ首相の与党コソヴォ民主党は、得票率33.5%で第1党になる。コソヴォ民主同盟は、得票率23.6%で第2党になる。民族主義政党の自己決定運動は、12.2%で第3党。セルビア系住民は、選挙をボイコット。
12/16:
・スイスのディック・マーティー欧州議会議員は、コソヴォ解放軍・KLAのタチ、ハラディナイ、チェクなどの幹部たちが、98年から99年のコソヴォ紛争において、セルビア人捕虜や少数民族など300人を拘束してアルバニアに送り出して殺害した上、臓器を密売した犯罪に関与した疑いについて、欧州議会に調査報告を提出。欧州議会の委員会は、調査する意向を示す。
・タチ・コソヴォ首相は、「ばかげた中傷だ。真実と正義は我々にある」と反発。
・コソヴォ選挙管理委員会は、議会選挙で不正が行なわれたとして、1月9日に5地区の再投票を行なうと発表。
12/29:
・モンテネグロのジュカノヴィチ首相はタバコ密売に絡んだとして辞任。
・コソヴォのタチ民主党党首は、腹心のルクシッチ副首相兼財務相を首相の後継者に指定し、議会はこれを承認する。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

2011年
01/09:
・コソヴォ選挙管理委員会は、不正投票があったとして行なわれた議会選の暫定結果を発表。コソヴォ民主党は32.0%に減少し、コソヴォ民主同盟は24.7%に1.1%増加して差が縮まる。選管は、ミトロヴィツァの29地区の内24地区で不正が行なわれたとして再投票を決める。
02/05:
・セルビア共和国のベオグラードで野党穏健派のセルビア進歩党の支持者ら7万人が反政府デモを繰り広げる。反政府デモは12年5月に予定されている総選挙の前倒し実施を求める。
02/22:
・コソヴォ共和国のクラスニチ大統領代行が退任し、新コソヴォ同盟のベフジェット・パッツォーリが大統領に就任する。
02/28:
・コソヴォのミトロヴィツァ裁判所は、コソヴォ解放軍・KLAが設置したツァハン収容所で重罪を犯したとして元KLAのS・ゲチとR・アリャイ両司令官の公判を開始する。
03/08:
・セルビア政府とコソヴォ政府はブリュッセルで直接の対話を行なう。EU加盟の前提となる両国の宥和のための協議。
03/12:
・クロアチアで反政府デモが行なわれ、若者を中心に5000人が参加。デモは日本大使館の前で東日本大震災の犠牲者に対して黙祷を捧げる。
03/19:
・NATO軍は、リビアの反政府軍を支援する目的でカダフィ政府軍を空爆する。
04/04:
・コソヴォ共和国のパッツォーリ大統領が辞任し、コソヴォ民主党のヤクプ・クラスニチが大統領代行に就任。
04/07:
・コソヴォ議会は新大統領に警察官僚で無所属のアティフェテ・ヤヒヤガ(35)を大統領に選出。ヤヒヤガ新大統領は親米派で、コソヴォにおける初めての女性大統領。
04/15:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYは第1審で、クロアチア共和国軍の司令官アンテ・ゴドヴィナ将軍に懲役24年の判決を出す。
05/26:
・セルビアのタディッチ大統領は、ボスニア・セルビア人勢力の総司令官だったラトコ・ムラディッチ元将軍を拘束したと発表。ムラディッチ元総司令官は、スレブレニッツァでムスリム人8000人の虐殺を指揮した容疑がかけられている。
05/27:
・ラトコ・ムラディッチ元総司令官はセルビア当局の尋問に対し、「ミロシェヴィチ・ユーゴ大統領を選んだのはセルビアの国民だ。私に何の罪があるのか」と語り、民族虐殺などを記述した起訴状の受け取りを拒否する。セルビア当局は、6月1日にもハーグの旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYに移送する見通し。
05/31:
・セルビア司法当局は、ムラディッチ・ボスニア・セルビア人勢力軍元総司令官をハーグの旧ユーゴ国際戦犯法廷へ移送する。
06/03:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYは、ムラディッチ元総司令官の予備審理を開く。起訴状朗読に対してムラディッチは「極めて不愉快だ。聞きたくない」と述べた上で、「考える時間が欲しい」として罪状認否を留保する。
06/07:
・EU欧州委員会は、クロアチアとの加盟交渉を終了し、7月にはクロアチアの加盟を承認するよう加盟27ヵ国に提案する方針を固める。
07/20:
・セルビア司法当局者は、クロアチア・セルビア人勢力の指導者ゴラン・ハジッチを拘束する。当局者によると、ハジッチを拘束するきっかけになったのはモジリアニの絵画を含む絵画を売却して逃走資金としていたことを突き止めたことによると述べる。ハジッチは、クロアチア人住民を多数殺害したとして、2004年に旧ユーゴ国際戦犯法廷に起訴されている。
07/26:
・コソヴォの北部ブルニャクなど2ヵ所のセルビア共和国との出入境管理所で、コソヴォの警官とセルビア系住民が衝突し、コソヴォの警官1人が死亡。セルビアは国連安保理で緊急会議を開くよう要求。
09/03:
・ハンガリーの元憲兵隊将校でナチス戦犯として裁判が行なわれていた、ケピロ・シャーンドル被告が死去。97歳。シャーンドル被告は第2次大戦中のナチス・ドイツに協力し、1942年にセルビアのノヴィ・サドでユダヤ人やセルビア人1200人を殺害した事件に関与した容疑で起訴されていた。
09/05:
・非同盟運動の50周年記念式典が、旧ユーゴスラヴィアの首都であったベオグラードで開かれる。参加国は113ヵ国で、旧ユーゴスラヴィアの構成国だったすべての共和国が参加する。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

2012年
02/14:
・コソヴォ自治州北部のセルビア系住民居住地域で、「コソヴォ政府の統治を受け入れるかどうか」を問う住民投票が行なわれる。
02/16:
・コソヴォ北部のセルビア系住民居住地区で14日から行なわれた統治形態を問う住民投票は、投票率が75%。「コソヴォの独立政府統治を拒否し、セルビア共和国への編入を求める票」が99.74%に達する。ミトロヴィツァのパンティッチ市長は「独立コソヴォの一部にはならないという我々の意志をアルバニア系住民や国際社会に示した」と投票結果の意義を強調。
03/27:
・コソヴォ警察は、コソヴォ在住のセルビア人がセルビア本土から境界を越えてコソヴォに戻ろうとしたところ、「民族間の憎悪と不寛容を扇動した」として拘束する。
03/28:
・セルビア共和国警察は、グニラネイ付近でコソヴォから境界を越えてセルビアに入ろうとした、ハサン・アバジとアデム・ウルセリをスパイ行為及び麻薬密輸の容疑で逮捕する。
03/30:
・セルビア共和国のヴラニェの高等裁判所は、ハサン・アバジに対し、NATOの連絡員としてのスパイ行為をした罪で30日の服役を命じた判決を出す。
04/04:
・セルビアのタディッチ大統領は、任期を10ヵ月残して辞任を表明する。5月6日の総選挙において、情勢を有利に展開させようとの企みと見られている。
04/06:
・ボスニアのサラエヴォで、ボスニア内戦の犠牲者を追悼する式典が開かれる。式典には、サラエヴォ包囲下で犠牲になったとされる1万1541脚の赤い椅子が並べられる。
05/06:
・セルビア共和国の大統領選と議会の総選挙の投票が行なわれる。タディッチ前大統領とニコリッチ・セルビア進歩党の2人による決選投票となる見込み。
05/20:
・セルビア大統領の決戦投票はタディッチ前大統領とセルビア進歩党のニコリッチ党首との間で行なわれ、タディッチ候補は得票率47%、ニコリッチが49%で勝利する。
06/01:
・セルビア共和国のニコリッチ新大統領はモンテネグロ国営放送のインタビューで、スレブレニッツァ事件について、「重大な戦争犯罪だが、ジェノサイドではなかった」と明言。
07/11:
・ボスニア東部のスレブレニツァで、95年7月にセルビア人勢力に虐殺されたとする事件を追悼する集会が行なわれ、3万5000
人が参加。式典にはミラノヴィチ・クロアチア首相やEU関係者も出席。虐殺を指揮したとされる、カラジッチ・スルプスカ元大統領、ムラディッチ元総司令官はICTYで公判中。
07/27:
・セルビア共和国議会は、5月の選挙で第1党となったセルビア進歩党などからなる中道連立内閣を承認する。首相には、セルビア社会党のダチッチ党首が就任。
08/03:
・スロヴェニアの国債の信用格付けを米スタンダード・アンド・プアーズは「Aプラス」から「A」に、ムーディーズ・インベスターズ・サービスは「A2」から「Baa2」に引き下げる。欧州市場でスロヴェニアの国債の利回りが危険水域の7%に達したことによる。
08/30:
・第16回非同盟諸国首脳会議・NAMがイランのテヘランのコンベンションセンターで開かれる。参加は正式加盟国120ヵ国、オブザーバー国17ヵ国、オブザーバー団体10の首脳が出席。
「1,各国の主権を尊重した国際経済秩序の確立。2,核兵器のない世界の実現。3,イラク戦争反対。4,外国軍事基地の撤去」などを討議。
08/31:
・非同盟諸国首脳会議は、「テヘラン宣言」を採択して閉幕。
テヘラン宣言の要旨;「1,核兵器を廃棄する包括的な条約が不可欠。2,核エネルギーの平和利用の権利の支持。3,国連安保理の改革など新たな世界の統治システムをつくる。4,人種差別を批判する。5,人権を尊重する。特に若年者や女性の権利に特別な配慮をする。6,パレスチナ国家創設を支持する」など。
10/19:
・EUは、セルビア共和国とコソヴォとの関係を正常化するための仲介交渉にイヴィツァ・ダチッチ・セルビア首相とハシム・タチ・コソヴォ首相をブリュッセルに招き、協議を行なう。
12/02:
・スロヴェニアで大統領選が行なわれ、中道左派の社会民主党のパホル前首相が67%の得票率で初当選。現職のトゥルク大統領は33%の得票率で落選。任期は5年。スロヴェニアは欧州債務危機による輸出の落ち込みと政府の歳出カットで景気が悪化している。
12/04:
・モンテネグロ共和国の議会は、元大統領のジュカノヴィチ・モンテネグロ民主社会党党首を首相に選出する。
12/10:
・EUの仲介によって行なわれたセルビア共和国とコソヴォの交渉は、「1、境界の管理。2、貿易、関税管理3、地域的な国際会議への参加。4,セルビアとコソヴォが相互に連絡管を派遣する」などについて合意を見る。
12/16:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYの控訴審は第1審の判決を覆し、クロアチア共和国軍の将軍アンテ・ゴドヴィナについて無罪の判決を出す。ゴドヴィナは即時釈放される。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
                    
2013年
02/06:
・セルビア共和国のトミスラヴ・ニコリッチ大統領とコソヴォのアティフェテ・ヤヒヤガ大統領は、EUのキャサリン・アシュトン共通外交・安保政策上級代表(英)の仲介を受けてブリュッセルで会談。関係改善に向けた話し合いを継続することで合意。コソヴォはセルビア共和国からの独立を宣言した08年2月から5年が経過し、独立を承認した国は98ヵ国に増える。しかし、経済は低迷し、失業率は平均45%を超え、若者の失業率は70%を超える。人口は91年の200万人から主にセルビア人住民が離脱したため、174万人に減少している。
03/11:
・セルビア共和国のトミスラフ・ニコリッチ大統領とアシュトンEU外務・安保政策上級代表が会談。EU上級代表は、関係改善の合意にまもなく達成するだろうと述べる。
04/07:
・モンテネグロ共和国で大統領選挙が実施される。現職のブヤノヴィチ大統領と野党連合のレキッチ元外交官の一騎打ちとなる。双方が勝利宣言をするほどの接戦となる。
04/09:
・セルビア中部のベオグラードの南50キロの村で、60歳の男が息子を射殺した上、近所の男女計12人を射殺して自殺を図る。動機として、91年から95年の内戦に従軍したことによる「心的外傷後ストレス障害・PTSD」の可能性が指摘されている。
04/19:
・EUのアシュトン共通外交・安保政策上級代表は、セルビアとコソヴォが関係改善に向けた歴史的な合意に達したことを明らかにする。合意内容;「1、コソヴォのセルビア人住民のために、コソヴォ警察内にセルビア人の司令官を置く。2,セルビア人地域を統括する上級裁判所を設置する。3,これらの機関の統括はコソヴォ政府が行なう。4、この合意は、セルビア政府がコソヴォの独立を承認しない状態で実施する」など。
05/10:
・財政危機の懸念があるスロヴェニアは、財政再建策をEUに提出。銀行や電話会社などの国有企業の民営化や、付加価値税を20%から22%に引き上げる増税などの危機回避策を採用。
06/06:
・ボスニア・ヘルツェゴヴィナのサラエヴォで、社会保障番号に関する法制が政争で成立されない事態に怒った数千人の市民が国会を取り巻いて抗議する。法案が成立しない背景には、スルプスカ共和国のセルビア人が独自の制度を要求しているのに対し、ムスリム人とクロアチア人で構成するボスニア連邦はこれを「民族間の分断を固定する」として反対していることがある。
06/28:
・EUはブリュッセルで首脳会議を開き、セルビア共和国のEU加盟交渉を14年1月までに開始することを決定する。交渉の前提条件は、「1,コソヴォとの和解をすること。2,北部のセルビア系住民居住地域の直接支配を止めること」。コソヴォについても加盟申請の前提となる準備手続きを始めることを決める。
07/01:
・EUは、クロアチア共和国の加盟を正式に承認する。EUの28番目の国となる。首都ザグレブでは大々的な式典が行なわれる。イエラチッチ広場には大勢の市民が集まり、ベートーベンの第9の「歓喜の歌」が流される。ファロンパイ大統領は「この地域が平和と繁栄の中で共生する未来への一歩だ」と讃える。EUは加盟28ヵ国で、総人口5億6080万人となる。
07/11:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYは、ラドヴァン・カラジッチ・ボスニア・スルプスカ共和国元大統領に対する上級審判決において、1審で無罪としたジェノサイドの罪について破棄し、審理を差し戻す。
07/24:
・モンテネグロのブドバで同性愛者の権利擁護を訴えるゲイパレードが行なわれ、40人が参加したが、極右と見られる反対派200人がパレードを襲撃し、「ゲイを殺せ」などと叫びながら石や瓶を投げつけるなどをした。襲撃グループの内10人が逮捕される。
10/14:
・東京新聞によると、ボスニア・ヘルツェゴヴィナが1991年以来、22年振りに国勢調査を実施する。調査機関は10月1日から15日まで行なう。調査方法は、調査員が戸別訪問し、名前、生年月日、職業、民族、宗教など46項目を聞き取る。結果は、14年1月の中旬頃に発表する予定。
10/23:
・ルイーズ・アーバーICTY元首席検察官は、朝日新聞のインタビューで「私が関わった旧ユーゴスラヴィアなどの取り組みが、和解にどう寄与したかをはかるのは難しい。長期的には歴史を正確に記録する基礎となり、責任に疑問を呈するような歴史修正主義を招く可能性は低くなる。短期的には、こうした傷痕は容易には癒えない」と述べる。
11/03:
・コソヴォで地方選挙が行なわれる。セルビア系住民が多数を占めるミトロヴィツァで、覆面姿の男の一団が複数の投票所に乱入し、催涙ガスを発射するなどして投票箱を破壊。セルビア民族主義者の犯行と見られる。
11/04:
・EUのアシュトン共通外交・安保政策上級代表の報道官は、「コソヴォの他の地域で秩序立って行なわれた選挙を台無しにする行為だ」と非難。
・クロアチアのヴコヴァル市議会は、市の公用語をクロアチア語と定めた上で、少数派の民族言語の尊重を定めた国内法をヴコヴァルには適用しないよう求める条例を採択。市議会の24人の議員の内、クロアチア系の13人が賛成し、セルビア系3人が反対したものの、中道左派系の8人は棄権して採決。クロアチア系の市議らは、「歴史的な決定だ。中央政府は我々の意志を尊重すべきだ」と主張。
・ヨシポヴィチ・クロアチア大統領は、ヴコヴァル市議会の条例案採択につて「憲法違反」を懸念する声明を出す。
12/03:
・クロアチア共和国で、憲法に「結婚は男女間で行なう」との定義を盛り込むかどうかを問う国民投票が行なわれ、投票率は37%にとどまったものの、定義に賛成する票が66%を占めて承認される。国民投票を主導したのは、クロアチアで90%近くを占めるカトリック教の組織。中道左派は反対したが、カトリック教会などが「家族の名のもとに」とのスローガンを掲げ、74万人の署名を集めて国民投票を請求した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

2014年
01/21:
・EUは、ベルギーのブリュッセルでセルビア共和国との正式な加盟交渉を始める。ダチッチ・セルビア首相は、「2020年の加盟を目指して道を急ぐ」と意欲を示す。EUは、セルビア共和国にコソヴォとの関係を正常化するよう求めている。
02/05:
・ボスニア・ヘルツェゴヴィナで大規模な政府への抗議行動が起こる。失業率が40%を超えるなど、政府の経済運営への不満が噴出したもの。発端は、トゥズラの工場での賃金未払いへの抗議行動。
02/07:
・ボスニアにおける政府への抗議行動は、北部のトゥズラから中部のゼニツァ、南部のモスタルなど全土に波及し、暴徒化したデモ隊が幹部会議長(大統領)の庁舎など、複数の政府庁舎を襲撃。デモ隊が投石、放火をしたため警官側200人とデモ側100人など、双方で計300人の怪我人が出る。
02/18:
・ウクライナのキエフで、マイダン革命といわれるヤヌーコヴィチ政権への抗議行動が起こる。
02/24:
・ウクライナの親露派ヤヌーコヴィチ政権が崩壊する。
03/11:
・ロシアのマトビエンコ上院議長は、ウクライナ南部のクリミア自治共和国議会が行なった「クリミア共和国」の独立宣言を合法として承認する考えを表明。マトビエンコ議長は合法の事例として、2010年7月22日に国際司法裁判所が、08年2月にコソヴォ自治州が一方的に独立宣言をした事案を合法とした判断を引用。「国民投票実施のために中央政府の許可は不要。国の一部の自決を図るために中央政府の許可も必要ない。国際法では慣例だ」と述べる。
03/16:
・クリミア自治共和国およびセヴァストポリ特別市が自治権拡大かロシアへの編入かを決める住民投票を実施する。その結果、ロシアへの編入を求める住民が多数を占める。
03/18:
・アクショーノフ・クリミア共和国の首相とプーチン露大統領がクリミア自治共和国をロシアに編入する条約に調印する。
・プーチン・ロシア大統領は、ウクライナ南部のクリミアの編入を正当化する根拠の一つに、08年にセルビアから独立したコソヴォの例を上げる。
註;ウクライナはクリミア自治共和国とセヴァストポリ特別市のロシアへの編入を憲法違反として認めず、常駐大統領代理者を任命して、クリミア統治を継続していると主張。
04/14:
・コソヴォのタチ首相は訪日して大学で講演。「コソヴォは国際社会の連携と支持の下に独立を宣言した。コソヴォとクリミアの状況は比較できない」と述べる。
05/11:
・ウクライナのドンバス地方のドネツク州およびルガンスク州のロシア人住民が多数居住する地域で住民投票が行なわれ、独立賛成派が多数を占める。
05/12:
・ウクライナのドネツク州およびルガンスク州のロシア人多数居住地域で行なわれた住民投票の結果を受け、「ドネツク人民共和国」および「ルガンスク人民共和国」が建国され、ウクライナからの独立宣言を発する。
05/15:
・セルビアやボスニア・ヘルツェゴヴィナ、クロアチアなどバルカン半島が観測史上最悪とされる豪雨に襲われる。3ヵ国で51人が死亡、2万5000人が避難を余儀なくされる。
05/17:
・東京新聞によると、1914年6月28日に起こった「サラエヴォ事件」を目撃したハラッハ伯爵の書簡が発見され、オークションに掛けられる。
06/12:
・FIFAワールドカップ・サッカー・ブラジル大会が開かれ、旧ユーゴスラヴィアからクロアチアとボスニア・ヘルツェゴヴィナが参加する。ボスニア・ヘルツェゴヴィナは民族別のサッカー協会が並立していたため、FIFAは一時国際大会の出場資格を剥奪していたが、イビチャ・オシム元日本代表監督が尽力して1本化させ、出場資格を獲得して初出場となる。
06/28:
・第1次大戦のきっかけとなった「サラエヴォ事件」から100周年を迎え、ボスニア・ヘルツェゴヴィナのサラエヴォで各国の首脳が参加して式典を開催。ニコリッチ・セルビア大統領などセルビア系の政治家は参加せず。
08/11:
・コソヴォ警察は、「イスラム国」の戦闘に参加した疑いで40人を拘束し、捜査をはじめ、証拠物として爆発装置や武器弾薬を押収。ロイター通信は、コソヴォから100~200人がイラクやシリアに渡航したと伝える。地元メディアによると、「イスラム国」の戦闘に参加したコソヴォ出身者で死亡した者は16人に及ぶ。
09/29:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYは、ボスニア紛争時にセルビア人勢力の指導者だったカラジッチ・スルプスカ共和国元大統領の公判廷を開く。
10/01:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYは、カラジッチ・スルプスカ元大統領の公判を継続。カラジッチ元大統領は「私に対する事案はすべて誤りだ」と述べ無罪を主張。スレブレニツァの事件については、「自分は何が起きたのかを知らない」と述べる。カラジッチ・スルプスカ共和国元大統領が最終弁論で提出した書面は800ページに及ぶ。
10/07:
・ICTYは、カラジッチ・スルプスカ元大統領の公判はこの日で結審とする。検察側は、同法廷での最高刑である終身禁固を求刑しており、判決日は後日指定されることになる。
10/14:
・セルビアのベオグラードにおいて行なわれたサッカー欧州選手権予選のセルビア対アルバニア戦の会場上空に、「大アルバニア主義」を示す地図入りの旗が無線操縦機で吊り下げられ、乱闘騒ぎとなる。無線操縦機を飛ばしたのは、エディ・ラマ・アルバニア首相の米国籍の兄弟オルシ・ラマ。サッカーの試合は乱闘騒ぎで中止となる。
11/00/:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYは、シェシェリ・セルビア急進党元党首について癌が悪化したとして、保釈する。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

2015年
02/03:
・国際司法裁判所・ICJは、クロアチア共和国およびセルビア共和国両国が旧ユーゴスラヴィア紛争中にジェノサイドがあったとして告発していた事案について、いずれも「全住民もしくはその一部を抹殺する意図があったとの証拠はない」と棄却を言い渡す。
AFP通信によると、ミラノヴィッチ・クロアチア首相は「判決には満足していないが、受け入れる」と表明。ニコリッチ・セルビア大統領は「両国が永続的な平和の確立を阻害する、あらゆる問題を協働で解決する力を持つことを希望する」と述べる。
03/30:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYは、癌の治療のために保釈したセルビア急進党のシェシェリ元党首の保釈を取り消す。
05/09:
・マケドニアのクマノヴォで警察の特殊部隊が武装勢力の摘発に着手したところ、銃撃戦となり、警官8人と武装勢力14人の計22人が死亡、警察官37人が負傷する。警察の報道官は、武装勢力がアルバニア系のコソヴォから入国したテロリスト集団で、「マケドニアの政府関連施設の攻撃を計画していた」と述べる。武装勢力の攻撃の目的は、「大アルバニア主義」を達成することにある、という。
06/06:
・ローマ法王フランシスコはボスニアのサラエヴォを訪問し、民族融和と宗教の対話を促し、平和の共存を訴える。
08/20:
・マケドニア政府は、シリアなどから難民が大量に押し寄せていることに対し、国境地帯に非常事態宣言を発令して難民の流入を阻止する。
09/06:
・EUは中東やアフリカからの難民の流入問題を巡る非公式外相会議を開く。EU加盟候補国のセルビアやマケドニアなど5ヵ国も参加する。
09/11:
・コソヴォの住民は、中東からEUを目指す難民に紛れ込み、西ヨーロッパに入り込む。
09/15:
・セルビアのブリン社会問題相は、ハンガリーが難民の越境阻止のためにセルビアとの国境を封鎖したことに対し、問題の解決にはならないとして「国境を開放するようハンガリーに求める」と述べる。ハンガリーはEUの「シェンゲン協定」に参加しているが、セルビアは未加入。
09/16:
・ハンガリー当局は、セルビアとの国境の町レスケで中東などからの難民の入国を阻止する。そのため、難民との間で衝突を繰り返す。ハンガリー政府はセルビア政府に対し、暴徒化した移民に対抗するための協力を呼び掛ける。
・セルビア政府は、ハンガリー政府の呼びかけに対し、「ハンガリーにはこのようなことをする権利はない」と非難。
・AFP通信はセルビア人医師の話として、ハンガリー警察が難民に対して催涙ガスと放水を行ない、少なくとも9人が重傷を負い、300人が手当てを受けた、と報じる。
・ハンガリー政府が難民の通過を阻止したため、難民の一部がクロアチアとの国境に向かう。ミラノヴィチ・クロアチア首相は「移民の行く手を阻むことは誰もできない。みなドイツに行きたがっている」と述べる。クロアチア内務省によると、およそ1200人がクロアチアに入国する。
09/17:
・ロイター通信は、シリアなどからセルビアを経由してクロアチアに流入した難民や移民が7300人に上った、と伝える。オストイッチ・クロアチア副首相兼内相はセルビア国境付近を訪れ、「これ以上の受け入れは困難だ」と訴え、セルビアとの7か所の検問所を封鎖する。
・スロヴェニア当局は、クロアチアから来た国際列車を停止させ、乗車していた難民ら150人を送り帰すと表明。
09/18:
・スロヴェニア政府は、クロアチア当局がスロヴェニアに難民らを移送していることに対し、「EUの規則に反している」と非難。
09/19:
・ハンガリー政府報道官は、クロアチアが難民や移民凡そ8000人をハンガリーに移送した、と発表。さらに、報道官は「クロアチアはすべての法的義務を放棄し、EUの信頼を損ねた」と非難。
・EUは臨時内相理事会を開き、欧州へ流入する難民など12万人の受け入れを各国で分担する措置を、賛成多数で決定する。
09/25:
・モンテネグロ政府は、「ハンガリーとクロアチアの最近の国境の状況、マケドニアやセルビアが蒙っている被害を見る限り、難民らが次のルートとしてモンテネグロを選択する恐れがある」との危機感を表明する。さらに、「バルカン半島に流入している難民は現在一日当たり5000人と考えられるが、モンテネグロは2000人が限界だ」とも付け加える。
10/21:
・スロヴェニア南東部のクロアチア国境に近いブレジツェで、難民や移民の収容所内から出火し、25以上のテントが炎上。原因は不明だが、難民自身が放火したとの目撃談もある。パホル・スロヴェニア大統領は、EU諸国に国境の警備のための警察官を派遣するよう要請したことを明らかにする。
10/22:
・スロヴェニア政府は、同日に流入した難民や移民が1万3494人に達した、と発表。また、クロアチアとの国境の川を難民らが泳いでスロヴェニアに入り込んでいることに、クロアチア警察が対応していないことを非難する。
2015/00:
・NATO諸国は、ウクライナに武器を提供し、軍事訓練を始める。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
                   
2016年
03/24:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYの差し戻し審は、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ内戦時にセルビア人勢力のスルプスカ共和国元大統領ラドヴァン・カラジッチに対し大量虐殺への関与となど人道に対する罪で禁固40年を言い渡す。判決要旨;「1,人道に対する罪。2,ジェノサイドに対する罪。3,戦争法違反に対する罪」など、10の訴因についての有罪を言い渡す。
03/31:
・ICTYは、セルビア急進党ヴォイスラヴ・シェシェリ元党首に対し、すべての罪状について無罪判決を言い渡す。
04/07:
・コソヴォ共和国議会は、元コソヴォ解放軍司令官でコソヴォ民主党党首のハシム・タチを大統領に選出する。
06/23:
・英国でEUに関する国民投票が行なわれ、離脱派が過半数を超える。
07/12:
・91年から95年のクロアチアにおける紛争において、クライナ・セルビア人勢力の指導者だったゴラン・ハジッチがセルビア北部のノヴィ・サドの病院で死去。死因は脳腫瘍。
08/15:
・スロヴェニアのロックグループ「ライバッハ」が北朝鮮に招待され、公演を行なう。
09/13:
・第17回非同盟諸国高官級会議がベネズエラのマルガリータ島で開かれる。主なテーマは「発展のための平和、主権、連帯」。
正式加盟国から104ヵ国、オブザーバー17ヵ国・10組織が参加。
ラオスの外相は、「核兵器が使用されない世界を保証するのは、核兵器の全面禁止しかない」と指摘する。
09/15:
・非同盟諸国外相会議がベネズエラで開かれ、外相は20名が参加。
・南アフリカのヌコアナマシャバネ外相は、テロ一掃するためには「根源要因をなくすための協力が求められている」と指
摘。
09/17:
・第17回非同盟諸国首脳会議・NAMが、ベネズエラのマルガリータ島で開かれ、首脳は14名が参加。
・イランのハッサン・ロウハニ大統領は「議長国ベネズエラはこの3年間に、武力紛争、テロリズム、戦争のない世界、世界秩序の民主化を達成するために国連安保理の変化をもたらす枠組みをつくり上げるだろう」と述べる。
09/18:
・第17回非同盟諸国会議は、「マルガリータ宣言」および「最終文書」を採択して閉幕。
マルガリータ宣言要旨;「1,大量破壊兵器の廃止。2,あらゆる人権の保護および促進に取り組む。3,国連再建プロセスの促進。国連運営の米州諸国への拡大。4,テロ行為を強く非難する。5,パレスチナ領土からのイスラエルの撤退。6,先進国の技術移転を求める。7,気候変動と闘うため、先進国に適切な技術移転などを求める。8,BRICS諸国との連携を促進する。9,移民の権利を保護・擁護する責任を再確認する。10,政府の弱体化を目的とする敵対的な宣伝に深い懸念を表明する」など。
・議長国ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領は「1955年の非同盟運動創成期の参加国によって採択されたバンドン宣言は、マルガリータ島で蘇った」と演説。
・ナミビアのクーゴンゲルワアマディラ首相は、核兵器の存在と核保有国の軍事戦略への懸念を表明し「いかなる国の核兵器使用の威嚇は正当化しえない」と指摘する。
・セルビア共和国のダチッチ外相は「非同盟諸国の多くの国家がコソヴォの一方的な独立宣言を認めず、国連憲章、ヘルシンキ議定書、国連安保理決議1244を守り、国際社会における法の支配を遵守していることに感謝する」と述べる。
12/12:
・ラブロフ・ロシア外相がベオグラードを訪問し、ダチッチ・セルビア外相と会談。ロシアのクリミア半島併合についてダチッチ外相は、「ロシアへの制裁に加わることはあり得ない」と語る。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

2017年
01/01:
・国連事務総長にアントニオ・グテレス・ポルトガル元首相が就任する。
01/00:
・ダチッチ・セルビア外相は記者会見において、「EU加盟を追求するなかで西側とロシアの間のバランスをいかにして取るかといえば、その要諦はわが国民そしてわが国家の利益を擁護することにある」と述べる。
03/30:
・イタリアの捜査当局は、ベネチアのリアルト橋の爆破を計画したとしてイタリア在住のコソヴォ人3人を逮捕したと発表。
04/11:
・マケドニアの少数派のイスラム教徒のアルバニア系住民がアルバニア語を公用語化するよう求めて抗議行動を起こし、警察と衝突。これに反発したマケドニア人住民は、アルバニア系住民が「大アルバニア」創設を目標としているとして大規模なデモを行なう。マケドニア住民の参加者は20万人規模。
・ロイター通信によると、スロヴェニアの企業が「「デジタル墓石」を開発。
04/27:
・マケドニアのスコピエで、議会議長にイスラム教徒のアルバニア系議員が選出されたことに反発したマケドニア人住民が国会に乱入し、多数の負傷者が出る。
06/05:
・NATOは、モンテネグロの加盟を正式に承認する。モンテネグロはNATOへの29番目の加盟国となる。
06/11:
・コソヴォ議会選挙が行なわれ、開票率70%の段階で、「コソヴォ民主党連合」が34%、右派の「自己決定運動」が26%、ムスタファ首相率いる「コソヴォ民主同盟」の政党連合が26%を獲得し、「コソヴォ民主党連合」が勝利する見通しとなる。
07/07:
・国連総会で、核兵器禁止条約・TPNWが採択される。
09/07:
・コソヴォ議会選挙の結果を受けて、ハシム・タチ・コソヴォ大統領は、ラムシュ・ハラディナイを首相に指名する。
11/22:
・ICTY第1審裁判部は、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ内戦時のセルビア人勢力の総司令官だったラトコ・ムラディッチに終身禁固を言い渡す。
11/28:
・毎日新聞によると、旧ユーゴスラヴィア内戦において、コソヴォは99年にNATO軍のユーゴ・コソヴォ空爆を経て2008年に一方的に独立宣言をしてまもなく10周年を迎えるが、独立を承認した国は110ヵ国に達したものの、経済復興は進まず、失業率は30%を超える停滞状況にある。観光に力を入れても、訪問客は2016年に2万3000人にとどまる状態である。
11/29:
・ICTYの控訴審裁判部は、ボスニア内戦中にムスリム人に対する弾圧など人道に対する罪に問われていたクロアチア人の武装勢力指導者スロボダン・プラリャクに、1審通り禁固20年の判決を言い渡す。プラリヤックは、判決文朗読直後に「判決を拒否する」と叫び、法廷内で服毒自殺を図り、死亡する。プラリヤック被告は、内戦時にモスタル市を純粋なクロアチア人の街とするとの企図の下にムスリム人を排除する戦闘を指揮したとの容疑で裁かれていた。旧ユーゴ戦犯法廷・ICTYは、最後の公判廷を終える。
12/19:
・セルビアのアレクサンダル・ブチッチ大統領はモスクワを訪問し、プーチン露大統領と会談。天然ガスのパイプライン「トルコ・ストリーム」の建設や、貿易、防衛など多岐にわたる分野での協力協定書に調印。
12/21:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYは法廷が12月末に解散するのを控え、閉廷式典が開かれる。
12/31:
・ICTYは、設立以来25年を経て閉廷する。後継組織として国連の刑事裁判メカニズム(特別法廷)が引き継ぐ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

2018年
01/01:
・マケドニアのジョルゲ・イヴァノフ大統領は、「私はきたるNATOサミットで、マケドニアが最終的にNATOに加わることを期待している」と述べる。
01/07:
・コソヴォのプリシュティナの医院を根城に臓器売買を行なっていた主犯格のイスラエル人モシュ・ハレルが、キプロス警察に逮捕される。
01/11:
・マケドニア議会は、アルバニア語を第二公用語とする法案を可決。
01/15:
・安倍晋三日首相はセルビアの首都ベオグラードを訪問し、ブチッチ大統領と会談。安倍首相はバルカン地域の経済社会改革を支援する「西バルカン協力イニシャチブ」の枠組みを表明し、セルビアがEUに加盟することを支援することで一致。
01/16:
・コソヴォの北部ミトロヴィツァで、セルビア系の政党党首オリベル・イヴァノヴィチが走行中の車から銃撃を受けて死亡。
01/17:
・旧ユーゴスラビアのマケドニアの国名の呼称問題について、国連が仲介した協議がギリシアとマケドニアとの間で始まる。マケドニアは現在暫定的に「マケドニア旧ユーゴスラヴィア共和国・FYROM」という名称で国連に加盟している。
01/22:
・コソヴォ議会議長は、コソヴォ紛争時のコソヴォ解放軍・KLAの司令官たちの戦争犯罪を裁くための特別法廷設置法の廃止を政府に求める決定を下す。
02/06:
・欧州委員会は、旧ユーゴスラヴィア諸国を中心とする西バルカン地域6ヵ国について、早期のEU加盟に向けて支援を強化する新方針を公表。対象の6か国は、セルビア、モンテネグロ、アルバニア、マケドニア、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、コソヴォ。
03/28:
・毎日新聞によると、コソヴォ共和国はセルビアからの独立を強行したものの5年を経ても汚職が蔓延し、首都のプリシュティナでさえ都市としての機能が備えられていない状態だった。米国帰りのアフメティが市長に就任して以来、ようやく都市としての機能が回復し、「プリシュティナの奇跡」と言われるようになる。
04/11:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYの任務を引き継いだ国連の国際刑事法廷メカニズム(特別法廷)は、ボスニア内戦中に民兵組織を率いてボスニア・セルビア人勢力軍とともに戦ったセルビア急進党の元党首ヴォイスラヴ・シェシェリに禁固10年を言い渡す。シェシェリは勾留期間が12年を超えていたので即時釈放される。
05/07:
・中国の環球網や新浪網など複数のメディアが、NATO軍が1999年5月7日にベオグラードの中国大使館を爆撃したのは「誤爆ではない。故意だ」との米国を非難する記事を載せる。新浪網はさらに「われわれは世界の前列に立つ軍事力を目標にした。われわれは歴史上最大の装備転換を開始した」として国産戦闘機などの機種名を掲載する。
05/17:
・EUはブリュッセルで首脳会議を開き、旧ユーゴスラヴィアを中心とする西バルカン地域6ヵ国のセルビア、モンテネグロ、マケドニア、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、コソヴォ、アルバニアの首脳を招き、EU加盟の前提となる地域の安定に向けて関係を深める方針を確認。スペインの首脳は、コソヴォの独立を認めていないことから参加せず。
05/18:
・新華社電によると、セルビア議会は、1999年のNATO軍によるユーゴ・コソヴォ空爆の際に使用された、劣化ウラン弾による環境汚染と住民への健康におよぼす影響を調査するための委員会を設置する決議を採択。
・コソヴォ裁判所は、2016年のアルバニアで行なわれたFIFA-W杯予選試合でイスラエル代表サッカーチームを攻撃する計画を立てていたとして8人の男性に禁固刑を言い渡す。検察によると被告の男らは「イスラム国・IS」のメンバーであった述べる。
05/20:
・ボスニアのサラエヴォで、エルドアン・トルコ大統領が選挙集会を開く。
06/05:
・スロヴェニアで国民議会(下院)選挙が行なわれ、移民排斥を掲げる中道右派の野党「民主党」が25%を獲得して第1党となる。中道左派の与党「現代中央党」は議席を減らし、第4党となる。
06/06:
・AFP通信は、ボスニア・ヘルツェゴヴィナの裁判所がスレブレニツァ地域の元司令官ナセル・オリッチの再審を命じた、と伝える。オリッチは、スレブレニツァ地域のムスリム人司令官として周辺のセルビア人住民を殺害した罪に問われたが、ICTYは無罪の判決を下していた。
06/12:
・マケドニア旧ユーゴスラヴィア共和国は、国名をめぐりギリシアと協議を続けてきたが、「北マケドニア共和国」との国名に変更することでギリシア政府と合意する。
06/17:
・ギリシアとマケドニアの両国首脳は、マケドニアの国名を「北マケドニア共和国」とする合意書に調印する。マケドニアは国名が確定したことにより、NATOやEUへの加盟が促進されることになる。
07/08:
・ボスニア・ヘルツェゴヴィナにおいて、スレブレニツァの虐殺を忘れないための「平和の行進」が当時の森林道で実施される。
07/09:
・英国政府は、西バルカン6ヵ国の内務・治安担当閣僚会議をロンドンで開く。バルカン諸国の参加国は、アルバニア、コソヴォ、セルビア、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、マケドニア、モンテネグロの6ヵ国。会議では、移民・難民対策、組織犯罪、テロ対策、汚職問題などについて協力を強化することで合意する。
07/10:
・英政府は、前日に引き続き西バルカン6ヵ国との首脳会議を開催。ドイツ、フランスも招かれる。メイ英首相は「歴史的に西バルカンの安定が欧州の一段の安定につながるだろう」と述べ、英国としてEU離脱後も西バルカンのEU加盟に積極的に関与していく方針を示す。
07/15:
・クロアチアのコリンダ・グラバル・キタロヴィチ大統領はFIFA-W杯の決勝戦を応援するためにロシアを訪問し、プーチン大統領と会談。キタロヴィチ大統領は、安全保障問題についてロシアと対話する重要性を表明。
07/17:
・トランプ米大統領は米FOXニュースのインタビューで、モンテネグロ共和国に対してNATOが集団防衛義務を果たせば「第3次世界大戦になる」とその必要性を疑問視する発言をする。
07/22:
・毎日新聞によると、中近東からの難民がボスニア・ヘルツェゴヴィナに多数流入している。ルートは、ギリシアからEUに加盟していないアルバニアやモンテネグロあるいはマケドニアからセルビアを通ってボスニアに流入する道で、2018年に入ってすでに8700人が流入。ギリシアには、この時点で6万人が留め置かれている。難民の国籍は、パキスタン、シリア、アフガニスタンなどが多い。
08/05:
・クロアチア共和国は、ユーゴスラヴィア内戦中にクロアチアからセルビア人その他の少数民族を追放することを目的とした「嵐作戦」を発動した日を祝う式典を開く。この祝賀パレードに、イスラエルの空軍機3機が参加。クロアチアでは第2次大戦中にナチス・ドイツの傀儡国家「クロアチア独立国」が建国され、セルビア人とともにユダヤ人の絶滅が図られた。
08/06:
・セルビア共和国のイヴィチャ・ダチッチ外相は、クロアチア共和国が開いた「嵐作戦」に関する祝賀パレードについて「EUで唯一、おそらくヨーロッパでも唯一、民族浄化を祝った国だろう」と述べる。
08/08:
・マケドニア警察当局は、イラクとシリアでイスラム国・ISとともに戦った疑いのある7人を逮捕する。
08/14:
・ボスニア・ヘルツェゴヴィナの構成体「スルプスカ共和国」議会は、1995年にスレブレニツァでセルビア人武装勢力がムスリム人7000人を殺害した事件について、「犠牲者数が誇張されている」として事件を認めた政府報告書を無効とする決議を採択。
・ドディック・スルプスカ共和国大統領は、犠牲者とされた多くの人々は「まだ生きており、西欧によるセルビア人を悪魔化する試みだ」として第三者委員会による再調査が必要との認識を示す。
08/16:
・コソヴォの国家検察官のアレクサンダー・ルメヂは、偽のコソヴォ解放軍兵士およそ1万9000人が公的資金の恩恵を不法に受けていると発言。
09/22:
・コソヴォのハシム・タチ大統領は、「コソヴォがイスラエルに容認されれば、私はコソヴォ大使館をエルサレムに置くだろう」と述べる。
09/29:
・セルビア共和国のブチッチ大統領は、コソヴォ特殊部隊員が水力発電所に水を供給する湖に隣接する領域に入り込んだとして戦争準備態勢に入るように指示。
09/30:
・マケドニア共和国は、国名を「北マケドニア共和国」とすることの是非を問う国民投票を行なうが、投票率は36.8%にとどまったため無効となる。低投票率にとどまったものの、賛成率が91.4%、反対が5.6%、と賛成が圧倒的多数となる。
10/07:
・ボスニア・ヘルツェゴヴィナにおいて幹部会選挙が行なわれる。ボスニア連邦のクロアチア人代表には穏健派のジェリコ・コムシッチが選出される。セルビア人のスルプスカ共和国の代表には民族主義者のミロラド・ドディックが選出される。
・ボスニアのポドゥゴラ村は議会選挙に際し、「あなたたちは長年の間、我々に嘘をついてきた。ポドゥゴラではどの政党も歓迎しない」との横断幕を掲げて政治家の立ち入りを禁止する。
10/18:
・コソヴォ議会は、コソヴォ治安部隊・KSFを正規軍に改編する3議案を可決する。この議案には、憲法による規定を回避する内容が含まれている。コソヴォ内に居住するセルビア人住民と隣国のセルビア共和国は「平和への脅威」として反発を強める。
10/19:
・マケドニアの議会は、「北マケドニア共和国」への国名変更に関する憲法改正の手続きを開始する。
10/24:
・ボスニア・ヘルツェゴヴィナのヴェリカ・クラドゥシャで、EUに向かう移民・難民とボスニアの国境警察との間で衝突が起こる。
・ボスニアのゼニツァ市でボスナ川に架かる30mの鉄鋼の橋が盗まれる。
・セルビア共和国の行方不明者委員会のヴェルジコ・オダロヴィチ委員長は、旧ユーゴスラヴィアの行方不明者が10,280
人に上っていると国際刑事裁判所メカニズムに報告する。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

2019年
01/11:
・旧ユーゴスラヴィア・マケドニア共和国議会(120議席)は、国名を「北マケドニア共和国」に変更する憲法改正案を3分の2を超える81票の僅差の賛成で可決承認する。
01/17:
・プーチン露大統領はセルビアを訪問し、ブチッチ・セルビア大統領と会談。両国の関係強化を確認する。ベオグラード中心部の教会前広場には10万人以上が動員され、熱狂的な歓迎行事が行なわれる。
01/25:
・ギリシア議会は、隣国の旧ユーゴ・マケドニアが「北マケドニア共和国」とする国名変更の憲法改正を行なったことを受け、二国間合意に関する採択を行ない、賛成153、反対146の僅差で承認する。ギリシア各地では合意反対のデモが続く。
・北マケドニア政府は国連に変更した国名の使用を始めた、と通知する。
02/06:
・NATOは加盟29ヵ国の大使による会合を本部のブリュッセルで開き、「北マケドニア共和国」の加盟を承認する議定書に調印。
正式加盟は各国の批准を経た後になるが、北マケドニアの加盟でNATOの構成国は30となる。
03/20:
・ICTYの機能を引き継いだ「国際刑事法廷メカニズム」はボスニア・ルビア人共和国(スルプスカ共和国)カラジッチ大統領の上訴審で終身刑を言い渡す。罪状はスレブレニツァの虐殺およびサラエヴォ包囲で市民狙撃を主導したというもの。
04/02:
・ギリシアのチプラス首相が閣僚や経済人100人以上を引き連れて北マケドニアを公式訪問し、スコピエでザエフ北マケドニア首相と会談。歴史的和解を果たすとともに、大使館の開設や、軍事情報の交換および防衛設備などの分野での協力を進めることで合意する。ギリシアの首相の訪問は1991年以降で初訪問となる。
04/29:
・セルビアとコソヴォ間の民族対立問題を協議することを目的としてメルケル独首相とマクロン仏大統領が仲介し、西バルカン諸国の首脳会議が開かれる。独政府は、会議後に「セルビアとコソヴォが関係正常化へ向けた努力を続けることで合意した」ことを明らかにする。
05/05:
・マケドニアで大統領選の決選投票が行なわれ、「北マケドニア」の国名変更を進めた中道左派の社会民主同盟連合が推薦するステヴォ・ペンダロフスキが51.66%の票を獲得して当選する。
05/30:
・コソヴォと北マケドニア共和国を結ぶ「アルベン・ジャフェリ」自動車道が開通し、開通式が行なわれる。
06/12:
・コソヴォのプリシュティナでコソヴォ紛争終結20周年の記念式典が開かれる。NATOの空爆を主導したクリントン米元大統領が出席し、セルビアとの関係について「未来を作るには新たな勇気と忍耐が必要だ」と述べる。タチ・コソヴォ大統領は「20年前の今日、我々は国民としてのアイデンティティを得た」と演説。
・セルビアはこの式典に参加せず、ジュリッチ・コソヴォ担当局長は「20年経過しても、コソヴォの戦争責任者は訴追されていない」と指摘。
06/14:
・セルビアで、ロシアとベラルーシが参加する合同軍事演習「スラヴの同胞2019」が開始される。
06/18:
・EUは総務相理事会を開き、北マケドニア共和国とアルバニア共和国の加盟交渉の開始決定を10月まで先送りすることを決定する。
07/19:
・コソヴォのハラディナイ首相は、コソヴォ紛争時のコソヴォ解放軍の指揮官だった際の臓器売買の疑惑でハーグに設置されたEU主導の特別法廷に召喚されたことを受けて辞任を表明する。
・オランダの最高裁は、1995年のボスニア紛争時に国連保護軍としてスレブレニツァに派遣されていたオランダ部隊が、同地域の戦闘可能なムスリム人男性をセルビア人勢力に引き渡したことに関する限定的な責任を認める判断を示す。賠償金については、下級審が請求額の30%を認めたことに対して10%に減額し、1人当たり数千ユーロになる見通し。この訴訟はスレブレニツァの虐殺犠牲者の遺族が損害賠償を求めて提訴していた件。
08/08:
・タイのインラック前首相がセルビアの市民権を得る。
08/13:
・米・英・独・仏・伊の5ヵ国の政府当局は会議を開き、セルビアとコソヴォの両国に速やかな対話を呼びかける。コソヴォに対しては、18年からセルビアからの輸入品にかけている100%の関税を撤廃するよう求める。
08/14:
・河野太郎日外務大臣はスロヴェニアを訪問し、ミロ・ツェラル外相と会談。IT産業の強化に協力することで一致。
・河野太郎日外相はクロアチアを訪問し、ゴルダン・G・ラドマン外相と会談。両国の経済関係を促進させていくことで一致。
08/15:
・河野太郎日外相はセルビアを訪問し、イヴィツァ・ダチッチ外相と会談。同国への日本企業の投資の拡大に向けて協力していくことで一致。
08/22:
・コソヴォ議会はハラディナイ首相の辞任を受け、議会の解散を賛成89、反対1で可決する。
09/00:
・ボスニアの北東部、スルプスカ共和国のノヴィ・グラドの住民は、クロアチア共和国が近傍に原発の放射性廃棄物の処理場を建設する計画を立てていること対する抗議デモを行なう。
10/08:
・コソヴォで議会選挙(定数120)が行なわれ、開票率95%の段階で野党の「自己決定運動」が26%、「コソヴォ民主同盟」が25%を獲得して得票で1位と2位を占める。コソヴォ解放軍系の与党第1党の「コソヴォ民主党」は得票率21%にとどまり敗北する。
与党が敗北した原因は、汚職と経済停滞にある。
10/10:
・スウェーデン・アカデミーは、ノーベル文学賞の2018年相当をポーランドの女性作家オルガ・トカルチュクへ、2019年相当をオーストリアの作家ペーター・ハントケに授与する。
註・ハントケは、ユーゴスラヴィア紛争の理解をめぐってヨーロッパの知識人たちと対立した経歴を持ち、「空爆下のユーゴスラヴィア - 涙の下から問いかける」という紀行文を出版している。
10/17:
・EUは欧州理事会(首脳会議)を開き、北マケドニアとアルバニアの加盟交渉を先送りすると決める。理由は、EUの統合拡大よりも内部改革を優先すべきであるとフランスのマクロン大統領が異を唱えたことによる。
・ガーナのオウィレド外務副大臣は、コソヴォの国家承認は時期尚早だったとの書簡をセルビアに送り、コソヴォの承認を取り消す。スペイン、中国、ロシアもコソヴォの国家承認をしていない。
11/20:
・ロシアのモスクワにおいて、第2次大戦中日本でスパイ活動をしていたジャーナリストのリヒャルト・ゾルゲが愛用していた地図と肖像画のロシア国防省への贈呈式が行なわれる。ショイグ国防相は「ゾルゲはソ連軍の作戦立案に重要な役割を果たした」と語る。註・ジャーナリストとしてのゾルゲは在日ドイツ大使館の要員にもなっており、独ソ開戦の日および日本がソ連に侵攻する意図が  ないことなどの情報をソ連に向けて送信した。1941年10月に日本の治安当局によって治安維持法、軍機保護法違反などの容 疑で逮捕され、死刑判決を受けて1944年11月に刑が執行された。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

2020年
01/22:
・クロアチア共和国で大統領選が行なわれ、現職のグラバル・キタロヴィチが敗れる。
02/03:
・コソヴォ共和国でハラディナイ前首相の辞任を受け、コソヴォ議会は「自己決定運動」党首のアルビン・クルティの連立政権の組閣を承認する。クルティ首相は「セルビアとは、政治、経済両面で双方が利益を得る関係をつくる」と述べる。
02/26:
・ロイター通信によると、北マケドニア(旧マケドニア)の保健当局はイタリアから車で帰国した女性が新型コロナウイルスに感染していたと発表。
03/20:
・欧州人権裁判所は、スロヴェニアがロマ人の2家族に対し、水やトイレの排水などの設備の提供を怠ってきたことは「人権侵害に当たらない」との判断を示す。スロヴェニアにはロマ人が1万から1万2000人が居住しているが、当局がロマ人社会に対して清潔な水や水道施設の提供を施さない事例が多く見られる。
03/26:
・EUは加盟国首脳によるテレビ会議を開き、北マケドニアとアルバニアの加盟交渉開始を承認する。
03/27:
・NATOは、北マケドニアを加盟国として正式に承認する。NATO加盟国は30ヵ国となる。
06/24:
・旧ユーゴ国際戦犯法廷・ICTYの後継組織の特別法廷(ハーグ)の検察は、コソヴォ共和国のタチ(サチ)大統領を人道に反する罪など10の罪で訴追したと発表。訴追の日付は4月24日。タチはコソヴォ紛争当時にコソヴォ解放軍・KLAの政治局長を務めていた際、セルビア人やKLAに従わないアルバニア系住民やロマ人などおよそ300人をアルバに拉致して殺害し、その臓器を売買した疑いをかけられている。
註・コソヴォ共和国は2008年2月に独立宣言をしたが、NATOの空爆による国家建設の態様に疑問を抱く国は少なくなく、国連加盟国193のうち独立宣言後12年を経ても110ヵ国しか独立を承認していない。
09/04:
・トランプ米大統領はセルビア共和国のブチッチ大統領とコソヴォ共和国のホティ首相をワシントンの呼び寄せ、経済関係正常化の合意文書に署名させる。この合意には政治問題は含まれていない。ブチッチ大統領は依然大きな隔たりはあるが、大きな第一歩だ」と述べる。ホティ首相は「完全な関係正常化に向けた前進だ」との期待を示す。トランプ米大統領は記者団に「歴史的な日だ」と語り、大統領選に向けた成果を強調。
11/05:
・コソヴォ共和国のタチ大統領は、ICTYの後継組織としての特別法廷によってコソヴォ紛争中の戦争犯罪で訴追されたことを受け、「コソヴォの大統領職の品位を守るため」と述べ、辞任したことを表明する。
12/22:
・国連コソヴォ暫定統治機構・UNMIKの事務所長兼国連事務総長代表に、山下真理が任命される。
12/29:
・クロアチア共和国でマグニチュード6.4の地震があり、多くの建物が倒壊する。隣国スロヴェニアにある原発が運転停止となる。
20/00/:
・ボスニア・ヘルツェゴヴィナでは、紛争後に経済が停滞したため、およそ40%の人口が国外に流出している。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
                  
2021年
01/16:
・新華社電によると、中国医薬集団・シノファームが生産した新型コロナウイルスのワクチン100万回分が、セルビアに空路で輸送される。ブチッチ・セルビア大統領はベオグラードの空港に赴き、「中国のワクチンの品質を信頼している」と述べる。
東京新聞によると、旧ユーゴ連邦のモンテネグロや北マケドニアも中・露からワクチンを調達する方針という。
01/22:
・核兵器禁止条約・TPNWが発効する。
02/09:
・中国と中・東欧およびバルカン半島の17ヵ国による経済協力首脳会議(17+1)がオンライで開かれる。習近平中国国家主席は、「中東欧諸国にワクチン協力のニーズがあれば、前向きに考慮したい」と表明。
・ボスニア・ヘルツェゴヴィナ(人口435万から330万に減少)は、人口の20%相当分の中国製コロナウイルス・ワクチンを注文。
03/23:
・NATOの外相会議がブリュッセルで開かれ、シュトルテンベルク事務総長は中国の台頭に対し、「オーストリアや日本などアジア太平洋地域の国々との連携を強めたい」と述べる。
註・1999年のユーゴ・コソヴォ空爆時に中国の駐ベオグラード大使館もNATO軍のミサイル攻撃の標的とされたが、それ以来、中国はNATOを警戒して軍備増強に努めることになった。中国が警戒したように、NATOは世界全域を視野においた軍事同盟となりつつある。
04/25:
・アルバニアで議会〔1院制・140〕選挙が行なわれ、与党の左派社会党が74議席を確保する。
06/09:
・ICTYの後継組織特別法廷「国際刑事法廷メカニズム」上訴審判決は、ボスニア紛争時のセルビア人勢力総司令官ラトコ・ムラディッチにジェノサイドなどの罪で終身刑を言い渡す。
09/01:
・バイデン米大統領はゼレンスキー・ウクライナ大統領をホワイトハウスに招いて会談。ウクライナのNATO加盟について理解を示す。さらに、ウクライナがロシアの侵攻を受けた場合、全面的に支援すると約束する。
09/24:
・朝日新聞によると、バルカン半島からの人口流出が止まらず、廃村となるところが増加しているという。ボスニアのサラエヴォの医療センターでは、2014年には198人いた一般医が現在102人へと半減した。やはりボスニアのゴラジュデの中央病院でもここ数年で17人が県外へ去った。理由はドイツなどへの移住による。両都市ともボスニア内戦の戦場となったところだが、いずれも政治が機能していないといえる。
10/00:
・ロシア軍が、ウクライナの東部国境地帯に、多数の軍勢を集結させ始める。のちに兵員は10万人を超える規模となる。
12/07:
・バイデン米大統領とプーチン露大統領がテレビ電話でウクライナ情勢について会談。
12/09:
・ロシア外務省はNATOに対し、緊張緩和のための要求を列挙した声明を発表。
12/16:
・NATOのシュトルテンベルク事務総長はウクライナのNATO加盟について、「決めるのは主権国家であるウクライナとNATO諸国だ。決して妥協しない」と述べる。
12/17:
・ロシアと米国とがウクライナ問題について協議する。ロシアは、米国に4つの要求を提示する。「1,米国はNATOのさらなる東方拡大を排除し、旧ソ連邦の加盟を拒否することを約束する。2,米国はNATOに加盟していない旧ソ連の領土に軍事基地を設置せず、2国間の軍事協力を展開しない。3,NATO加盟国はウクライナの加盟を含めNATOのさらなる拡大を妨げること。4,NATO加盟国は中距離および短距離陸上ミサイルを交戦することが可能な地域に配備することを排除する」。
12/21:
・プーチン露大統領は、NATOの東方不拡大を保証するためには「口約束ではなく、法的義務を伴う長期的合意がなくてはならない」との認識を示す。
12/00:
・欧米諸国は、ロシア軍がウクライナ国境に軍団を終結させたことを非難。
・プーチン露大統領は「OSCEの規定に、自国の安全保障のために、他国の安全保障を脅かしてはならない」とあると述べ、暗にNATOがウクライナを加盟させようとしていることを批判する。
2021/00/:
・NATO諸国は、2015年から2021年までにウクライナへの武器供与と訓練におよそ40億ドルを投じる。
米国家安全保障局は、ウクライナに「Hunt Forward作戦」部隊を派遣し、サイバー作戦を実施する。
・セルビア共和国はミャンマー軍事政権に武器を輸出する。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
                  
2022年
01/21:
・ブリンケン米国務長官とラブロフ露外相がウクライナ問題について会談。ラブロフ露外相が「ウクライナを攻撃するつもりはない」と述べたのに対し、ブリンケン米国務長官は「意図がないのなら、軍隊を国境地帯から撤退させることだ」と応酬。
02/02:
・米国防総省は、ウクライナをめぐる問題でNATO加盟国を中心に3000人規模の米軍を派遣すると表明。
02/07:
・マクロン仏大統領はモスクワを訪問し、プーチン露大統領と会談。プーチン露大統領は「ウクライナがNATOに加盟してロシアと戦争になれば、ロシアは核保有国の一つ。戦争が起きれば勝者はいない」と述べる。
・ショルツ独首相はホワイトハウスを訪問し、ウクライナ問題への対処についてバイデン米大統領と協議。
02/10:
・ロシア軍とベラルーシ軍がベラルーシにおいて、3万人を動員した大規模な合同軍事演習を行なう。
・ウクライナ軍は、米欧などから供与された武器を使って軍事演習を行なう。
02/11:
・サリバン米大統領国家安全保障担当補佐官は記者会見で、ロシア軍のウクライナへの侵攻について「五輪の期間中にも始まる可能性がある」と述べる。
・ザハロフ・ロシア政府報道官は、「米国はどうしても戦争を必要としている。ホワイトハウスのヒステリーがこれまでにないほど顕著になっている。挑発や偽情報、威嚇は問題を解決するためのいつもの手口だ」と批判。
・オースティン米国防長官は、ポーランドへの米軍派遣を3000人追加すると発表。
02/15:
・英王立防衛安全保障研究所・RUSIは、特別報告「ウクライナは海の陰謀」なる報告書を発表。それによると、「ロシアのウクライナ攻撃は1年以上にわたって計画されたもので、ウクライナが崩壊すれば、ジョージア、モルドヴァ、バルカン半島でも同じ手法を使うだろう」と分析。
02/21:
・プーチン露大統領は、「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の独立を承認する大統領令に署名する。
02/22:
・オースチィン米国防長官は、米軍部隊をNATOの東部方面に再展開させると発表。
02/24:
・ロシア軍がウクライナに宣戦布告なしに「特殊軍事作戦」なる軍事侵攻を敢する。ロシア軍は、ウクライナ軍の施設など83ヵ所をミサイルなどで攻撃する。
・ゼレンスキー・ウクライナ大統領は、「我々は何も怖れない。我々はここにいる。独立を守る」とのコメントを発表する。
・米軍は、ドイツに装甲旅団など4000人を派遣し、高機動ロケット砲システムHAIMARS大隊などを配備する。
02/26:
・ベルギー政府は、ウクライナに機関銃2000基を提供すると発表。
・オランダ政府は、「スティンガーミサイル」200基をウクライナに提供すると発表。
02/27:
・ショルツ・ドイツ首相は議会演説で、軍装備品調達のために1000億ユーロの基金を創設し、国防支出を現行の1.49%から2.0%まで増額すると発表。
・EUはオンライン外相会議を開き、ウクライナに4億5000ユーロ相当の武器の援助の供与を決める。
・スウェーデン政府は、ウクライナに対戦車兵器5000基を供与すると発表。
・ジョンソン英首相は、ウクライナに対し4000万ポンド相当の医療援助を行なうと発表。
02/28:
・英ガーディアン紙、「多くがNATOの拡大は戦争になると警告した。しかし、それが無視された。われわれは今、米国の傲慢さの対価を支払っている」との記事を掲載。
・カナダ政府は、ウクライナに対戦車兵器100基とロケット弾2000発を供与すると発表。
・オーストラリア政府は、5000万ドル掃討の軍需物資を提供すると発表。
・ノルウェー政府は、対戦車兵器2000基をウクライナに送ると発表。
・フィンランド政府は、ウクライナに対戦車兵器1500基およびライフル2500丁と弾丸カートリッジ15万個を送る方針だと発表。
03/02:
・国連は特別総会を開き、安保理決議で否決された「ウクライナからロシア軍の即時撤退を求める」決議を賛成・141ヵ国、反対・「ロシア、ベラルーシ、北朝鮮、シリア、エリトリア」の5ヵ国、棄権・35ヵ国で採択する。共同提案国96ヵ国には旧ユーゴ連邦のスロヴェニア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、モンテネグロ、北マケドニアが加わり、賛成45ヵ国にはセルビアが加わる。棄権はアルジェリア、キューバ、タジキスタン、カザフスタン、ニカラグア、イラン、エルサルバドル、ベトナムなど35ヵ国。無投票はアゼルバイジャン、ウズベキスタン、ベネズエラなど12ヵ国。ロシアを中軸とする安全保障条約・CSTO加盟6ヵ国のうちロシアとベラルーシが反対票を投じ、アルメニア、カザフスタン、キルギス、タジキスタンが棄権する。
03/05:
・マクロン仏大統領はセルビアのブチッチ大統領と電話で会談し、セルビアが「国際機関で明確な姿勢を取っている」と
称える。
03/16:
・バイデン米大統領は、ウクライナに8億ドルの軍事支援をすると表明。
03/19:
・セルビアのベオグラードで行なわれた陸上の世界室内選手権で、ウクライナから脱出して参加したヤロスラワ・マフチフ選手が優勝し、観客の暖かい拍手に包まれる。
03/21:
・EUは外相・国防相の合同理事会を開き、「戦略的コンパス」を採択し、50000人規模の「即応部隊」の創設で合意。ウクライナへの武器調達の支援についても10億ユーロに倍増することを確認する。
03/23:
・マデレーン・オルブライト米元国務長官が死去する。84歳。
註・オルブライト元国務長官は、1999年のコソヴォ紛争時に「オルブライトの戦争」といわれるNATO軍のユーゴ・コソヴォ空爆を主導した。
03/24:
・国連は総会を開き、「ウクライナにおける人道上の改善を求める決議」を採択。賛成・140ヵ国、反対・「ロシア、ベラルーシ、北朝鮮、シリア、ニカラグア」の5ヵ国、棄権・38ヵ国。
03/31:
・第2回ウクライナ防衛国際ドナー会議・IDCUが開かれ、ウクライナへの軍事支援の具体的な内容が決められる。内容は、戦車・242両、装甲戦闘車輌・466両、牽引式榴弾砲・114門、自走式榴弾砲・40両、多連装式ロケットシステム・MLRS・40両」など。
04/07:
・国連は総会を開き、ロシアの人権理事会の資格停止を決める決議を採択。賛成・93ヵ国、反対・38ヵ国、棄権・58ヵ
国。
04/13:
・バイデン米大統領は、ウクライナにヘリコプター11機の貸与など、新たに8億ドルの新たな軍事支援をすると表明。
04/17:
・オーストリアのネハンマー首相は、プーチン・ロシア大統領との会談した印象について「プーチン大統領は、戦争に勝っていると信じているようだ」と語る。
04/21:
・バイデン米大統領は、ウクライナに対して新たに榴弾砲72門や無人機など8億ドル規模の追加の軍事支援を行なうと発表。ロシアのウクライナ侵攻後の米国の軍事支援は34億ドルに達する。
04/25:
・オースティン米国防長官は、「ロシアがウクライナ侵攻のようなことをできない程度に弱体化することを望む」と述べる。
04/28:
・バイデン大統領は、ウクライナを長期にわたって支援するために新たに330億ドルの追加予算を議会に要請したと演説。
05/03:
・バイデン大統領はロッキード・マーティン社の対戦車ミサイル「ジャベリン」の製造工場を視察し、「ウクライナとロシアの戦いは、民主主義国と中国などの専制主義国との戦いの戦線の一つに過ぎない」と述べ、工場側を激励する。ジャベリンは、ウクライナに既に7000基が供与されている。
05/06:
・中国外務省の趙立堅副報道局長は記者会見で、「中国人民は1999年5月7日を永遠に忘れない」とコソヴォ紛争の際にNATO軍が駐ベオグラード大使館を空爆し、3人が犠牲になったことに触れ、「NATOが東方拡大を続け、ロシアとウクライナの間に紛争の種をまいた」と批判する。
05/09:
・バイデン米大統領は、ウクライナへの武器供与をスムーズに行なうための「レンド・リース法(武器貸与法)」に署名。
05/13:
・バイデン米大統領は、フィンランドとスウェーデン首脳との3者ビデオ会議を行ない、両国首脳にNATO加盟を勧める。
05/15:
・シュトルテンベルクNATO事務総長は、NATO非公式外相理事会後の記者会見で、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟手続きについて「前例のない早さで進める」との見解を示す。
06/01:
・バイデン米大統領は、ウクライナに対し新たに7億ドル規模の軍事支援を行なうと発表。
06/15:
・米政府は、ウクライナへの軍事支援として対鑑ミサイル「ハープーン」など10億ドルを追加支援すると発表。
05/18:
・ニーニスト・フィンランド大統領およびアンデション・スウェーデン首相は、NATOへの加盟を申請したと表明。
06/06:
・インタファクス通信によると、ラブロフ露外相がセルビア訪問を中止したことを明らかにする。バルカン諸国のブルガリア、モンテネグロ、北マケドニアがロシアの航空機の上空通過を拒否したことによる。
06/21:
・核兵器禁止条約・TPNW第1回締約国会議がオーストリアのウィーンで開かれる。締約国は66ヵ国、オブザーバー14ヵ国、合わせて80ヵ国の国・地域が参加。NATO加盟国では、オランダ、ドイツ、ノルウェー、ベルギーの4ヵ国が参加。オーストラリアも参加したが、被爆国の日本は参加せず。
06/23:
・核兵器禁止条約第1回締約国会議が「ウィーン宣言」を採択して閉幕する。
06/28:
・NATO首脳会議がマドリードで開かれる。加盟国首脳はスウェーデンとフィンランドのNATO加盟議定書に署名。
06/29:
・NATO首脳会議は、「戦略概念2022」を採択する。戦略概念2022には、ロシアのウクライナ侵攻問題とともに中国に係わる安全保障も含まれる。会議には日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの4ヵ国首脳がオブザーバーとして参加。
・スペイン各地ではこのNATO首脳会議に対する抗議行動が起こされ、「戦争にはノー」、「NATOにはノー」、「平和のために」のスローガンが掲げられる。
06/30:
・NATO首脳会議は新「戦略概念」を採用して閉幕する。新「戦略概念は「1,スウェーデンとフィンランドの加盟について合意。2,ロシアを「最大かつ直接の脅威」と位置づける。3,有事対応の“即応部隊”を4万人から30万人超に増強する。4,ウクライナの兵器・装備の“NATO化”を支援する。5,中国が加盟国の国益や安全保障に挑戦していると認識。6,中・露が連携して国際秩序を損なう試みを強化していることを警戒する。7,日本などインド太平洋地域のパートナーとの関係を強化する」。
註・前回の「戦略概念」策定は1999年4月および2010年。1999年の改訂ではユーゴ・コソヴォ空爆中に開かれた結成50周年大会でNATOの対象地域を欧州のみではなく全世界に拡張した。
また中国脅威論については、NATOが1999年のユーゴ・コソヴォ空爆時に中国大使館にもミサイル攻撃を行なったことが契機となって軍備増強に奔らざるを得なかった事実について故意に無視している。
・米政府は、ウクライナへの軍事支援として新たに8億ドル以上を追加すると表明。
06/00:
・ポール・ナカソネ米サイバー軍司令官は英メディアのインタビューに応じ、昨年末に「Hunt Forward(前方追跡)部隊」をウクライナに派遣し、「攻撃的、防御的、そして情報戦の全領域またがる一連のサイバー作戦を実行した」と語る。
07/01:
・米国防総省は、ウクライナに対する軍事支援として新たに8億2000万ドルを追加すると発表。
07/05:
・NATO加盟30ヵ国は、フィンランドとスウェーデンの加盟議定書に調印。
07/08:
・米国防総省は、ウクライナへの軍事支援として新たに高機動ロケットシステム・HIMARS4基を含む4億ドルを追加する
と発表。
07/19:
・EUは、北マケドニアとアルバニアとの加盟交渉を開始する。フォンデアライエン欧州委員長は「あなた方の国と国民にとって歴史的な瞬間だ」と述べる。
07/22:
・米政府は、ウクライナに高機動ロケットシステムハイマース4基を追加供与するなど2億7000万ドルの軍事支援を発表。
08/09:
・クリミア半島西部のサキ・ロシア軍基地がウクライナによる攻撃を受けて爆発する。
08/18:
・クリミア半島セバストポリ軍用飛行場近くで爆発が起こる。ウクライナ軍による攻撃と見られる。
08/19:
・バイデン米大統領は、ウクライナへの軍事支援として7億7500万ドルを追加すると発表。ロシアがウクライナへ侵攻した後の米政府の支援総額は106億ドルとなる。
08/24:
・バイデン米大統領は、ウクライナに対して新たに29億8000万ドル規模の追加軍事支援をすると発表。
08/30:
・朝日新聞によると、コソヴォ政府はセルビア人住民に認めていた幾つかの特例を廃止すると通告。その中に車のナンバープレートの付け替えを要求するものがあり、これに対してセルビア人住民はバリケードを設置して対抗する。この騒動は、米国の仲介で実施を一時延期することで合意する。
09/08:
・ブリンケン米国務長官がウクライナを訪問し、欧州の周辺国に計22億ドルの軍事支援を実施すると発表。
09/20:
・ウクライナの親ロシア派勢力は、東部と南部のロシア支配地域4州について「ロシアに編入」するための住民投票を23日から27日まで行なうと発表。住民投票を行なうのは、ウクライナのロシア軍占領地域であるルガンスク州、ドネツク州、ザポリージャ州、ヘルソン州の4州。
・旧ユーゴ連邦のスロヴェニア共和国政府は、所有する旧ソ連製の戦車28台をウクライナに提供すると発表。
・ドイツ政府は、スロヴェニア政府の措置に対し、40台の軍用トラックなどを送る「武器交換」を実施すると発表。
09/21:
・プーチン・ロシア大統領は国民向けのビデオ演説で、「部分的な動員令」を発動し、実務経験のある予備役兵を召集す
る、と発表。
09/23:
・セルビア共和国のセラコヴィチ外相は、ウクライナの親ロ派勢力がロシアへの編入を目的とする住民投票について、「領土保全や国境不可侵の原則を守る我が国の政策に完全に反する」と非難。
・カザフスタンの外務省はウクライナの親ロ派が実施している住民投票について、「ウクライナの領土の一体性を支持する」と
批判。
09/26:
・米政府は、ロシア軍のウクライナにおける戦争犯罪を調査するとの名目で、新たにウクライナに4億5750万ドルを供与すると発表。供与金は、ウクライナの国家警察や国境警備隊の装備品を整えることにも使われる。
09/27:
・メドベージェフ・ロシア安全保障会議副議長は通信アプリに、「必要とあらば、ロシアは核兵器を使用する権利がある」と投稿。
10/04:
・ロシアの下院および上院は、ウクライナ4州における住民投票がいずれも90%前後で支持されたとして併合を承認する。
10/08:
・ロシア本土とクリミアをつなぐクリミア橋が車爆弾によると見られる爆破攻撃を受ける。平行して走行していた貨物列車にも飛び火して炎上する。
10/10:
・ロシアは、クリミア橋を爆破したのをウクライナ情報機関と断定し、キーウ中心部を含む13カ所に84発のミサイルと24機の無人機で報復攻撃を実行する。
10/12:
・国連総会は、ロシアがウクライナの4州を一方的に「併合」したことに対する非難決議を採択。賛成・143ヵ国、反対・「ロシア、ベラルーシ、北朝鮮、ニカラグア、シリア」の5ヵ国、棄権35ヵ国、無投票・10ヵ国。
10/14:
・ベラルーシの軍事情報監視団体「ガユン」は、ベラルーシ軍の旧ソ連製戦車T72型22台がロシア国境に運ばれた、と発表。
・プーチン露大統領は記者会見で、「部分的動員は、30万人のうち22万2000人を動員した。2週間以内に完了する」と述
べる。
10/19:
・プーチン露大統領は、併合を宣言したウクライナの4州に「戒厳令」を導入する大統領令に署名。
10/23:
・ショイグ露国防相は、フランス、英国、トルコの国防相と電話で協議。ウクライナ軍が放射性物質の入った「汚い爆弾」の使用を準備していると述べる。
・ゼレンスキー・ウクライナ大統領は、ショイグ露国防相の発言を否定。
10/25:
・バイデン米大統領は、「ロシアが戦術核兵器を使用すれば、信じられないほどの重大な間違いを犯すことになる」と述べる。
10/26:
・ロシア軍の戦略核戦力部隊は、核戦争を想定したICBM、SLBMおよび長距離戦略爆撃機からの巡航ミサイルの発射演習を行なう。大統領府は、「すべての課題は達成された」と発表。
10/27:
・バイデン米政権は核戦略指針「核体制の見直し・NPR」を公表。核抑止力は米国の最優先事項と位置づける。
・プーチン露大統領は、「われわれが自分から核兵器を積極的に使用すると言ったことは一度もない」と核兵器の先制使用を否定する。
11/04:
・バイデン米政権は、ウクライナに対し、新たに4億ドルの追加軍事支援をすると発表。
11/07:
・ウクライナ政府は、航空エンジンを製造する「モトール・シーチ」など戦略的企業5社を接収し、国防省の管轄に移管したと発表。
・リトアニア政府は、台湾との経済協力を記念する式典で、台湾に「リトアニア貿易代表処」を開設したと発表。
11/09:
・ロシアの人権団体「OVDインフォ」によると、ウクライナ戦争に抗議したロシアにおける拘束者数は1万9300人に上る。
11/11:
・ロシア国防省は、ウクライナ南部ヘルソン州の州都ヘルソン市ドニプロ川西岸地区からの撤退が完了したと発表。
11/14:
・国連総会が開かれ、ウクライナ侵攻を続けるロシアへの損害賠償を求める決議を採択する。賛成は米欧など94ヵ国、反対はロシアや中国など14ヵ国。棄権は73ヵ国で、無投票は12ヵ国。
11/23:
・バイデン米政権はウクライナに新たに4億ドル規模の追加軍事支援をすると発表。支援の内容は「高性能地対空ロケット砲システムNASAMS、高機動ロケット砲システム・ハイマース。ドローン撃墜用重機関銃150丁、軍用車150台、小銃弾2000万発。米国のウクライナへの軍事支援総額は190億ドルとなる。
・国連は安保理緊急会合を開く。ゼレンスキー・ウクライナ大統領がビデオで参加して演説。ロシアの民間インフラへのミサイル攻撃に対し「エネルギーテロ」として非難決議を採択するよう求める。
・EUの欧州議会はフランスのストラスブールで開いた本会議において、ロシアを「 テロ支援国家」と位置づける決議を賛成多数で可決する。
11/29:
・NATOは加盟30ヵ国による外相会議をルーマニアのブカレストで開き、ウクライナに対して軍事支援だけでなく、冬を越すための非軍事面での支援強化をうたった共同声明を発表する。
・ブリンケン米国務長官は、ウクライナの電力網の機器確保に5300万ドルの支援を行なうと発表。
・朝日新聞によると、ドイツはこれまでエネルギー関連のインフラ修復のために5600万ユーロの短期資金援助を実施し、350台以上の発電機も供与している。
12/05:
・ロシア当局は、ウクライナによるドローン攻撃を受け、モスクワ南東部ジャギレボと南部エンゲリスの空軍基地損害を受けたと発表。
・G7・EU・豪は、ロシア産原油の取引価格の上限を1バレル60ドルに設定した経済制裁措置を発効させる。
12/06:
・ロシア当局は、ロシア南西部クルスクの石油備蓄施設がウクライナの無人機による攻撃を受けたと発表。
・ウクライナ当局は、ロシア本土へのドローン攻撃について否定も肯定もせず。
・西バルカン6ヵ国がアルバニアのティラナでミシェルEU大統領をまじえてEU加盟促進について協議し、「ティラナ宣言」を採択する。西バルカン諸国は、アルバニア、北マケドニア、コソヴォ、セルビア、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、モンテネグロの6ヵ国。
12/13:
・ウクライナの越冬を支援する国際会議がパリで開かれ、およそ70の政府・国際機関の代表が参加する。
・ウクライナのゼレンスキー大統領はオンラインで参加し、「冬が終わるまで緊急の支援が必要だ」と述べ、エネルギー分野で8億ユーロの支援を求める。
12/15:
・EUはブリュッセルで首脳会議を開き、ボスニア・ヘルツェゴヴィナをEU加盟候補国として認定する。
・コソヴォ共和国は、EUへの加盟を申請する。